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  [No.2674] 語り部九尾 ―零― 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 12:44:56   92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


千 の 時 を 過ごした 一匹 の キュウコン が いた。

彼女 は 獣 の 身 で ありながら 各地 を 旅してきた と いう

今 は 亡き その キュウコン が 私 に 話して くれた

幾つもの 旅 の 記憶 を 私は ここ に 記そう。


○日本史×ポケットモンスター・語り部九尾○
もしもポケモンが、日本史に出てくる人物にあったり、戦等に参加していたら―…?

旅好きで人好きだけど、どこか憎めない、生意気で好奇心旺盛な、変わり者キュウコンのお話し。


【書いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】


  [No.2675] 語り部九尾 ―壱― 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 16:08:15   111clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


溢れる豊かさが、人とポケモンとを結ぶ南の地・ホウエン地方。
その地に、死者の魂を送る、霧に覆われた聖なる霊山・おくりび山がそびえ立つ。

しかし、彼女がいる場所は、どんな大雨であろうとたちどころに晴れ渡り、見事にきれいな景色を一望できる程、澄んだ青空に恵まれるのだ。

「おや、これは珍しい。人なんて何時振りに見たか……その容姿では、まだ子どものようだが……何をしに来たんだい?」

現れた一匹のキュウコンは、何故だか言葉を介しており、見事なまでのその黄金色の九つの尾を優雅に揺らす。少しして、私がなぜここにいるかピンときたのか、くつくつと喉の奥で嗤う。こばかにされているはずなのに、なぜだか憎めなかった。

「なるほど、親と逸れたか。ふふ……迷い子、会ったのが私で良かったな。出会った獣によっては、その命、とうに失われておったぞ。まあ、あの濃霧では仕方あるまい……そうだな、久しぶりに人の子にあったのだ。私もある人の子の話をしよう。なに、退屈はさせぬ。私の旅話しだ。」

人の了承を得ず、勝手に話を始めたキュウコンは、どこか遠くを見つめながら、昔話を語り始めた。


「これは今から、五百年程前の話―…。」


×*×*×*×*×*×*×*×*×*


カントーより北にある、花冷える寒冷地。雪深いシンオウに引けを取らない程寒く、厳しい冬が襲う地。

時刻は恐らく、お昼頃。初夏の日差しが注ぐ、深緑の森を歩く、一匹のキュウコンがいた。そのキュウコンは、ただただ、宛てもなく、いたずらに右往左往と森の中を行き来してしていた。しかし、そのキュウコンは何かを捉えたのか、頻りに耳を動かすと、何かに近づいて行った。

そこにいたのは、一人の子どもだった。大きな木の根に腰掛けて、ひっきりなしに泣いている。着ている物は、土でところどころ汚れていたが、中々に上質な袴を身につけ、右眼に眼帯をしている、十才くらいの少年だった。何かを感じ取ったのか、キュウコンは顔を顰めた。


「……人の子よ、ここで何をしている。」
「!!」
「私の質問に答えろ……何をしている。なぜ泣いている。」

キュウコンが感じ取ったもの。それは血の臭い。この頃は戦が絶えず、刹那の瞬間にも、様々な命が刈り取られている時代であった。しかし、この少年は、まだ戦場にでる年頃では無い。なのになぜ、この少年から血の臭いがするのか。キュウコンはそれが何故なのかわからなかった。


「……眼、を。」
「うん?」
「右眼を、患った。……それから、母上が、まるで化け物を見るような目で、私を見始めた。」
「…………。」
「この眼を取ったら、優しかった頃の母上に戻ってくれると思った。だから、従者に頼んで、そして……。」
「抉り取ったのか、右眼を。」


少年は無言で肯定すると、膝に顔を埋めた。そのままの格好で、さらに話を続ける。

「……でも、母上は元の優しい母上には戻らなかった。私をさらに化け物扱いし、罵り、ついには
、私を、殺そうと……ッ!」
「……皆まで言うな……辛かったであろう、泣きなさい。思う存分。」
「ふっ……うわあああん!!」

キュウコンは優しく子をあやすと同時に、その母親に、ひどく怒りを覚えていた。
母親は、生まれ落ちた我が子を、何があっても常に愛し、時に諭し、そして何より、子の憧れでなければならないのだとキュウコンは思っている。しかし、泣きじゃくるこの少年の母親は、子が病で、その眼を失ったその日のうちに、汚れた者でも見るかのように辛くあたり、何よりも、殺そうとしている。しばらくして少年が落ち着いた頃、キュウコンはその口を開いた。

「……何とも愚かな母親か、どれ、人の子。いっそ私が、お主の母を喰らってやろうか。」
「それは……それはだめだ。」
「何故?命を狙われているのだろう?」
「確かに、哀しみの元凶は、母上だ…………でも、お腹を痛めて産んだのも、母上だ。母上がいなければ、私は……私は、今こうやって、哀しみを共有してくれた、貴女と出会っていない……私は……私は母上が大好きだ!たとえ蔑まれても、命を狙われても、それは、その気持ちは変わらない。」
「…………人の子よ。」
「…………?」
「名を……お主の名を聞いても良いか?」
「…………梵天丸。」
「梵天丸……良い名だ。人の上に立つに相応しい名だ。お前には、数多の人や獣を導き、そして操り、慕われる才があると見た。気が変わった。私はお前の母親を喰らうのは止めよう。その変わり、お前が死すその日まで、私はお主の勇姿を見届けたい。」

その言葉に、梵天丸は小さな左眼を丸々と見開いた。彼女の言葉に驚いたのか、口を僅かに開けて、呆けた表情をしていた。

「……獣の貴女が、私の母になると?」
「うむ、それも良いな。……梵天丸よ、お主は母が愛しいと言った。しかし、件の母はお前を殺そうと憚っている。……だが、1つだけ良い方法がある。荒治療になるが、構わんか?」
「……母がまた、私を愛してくれるなら。」

その答えに満足感を得たキュウコンは、にっこりと笑って、梵天丸の頬を舐めた。梵天丸は、くすぐったそうに、目を細めて笑う。

「そうだな、お主が二十になったとき。まだ母を愛していたら、そして、母がまだお主を嫌っていたら。またここに来なさい……その時に教えよう。」
「……わかりました。十年程、待てばよろしいのですね。」
「うむ。……必ず、お主の力になろう、梵天丸……さあ、もう行きなさい。」

梵天丸はキュウコンに促され、しかしまだ名残惜しそうに一度振り返った。キュウコンは穏やかに笑い、その炎で優しく彼を愛でると、森の奥へと引き返して行った。梵天丸は尚もそちらを見るが、自分を呼ぶ声を耳にすると、そちらの方へと走って行った。


×*×*×*×*×*×*×*×*


10年後。キュウコンは再び、花冷える寒冷地に訪れていた。今度は、自らの影に、たくさんのカゲボウズ達を忍ばせて。
約束の場所には、見事な鳶色の髪を持つ、思わず見惚れてしまう程の青年がいた。しかし、キュウコンはその青年こそが、10年前の小さな子だと気付いた。

「見違えたな、梵天丸。」
「!……お久しぶりでございます、゛母上゛。貴女にとっては僅かな歳月でも、私にとっては長い十年でした。」
「そうであろう……私の種族は千を生きる獣。私はまだ五百といっていないが、十年は確かに短い……血の臭いが濃くなったな。戦に出始めたのか?」
「ええ、二年程前から……名も新たに貰いましたが、貴女にはまだ、梵天丸と呼んでもらいたい……。」
「構わん。……それでどうだ?この十年。お主も、お主の母も相変わらず変わっておらんな?」
「はい。変わっておりませぬ……それで母上、如何なされるおつもりですか?荒治療と申しておりましたが……。」

そこでキュウコンは、自らの影に潜ませ連れて来た、たくさんのカゲボウズ達を呼び出した。彼は初めて見るポケモンだったのだろう。彼らは何者かと問うてきた。彼女は丁寧に、彼らカゲボウズ達の特徴やら何やらを教えると、改めて、梵天丸を見やった。

「……大きくなったな、我が子よ。」
「ええ、色々ありましたが、無事、ここまでこれました。これも偏に、母上のおかげです。」
「私は何もしていない。お主の頑張りに、想いに応えただけだ……良い結果を待っているぞ、梵天丸。」
「はい。……母上。何時かまた、貴女を母上と呼ばせてください。」
「……うむ。」

キュウコンは、どこか侘しい気持ちを抱えながら、梵天丸と、その影に移ったカゲボウズ達を見送った。それから、彼とキュウコンは、一度も会う事は無かった。カゲボウズ達が戻って来た頃、キュウコンは彼らに話を聞くと、どうやら思い通りに事が進んだらしい。それからの梵天丸の活躍は目覚ましく、キュウコンが見込んだ通り、彼は一国の主にまで上り詰めたという。

それから、およそ六十年後。梵天丸は、床に伏していた。

「……死に水を取に来たぞ、梵天丸。」
「母上……お久しぶりにございます。」
「やはり、お主と私では寿命が違うな……我が子の最期を見届けるのは、心が痛む。」
「こればかりは、いたし方ありますまい……私は最期に貴女にあえて、幸せです……母上、この先の五百年、どうか、私の変わりに……。」
「うむ、見届け、伝えよう……お主の事。そして五百の時を経て、再び、黄泉の地にて会おう、梵天丸……その時ゆっくりと話そう。私が歩んだ千年の人生、その全てを。」
「その時は、この梵天丸が、いち早くお迎えに上がります。」
「……待っているぞ、我が子よ……黄泉への道中、気を付けてな。」
「母上も……今より、五百年……どうか……お気を付けて……。」

その言葉を最期に、彼は静かに息を引き取った。その日は奇しくも、梵天丸とキュウコンが初めて出会った日だった。世が平和を迎えて少し経った、柔らかな初夏の光が差し込む、とある城の一室での出来事であった。

彼の激動の人生の背後には、度々、一匹のキュウコンの姿が噂されていたという。


×*×*×*×*×*×*×*×*


「……すっかり長引いてしまったな。もう夕暮れ時だ。そろそろ帰りなさい。ああそうだ、またここにきたいのなら、ヨマワルかカゲボウズにこう言いなさい。『語り部九尾に会いに来た』と。……梵天丸の名か?ふふ……゛独眼竜゛と言えば、伝わるであろうな。」





【書いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】
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  [No.2677] 語り部九尾 ―九尾の説明書― 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/10/19(Fri) 11:51:03   88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


九尾の説明書

語り部九尾
種族:キュウコン 性別:♀ 特性:日照り
性格:生意気 個性:好奇心が強い
出身:ホウエン地方・送り火山 年齢:(恐らく)千歳
趣味:話すこと・旅をすること
好きなもの:人間
嫌いなもの:人間

主人公に当たる、千を超えたと思われるキュウコン。
夢特性、日照りの持ち主で、この特性と強い好奇心のおかげで
長い間旅を続けて来られた。
生まれはホウエンの送り火山だが、いつ生まれていつ死んだかは結局わからずじまい。
歴史書にちょくちょく、光を呼び、炎を纏った一匹のキュウコンの姿が乗せられているらしいが
それがこのキュウコンかどうかは不明。
ただし、色々と説明がつく部分が多いため、否定はできない。
人間が好きであると同時に、どこか嫌っている節がある。
旅をすることが好きで、その際にあった出来事を、誰かに話すことが好き。


【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】