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  [No.2679] 戦いの先に 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/10/28(Sun) 22:11:34   58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

前書き:ミクダイ(ミクリとダイゴ)です。
    カップリングタグが詐欺ではないかくらいに、ミクダイ成分は薄いのですが、キスシーンなどありますのでね!



 またしてもポケモン凶暴化! 児童ら6人死亡
 実力のあるトレーナーを緊急募集。資格はジムバッチ5個以上所持している者。


 新聞もテレビも、そのニュース一色となっていた。ミクリは新聞を折り畳む。
 突如としてポケモンが凶暴化し、人を食らってどこかへ消える。最初はトレーナーのしつけの問題だと叩かれていたのだが、そのうち野生のポケモンも同じように凶暴化していった。タイプに差はなく、種類にも差はない。ホウエンを中心に全国で見られ、病原菌説、放射能説、どこかの悪の組織による陰謀説などがささやかれていたが、原因は不明のままだった。
 ただ一つ解るのは、凶暴化したポケモンに噛み付かれた人間は同じように凶暴化し、人間を襲う。そんなものフィクション映画の中だけの話だと思っていた。
 そんな事態を収集する為にチャンピオンや四天王は連日出動していた。狂ったようなポケモンに太刀打ちできるのは並のトレーナー以上でないと厳しい。もちろん、ミクリもほとんど家に帰っていなかった。疲れた体を寝床に放り出して、ポケモンたちにかける言葉もそこそこに目を閉じる。
 こんな状況でジムを開けられるはずもなく、どこのジムも今は休業状態。情報だけは綿密にやりとりしている。ミクリのポケナビにも常に他のジムリーダーからの情報が流れ続けていた。ただ今はそれを見る余裕がない。ざっと目を通して再び目を閉じた。
「フエンジムリーダーと、トウカジムリーダーか……」
 凶暴化したポケモンに噛み付かれた。病院で手当を受けているがスタッフを突き飛ばしてどこかへ走り去った。その数時間後、遺体となって発見されたと。
 噛み付かれてしまったらどうなるのか、ジムリーダーの立場だからよく知っていたのだろう。人間を襲って殺すよりは自分で決着をつけると覚悟の上だったに違いない。もしミクリが同じ立場になったら、そんな覚悟が出来るだろうか。けれど今はもう何も考えたくない。


 思わず悲鳴をあげて起きた。首筋に冷たいものが当たったのだ。トドグラーのアイスボールのようで、情けない悲鳴だった。何をするんだと叱ろうとトドグラーを見れば、ポケナビをくわえている。エントリーコールが鳴り続けていたようだった。その相手は同じくずっと引っ張られてるだろうダイゴからだ。
「もしもし」
 寝起きの声で答える。ミクリは半分寝ていた。
「もしもし、ミクリ? 今から会えないかな」
「ダイゴは忙しくないのか? 私はようやく休めてて……」
「あ、そうなんだ。今からミクリの家に行けばいいかな?」
 直接言わないと解らないのか。睡眠を邪魔された怒りが爆発する。
「だからそういうのは」
「これは今じゃないとダメなんだ。本当ごめん。じゃあ今から行くから」
 コールが切れる。来たとしても入れるものか。気にせずに眠っていればいい。目を閉じてまた眠ることにしよう。ポケモンのように短時間で回復できない。ミクリがうとうとし始めた頃、玄関のチャイムがいたずらかと思うほど激しく鳴る。
 やつが来た。寝ている振りを決め込もうとミクリは起き上がらなかった。しかしチャイムは鳴り終わらず、疲れた耳にがんがん響く。迷惑だ、帰れと言うためにだけにミクリは起き上がる。廊下を歩いている間もチャイムは鳴り続ける。玄関についているのは、はやおしボタンではない。
「ミクリ!」
 玄関を開けた瞬間に、ダイゴが飛び込んで来る。そして恋人かのようにミクリに抱きついたのだ。出ばなをくじかれ、怒鳴ることを忘れてしまった。
「ミクリ、本当にごめん。でもミクリに会いたくて仕方なかったんだ」
 キスするかのように、ダイゴはミクリの頬を捕まえる。とっさにダイゴの手を振り払った。その瞬間、ダイゴの目が驚いていたように見えた。驚いたのはミクリの方だというのに。
「で、用件は?」
「……二人きりで話したい」
 真剣な顔をしていた。ふざけているようには思えないし、寝る前に見た情報のことで何かあったのかもしれない。ミクリは玄関をしめて、ダイゴをリビングに案内する。
「ミクリ……トウカとフエンのジムリーダーが自殺した」
「知ってる。情報はまわってきている」
 出したお茶を一口つけると、ダイゴはミクリの目をそらしがちに話し始めた。
「遺体からは何も発見できなかった。それは公式発表だけど」
「……制限したんだ」
 ダイゴが顔を上げる。疲れからか顔色が悪いように見えた。
「ミクリ、本当ごめん。僕が一番信頼してる友達だから、ミクリには言っておかないといけないと思った」
「何を? 制限してどうするつもり? 発表した方が防げることじゃないの?」
「……ポケルスって知ってるかい? 何の症状もでないけど、感染すると強くなりやすい病気」
「知ってる。それを利用した注射も今は出回ってるじゃないか。それが何か?」
「ポケルスを使ってもっと強くできないか。そう、もう今までの強さなんか目じゃないほど強くなれないか。そう研究していたんだ。デボンの研究班が。最初は本当に純粋な研究で、微生物を取り扱う手法だってちゃんとしていた。けれどそれを金に目がくらんだ研究員に持ち去られた」
「まさか、その研究員が?」
「そうだよ。そこから全てが始まったんだ」
 ダイゴの顔色の悪さは疲れからだけではない。身内から出た重大な事件。その真相を抱えて、ひたすら事態の収集に努めていた。チャンピオンだからという理由だけで戦っていたのでない。
「いくら裏切りとはいえ、デボンがしていたこと。だから僕が責任を持って始末しなければならない」
「待て」
 思わずミクリが叫んだ。もう長い付き合いで、ダイゴのやろうとしていることが解らないわけがない。
「いくら原因がデボンの研究だとしても、もうダイゴ一人でどうこう出来る問題じゃなくなってる」
「解ってるよ。本当、みんなを巻き込んで申し訳ないと思うんだ。だからね」
 最後にミクリに会いたかった。そういってダイゴは笑う。
 心を貫かれたようだ。この男は死ぬ覚悟でいるのだ。責任を取るために。一人では収拾がつかないことが解りきっているのに、解決するためだけに。
「それに僕の後を任せられるのはミクリしかいないと思ってる。後はよろしくね」
 行くな。行くなダイゴ……
 立ち上がるダイゴに抱きつくようにしてタックルした。バランスを崩してダイゴが床に倒れる。
「な、何どうしたのミクリ!?」
 自分の上にミクリがいる。この状況が全く飲み込めず、ダイゴは混乱している。光の影になってミクリの表情が解りにくいが、目が怒ってるのだけは理解できた。
「約束できる?」
「えっ? なにを?」
「ダイゴのことだから言っても聞かないだろうから……死なないと約束できるか?」
「そんなことわから……」
「死なないと約束できるか!? 絶対に生きてもどって、チャンピオン続けるって約束できるか!?」
 ダイゴの口は閉じたままだ。ミクリも無茶難題を押し付けているのは解ってる。実力者ですら殺されてしまうのだ。ダイゴが絶対に無事だという保証なんて何処にも無い。それでもダイゴが面識のない人間を失って申し訳ないと思うのと同じように、ミクリは目の前の友達を失いたくない。
 しばらく沈黙が続く。その間、ダイゴはミクリの目を見たり、そらしたり落ち着かなかった。ミクリの目は真剣で、本気で心配している。それを不確定な言葉で退けることは出来ない。けれど生きて帰る保証など何処にもない。
「ミクリ……?」
 ミクリがダイゴに抱きつく。頬がふれあい、互いの息が聞こえる。
「約束できないなら帰さない」
「……ごめん」
「ダイゴはチャンピオンなんて誰でも出来るなんて思ってるかもしれない。けどダイゴは一人しかいないんだ。だから、止めないけど生きて戻って来い」
「ありがとう。……僕はミクリと友達で良かった。ミクリのことが大好きだ」
 ミクリが少し顔を離す。目が合った時、ダイゴが少し笑う。
「こんなに思ってくれるミクリのためにも、僕はこの事態を収拾しないと。でも大丈夫。きっと生きて帰る。実はワクチンも同時進行で開発しているんだ。まだ実用化していないけれど、それさえ出来れば怖いことなんて何もない」
「嘘じゃないだろうな?」
「嘘じゃないよ。本当だ。もっと本当のことを言うと、責任責任って責められてて死んでもいいやと思ってたけど、ミクリのおかげだよ。絶対に生きてまた会いたい」
 少しミクリが体を起こす。ダイゴもようやく床から起き上がった。
「……ダイゴ」
 唇にやわらかさが触れた。再び耳に呼吸音が聞こえる。驚いたが、ダイゴはそのままじっとミクリの唇に触れていた。
「帰って来いよ」
 そういうとミクリはダイゴの上から体を退ける。目を合わすことなく、そっぽをむいたまま。ダイゴは立ち上がり、そんな友人の熱烈な激励にありがとうと言って部屋から出ていった。


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バイオハザードパロをポケモンでやったらどうなると話してたら、こんなのが浮かんだ。
ジュラシックパークも、こんな裏切りの研究員のせいであんなパニックになったよなーと
【書いてもいいのよ】【続き書いてもいいのよ】【書いてほしいんだけどな!】