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  [No.3741] 森荒らし 投稿者:マームル   投稿日:2015/05/07(Thu) 22:27:55   111clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:ゲッコウガ】 【ペンドラー

pixivで趣味のシリーズ物になってるもの。
今回もそこそこ良く書けた気がするからここにも投げる。で、途中まで。
で、今回の主人公はゲッコウガ。野生だけど、一回親しくしているポケモン、バクフーンのトレーナーから渡された酒を飲んで酔っ払って友達のルカリオと捕まった経験がある。
その後また野生に戻った。

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 別に、この森に来るのは構わないし、住んでも構わない。
ただ、それなりに秩序を守ってくれれば、という前提はある。
目の前の光景は、木々は折られて毒が充満しており、そしてまた、のんびりと暮らしていたポケモン達が等しく死んでいた。
……。
流石に、怒りを覚えざるを得ない。
食べるだけなら別に良い。荒らすとしても、ある程度までなら許容出来る。
ここを荒らした何かは、どう見ても自分の快楽の為にポケモンを殺し、そして無意味にここを荒らしていった。
許す訳にはいかない。

 飛行タイプのポケモンが、腹を貫かれ、そして踏みつぶされて死んでいた。守ろうとしただろう卵までもが、全て潰されていた。
貫かれた傷からは、毒の匂いが僅かにした。
人間じゃない。ポケモンだ。それも、きっと野生の。
ここ辺りの光景を見ても、きっと毒タイプのポケモンが関わっていると思えた。そして、こんな貫くような攻撃が出来るポケモンは、自ずと限られて来る。
例えば、スピアー。ただ、スピアーはこんな木々をへし折るような攻撃を出来ただろうか。
そうは思えない。続いて、ニドキング、ニドクイン。
ただ、それも違う気がした。死んでいるポケモンの大半はそういう貫かれて死んでいた。ニドキングやニドクインは、あんなちっこい自分の角を主な武器として使わないだろう。強靭な四肢がある。
ドラピオン。何か違う気がする。あの爪でこんな真直ぐ貫く事は難しいだろうし。ドククラゲ。そもそも海のポケモンだ。
考えた末、どうもここを荒らしたポケモンはペンドラーな気がした。
ルカリオを連れて来るべきだろうか。あいつに毒は効かない。
いや、やめておこう。あいつは盗みはするが、殺しはしない。変な所で大胆で、変な所で臆病な奴だから。
戦力として連れて来るならバクフーンの方が良いが、あいつもあいつで森の事等考えずに辺り構わず噴火を撃ちそうな気がする。
……タイプ相性としては凄く不利なんだが、私一匹でやるべきか?
ゾロアークやオーダイルを連れているあの人間が居れば良かったのにと思うが、居ないものを嘆いても仕方ない。
飛行タイプの中には、ファイアローやケンホロウまで含まれていた。
そんなポケモンまで殺せる虫タイプのペンドラー。私は、無傷で勝てる気がしなかった。
しかし、他に良い方法が思いつかない。
そして森を荒らす輩は一刻も早く、排除しなければいけない。
覚悟を決めて、後を追う事にした。
夜まで悠長に待つつもりも無かった。

 後を追うのは簡単だった。
あの巨体が動くにはどうしても跡が残る。
そして、すぐに見つかった。やはり、ペンドラーだった。その体は既に血塗れで、しかし、火傷の跡が少しある程度の怪我しかしていなかった。
余裕綽々の、全く辺りを警戒していないような振る舞いで、ずしん、ずしんとその重さを辺りに知らしめながら歩いていた。
音を立てないようにして木の上に立ち、両手を腰に当てて、水手裏剣を溜めて行く。
ちょこまかと当てるつもりはない。最大威力のでかい手裏剣を当てて、その体を両断してやるつもりだった。
最大まで溜め終え、そしてその威力が消えない内に両腕から離して飛ばす瞬間、ペンドラーがこっちを向いた。
やっぱり、気付いていたか。
ペンドラーは水手裏剣を素早く避け、自分の居る木に向って突進してきた。
あの巨体で素早いのは、やはりやり辛い。
触れてしまったらその時点で吹っ飛ばされる。そう覚悟しないといけない。
木がへし折れ、ペンドラーの背後に降りた。バクフーンの主に覚えさせられたままの冷凍ビームを足に放つ。ばきばきと足が地面と一緒に凍ったが、力だけで氷を破壊させられた。破片が飛んできて、少しの切り傷が出来た。
……確認しよう。
このペンドラーの覚えているもっとも強い技はメガホーンだ。食らったら、腹を貫かれて死ぬ。
そしてもう三つ、技を覚えていて、私よりは素早くはないが、かなり素早い。筋力は私を遥かに上回り、そしてその体重は私を軽く押しつぶせるだろう。
そして、私の覚えている技は今、ハイドロポンプ、水手裏剣、冷凍ビーム、そして身代わり。身代わりは3回しか使えない。3回目は使ってしまうと疲れも酷くなるから、実質2回まで。そして、冷凍ビームは効かないに等しい。
きつい、な。
動きを止める事は出来ない。これ以上荒らされるのも御免だとか、言ってられない。
形振り構わず挑まないと勝てない相手だ。
構えて、ペンドラーと向き合った。ペンドラーは口を開けた。
毒針? ダブルニードル? どちらにせよ、何にせよ、飛び出してくる何かを躱す為に横に跳び、そしてペンドラーは何も放たずに跳んだ私に対して角を向けて突進してきた。
戦い慣れている! 力だけの馬鹿じゃない!
寸での所で何とか躱すが、体が掠り、そこがびりびりと痺れた。
どん、とペンドラーの体がまた木にぶつかり、そしてへし折れる。私の方へ。
また躱した所に、今度こそ毒針を放たれ、足に当たってしまった。
すぐに抜く。幸い、毒は回らなかった。つまらなそうな顔をされる。くそ、私の方が格下なのか?
毒針を抜いている間に体勢を整えたペンドラーはまた、口を開けた。
しっかりと見極めろ。飛んできてからでも遅くない。格下では居られない。この森の為にも。
水手裏剣を溜めながら、ペンドラーに構えた。しかし、ペンドラーが出したのは今度は、どくびしだった。私自身には当てず、周りに撒いて行く。
そうか。撒かれていた毒は、どくびしに依るものだったのか。
周りにどくびしが溜まって行く。元々不利な上、こっちの動きまで制限されては溜まらない。
水手裏剣を、一つ、飛ばした。ペンドラーの首に向って水平に飛ばした。ペンドラーは姿勢を低くしてそれを躱し、私に突っ込んで来た。そしてそこに、もう一つの水手裏剣を飛ばす。
絶対に当たる。こんな姿勢で、突っ込んで来ている状態では、跳躍も出来ない。
……でも、おかしい。こんな、簡単に勝ってしまえるのか? こいつに。
その疑問は、当たった。
水手裏剣は、ペンドラーの角に当たって、弾けて霧散した。
は? 思わず、身構えていた体が思わず硬直した。
先に飛ばした水手裏剣は、後ろの木を両断している。
そして、もう、身代わりも間に合わない、私の身の寸前の距離で、私はこの現状を可能にするたった一つの技を思い出した。
……鉄壁。
確か、ホイーガの時に覚える技だった。
どす、とペンドラーの角の一本が、私の腹を貫いた。
そのまま高く持ち上げられ、木へ叩きつけられる。
どぷどぷと、血が私の体から流れ出て行く。地面には、どくびしがあったようで、体は更にその毒によって侵されていく。
「ガッ、ゲブッ」
血が口からも流れ出て来た。
ペンドラーがつまらなそうな顔をして、私の目の前で私を見下ろした。
もう、私は動けなかった。たった一発、それだけで私はもう、動けなかった。
ペンドラーが足を持ち上げた。私は、それを絶望しながら見つめるしか出来なかった。