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  [No.3428] 【10月5日追記】一粒万倍日企画ぱーと2(YOUの書きかけ小説投稿しちゃいなYO) 投稿者:砂糖水   投稿日:2014/10/04(Sat) 00:02:14   186clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日】 【企画】 【書き出し】 【書きかけ小説

はろーはろー皆様こんばんみ。
当スレッドは一粒万倍日にかこつけて書き出し晒しちゃおうぜな企画でございます。
前スレが掲示板占領しているのでぱーと2であります。

以下、よくわかるかもしれない一粒万倍日企画。
前スレも見てね。
http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=3368&reno= ..... de=msgview


・一粒万倍日って?
物事を始めるのに縁起のいい日です。

*+*+*+*+*+*+**+*+*+*+*+*+*

一粒万倍日(いちりゅうまんばいび、いちりゅうまんばいにち)は、選日の1つである。単に万倍とも言う。
「一粒万倍」とは、一粒の籾(もみ)が万倍にも実る稲穂になるという意味である。一粒万倍日は何事を始めるにも良い日とされ、特に仕事始め、開店、種まき、お金を出すことに吉であるとされる。
但し、借金をしたり人から物を借りたりすることは苦労の種が万倍になるので凶とされる。
Wikipediaより

*+*+*+*+*+*+**+*+*+*+*+*+*

→じゃあ一粒万倍日に書き始めたらいいんじゃね?な思いつきからスタートした企画です。

※今年の一粒万倍日は一番下に載せました。

・何するの?
小説の書き出しを投稿しちゃおうZe☆
未完成品どんと来い。
完成させなくていいのよ。書き出しだけ投稿しちゃおう!
鳩さんも長編は完結しないのが普通って言ってたじゃない!

・決まり事は?
マサポケの投稿規定に従ってください。
詳しくはこの辺参照。
http://masapoke.sakura.ne.jp/about.html
http://masapoke.sakura.ne.jp/pokemonstory.html
流血・暴力表現、エログロ等は冒頭に注意書きをお願いします。

・どういうのを投稿していいの?
短編や長編の書き出しを投稿しちゃいなYO!
長編の第○話の書き出しでもOK。
その場合は大元の作品URL張ってくれるとマンモス嬉ぴー。
タイトルやキャラ名が未定でもいいのよ。

・当日書いたものじゃないんだけど…?
気にしない気にしない。
どうしても気になるなら当日にちょこっとでいいから書き足せば無問題!

この企画はきっかけ作りになればいいなーという感じなので深く考えなくてOK。
お好きに活用してちょ。

・完成したらどうすればいい?
短編は新規投稿をオススメします。
もしくは、このスレに投稿したものを編集してもOK。
その場合、編集したことが分かるように、タイトルに完成させた旨を書いてくださいね。
ただこれだと新着扱いにならないのですよ…。しょぼーん
だからせっかく完成させても目立たない…。
それを逆手にとって、ひっそりこっそり完成品あげたい!な方もせめて主催にお知らせしてくれると涙ちょちょぎれるくらい嬉しいです。
でも新規投稿してくれるといいな!

長編の場合はカフェラウンジ2Fにお願いします。
連載わくわく!

・その他
投稿していただいた作品にはもれなく感想書きます!
ただし遅いのはご愛敬ということで…。
みんなも気に入った作品にはどんどん感想書くといいのよ!
作者さんがやる気出してくれるかも!

・最後に
私のスタンスは、あなたがやりたいことをやればいいよ、です。
なので、マサポケの投稿規定に反しない限りはだいたいOKです。


※連絡先削除しました。


千里のしっぴつも一文字から。
まずは書き出しだけでも書いてみましょ。
ひとつぶまんばい!


【10月5日追記】
投稿時の注意事項です。
投稿する際、本文記入部分の上に、手動改行 強制改行 図表モードとありますが、手動改行で投稿してください。
デフォルトだと手動改行なので弄らなくてOKですが、たまに間違えて強制改行にチェック入ってることもあるのでご確認ください。
強制改行だと、変なところで改行入って読みにくくなるので…。
よろしくお願いします。


*+*+*+*+*+*+**+*+*+*+*+*+*

*今年の一粒万倍日*

10月
4(土)※14(火)※17(金)
26(日)※29(水)

11月
10(月)11(火)22(土)
23(日)※

12月
4(木)5(金)※7(日)
18(木)19(金)※30(火)
31(水)

(※)一粒万倍日 + その他の吉日
くわしくはこちらをどうぞ
http://www.xn--4gqo86mdy5bh3z.net/

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  [No.3429] 箱入り娘の一人旅(冒頭部分) 投稿者:αkuro   投稿日:2014/10/04(Sat) 00:18:47   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 ある夜、ホウエン地方のコトキタウンに程近い、とある豪邸での出来事。
 
「エレンはもう16にもなるのに毎日毎日遊んでばかり……」
「私達の活動がうまくいっているから良いとはいえ、少し甘やかし過ぎたな」
 暗い廊下に明かりがもれる、絢爛豪華な装飾が散りばめられたリビングから、なにやら話し声が聞こえてきます。
 
「私ももう50だ。エンジュがいるとはいえ、もしもの時のために、エレンにも何か修行をさせるべきだな」
「そうねえ……」
 この夫婦の間に産まれた長女、エンジュは数年前にホウエン地方の危機を救った英雄として歴史に名を残しました。
 対して次女であるエレンは姉の栄光の陰で、家が金持ちなのを良いことに毎日毎日のほほんと暮らしています。
「ならいっそのこと旅に出してみる? あの子は騙されやすいところがあるし、天然だから心配だけど」
「……君は昔から危険な賭け事が好きだな……」
「あらあらうふふ、そんな私に惚れたのはセンリさんじゃないの」

 
◆◆◆
 
 さてさて話はとんとん進み、今日はエレンの旅立ちの日。
「いいか、エレン。まずはここから南のミシロタウンに行くんだぞ。オダマキ博士にはパパが連絡しておいたから!」
「だーいじょうぶだいじょうぶ! あたしときーくんなら問題ナッシングだから! ねーきーくん!」
 青いバンダナで髪をまとめ、同じ色のリュックを背負った少女――エレンが、傍らのナックラーに笑いかけます。
「ハンカチは持ったか? ティッシュは? ポケナビは?」
「だーいじょうぶだいじょ……あれ? ポケナビ部屋に置いて来ちゃった。パパ取ってきて」
「ああもうこれだから心配なんだ! すぐ取ってくるからな!」
 
――はてさてこの旅、一体どうなることやら。
 
 
 
◆◆◆◆◆◆
オリジナル小説を書き始めたら早速レビューが来て興奮し過ぎて吐いたαkuroです。
数時間前に風呂で思い付いた、アルファサファイアの主人公(予定の)エレンの話です。
思いつきでエメラルドの主人公エンジュと姉妹にしてみましたが、全く似てないですね。


  [No.3514] 箱入り娘の一人旅(出会い編 投稿者:αkuro   投稿日:2014/11/23(Sun) 22:32:57   48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「あれ、この道さっきも通ったよね……?」
 コトキの自宅を出発したのは昼なのに、もう夕やけが綺麗だ。ポケナビには101ばんどうろと表示されている。
 ボールの中のナックラー……名前はキサンド、通称きーくんは、すやすやと寝息をたてている。かわいい。
「まあいっか、歩いてればそのうち着くよね」
 私は気にしないことにして、さっきと違う角を曲がった、そのとき。
「危ねえええ!」
「ほえ? うぎゃっ」
 向こうから男の子が走ってきて、思いっきりぶつかった。
「いててて……だ、大丈夫か?」
 赤い帽子を被ったその男の子は慌てて身なりを整えると、衝撃で尻餅をついてしまった私に手を伸ばしてきた。
「うん、大丈夫」
 私はその手を借りて立ち上がる。
「良かった……じゃあ俺はこれで」
「あ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、ミシロタウンはどっち?」
「ミシロ?」
「うん。オダマキ研究所に行きたいの」
 そう伝えると、男の子は何か考え事をし始めた。
「研究所……? お前、もしかしてエレンか?」
「そうだけど、なんで知ってるの?」
「父さんから、今日旅立つエレンって女の子が図鑑をもらいに来るって聞いてたんだ」
「父さん?」
「ああ。俺はユウト。オダマキ博士の2番目の息子だ!」


(ω・ミэ )Э(ω・ミэ )Э(ω・ミэ )Э(ω・ミэ )Э
ついに発売されましたね。αkuroです。
しょっぱなから演出に泣かされました。
ユウトはエメラルドにいたライバルの弟です。先に言っておきますがエレンとフラグは立ちません。


  [No.3523] ミシロにて。 投稿者:αkuro   投稿日:2014/12/04(Thu) 23:04:22   51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 オダマキ博士の息子だと言うユウトに連れられ、なんとか日暮れ前にミシロタウンにたどり着いた。
「ここが父さんの研究所だ」
「へー、結構小さいのね」
「……ここ、この町で一番大きい建物だぜ?」
「そうなの?」
 家の使用人室と同じくらいの大きさだけど、と言う私の言葉は突然開いた扉によって封じられた。
「ユウト、おかえり。君がエレンちゃんだね」
 顔を出したのは、すこしぽっちゃりした中年の男性だった。
「父さん! ただいま!」
「父さんってことは……あなたがオダマキ博士ですか?」
「そうだよ。いやあ大きくなったなあ! さあ入って入って」
 
◆◆◆

「予定よりずいぶん遅くなっちゃったけど、何かあったのかい?」
「道にまよってましたー」
「俺がここまで連れてきたんだぜ」
「そうかそうか、ユウト、ありがとう」
 それから私はポケモン図鑑をもらい、キモリというポケモンまでもらってしまった。
「もう真っ暗だから、今日は泊まっていくといい」
「え、そこまでしていただかなくても……」
「遠慮はしなくていいよ。会わせたい人がいるんだ」
「会わせたい人?」
 丁度その時、研究所の扉が開いた。
「ただいまー……なんだなんだ、何事だ?」
「オダマキ博士、お久しぶりです……あれ、なんでエレンがここにいるの?」
 入ってきたのはふたりの男女。
「兄さん!」
「お姉ちゃん!?」
 その片方、緑のバンダナを結んだ女性は、私の姉、エンジュだった。
 
◆◆◆
 
「なるほどねー、エレンが旅……大丈夫なのあんた?」
「大丈夫だもんー」
「初日から道に迷う人間が言うセリフじゃないわね」
「ぐむう……」
 お姉ちゃんは昔、この地方ですごいことを成し遂げ、英雄とまで呼ばれたらしい。当時まだ5歳だった私には、詳しいことは分からないけど。
「ユウトが居なかったらどうなっていたことやら」
「むー」
 ユウトの兄だというユウキさんにまで言われて、私はぷくっと頬を膨らませた。
 ユウキさんはオダマキ博士の研究を手伝いながら、フィールドワークと称してホウエン中を飛び回っているらしい。
 
◆◆◆
 
 夜。なんとなく目が覚めた。
 トイレに行った後ふと外を見るとユウトが外に出ていた。
「ユウト、なにしてんの?」
「ああ……エレンか」
 隣に立って空を見上げると、すんだ空気の中、たくさんの星が瞬いていた。
「やっと旅に出られるって思ったらさ、なんか、眠れなくて」
「そう……気持ちが高ぶってるんだね」
「ああ……5年も待ったんだからな」
 トレーナーとして旅立つことを許される年齢が10歳から15歳に引き上げられたのは、6年前。国によると、トレーナーに捨てられたポケモンが野生化し、まだ若いトレーナーが命を落とす事件が増えたから、らしい。既に旅に出ていた者が呼び戻されることは無かったけれど。
 当時10歳だった子供達は、地元のトレーナーズスクールに通い、ポケモンの危険性などを学んだらしい。私はコトキの実家でのんびり過ごして居たけど。
「あの時はショックで1週間寝込んだぜ……やっと兄さんに追い付けると思ったのにって」
「ユウト……」
「でも、これでやっと兄さんを追いかけられる。エレン、お互い頑張ろうな!」
「うん!」
 星空の下、ユウトとふたりで笑いあった。
 
 
 
(ω・ミэ )Э(ω・ミэ )Э(ω・ミэ )Э
エレンの由来は、キュアビートです。
ユウキとエンジュも別にフラグは立ってません。


  [No.3681] 箱入り娘の一人旅番外編『ユウキとミツル』 投稿者:αkuro   投稿日:2015/04/06(Mon) 13:24:14   90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「僕の、初めてのポケモンだ……。ありがとう、ユウキさん!」
 ラルトスを捕まえたあの日のミツル。
 
「ユウキさん。僕を、あなたのライバルにしてください!」
 キンセツシティで戦った後の、照れ臭そうなミツル。
 
「ユウキさん! ぜったいぜったい、またバトルしましょうね!」
 チャンピオンロードの出口で見た、涙を浮かべながらも俺を送り出したミツル。
 
 あの頃のミツルは、一体どこへ行ってしまったんだろうか。
 
◆◆◆
 
 ミツルの様子がおかしいのに気づいたのは、弟のユウトが旅に出てからすぐのことだ。
 まず、笑わなくなった。ふたりきりの時も、ポケナビを見詰めてぶつぶつ言っている。面白くなくて押し倒しても、どこか上の空だ。
 最近バトルフロンティア近くの小島にできたリゾート地では、夜な夜なタマゴをかかえて自転車で走る緑髪の王子が現れるという噂を親父から聞いた。信じたくないが、ミツルはそのリゾート地に入り浸っている。
 なにがあったんだ。そう問い詰めてもミツルは薄っぺらい笑みを浮かべて話を反らした。
「なんなんだ、いったい……」
 考えすぎて頭痛がしてきた俺は、10年来の友人に助けを求めることにした。
「……へー。それは心配ね、一体何があったの?」
 俺達の関係を知ってる数少ない人物のひとり、エンジュはいつもの冷たい声で電話に出た。
「それが分かったら苦労しねーよ。なんか思い当たることないか?」
「それをなんで無関係の私に言うのよ?」
「お前以外に相談できる奴いないんだよ。頼む、なんでもいいから」
「分かったわよ……」
 なんだかんだ言って優しいのがこいつの良い所だ。
「あんた、随分前にミツルに一度も負けたこと無いって言ってたわよね」
「ああ」
「それって、今も?」
「そうだな」
「じゃあ、それが原因なんじゃないの」
「……どういうことだ?」
「勝ちたい相手に何度も負け続けたら、このままじゃいけないって思うのは当然のことよ。それで強くなる方法にたどり着いたのが今のミツルなんじゃないの」
「……」
「あんた、相変わらず鈍いわね」
 
◆◆◆
 
 とりあえずエンジュのセリフが言いたかっただけ。あとミツルくんが予想以上にあざとかったので。
 ミツルくんがああなったのは、大体主人公のせいじゃないかなーって。
 まだまだ直せそうなところはありますが、やる気出すために投下。


  [No.3430] ピカ姫様(腐向け) 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/10/04(Sat) 02:23:34   86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:腐向け

 チュウもとい注・今更になってサ○シのピカチュウに悶えている人間が描いたものなのでリミッターゼロ設定
盛り盛りパラレルになってます。さらに恐ろしいことに続きは相手サ○シのBLです。お気をつけください。笑
い飛ばしてください。完成はさせますが、あらゆるものを恐れた焼き肉がマサポケからは削除する可能性はあり
ます(サイトには置きます)



 金色の体毛はパチュルとも違った味わいの美しい色をしてあり、雷をあしらったようなしっぽからボルトロス
と関係性のある神と呼ばれる。つぶらな黒目は黒真珠のように美しいもので、その目で微笑まれれば誰もが骨抜
きにされ大犯罪者さえも精神が浄化されるという。

 かの地イッシュにおいて、ピカチュウという生き物は冒頭で語った通りの伝承が伝えられ、それはそれは大事
に崇められていたという。もとより生息地が極端に少ない種族ゆえ大事にされていたものが、より希少価値のあ
るイッシュでは強い神秘性を持ち、神として崇められていたのだ。

 そのような経緯から、この寝る場所も召使いも食事も広すぎて多すぎる巨大な城の中に、ピカチュウはピカ姫
様と(オスなのに)呼ばれ軟禁状態で寵愛されていた。もちろん服装も特注の姫様ドレスである。フリッフリピ
ンクである。

 そんな豪華な城の中でどれくらい寵愛されていたのかというと、かわいい右前足をあげれば芳醇な香りの甘い
果物が召使いによって届けられ、左前足をあげればミルタンクの搾りたて新鮮な乳が届けられるといった具合で
、くしゃみでもした日には大騒ぎである。

 たちまち王専属の医者が天変地異でも起きたかのような形相でピカチュウの元へと走り、万が一苦みや渋みな
どにピカ姫様がお気を悪くしてはいけないと、あらゆる木の実をすりつぶして調合したものにはミツハニーのあ
まいみつがくわえられ、ようやくピカ姫様のかわいいお口に入るのである。

 このようにして籠の中の鳥ならぬネズミ(なんだかネズミ取りにつかまったネズミのような響きである)とし
て寵愛されつづけたピカ姫様は、ちょっぴりおデブであった。具体的に言うと赤・緑時代とかアニメ無印時代初
期みたいな感じで。いいえこっちの話です。

 ついでに言うと、甘やかされまくっていたものだから性格もちょいいい感じに仕上がっていた。こんなもん食
えるかー、とばかりに召使いの持ってきた食べ物を後ろ足でシッシとやって下げさせたり。気に入らないことが
あるとすぐに電撃を発したり。まさに手のつけられないワガママ姫状態であった。

 だがあのプリティーなお顔が「チュウ?」と鳴きながら傾げられ、笑顔の形に緩むと、ワガママに手を焼いて
いた召使いも王様も、誰も彼もが「ハアアアン!!!」と悶絶し、その場にバッタバッタと倒れるのであった。

 ピカ姫様はそんな愚民どもに見向きもせず、茶色いしましまの背中とかみなりしっぽを向けて(フリフリドレ
スはうっとおしいから脱いだようだ)、さっさと天蓋つきの、ふかふかプリンセスベッドに入ってしまった。



 ピカ姫様の在住するプリンセスルームにも、もちろん窓はある。窓の外の空は、チルットの体のような青い全
身に、ふわふわの羽のような雲もおくっつけていて、空全体が大きなチルットのようだ。おじさんのような神様
の下半身が空一面にギッシリ詰まっているような灰色の雲はどこにも見あたらない。絶好のお散歩日和といえる
。ピカ姫様はおてんば姫だから、お散歩に行きたくて長いきれいなお耳とピカピカかみなりしっぽがピクピクし
ていた。

 だけどピカ姫様はピカ姫様だから、おさんぽになんて行けないのだ。外には危険なものがいっぱいで危ない、
外に出てはいけない、とお城の人間はノメルのみでもかじったのかお前らは、って感じに口を酸っぱくして言う
のだ。

 もちろんピカ姫様はその過保護にうんざりしている。ピカ姫様とて立派な男の子、外で冒険の九つや八つくら
いはしてみたいのだ。フリフリのドレスをうっとおしく思いながら、ピカ姫様は広いお部屋を見回してみた。

 うるさい召使いも今は部屋にいない。部屋のドアを押してそっとのぞいてみれば、見張りの兵士もうららかな
昼間の日差しに、廊下に座り込んで大爆睡中である。しめた、と思ったピカ姫様は、どっから出したんでしょう
ねえ、自分の等身大四十センチぬいぐるみを取り出し、天蓋つきのプリンセスベッドの中に寝かせておきました


 等身大と言ったって、今時のピカチュウぬいぐるみじゃありませんよ。CMでお姉さんが「ピカチュウ四十セ
ンチ! 大きくなったわねえ」とかちょい棒読みで言ってたあの初期ピカチュウぬいぐるみです。なにしろピカ
姫様は溺愛されてちょいぽっちゃりしてますからねえ。あの時代のピカチュウぬいぐるみじゃないとバレてしま
うのですよ。

 とにかくこれで、パッと見ではピカ姫様が部屋を抜け出したことに誰も気がつかないはず。ピカ姫様、気合い
を入れて脱走! おお、まるでゲージから逃げたハムスターのようです。ネズミですしね。チュウチュウ。

 その四つ足で走る動きやでんこうせっか! 今にもボルテッカーを編み出しそうな動きです。

 フリフリのお姫様ドレスを揺らしながら走る動きは優雅の一言! こいつは今年のポケモン映画(2014年
現在)の姫様も顔負けです。何しろピカ姫様ですから。語り手が映画館でディアンシーの甘いとろけた声と仕草
にメロメロにされまくっていようと、ポケモンとして新人であるメレシー族のお姫様はまだまだ遠く及ばないの
です。

 数々の兵士の包囲網(ほとんどが船漕いでる、大丈夫かこの城)をくぐり抜け、ピカ姫様は久しぶりにお城の
外に飛び出しました。きれいな青空をピカ姫様が見上げると、大きなチルットのようなお空もこんにちは、ピカ
姫様、と微笑んだように見えます。

 ピカ姫様は気分を良くして、四つ足で駆けていきました。ピカ姫様が四つ足で走っていると、動物らしさが強
く現れていてかわいらしいですね。かわいいドレスが汚れるのも構わず、ピカ姫様が四つ足で走っていった先に
は、きれいな草原がありました。おいしそうなラズベリーやいちごやきのこ、かわいいヒマワリやテッポウユリ
なんかがたくさんあります。ひときわ大きな草は、ナゾノクサでしょうか。

 ラズベリーやいちごも捨てがたいですが、まず最初にピカ姫様はナゾノクサに話しかけました。

「ピーカー」
「ナゾ、ナゾナーゾー」

 ピカ姫様のうるわしゅうあいさつに、ナゾノクサは地面からボコッと飛び出して返事をしました。こんにちは
、いい天気だね。そんな感じのことを言ってるみたいです。ピカ姫様があいさつをすると、ナゾノクサの体が光
って、一回りほど大きくなりました。流石はピカ姫様、あいさつ一つで下々のナゾノクサをせいちょうさせるこ
とも可能らしいです。


  [No.3431] 原石磨き 投稿者:WK   投稿日:2014/10/04(Sat) 14:44:03   69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「――あれは、もう十年近く前になります」
 マイクを向けられた女性は、そう言って語りだした。

 私、ホウエン地方出身なんです。トウカシティっていう街で、家を出る十六歳まで住んでました。
 ホウエンは他地方とは違った温暖な気候で、そこの土地にしか生息していないポケモンが多いんです。特に草
や水タイプは豊富で、私もよく捕まえに行ってました。
 小学生の時、近くの港に住んでいるお爺ちゃんが、船に乗せてくれたんです。ホウエンは海に囲まれた土地で
したから、泳げる子も多かったんですよね。でも、離島なんかはとても泳いで行ける距離じゃなくて……。
 それで、私はお爺ちゃんの用事で、ムロタウンっていう島に行ったんです。そこの集会所で用事があったらし
くて。
 本当に、ジムとポケモンセンターとフレンドリィショップしか目ぼしい物がありませんでした。バッジを集め
ているトレーナーはよく来るらしいんですけど、それをしない人間は、滅多に来ることが無いって、島の人も言
ってました。
 で、退屈になった私は、島を一周してみることにしたんです。今思えばかなり無謀なことだったな、って思う
んですけど。
 そして、島の外れに広がる巨大な洞窟――地元の人は、『石の洞窟』って呼んでましたけど。
 そこに入ってみたんです。

 
 本当に、ちょっとした探検気分だったんです。岩と石と砂しかなくて。上は空洞になってる部分もあるから、
比較的明るいんですけど。光が差さない場所は、本当に真っ暗で。
 時々マクノシタとか、ココドラとかがいましたけど。
 私はあんまりバトルしない子だったんで、なるべく見つからないように避けて通ってました。そして、そろそ
ろ戻ろうかな……って思った時でした。
 向こうの方から、何かが転がって来たんです。ええ、それはもう驚きました。
 私の拳くらいでしょうか。結構大きな石の塊でした。でも、キラキラ光ってすごく綺麗で……。
 そうしたら、何かの足音が聞こえて来たんです。慌てたような感じで。私は人だと思って、多分この石を落と
したんだろうな、って思って差し出したんです。
 でも、いつまで経ってもやって来なくて。足音も止まっちゃって。
 ここにありますよ、って声を掛けても、全くやって来ない。
 そうしてるうちに痺れを切らして、私、暗闇の中に入ったんですよね。懐中電灯なんて持ってないのに。何と
かして返そうと思って……。それだけで頭がいっぱいでした。
 数分ほど歩いた時に、いきなり三つの明りが目の前に現れたんです。私、びっくりして。
 白い光が二つに、少し下に明るい色の灯りが一つ。
 尻もちをついた私の前に、一匹のヤミラミが現れたんです。そう。二つの光は、彼の目の宝石だったんですよ
。そして明るい方は、彼の持ってたカンテラ。
 向こうもびっくりしたみたいですけど、私が石を返しに来た相手だと分かって、手を貸してくれました。石を
返したら、『ちょっと来い』みたいな感じで奥深くまで連れて行ってくれたんです。
 ポケモンってすごいですね。カンテラ持ってるとはいえ、何処に何があるか、暗闇の中でもはっきり分かるん
ですから。
 そうして連れて来られたのは、岩場でした。固い岩石の壁の前で、沢山のヤミラミが仕事してるんです。
 ポケモンが仕事……っていうと、何かアレですけど、まあ言葉の綾ということで。
 岩を掘り出してたり、屑石を運んで別の場所に重ねていたり、何やら話し込んでいたり……。
 目の前に行われている不思議な光景に、私しばらく開いた口が閉じませんでした。我に帰ったのは、連れて来
てくれたヤミラミが、別のヤミラミから何か預かって、私に持たせてくれた時です。
 ……それが、これなんですけどね。

 記者は彼女の胸元からかかるペンダントを見た。
 ごつごつの石だ。でも、所々透明で光っている。

 ヤミラミって、宝石の原石を食べるポケモンなんですよね。あの時どうして、私に貴重な一つをくれたのかは
分からないんですけど……。
 そうそう、これ元々はもう少し大きかったんですよ。でも友人のお父さんに見せたら、ぜひ少しで良いから譲
って欲しいって言われて。あ、その人宝石商なんですけど。
 ええ。結構良い値段で引き取ってくれました。かなり貴重な鉱石だったみたいですね。
 それで、今回受賞した小説を書く時に、資料を集めてたんですけど、面白い話を聞いたんです。
 
 夢を持って、それに向かって努力している子供の所に現れる、ヤミラミ達の話を。
 彼らに原石をもらった子供は、どんなことがあっても、必ず夢を叶えると。

「……でも、当時小説家になるなんて、私、全く考えてなかったんですよね。
 彼らにはそれすらもお見通しだったんでしょうか。それが、唯一の謎ですよね」


―――――――――――
 文化祭に出す宝石風ピアスを作ってた時に思いついた物。
 『耳をすませば』で主人公が店主さんに原石をもらうシーンが好きです。


  [No.3432] タイトル未定(臆病ザングースとマニューラの御話) 投稿者:クーウィ   投稿日:2014/10/04(Sat) 15:13:42   141clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日


 雨雲が去ったばかりの空に、大きな虹が懸かっていた。朝霧の残る踏み分け道はひんやりと涼しく、林の奥か
ら聞こえて来るテッカニンの鳴き声も、気持ちの良い微風に遠慮してか控え目で大人しい。朝露に濡れた叢を緩
やかにかわしつつ、ヒューイは木漏れ日に彩られた通い路を、のんびりとした二足歩行で進んでいた。
 大きな房尾に尖がった耳。白い毛皮に緋色のライン。胴長の総身を覆う夏毛はそれでも十分に長く、立って用
を足すにはやや不適とも見える短い前足には、幾つかの木の実が抱え込まれている。シンオウでは非常に珍しい
ポケモンである彼は、猫鼬と言う分類や、それに纏わる数々の逸話には到底似合わぬ表情で、幸せそうに欠伸を
漏らす。この按配なら後二時間ぐらいは、あの狂気じみた殺人光線を恐れる心配は無いと言うものだ。
 シンオウ地方はキッサキシティに程近い、とあるちっぽけな森の中。冬は止めど無く雪が降り注ぐこの辺りも
、夏の盛りとあっては是非もなく、昼間はそこかしこに陽炎が立ち昇って、涼味も何もあったものではない。元
々南国の住人である彼は兎も角、間借りをさせて貰っている同居人達は滅法暑さに弱いので、この季節は殆ど動
こうとしない。勢い役立たずの居候である彼に、雑用の御鉢が回って来ると言う訳である。最も彼自身、現状に
は酷く窮屈さを感じている為、こうして何かをさせて貰っていた方が反って有難いのだけれど。
 足裏に感じる、まだ温まりきっていないひんやりとした土の感触を楽しんでいる内。やがて不意に林道は途切
れ、小さな広場に辿り着く。林の中にぽっかりと空いた、雑木も疎らな空白地。所々に岩の突き出たその場所が
、朝の散歩の終着点だった。足跡や臭いなど、様々なポケモンの痕跡が感じ取れる中、ヒューイは真っ直ぐ手近
の岩へと歩み寄ると、その根元を覗き込む。そこには良く熟れたクラボの実が幾つかと、硬くて噛み応えのあり
そうなカゴの実が一つ、大きな蕗の葉の上に並べられていた。此処には目的のものがない。そこで彼はその岩の
傍を離れると、隣に腰を据えている三角の岩に場を移す。此方の根方にあったのは、喉元を綺麗に裂かれて無念
気な表情を浮かべている、二匹の野ネズミの死骸。乾いた血の痕にぶるりと身震いした彼は早々にそこから離れ
ると、三つ目となる赤い岩の方へと足を向けた。日に焼けた岩肌に眼を滑らせていく内、漸くお目当てのものを
見つけ出す。岩陰に敷かれた緑の葉っぱに乗せられていたのは、つるりとした白肌も眩しい、三個の大きな卵だ
った。大きさからしてムクバード辺りのものだろうか。朝の光を浴びてつやつやと輝くそれは、如何にも新鮮で
美味しそうだった。
 品物の質に満足したヒューイは、次いで視線を戻し、自らのなぞった道筋を辿って、岩肌の一角に目を向ける
。卵が置かれた場所より丁度腕一本分ぐらい上に岩を削って印が付けられており、続いてその下に、品物を置い
ていった主が必要としているものが、この種族独自のサインで簡潔に記されていた。一番上の表記を見た瞬間、
彼は思わず顔をほころばせ、我が意を得たりと独り頷く。個人を表すそのサインの主は、顔見知りのマニューラ
・ネーベル親爺のものだ。腕の良い狩人である半面酩酊するのが大好きな彼が欲しがるものと言えば、マタタビ
に辛口木の実と相場が決まっている。案の定『一個につきマタタビ三つ』と言う明記があるのを確認すると、ヒ
ューイは抱え込んでいた緑色の木の実を全て下ろし、代わりに三つの卵を大事に抱え込んで、悠々とその場を後
にした。

 遣いに出て行ったザングースが帰って来た時、ねぐらの主であるラクルは、既に朝食となるべき獲物を仕留め
、丁度綺麗に『調理』を終えて、住処に運び入れた所であった。内臓を取り分けて皮を剥ぎ、近くの流れでよく
洗った野ネズミの肉を鋭い爪で分けていると、住居としている岩棚の入口から、「ただ今」の声が響いて来る。
無警戒な足音が近付いて来た所で顔を上げ、そっけない挨拶を返しながら、彼女は狩りのついでに確保しておい
たオレンの実を汚れてない方の腕で拾い、ひょいとばかりに投げてよこす。「お疲れさん」の言葉と共に飛んで
きたそれを、紅白の猫鼬は大いに慌てながらも何とか口で受け止めて、腕の中の荷物共々ゆっくり足元に転がし
た。
「どうやら収穫があったみたいだね。有難う、助かるよ」
 やれやれと言う風に息を吐く相手に向け、ラクルは何時もと変わらぬ口調で礼を言う。御世辞にも温かみに溢
れているとは言えない、まさに彼女自身の性格を体現しているような乾いた調子だったが、それでも好意と感謝
の念は十二分に伝わって来るものだった。それを受けたザングースの方はと言うと、これまた生来の性分がはっ
きりと表れている感じで、多少慌て気味に応じて見せる。何時になっても打ち解けたようで遠慮会釈の抜けない
その態度に、家主であるマニューラは内心苦笑を禁じ得ないのだが、それを表に出して見せるほど、彼女も馴れ
馴れしいポケモンではなかった。
「いや、大した事じゃないし……! こっちは朝の散歩ついでなんだから、感謝されるほどの事もないよ。木の
実だって、僕が育てた訳じゃないんだし」
「どう言ったって、あんたが私達の代わりに交換所に行ってくれたのには変わりないさ。対価だって自前で用意
してくれたんだ。居候だからって遠慮せずとも、その辺は胸張ってくれて構わない」
「木の実一つぐらいじゃ足代ですら怪しいからね」と付け加えると、彼女はもう一度礼を言って、ザングースが
持ち帰った卵の一つを引き寄せた。肉の切れ端を一先ず置いて立ち上がると、卵を軽く叩いて中の様子を確認し
てから、奥の方へと持っていく。干し草を敷いた寝床の一つに近付き、横になっていた黒い影にそれを渡すと、
持ち帰った相手に礼を言うよう言い添える。体を持ち上げた黒陰は小柄なニューラの姿になって、そちらを見守
る気弱な猫鼬ポケモンに、笑顔と共に口を開いた。
「有難う、ヒューイ兄ちゃん!」
「どう致しまして、ウララ。暑い日が続いてるけど、早く良くなってね」
 ザングースが言葉を返すと、まだ幼さの残る鉤爪ポケモンは「うん!」と頷いて、彼が持ち帰った御馳走を嬉
しそうに掲げて見せる。夏バテ気味の妹に寝床を汚さぬよう起きて食事するように言い添えると、ラクルはヒュ
ーイに向け、自分達も朝食にしようと声をかけた。

 ヒューイは臆病者の猫鼬。ある日ふらりとこの近辺に現れた彼は、今目の前で一緒に朝食を取っている、マニ
ューラのラクルに拾われた居候だ。元々人間に飼われていた為、野生で生きていく術も心得も一切持たなかった
彼は、本来の生息地から外れたこの地で仲間も縄張りも持てず追い回された揚句、栄養失調で生き倒れになりか
かっていた所を、全くの異種族であり野生のポケモンである、彼女によって救われた。
 まだ根雪の深い春先の頃、泥だらけでふらふらのザングースを見つけた彼女は、マニューラという種族が当然
取るべき行為をあえてやらずに、彼を生かして自分のねぐらまで運び込み、熱心に世話を焼いた。本来なら肉食
性の狩人であり、仲間内の結束は固い半面異種族に対しては非常に冷酷なニューラ一族の事であるから、彼女の
この行動は当時大いに波紋を呼び、実際実の兄弟達からも、さっさと始末を付けるよう何度も言われたらしい。
今でもヒューイ自身、これに関してあくの強い冗談や皮肉を言われる事が少なくないのだから、当の本人である
ラクルがどれだけ風当たりが強かったかは、推して知るべしと言ったところである。
 ところがしかしラクル自身はと言うと、そんな事は自分からはおくびにも出さず、後に周囲からの言葉よって
己がどれほどの恩を受けたかを悟った彼が恐る恐る話題を向けてみても、「好きでやった事さ」と切り捨てるだ
けで、何ほどの事とも思っていないようだった。彼女は寧ろ、ヒューイが自分の妹であるウララの命を救った事
の方に強い借りを感じているようで、今でもやたらと『手のかかる』ポケモンである彼を止め置き、何くれと面
倒を見てくれている。正直身の縮むような思いではあるものの、未だに自力で生きていける自信が毛ほどにも感
じられない彼としては、こうして養って貰う他には光明が見出せないのが現状である。
 ヒューイが彼女に恩を作ったと言うのも、いわば成り行き上の事に過ぎない。長い眠りから覚めたあの日、自
分の置かれていた状況がまるで分かっていなかった彼に対し、恩人の冷酷ポケモンはどこか落ち着きに欠けた様
子ながらも、好意的な態度で事の次第を話してくれる。「好きなだけ居てくれて良い」と言い置くと、気忙しげ
に場を立った彼女の態度が賦に落ちず、おっかなびっくり立ち上がった先で見たのが、熱にうなされているニュ
ーラと、それを看病しているニューラとマニューラの姉弟だった。狩りの際に負った傷が化膿し、明日をも知れ
ぬ容体だったウララを救う為、ヒューイはその足でキッサキの町まで駆け走り、毒消しと傷薬を手に入れて来て
、無事彼女の一命を取り留める事に成功する。長く人間と共に暮らし、『飼われ者(ペット)』の蔑称で呼ばれ
る身の上だったからこそ出来た芸当であり、同じように命を救われた彼としては寧ろ当然の行いであったものの
、これによって彼自身の株が大いに上がったのは間違いなかった。結果的に、彼は家族の恩人としてラクル一家
に受け入れられたし、群れの他のマニューラ達からも、『役立つポケモン』として一応の存在を認めて貰えるよ
うになったのである。



間に合わなかった企画作品その1。どうせ自分の事だからどこか別の企画で再利用するかもしれないですが(殴
)、取りあえず験担ぎも兼ねて……。


  [No.3434] タイトル未定(コジョンドの話) 投稿者:クーウィ   投稿日:2014/10/04(Sat) 15:51:46   69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


 旭光が静かに踏み込むにつれ、淡い朝靄が動き始めた。夜の冷気を宿す晩春の空気が、色づき始めた草露を残
し、森の奥へと引き退いていく。徐々に強まる白い光は輝きを増し、夜半の雨に打ち叩かれた下草を、力付ける
ように優しく包む。イッシュはシッポウの西に広がるヤグルマの森に、何時もと変わらぬ夜明けが訪れていた。
 シッポウの街並が漸く目覚めようとしているこの時間、既にこの地の住人達は朝餉の支度を終えており、てん
でに箸を取る為稼業を切り上げ、住居の中へと舞い戻っていた。森際に点在する家屋は何れも一風変わった造り
であり、その殆どが広い庭を構え、更によく整備され細かい砂を敷き詰めた一区画を、その真ん中に設けている
。砂敷きの広場には木製の杭が立っており、散々に打ちすえられたらしいそれらはまだ比較的新しく、中には早
朝の鍛錬の結果へし折られた物も混じっている。ヤグルマの森近辺は格闘家の修練場として知られており、南方
の試し岩を基点として、幾つかの個人道場が散在していた。
 無人となったばかりの稽古場が小鳥達の囀りに満たされる中、不意に何処か遠い場所から、微かな矢声が聞こ
えてくる。砂浴びを楽しんでいたムックル達は小首を傾げ、次いで何かに納得したように頷き合うと、小さな翼
をはためかせ、てんでに声のした方へと飛び去ってゆく。雲一つない朝空にゴマを撒いたような黒点が散らばる
と、まるでそれを引き寄せるが如く、再び鋭い気合いが風に乗って、ヤグルマの里に響き渡った。

 踏みにじっていた下草を朝風に散らしつつ、じっと相手の隙を窺っていたコジョンドのスイは、その雪白の痩
身を宙空に閃かせ、眼前の敵に躍り掛かった。鞭の一振りの様に風を切り裂く武術ポケモンは一本の征矢と成り
、自分の一挙手一動を完全に把握しているであろう対戦相手に向け、一直線に突き刺さっていく。
 果たして相手方のポケモンは、彼女の動きに対し的確な反応を示した。既に波導を通し、コジョンドの攻撃を
予測していたのだろう。相手の体が宙に浮いた瞬間には早くも姿勢を下げて地面を蹴り、最早軌道を変える事の
出来ない武術ポケモンの死角に位置すべく旋転する。くるりと半身を廻したルカリオは、必要最小限の動きでコ
ジョンドの攻撃範囲から逃れると、そのまま着地際の間隙に乗ずべく拳を固め、尻尾を揺るがし身構える。
 が、しかし――波導ポケモンが狙い撃とうとしたその隙は、コジョンドが着地寸前に見せた揺らぎによってあ
っさり消え去り、相殺される。完全に掴んでいた筈の相手の波導が予想外の乱れを見せた時、彼女は既に攻撃の
態勢に入っており、踏み込んだ脚は全体重を乗せて、次の一撃に向けた最終アプローチを終えてしまっていた。
「しまった」と臍を噛むのも束の間、次の瞬間ルカリオのリンは鞭の様なもので目元を強打され、出鼻を潰され
た瓦割りは空を切って、蒼い痩身はバランスを失い、大きくたたらを踏む。曝け出された無防備な脇下にはっけ
いを打ち込まれた事により、早朝の一本勝負は呆気ない幕切れを迎えた。
「フェイント、か。引っ掛かった」
 息を詰まらせつつ立ち上がったルカリオが渋い表情で零すと、コジョンドのスイは稽古相手に手を差し伸べ、
苦笑いしつつ応じて見せる。
「見切りにはそうするしかないだろ? お互い様さ」



間に合わなかった企画作品その2。嘗て書いた作品の系列につながる御話。所謂過去編。それ以外については同
前(


  [No.3435] タイトル未定(ピッピ人形の話) 投稿者:クーウィ   投稿日:2014/10/04(Sat) 15:59:01   128clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日


 夢すら覚えぬ眠りの底から、不意に現実に引き戻された。塗り込めた様な闇の中、誰かの視線を感じる。……
あいつだ。またあいつだ。
 現在の時刻は午前三時。黎明にはまだ遠いこの時刻、私の周囲に存在しているのは、枕元にある目覚まし時計
と、並んで置かれた携帯電話の充電ランプに照らし出された、狭くオレンジがかった空間だけ。あらゆるものに
彫りが刻まれ、何処か超然として見えるその世界には、何も怪しい物は無い。
 覚醒し終えた私の視線は、自然一点に向けて凝固する。闇に馴れた私の目にも、捉えられないその先に。

 あいつが来たからこうなった。あいつが来てから、全てが狂い始めたのだ。


 ほんの一か月ほど前、私はこの地に越してきた。
 家財を売り、職を手放し。漸く買い取ったアパートの権利も、職場の同僚達の引き留めも振り払い、まさに今
までの人生をリセットする思いでこの人里離れた一軒家に落ち着いたのには、無論訳がある。
 転居を決めるその前の月、私は妻を失った。大学時代に意気投合し、互いに見染め合って伴侶となったその相
手を亡くしたのは、私の人生に於ける最悪の痛恨事となった。
 死因は、肺気腫から来る急性肺炎。数年前から体調を崩してはいたものの、まさかここまで一気に病状が悪化
するとは思わなかった。葬儀の場で聞いたところ、肺患は妻の家系の宿痾であって、彼女の祖父も曾祖父も、同
じ病状で亡くなったらしい。
 更に追い打ちをかけるが如く、失意に暮れる暇すら無しに、私は気付いた。慣れない事務作業に疲れ果て、く
たくたになって帰宅した夜。食事を取る気にすらなれず、そのまま寝所へと直行した時、ただ一人残された家族
である娘の背中が、小刻みに揺れていたのである。連続して聞こえて来る小さな咳は、ここ数日の内に起こった
出来事を、弥が上にも連想させるものであった。
 居ても立ってもいられぬまま、夜が明けて直ぐ訪れた小児科に於いて医者が下した診断は、『軽い小児喘息』
。「それほど心配する事もないでしょう」と言うのが担当医師の見解だったが、その時の私にはにこやかに語る
老医師の言葉も、その傍らに付き添っているピンク色のポケモンも、余りにお気楽に過ぎていた。タブンネと呼
ばれているそのポケモンが娘を連れて去った後、半ば食い下がる様にして転地療養と言う選択肢を引き出した私
は、妻の弔いの後始末が終わり次第、この街を離れようと心に決めた。



間に合わなかった企画作品その3。取りあえずそろそろ殴られそうなので以下略。


  [No.3436] 煙山甲冑記 投稿者:クーウィ   投稿日:2014/10/04(Sat) 16:04:46   169clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日


 朝靄の消えた山裾に、白い霞が棚引いていた。森際に沿って引き退いた霧の幕とは異なり、朝の光に揺蕩うそ
れは時を経ても衰えず、緩やかに形を崩しながら天を差し、蒼い空へと消えていく。山野を霞める靄に触れると
、つんと硫黄の臭いが鼻を突く。湯煙である。人里と言わず丘陵と言わず至る所から立ち昇るそれは府縁(フエ
ン 現在のフエンタウン近郊、エントツ山の麓に当たる)の里の象徴であり、天下に名高き温泉郷の証であった
。古来『火の国』と称されてきたこの地は、巨大な活火山である煙突山(現在のエントツ山)を盟主とする豊縁
(ホウエン)指折りの火山地帯であり、随所に湧き出る源泉は古代より名湯として称揚され、高い治癒効果で知
られて来た。万病に効くと言われるその効能を慕い、豊縁は愚か遠く城都(ジョウト)や関東(カントー)から
も湯治客が来訪し、加持祈祷の験なく薬師にも見放された重病人が藁にも縋る思いでよろめき入っては、里の掛
け小屋に身を休める。既に年号は元亀から天正へと移り変わっていたものの、長引く乱世は未だ終息の気配を見
せず、長躯の旅路は文字通り生命を賭したものであったが、漸く辿り着いた彼らを里人達は厚く遇し、もし手当
ての甲斐無く力尽きても、故郷ですら望めぬような、丁重な弔いを受ける事が出来た。
 また聳立(しょうりつ)する山脈は豊富な地下水をも宿し、鉱泉とならず平野に溢れた湧水は豊かな農業用水
として、府縁南部から紀土(キセツチ 現在のキンセツシティ)に至る肥沃な耕地を支えている。山脈を隔てた
土師継(ハジツゲ 現在のハジツゲタウン)が広大な砂漠を臨み、北方の芝岳(シダケ 現在のシダケタウン)
が農耕には不向きな高原地帯であるのに引き比べ、此処府縁周辺は中部豊縁きっての穀倉地帯であり、更に豊縁
北部と南部を結ぶ険路に面した、軍事上の要衝でもあった。
 当時豊縁の戦乱の中心となっていたのは、『赤』・『青』と呼ばれる二つの大勢力だった。彼らは各地に蟠居
する諸勢力の連合体であると同時に、赤は地神獣(グラードン)、青は海神獣(カイオーガ)を信奉する、強大
な宗教勢力でもあった。各地の有力大名は皆それぞれどちらかの陣営に与して争い、同時にどちらにも属さない
小勢力を攻め滅ぼしては揮下に加えて、信仰を強制する事を繰り返していた。赤は土師継や燈火(現在のトウカ
シティ)と言った豊縁北部、青は水面(現在のミナモシティ)や渡久禰(トクサネ 現在のトクサネシティ)と
言った南部地域を中心に勢力を拡大していたが、北部の勢力が南部を窺うにも、南部から北部に攻め入るにも、
煙突山は通行困難な南北の関所として立ちはだかっており、陸路の往来は西方の府縁か東方の土師継を経由する
他はない。海路は海上交易を勢力基盤とする青の勢力、東口は土師継に強勢を誇る赤の勢力が押さえている為、
両勢力からの影響力行使を避けたいと願う者は必然的にこの府縁を経由して、それぞれの目的地に向け旅立つ事
となる。
 また両勢力の緩衝地帯となっているこの地には、彼らによって追われた各地の諸勢力から、多くの落人が流れ
込んで来ていた。神代の頃より人と獣達の縁(えにし)が深く、各地にその土地ならではの産土神(うぶすなが
み)が祀られているこの豊縁の地に於いて、信仰の強要は武力による侵略に勝るとも劣らない抑圧を強いた。府
縁は当時の豊縁に於いて、信仰の自由が自他共に認められている、唯一の独立勢力であった。
 故国を焼かれ、蒼紅一色に染まる郷里を捨てて身一つで逃れ出た人々は、追手をかわすべく千古不斧の原生林
を彷徨った後、府縁の里へ辿り着いて初めて安堵する事が出来たのである。遥か古代から聖地と目され、豊縁に
於ける諸国鎮護の中心地と定められているこの地には、如何な強勢を誇る赤・青両勢力と言えども、兵火を及ぼ
す事はなかった。府縁の地を任せられている巫縁(ふえん)大社の祭神は地神獣と海神獣そのものであり、御神
体ともなっている藍色ノ玉・紅色ノ玉の両宝物は、彼ら自身の信仰の根源とすら言えるものだったからだ。
 そんな府縁の地を治めているのは、巫縁大社の大宮司を務める豊縁きっての名族、巫縁家である。代々神職と
して同地に根付く一族は民衆との繋がりも深く、諸国から流れ込んだ落人達の存在もあって、小なりとも侮りが
たい勢力として知られていた。その来歴は極めて古く、最初に同家の存在が確認出来るのは、実に神代にまで遡
る。
 嘗てこの豊縁の地に大災厄が巻き起こり、暴走した地神獣と海神獣の争いによって滅びの危機に瀕した時、緑
龍神(レックウザ)と共に両神獣を鎮めるべく力を尽したのが、彼ら巫縁の一族だったと言われている。争いが
終わり、荒廃した故郷の惨状を目の当たりにした人々は、二度とこのような事態を招く事がないよう二神獣を鎮
める際に用いた藍色ノ玉と紅色ノ玉を豊縁の中心に位置する府縁の地に運び、その地に社を建てて手厚く祀った
。巫縁の一族はその宮司となり、豊縁一円の祭祀を司る神官長(かんおさ)として、各地の復興と安寧に尽力し
たと言われている。また、この時共に手を携えた人間と獣との間には強い絆が結ばれ、獣達の多くはその土地な
らではの産土神として、長い信仰と共生の歴史を紡いでいく事となった。
 やがて時は過ぎ、中央政権の力がこの地に及ぶと、統治者も兼ねて巫縁ノ君(ふえんのきみ)と呼ばれるよう
になっていた同家は戦わずしてこれに下り、朝廷から国造(くにのみやつこ)に任じられる。外来の勢力に反抗
する者も多かったが、元来が祭司である巫縁家は戦乱によって己が責務を蔑にする事を潔しとせず、他の豊縁各
地の実力者とは立場を異にし、寧ろ彼らを諭して中央政権と和解させる仲介者としての役割を担った。朝廷側も
その働きと影響力を認め、時の帝と巫縁ノ君との間に婚姻を結んで、同地の采配を任せる方針を取るに至る。此
処に豪族としての巫縁家の立場が確立され、その勢威は祭祀のみならず統治の面でも、豊縁全土に及ぶに至った
。主上との血縁を得た一族の扱いは重く、歴代当主はしばしば都の高家にも劣らぬ位階を授かって、豊縁に於け
る同家の存在を広く内外に知らしめる。後に政治体制が親政から代理統治へ、中央権力が公卿から武家へと移り
変わる間も、巫縁家はその時々で立場を異にしつつ、徐々に影響力を狭めながらも、永く豊縁に不可侵の存在と
してあり続けた。
 だが、時代は変わった。既に大宮司として七十余代を重ねた当世、下剋上の機運は世に満ちて、戦乱の波はあ
らゆるものを呑み尽くし、情け容赦無く淘汰していく。嘗ては豊縁一円に存在した社領も今や本拠を残すのみと
なり、古い権威に裏付けられた平穏は、新たな台頭者に対し何の効力も期待出来ない、砂上の楼閣に過ぎなかっ
た。歴代当主達は様々な思考を凝らし、この地の平和と独立を何とか守り抜いて来ていたが、急速に力を拡大し
て来た二つの大勢力にとり、外部の干渉を跳ねのけ続ける中立地帯の存在は、最早豊縁統一に向けた神聖な行程
を妨げる、柵(しがらみ)以外の何者でもなかった。

 朝餉のふるまいが終わり、逗留中の客人達がその日の予定を前に身を休めている頃。一羽の三つ子鳥が騎乗者
を乗せ、領主の屋形へと駆け奔っていた。何時になく慌ただしい伝騎の到着に、湯殿への道を辿る老若は不安げ
な表情を浮かべ、砂塵の向こうに駆け去っていく主従を見やる。一刻も早く注進せんと眦を決した壮年武者は、
そのまま屋形に続く急な坂道を駆け上り、空堀に掛かる橋を渡って、物見の者が予め開かせ始めた門扉が傾ぐの
ももどかしく、鞍の上から身を躍らせて、邸内目掛け走り込んだ。
 天正12年(1584)6月、梅雨の晴れ間を縫って飛び込んで来た使者が齎したのは、青陣営の雄にして水面を治
める強豪・藍津義房(あいづよしふさ)からの要望書であった。



今メインに書いてる奴。赤い月の外伝(?)と言えば良いのだろうか……。赤い月と同時進行なので進みは良く
ないけどそれなりに意欲のある試みです。今までで最も堅苦しい文章になる予定(爆)
取りあえずどれにしろちょっとでも進むよう頑張ります……。


  [No.3438] 絵画から零れ落ちて(仮題) 投稿者:MAX   投稿日:2014/10/04(Sat) 23:59:51   198clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日】 【一粒三百米

 ある街に住む、名の知れたポケモン絵描きが一人。
 絵描きは特に評価の高い絵を描くわけではないが、とにかく特徴のある絵を描くことから評判の人物だった。
 かの人の絵画にはいつも悲劇・悲惨な物語があり、さらに物語に因んだ品々が用意される。それが「どんな何か」という限定はできず、とにかく絵画にこめられた物語に因んでさえいれば、彫刻だろうが宝石だろうが絵描きは用意した。
 しかしこれだけでは名が知れる特徴とはならない。実際、描く絵は不気味なものばかりで評価も売れ行きもあまりよろしくない。
 そんな不気味な絵画が、見る人によっては心を吸い寄せられるような気分になるらしい。絵の中の悲劇から助けを求めるような声が聞こえてきた、と語った人もいる。
 オカルトを感じさせる噂に怖いもの見たさの人々が集まり、かくして絵描きは名前ばかりが売れ、「技術よりアイデアで売れるタイプ」という評価が下されていた。
 さりとて有名、評判は事実。時に旅の人がアトリエを訪れることもしばしばあった。

 今日にもまた、旅のポケモントレーナーがアトリエに立ち寄る。

「旅の方ですか? ようこそ御出でなさいました。
 散らかった部屋ですみませんが、見ていってくださいな。ついでに買ってくださると……あ、いえ」

* * *

・絵画「眼を失くしたネイティオ」
 目隠しを巻いたネイティオが晴れた空に翼を広げている。
 らしくない仕草だが、お気楽に飛び回っているように見える。

 見えてしまう未来への恐怖にネイティオは身を竦ませる。何処へ目を向けても見えるその恐怖に、やがてネイティオは心を病む。
「眼さえ失くせば、見えるものなど何も無いだろうに」
 ネイティオは眼を失くし、未来を見ることはなくなった。しかし未来はなくならず、ネイティオに見える未来はない。

・石「ネイティオの瞳」
 宝石らしいが、真っ黒で光沢が無い。

「ネイティオというポケモンはほとんど身動きしないそうで。一説には、恐ろしい未来に怯えて身を竦ませているのではないか、とか。
 この絵のネイティオは眼を失くした事で恐ろしい未来が見えなくなり、怯えることがなくなったのです。
 見えなくなっただけで未来がなくなったわけではないんですけどね。もっとも、このネイティオに未来があるか分かりませんが」



・絵画「リザードンの形をした岩」
 溶岩の傍ら、リザードンのような形の岩がある。
 翼を立てた体勢は、まるで羽ばたく直前のように見える。

 不死身を求めて考えたリザードンは、尻尾ごと自らを火山の火口へ投じた。
「尻尾の炎が永遠に燃え続けていれば」
 尻尾の炎は星の炎とひとつになったが、溶岩から離れた途端、その身体は冷え固まった。

・ランプ「岩をも溶かす炎」
 ポケモンの火を宿したランプらしいが、見た目小さな灯りでしかない。
 火を囲むガラスを退ければ忽ち火も消えるだろう。



・絵画「首無しチルタリス」
 大勢の人が倒れている中、頭の無いチルタリスが首を伸ばして佇む。
 生きているとは思えないが、ドラゴンポケモンらしい風格を感じられる。

 さる研究機関がドラゴンポケモンの血液から不思議な力を見出した。
 特にチルタリスは手近なドラゴン。容易く捕らえられ、血を得るためにその首を切り落とされる。
「こいつは鳥に過ぎないが、ドラゴンでもある」
 血液と共に首の気管から流れ出る笛の音。聞いた者を眠らせる喉歌は、竜の血を求めた者たちを死ぬまで眠らせた。

・笛「チルタリスの喉笛」
 チルタリスの頭の形をした笛。高い音色は耳につくが不思議と眠気を誘う。
 ドラゴンタイプであっても、チルタリスは鳥ポケモンである。


* * *
まだネタのメモ書きとしか言えない様な形ですが、本当に、書き出しの部分は今日に書きました。
これからどんな形になるのか、ちょっと自分でもわからないところです。
とりあえず以前書いたヒトツキたちのフレーバーテキスト風文章のように絵、道具、エピソードと並べていきます。


  [No.3439] 【お知らせ】次回以降の一粒万倍日は14日17日26日29日です 投稿者:ななし   投稿日:2014/10/05(Sun) 22:15:17   122clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日

多数のご参加ありがとうございましたー!

次回以降の一粒万倍日は14(火)17(金)26(日)29(水)ですよ!
今月ありすぎい!
あんまりありすぎると、有り難みもへったくれもないですねー。
しかもあいだが三日しかあいてなかったりってどういうことなの…。

え、遠慮せずに参加してくれていいんだからね!
私が泣きながら感想書くだけです(

ちなみにこれから前々回、前回分書きます。
もう少しお待ちください…。


  [No.3444] 少女の旅・2 投稿者:WK   投稿日:2014/10/14(Tue) 20:41:19   58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 心よ 原始に戻れ

 旅に出てから大分経ったけど、ずっと家に籠っていたあたしが、どうして旅をしようと思い立ったか。そんな理由なんて、両親は知らないだろう。
 別に、世間体とかそういう物じゃない。十歳で出るはずだったあたしが、六年も燻っていた理由なんて、マサラの人間は皆知ってる。だからこそ、あたしが出て行くと宣言した時、皆泣いて喜んだ。
 頑張っておいで、疲れたら無理しないで帰っておいで――。
 当時の両親の気持ちを感じ取っていたからこそ、この言葉が出たんだろう。別に怒って無い。むしろ、今まで行こうと思えばいつでも行けたはずだ。でも、あたしはそれをしなかった。
 その燻っていた理由っていうのが、話すとかなり長くなる。


 あたしの兄貴――ダイキは、あたしよりも四つ年上。だから今は、もう二十歳になっている。
 あたしが六つの時、ダイキはオーキド博士からゼニガメを貰って旅立って行った。そのゼニガメはお人よしな性格で、困っている人やポケモンを見ると放っておけない質だった。それが人間(ポケモン?)ができてるっていうんで、皆に感心されていた。
 ポケギアを持って、荷物をしょって、ダイキはマサラを出て行った。その背中を、あたしは今でも覚えている。
 喜びと不安、楽しみと怯え、正反対の感情同士が仲良く共存し合っているように見えた。それから二週間経って、ニビジムのバッジを手に入れたことを報告して来た
 皆、あまりの早さに驚いた。初心者トレーナーとしては、かなり良いスタートを切った。
 そこからも、ダイキの快進撃は続く。
 それから一週間でハナダジムをクリアし、クチバ、タマムシ、セキチク、ヤマブキ、そしてトキワ。
 通算しても、一年掛かるか掛からないかだったと思う。度々送って来る写真は、送る度にメンバーが増えていた。
 手紙には、
『ゼニガメがカメールに進化した!』
とか、
『この前ピッピの群れが踊ってる所を見た。ハナダのポケセンで話したら、滅多に見られないんだってさ。写真撮っておけば良かった』
とか、
『タマムシマンションの一室が崩壊してさ。中から大量のイーブイが飛び出して来たらしい。ブリーダーが勝手に増やしてたらしくて、里親募集してたから一匹貰って来た!』
そんな感じのメッセージが次から次へと送られてきていた。
 マサラしか知らないあたしにとっては、どれも本当に興味をそそられる物だった。当時既に七、八歳だったと思う。
 十歳にならないとバトルはできない。ペットとして飼っていても、戦わせることは無理だ。
 だから、早く自分も旅をしたかった。夜眠る時の夢は、決まってポケモントレーナーになって旅をしている夢だった。
 数々の試練を乗り越え、ポケモン達と共に成長し、ポケモンリーグを勝ち抜いてチャンピオンになる。どんな時もポケモンに優しく接して、負けた時も彼らのせいにしない。
 幼い頃の甘い精神が生み出した、それはまさに『夢』だった。
一年、二年が経ち、とうとうあと一週間でポケモンが貰えるという時――。

 
 最初にそれを見た時、茶色いボロ布が落ちているのだと思った。誰かがこの道を通った際、何らかの理由で落としてしまい、ずっと風雨に晒されていて、今自分がそれを見つけたのだと。
 しかし、よく見ればそれはボロ布なんかじゃなかった。微かに呼吸について動く腹と、へたりと地面に力なく萎れた耳が見える。
 それがポケモン――それも、かなり衰弱しているポケモンだと気付くのに、そう時間は掛からなかった。
 マサラは隣町までかなり離れていて、田舎道と森と林が続く。ここはマサラの中でも特に茂った場所で、町の人も滅多に近付かない獣道だった。
 でも、子供達は時々内緒でここに遊びに来ていた。何せ、樹齢何年の木や沢山の蔦と蔓、そして岩が溢れた場所だ。行くな、と言われても好奇心旺盛な子供達は行きたくなる。
 こんな『秘密基地』を作るのに最適な場所なんて、滅多に見つからない。あたしや友達は、時々ここで遊んでいた。
 その日は皆家でトレーナーについての勉強をしていて、あたしだけ暇だった。だから、一人でその秘密基地への最寄り道を歩いていたのだ。そして、このボロ布のようなポケモンと出会った。
 最初は驚いたものの、まだ生きてると分かってあたしはすぐに大人達の元へ連れて行こうとした。しかし、その子の右手を見た途端、ひゅっと喉が詰まった。
 その子の右手は、何物かによって千切られていた。
 左手、後ろ脚は両方とも汚れているものの健在だった。しかし、右手だけが半分下が見つからない。血は未だに止まらず、点々と地面に染みを作っていた。
 慌てたあたしは、咄嗟に自分が着ていたパーカーを脱いで、その子を包んだ。大のお気に入りだったが、血で汚れるなんてことは全然考えなかった。
 止血できるような状況じゃなかったため、とにかく急いでマサラに戻ろうとした。
 だけど。
 抱き上げた途端、茂みの奥から何かが来るような音がした。小枝や小さな木をボキボキと踏み潰しながら、道を作ってこちらにやって来る。
 その足音は、だんだんと大きくなってきていた。続いてメリメリ、バキッという音があたしの頭よりも高い位置から聞こえて来た。
 それが、アームのような太く固い腕で視界を妨げる枝を薙ぎ払っていた音と気付いたのは、もう何年も経ってからだった。
 とにかくその時、あたしはじっとりと湿った手の中の物体を抱えながら、逃げることもせず、ひたすら音が近付いて来る方向を見つめていた。頭の中は真っ白で、何も考えていなかったと思う。
――やがて、それはあたしの前に現れた。当時身長百四十ギリギリのあたしが、一瞬で吹っ飛ばされそうなくらい太い腕と、それに相応しい巨大な固い、棘付の体を引っ提げて。
記憶の片隅で、数日前に読んだ『危険なポケモン』の項目にあった名前が口から出た。

「……ニド、キング……」

 今思い返して書いてみると、野生ではなかったのかもしれない。
 左目に罰型の傷があり、すでに年季が入ったような物だった。普通の個体は図鑑で見ると1、4mとある。しかしあたしが見たそいつはどう見ても百八十はあった。
 そして、あたしを見た途端逃げることなく、いきなり襲い掛かって来たことから、元はトレーナーのポケモンで、何らかの理由で主人と別れ、以来人間を憎むようになって来たのではないか、と考えられる。
咄嗟に後ろに飛びのいたことで、ニドキングが振り下ろした腕はあたしの立っていた場所の地面を抉り取った。深さは多分一メートルくらい。
 逃したと理解した相手は、今度はあの太い尾を思い切り振り回して来た。あたしの目前スレスレで、鞭のように細い先端がすごい勢いで横切って行った。
 目標を失った尾は、そのまま本体の後ろに生えていた木々を勢いのままボキボキとへし折って行った。
 そしてそのまま、一本の太い木の幹に突っ込んで抜けなくなった。
 向こうは何とかして引き抜こうとするが、如何せん尻尾が太くてぎっちり詰まってしまっている。イラつきと痛みで、ものすごい大きな声を上げた。
 その声で我に返ったあたしは、慌ててマサラ方面に向かって走り出した。途中で胃液が込み上げて来て吐いたけど、それでも立ち止まることなく走り続けた。
 足がもつれて、坂道をそのまま転げ落ちた。それでも腕の中のポケモンは絶対に放さなかった。立ち上がった時、ふと後ろを見る余裕が出来た。
 振り返った時、あたしは本当に、頭の中が真っ白になった。

 大木を引き抜いたニドキングが、あたしのすぐ側まで迫っていたからだ。

 尾が抜けないなら、挟まった大木ごと抜いてしまえばいい、と考えたのだろう。そして、彼にはそれが出来るだけの力が備わっていた。
 その時点で、幼かったあたしは『悟った』。
 自分はここで死ぬ、と。旅立ちの日を待たずして、死ぬんだと。
 その時考えていたことといえば、両親とマサラの皆と、先に旅立った兄貴のことだった。トキワジムを攻略し、ポケモンリーグへの参加権を手に入れた兄貴が一度帰って来たのは、数日前のことだった。
 手持ちは全部最終進化形になっていて、あの小さくてあたしを見上げていたゼニガメは、すっかり大きくなってあたしを抱き上げられるくらい、力持ちになっていた。
 ゴローニャは知り合った友人と協力して進化させ、ニドクインは紅一点。パーティを纏める肝っ玉母ちゃんだそうだ。里親募集から手に入れたイーブイは、意外にもエーフィに進化していて、ダイキがどれだけポケモンを大事にしているかが良く分かった。
 お袋の手料理が一番美味しいとか、ここが俺の帰って来る場所だと言って皆を喜ばせた。あたしも、ダイキが本当に旅を楽しんでいるのが分かって、嬉しかった。
 食事が終わって、デザートが出された頃、ふと招かれたお客の一人が言った。

「ダイキがこれだけ優秀なんだ、キナリもきっと素晴らしいトレーナーになるだろうな」

 周りはそうだそうだ、と笑っていた。あたしの旅立ちまで、あと一週間という所だった。あたしも笑ったけど、ダイキは何だか複雑そうな顔で発言者を見ていた。
 皆が帰った後、ダイキはあたしを部屋に呼んで、こう言った。
「あのおっさんはああ言った。でも、俺はそうは思わない」
「どうして? あたし、きっと素敵なトレーナーになってみせるよ」
「違うんだ」
 ダイキはどこか、苦しそうだった。何か伝えたいのに、上手く言葉にできない時の顔っていうのは、ああいう顔をいうんだろう。
「あの人が言った“素晴らしい”っていう概念は、おそらく俺というトレーナーにしか当てはまらない。お前はあの人の中の“素晴らしい”トレーナーにはなれないかもしれないんだ」
「……」
「お前はお前の道を行け」

 当然、意味が分からなかった。そして自分のトレーナー像を否定されたような気がして、ダイキが少しだけ嫌いになった。
 その翌日、ダイキはトキワシティの近くにあるポケモンリーグへと向かった。カント―の人間だけでなく、腕試しに来た他地方のトレーナーも沢山来ているため、勝ち抜くのは至難の業だ。
 テレビで生中継されるのは、本戦からになる。それまではEブロックまでに分かれて、トーナメント方式で戦う。
 ダイキはあれよあれよという間に勝ち抜いて、本戦出場への資格を得た。そして今日、本戦一回戦が中継されるというので、皆でテレビの前で応援しようって……。

 言ってたんだけど。

 あたしはその時、どんな顔で近付いてくるニドキングを見ていたのか。自分の背丈よりも高い、そして思い大木をこちらに向かって投げようとしている相手を、どんな思いで見つめていたのか。
 そして、投げられて真っ直ぐこちらに向かってくる大木を、どんな目で見ていたのか。
 あたしはその時、確かに死の淵を見た気がする。もし、両親とマサラの人達があたしを見つけてくれたとしても、あたしだと分かってくれるだろうか。
 人でなくなったあたしを見て、あたしだと認めてくれるだろうか。
 これはうちの子じゃない――そう言って認めてくれないかもしれない。
 
 視界の片隅で、ちらちらと星のような光が見えた。
 腕の中の塊が、熱さと重さを増した。
 
 ぼろ雑巾が、飛び出した。

 沢山の金色の星が、向こうに向かって流星のように飛んでいく。大きいのも小さいのも、沢山。
 星たちがナイフのように大木に突き刺さった。そのまま勢いを落とすことなく、ジェイソンが持っている糸鋸のように綺麗に大木を切り裂いた。
 そしてそのまま、星たちはニドキングを襲った。目に、腕に、腹に、頭に。そして尾に。
 痛みでのたうち回る彼の声は、それこそ全ての生き物が震え上がるような声だった。木々に止まっていたポッポやピジョン、オニスズメにオニドリル達が一斉に空に飛びあがったのを、確かに見た。
 夕暮れ時だった。太陽は丁度あたしの目の前、ニドキングの背後の山へと沈んで行った。
 ニドキングを襲った星たちが、逆光で捕食しているように見えた。ヒッチコックのシャワールーム。
 その星たちが、ぼろ雑巾――カーネルが力を振り絞って放った『とっておき』だと気付いたのは、しばらく後のことだ。

 あたしの記憶は、そこで終わっている。
 起きた時、視界は真っ白でそこが部屋だと気付くのに大分かかった。
 親父があたしを抱きしめ、お袋が泣いていた。すぐに白衣の集団が来て、脈拍と感覚と事情を話された。
 皆が見つけた時、あたしはずっとニドキングの方を見つめていたらしい。目の焦点も合わず、ただその方向を見据えるだけ。
 慌てて肩をゆすった途端、あたしはマリオネットの糸が切れたように倒れたという。そのまま病院に運ばれ、一か月ほど眠り続けていたらしい。
 ちなみにあのボロ雑巾――イーブイだと教えてもらった――は、辛うじてまだ生きていたため、ポケモンセンターから出張してもらったらしい。
 兄貴はあたしの話を聞いて、二回戦進出権を破棄してマサラに戻って来た。そこからしばらく、あたしは病院の中にいた。
 最後に思い出せるのは、あの黄昏時の捕食シーンだった。それが知らず知らずのうちにトラウマになっていたのか、あたしはしばらく、自分の口から食べ物を摂取することができなくなった。
 あれだけ楽しみにしていた旅が、急に遠い物に感じた。旅が楽しいだけでなく、辛いことや危険なこともあるということは、ダイキに言われて分かっていたはずだった。
 しかし、あまりにもそれは、インパクトが強すぎた。簡単に言うならば、初心者トレーナーがいきなりカント―最強と謳われるトキワジムに挑戦を強制され、自分のポケモンが目の前で倒されて行くのを成す術もなく見守っている――。
あたしが置かれたのは、そんな状況だったようだ。
あのニドキングは、やっぱりトレーナーの手持ちが野生化した物だった。使えないからと言って虐待され、逃がされたポケモンの成れの果てだと言われた。近年、トレーナー人口が増えるにつれ、こういう問題が増加しているという。
あたしは一日で、ポケモンの光から、闇へと突き落されたのだ。


  [No.3445] 鋼の翼 投稿者:きとら   投稿日:2014/10/14(Tue) 21:03:04   69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 夏の日差しがぎらつくミナモシティを幼児の手を引いて黙々と男は歩いた。子供は嬉しそうに飛び跳ねながら父親の顔をちらちら見上げて話しかける。
「それでね! まーとなって石がきれいでね!」
 興味のあるものを一方的に父親に話しているようだ。けれど父親の顔は子供の相手というよりも、どうしてこうなのだという顔だった。
 たった少し前の話だ。父親は必死で自分の子を探していた。少しでも目に映ったものに興味を持ってふらふらとどこかへ行く。親から離れてしまう恐怖とか戻れなくなる恐怖とかそんなの関係ない。目に映ったものが全てで、この時も気付いたらどこにもいなかった。事故や誘拐の不安を押さえながら子供の行きそうなところ全て探した。すると何事もなかったかのように砂浜で一人遊びをしているところを見つけたのだ。
 自分の子供なのだが、出かけるとなると毎回こうなのはため息が出る。言っても聞かないし、何が悪かったのか解らない顔をしている。別の場所を探していた母親と再会すると、父親の手を振り切って嬉しそうに駆け寄った。
「ママ!」
「ダイゴ! 一人で遠くに行っちゃだめでしょ!」
 大きな声で怒られ、すっと笑顔が消えた。なぜ怒られたのか解らない顔をしている。
「もうパパとママに会えなくなっちゃうかもしれないのよ ダイゴはそれでもいいの?」
 母親に怒られ、たちまち大声で泣き出す始末。母親はため息をついて、ダイゴの手をつないだ。もう五才になり重くなってきて抱き上げるのも一苦労。しがみついて来るダイゴを今度こそ迷子にさせないように頭をなでた。
「そろそろ時間だから早く行きましょう」
 普段は休みもなく仕事をしている父親が唯一休む夏の時期。家族に出来ることはこれくらいだからと言って、避暑のためにルネシティへ行く。何日もかけてトクサネシティやキナギタウンなどにも遊びに行くこともある。いつもカナズミシティの建物しか見ていないダイゴにとって、夏は楽しみな季節だった。

 船に乗れば、母親に怒られたことなどけろっと忘れて走り回っている。ここは船の中だから、どこに行っても戻れなくなることはないはずだ。
「ホエルコー!」
 遠くに見えるポケモンを指して後から追いかけて来る母親に話しかける。それを咎めることもなく、かわいいポケモンがいるねと返していた。ダイゴの目はホエルコに釘付けで、他のものは視界にないようだった。隣にいる母親すらすでに意識の外のよう。船の手すりを乗り越えようとダイゴは手すりに足をかけた。ホエルコが目の前に来たのだ。さわりたくてさわりたくて仕方ない。
「危ないでしょ!」
 身の危険など子供にはわかりっこない。それは頭で解っていても、予想以上のことをダイゴはするので一緒にいるだけで疲れてしまう。手すりを乗り越えて海に落ちたら危険だということなんて解らない。どんな育児書を読んでも解らせる方法は書いてない。
 父親がソフトクリームを手に持って来た。ダイゴに渡すと、ホエルコに向けていた視線はすぐに逸れた。座って食べなさいと言われ、近くのベンチに行儀よく座る。これで良かったと思えば、ソフトクリームの分け前をもらおうとキャモメがダイゴのことを見ていた。そのことに気付いたダイゴは、取られないように抱え込むようにしてソフトクリームを口に含んだ。
 もうすぐ船が到着するアナウンスが入る。口のまわりをべたべたに汚し、母親に拭ってもらった。足をじたばたとさせて少しの間を待つ。ルネシティの大きな影が近づいて来る。どんなところに連れて行ってもらえるのか、楽しみで仕方なかった。


 ルネシティの港から街に行くには山を越えなければならない。不思議な街なのだ。火山の火口に湖が出来たような地形に、その湖を囲むように出来た街。湖底では海と繋がっていて、街中でも海のポケモンを釣り上げることが出来る。湖の美しさは観光地でも有名で、こんな時期は多くの観光客でいっぱいだ。人ごみにまぎれ、照りつける日差しにも負けず、ひたすら登った。父親がおんぶしてやろうかと言ったが、それに甘んじるのはダメだとダイゴは子供心ながらに思った。
 全身に汗をかき、暑さに負けそうになる。けれど次の瞬間にそんなものは吹き飛んでしまった。目の前に広がる青い湖、そして白い大地。そこに広がるルネシティの街並がご褒美のように広がる。疲れを忘れて、下り坂を走り出した。しかし数歩のところでバランスを崩して転ぶ。驚いたのと痛いので泣き出し、結局父親に背負われた。

 ホテルで擦り傷を手当してもらう。大人しくなるかと思えば、そうでもなく珍しいものがあちこち目に入って、ダイゴは忙しかった。噴水やシャンデリアなど、目を引くものはたくさんある。部屋で大人しく、というわけには行かず、母親の手を引っ張って外へ出かけた。ホテルの中だけでもダイゴにとって大冒険だ。
 ロビーに掲示してあるポスターをダイゴは指した。ルネの祭りの宣伝ポスターのようだが、開催時期はまだのようだ。母親に説明されて、行きたかったねと言った。何よりも、そのポスターに映っている洞窟のような風景が心に残ったからだ。子供の心ながら不思議なものに感じられたし、探検が大好きなのだ。探究心がその写真に残っていた。


 透き通ったルネの湖は、観光客やポケモンと遊ぶ人も押し寄せる。そんな一画、波打ち際でダイゴは遊んでいた。カナズミシティの海と違って、砂はさらさらと崩れてしまう。水を含ませても形を作ることは難しい。目の前にはダイゴが作ろうとして断念した砂の山があった。
「なんで出来ないんだろうね」
「ルネシティは、海の中にある火山が噴火して出来たから、砂が海の底みたいなのよ」
「海の中にもエントツ山みたいな火山があるの? なんで?」
「どうしてだろうねえ?」
 ばしゃばしゃと押し寄せる波を触る。納得が行かないといった様子。
「ママ、海なの?」
「なめてみてごらん、しょっぱいから」
 ダイゴは手をなめた。塩味がした。湖じゃなくて海だ、ルネに住む人たちは嘘をついていると思った。
「ねえねえあっちにも行ってみようよ」
「パパが解らなくなっちゃうから、パパに言ってからね」
「うん!」
 しっかりとダイゴは母親に手を握られていた。作りかけていた砂の山はその後に来たマッスグマの突進を受けて跡形もなくなってしまった。

 あっちあっちと母親の手を引っぱる。そんな遠くはダメだよという言葉を理解できたらどんなに楽だろうか。目に入ってしまったものに夢中になり、親の言葉さえ聞こえていない。子供はそういうものだろうけれど、ダイゴの年くらいになればきちんと分別できる子もいる。むしろ言えば解る子の方が多い。その事でいろんなことを言われたりする。その度に悪いことを考えてしまいたくもなる。
 突然ダイゴが手を振り払って走っていった。つないでたとはいえ、いきなり振り払われて襟首を掴むことも出来ない。子供の全速力で行ってしまったのだ。舗装もされてない、高低のある山のような道を追いかける。
 全速力とはいえ、五才の子供だ。追いついたと思ったら、ダイゴは知らない子供にその全身をかけて体当たりをしていた。
「いじめるやつは悪いやつだ!」
 とても興奮していて、自分より大きな子供にも容赦なく叩く。叩き返されても叩き返していた。
「やめなさいダイゴ!」
「ママ聞こえないの!? こいつらこの子いじめてるんだよ!?」
 普段からいろんなものが目につくのか、母親より見つけるのが早い。この子、と指した子は、うずくまっていた。

 その子たちはルネの子たちだった。というのは後から病院に来た保護者の一人に聞いて解った。いじめの原因は、何が気に食わないのか、見た限りでは解らなかった。理由を聞き出せずにいると、同世代くらいの男性が喋り出した。
「あの子は特別だからです」
 ダイゴ自身も額に傷を作って、大きなガーゼが貼られている。かすり傷で大したことはない。それよりもずっと助けた子について、声をかけていた。
「ルネには決まりがありまして、子供は皆ポケモントレーナーになるための訓練をします。その中であの子は特別な、ポケモンと通じ合う能力とでも言いましょうか。そんなものを持っているからでしょうね」
 生活が違い過ぎて一つ一つが想像もつかなかった。必ずポケモントレーナーにならなければいけないなんて、将来を決められてしまって、そこから外れることができないなど。無邪気に遊んでいるダイゴを見て、将来の不安が一気によぎる。
「そうなのですか……」
「しかし私もそんな風習はなくした方がいいと思うのです。ですから私が教えるのは彼らが最後……ああ、申し遅れました、私はルネのジムリーダーをやっていますアダンと申します」
 丁寧に頭を下げる男性はポケモントレーナーに見えないほど礼儀正しかった。ポケモントレーナーと言えば、常にポケモンと一緒で泥まみれで街中を騒がすというマイナスイメージしかなかった。こんなに礼儀を尽くすトレーナーは見た事がない。
「貴方の息子さんの勇敢さは叱らないであげてください。弱いものをいじめて許せない正義感を持って行動できるのは素晴らしいことですよ」
 怪我させたことは問わないと言われているようだ。アダンはダイゴに声をかけて、君はよくやったと言った。嬉しそうなダイゴであるが、暴力はいけない。この先、どんな行動が正しかったとしても全ての解決の手段に暴力を用いるような人間になってほしくないと続けた。
「それでは、我々は失礼します。差し支えなければ御泊まりになっているホテルを教えてください。後で子供たちに言っておきますので」
 アダンは帰りますよと声をかける。体のあちこちにガーゼを貼った子供たちが仕方なさそうにアダンの後をついていく。
「あ、じゃあねダイゴくん」
「うん、またねミクリくん」
 かなり親しくなったようでダイゴは手を振っていた。
「ママ、あの子ミクリくんって言うんだって。ししょうのところでポケモントレーナーになるんだって! 初めてポケモンもらったら見せてくれるって!」
 嬉しそうに仲良くなった子のことを話した。旅先でこんなに仲良くなっても仕方ないよって言っても解る年齢ではない。よかったね、楽しかったねと当たり障りのなく返した。
「ママ、僕もポケモントレーナーになりたい!」
「えっ?」
「ミクリくんとどっちが強いか勝負するの! それで珍しいポケモンを交換するんだ! 約束したんだよ!」
「ポケモントレーナーは何日も外で寝たり食べられなかったりするのよ? ダイゴはそれでもいいの?」
「大丈夫だよ!」
 何の根拠もない答え。ダイゴはポケモントレーナーがどういう職業なのか解っていない。仲良くなった子とポケモンで遊べるくらいの子供の認識だ。そんなに心配することもない。旅先から帰れば、他に興味が移るだろう。今は楽しそうにポケモントレーナーになると言っている。でもそのうちまた違うことを言い出すはずだ。
「じゃあ、ポケモンのことたくさん知らないとね」
「うん!」
 母親の手をとってダイゴは怪我の痛みなど忘れたかのように歩いていた。


 落ち着きのなさも、ダイゴの成長と共に減っていった。ただ、興味のあるものに集中してしまうのは父親譲りのようだ。
 仕事が忙しいと、父親と顔を合わせる機会が減っていた。それでもダイゴは寂しいとか不安だとか思ったことはなく、母親に甘えながら育っていた。そしてたまに帰ってくる父を見ては、いつか同じ仕事をするんだと思っていた。最近は父親の簡単な仕事を手伝うこともあった。お小遣い目当てよりかは、物を届けた時に見つける珍しい石を集めることに熱中していた。
 そういった毎日だった。今日もダイゴは言われた通りに物を届けて、帰る途中だった。目につく石を見て、前に持っていた石なのか、珍しいものなのかを判断し、珍しいものは拾って帰る。
 今日の届け物は人里離れた山の上。もちろん、石に困ることはなく、ダイゴは山道を降りて行く。道を逸れても恐れることなく進む。道を外れたとしても、そんなに深い道ではない。ダイゴは気にすることもなかった。
 茂みの向こうに白っぽい影を見つけた。まだ見た事のない石ではないだろうか。ダイゴは影に近づいた。
 近づくにつれ、何かおかしいことに気づく。もこもこの毛玉がそこにある。石ではない。見た事もない生き物だ。ダイゴはそっと手を伸ばすと、いきなり毛玉が威嚇してきた。くちばしと羽の生えてない翼で、ダイゴを遠ざけようとしているようだ。
「わぁ……なんだろう、何の雛だろう……」
 威嚇する毛玉をじっと見た。今、ダイゴの頭にはこの毛玉のことでいっぱいだ。見た事もないもこもこは、ダイゴを追い払おうと一生懸命、威嚇している。ところがダイゴがどこにも行かないので、かなり焦っているようだった。
 親はいないのかと木の上や茂みを見るが、それらしき影はない。茂みの奥は刺々しい葉をつける植物ばかりで、とても生き物が隠れてそうな場所に思えなかった。
「お母さんはどうしたの?」
 もしかしたら親が帰って来れなくなったのかもしれない。そうでなければ巣らしきものが見当たらないのに雛が一匹でいるわけがない。
 ダイゴはもこもこを抱き上げた。見た目に反して毛玉は固い。もしかしたら新しいポケモンかもしれないし、そうでないかもしれない。来た道を引き返し、ダイゴは山道を下った。

「エアームドの雛ですね。野生でこの状態を見るのは稀ですよ」
 もしかしたら、とポケモンセンターに連れていった。するとすぐに答えが返ってきたのだ。山道で会ったこと、親らしき鳥がいなかったことも話した。
「その近くにトゲトゲしている植物はありませんでしたか?」
「ありました」
「エアームドはトゲトゲしてる植物の中に巣を作るんですよ。傷つく度に堅くなって、大人になると金属みたいに堅くなります。でも成長する前に巣から出てくるのは、あまり聞かないですね」
「へぇ……なんだかすごい過酷な生き物ですね」
「今はまだポケモンか普通の鳥か、はっきりしてませんが、こちらで保護できますよ。どうしますか?」
 ポケモンではないかもしれない。けれどポケモンかもしれない。ポケモンと定義するにはいくつかの項目があって、エアームドは議論の真っ最中だという。モンスターボールにも入るし、ポケモンセンターでも預かれるならばポケモンではないのかとダイゴは聞いた。たくさんの観点から決まるのでまだわからない、とだけ返ってくる。
「もしかしたらポケモンかもしれないんですよね? 引き取ります」
「ではトレーナーカードをお願いします」
 ポケモントレーナー以外には引き渡せない。そのような決まりもあるようだった。今から作ることも出来ると言われ、二つ返事で作成した。名前を書き、証明写真を撮る。そうして出来上がった真新しいカードと新しいモンスターボールを持って、ダイゴは家に急ぐ。

 しかし何の相談もなくポケモンかもしれない生き物を飼うことを両親は許してくれるだろうか。けれどダイゴと同い年の友達はほとんどポケモンを持って、旅立って行った。ポケモンは欲しかったけれど、旅立つことに憧れはなかった。むしろ今の毎日が楽しい。
 どうやって説得しようかと歩く。もしかしたら返して来いと言われるかもしれない。そうしたらこの辺に住むポケモンに食べられてしまいそうだ。誰か育ててくれそうなトレーナーを探すのか。
 いや、両親に限ってそんなことはない。根拠のない自信と共に、ダイゴは家の玄関を開けた。
「おかえり」
 母がいつものように本を読んでいた。ダイゴは目を輝かせて報告する。
「お母さん、今日ポケモン拾ったんだよ!」
「えっ……何のポケモン?」
 一瞬だけ返事に詰まったようだったが、ダイゴは気にせずにモンスターボールを開けた。
「これ! エアームドの雛だって!」
「そう……ダイゴは旅に出るの?」
「お父さんのお手伝いしたいから、みんなみたいに旅に出ないよ!」
「……そう。がんばって育てるのよ」
「うん」
 ポケモンではないかもしれないけれど、ダイゴには初めてのポケモンだ。議論など関係なかった。


 少しずつではあるが、ダイゴに懐いてきてくれている。刺々しい植物を集めた巣の中で、エアームドは順調に育っている。翼が生えそろうまではこの方がいいと育て方の本に書いてあった。親代わりのダイゴは今日も巣の中のエアームドに餌をあげていた。
 父が帰ってくる音がした。ここ最近、遅くにしか帰ってこないので顔を合わせない日が多かった。会っても疲れている姿しか見ていなかったので、なんとなく嬉しい。
「ダイゴ! 今日はいい話があるぞぉ」
 やたら嬉しそうだ。仕事がうまくいったのか、それとも宝くじでも当たったのか。
「どうしたの?」
「別荘建てるんだ!」
「別荘……? お父さん何したの?」
「その別荘ではない! 憧れのトクサネに別荘が建つ! 今度の夏はそこに泊まるんだ」
 話が急すぎてダイゴもよくわからない。とにかく別荘が持てることに父親はとても嬉しそうだった。トクサネシティはそんなに縁がある土地ではなくて、地理もあんまり浮かばない。ただ、海が綺麗なところだったような、とぼんやり思い出していた。
「浅瀬の洞穴で潮干狩りした時あったでしょ? あそこよ」
 母も嬉しそうだった。仲のよい父から母への贈り物のようだ。
「ダイゴはまだ小さかったから覚えてないかもしれないが、すっごくいいところだ」
「ふーん」
 潮干狩りが出来るということは、おいしいアサリが食べれるかもしれない。嬉しそうな両親だが、ダイゴにはあまり興味がなかった。エアームドの世話はモンスターボールか巣ごと持って行くのか。そのことで頭がいっぱいだった。


 広い砂浜と透き通る青い海。突き抜けるような空と、夏の強い日差しが迎えてくれた。新しく建ったという別荘はここで暮らしても何不自由ない。ダイゴはさっそく木の香りがする部屋をぐるっと一周する。追いつこうとエアームドがばたつかせるが、飛べない翼では見失っただけだった。
「ひろーい!」
 追いつけないので、エアームドはエアコンのついた部屋でじっとしていた。それでもダイゴは荷物を放り出して走り回っていた。
「エアームドの方が大人しいね」
 荷物を運んでいる大人たちの邪魔にならないように、エアームドは時々位置を変えて、走り回るダイゴを見ていた。
「ねえねえ、海いってきていい?」
「深いところに行かないようにね」
「わかった。エアームドいこ!」
 モンスターボールに入れると、ダイゴは玄関を飛び出した。

 砂浜にはたくさんの人が集まっていた。バーベキューをしているグループや、ポケモンと戯れている同い年くらいの子供、バトルしているトレーナーなどが目に入る。
 エアームドは完全にポケモンと認定されたわけではない。だからあまり出さないようにしていた。人によっては完全にポケモンだと言われてなければ、勝負に出すとものすごく怒る。それを避けるために、ダイゴはモンスターボールに入ったエアームドに話しかけながら海辺を歩いていた。
「残念でしたね、もう一度やってみましょう」
 野生のポケモンに挑んでいるトレーナーがいた。何を捕まえようとしているのかな、とダイゴは近づく。
「でも……もう十匹は逃がしました……」
「誰でも最初はうまく行かないものです」
 半分泣きそうに、同い年くらいの子供は大人に訴えていた。使えなくなったモンスターボールが波に漂っていた。大人は黙ってそれらを回収していた。その間もまわりを見ることを忘れていなかった。探しているポケモンがいるようだ。
「あそこにいます、今度こそ捕まえましょう」
 指した方向には、ぷかぷかと浮かぶタマザラシ。ダイゴも思わず息を飲んだ。少年は空のモンスターボールを握りしめた。そして真剣な顔で思いっきり投げる。こん、とぶつかった。かなり元気なタマザラシのようで、モンスターボールは揺れに揺れた。
 押さえきれなくなったようで、モンスターボールは割れて中からタマザラシが出た。少年をにらみ、氷の固まりを投げつけて来た。
「大丈夫?」
 反射的にかけよる。タマザラシの攻撃は、少年の足下で割れただけだった。当たらなくてもよかったのだろうか、タマザラシは海の中にもぐって消えた。
「大丈夫、だよ……」
 突然声をかけたダイゴに驚いたようだ。ダイゴの顔をじっとみていた。無言の時間に、ダイゴも戸惑う。先ほどまで男の子だと思っていたが、実は女の子ではないのだろうか。いずれにしても次にかける言葉も見つからず、ダイゴは黙って相手の顔を見返した。
「……ダイゴ、君?」
 なぜ知らない相手の口から自分の名前が出るのか、ダイゴには理解が出来なかった。名乗っただろうか、それともトレーナーカードを落としたのだろうか。いずれにしても記憶はないし、ポケットにはちゃんとトレーナーの証が入っている。
「友人ですか?」
 大人に聞かれてもダイゴは答えようがない。通りがかっただけの同い年くらいの相手だ。ただ、彼の方が答えは早かった。
「昔、めざめのほこらで……」
 何の話だろう。大人の方は頷いていた。
「お久しぶりですね。あの時はミクリを助けてくれてありがとうございました」
 だからなんの話だ。ダイゴは何も言えず、えっとかあっという声しか出なかった。全く記憶にないのに、向こうはそれを覚えているのはどうしていいかわからない。
「昔、ルネに来たよね? ダイゴ君、おでこに怪我して……」
 ルネシティに行ったことはあるけれど、覚えているのはなぜか額が痛い記憶と大きな花火を見た記憶だけだ。
「あっ、覚えてないのが普通だよね。その時に一緒に遊んだミクリだよ。久しぶり」
「あ、久しぶり……」
 むずがゆい感じがする。本当に会ったことがあるのか、確かめようがない。
「タマザラシほしいの?」
 ミクリは頷いた。ダイゴも海を見ると、遠くにタマザラシが波間に見えることがある。この辺りはタマザラシが住んでいるみたいだ。興味があるのか、かなり近くまで来るタマザラシもいた。
 彼はルネのジムリーダーの元でトレーナーの修行をしていると言った。アダンと名乗る男がミクリにポケモンを教えているようだった。今日は初めてポケモンを捕獲するためにここまで来たという。なぜタマザラシなのかと言えば、アダンの持っているポケモンにそれの進化したやつがいて、同じように戦いたいということだった。
 ただタマザラシもエアームドと同じくはっきりとポケモンだと言われているわけではない。もうすでにポケモンだと言われているギャラドスを育てるよりも師匠と同じ方がいいのだろう。そこはダイゴも少し解る気がした。同じくエアームドを連れている人をみると何だか嬉しくなるから。
 野生のタマザラシはミクリを通りがかりに見ては、ボールを投げられてどこかへ行ってしまった。そんな警戒心が強いポケモンではないけど、野生のポケモンは中々近づけるのも難しい。三人でタマザラシを見つけてはボールを投げるの繰り返し。けれどそれが楽しくなってしまって、ダイゴはほとんど遊びながらやっていた。ほとんど初対面のミクリでも、そんな壁を感じなかった。
 太陽の強い光にも負けず、時々来る大きな波に膝まで濡れた。それでもタマザラシは捕まってくれる気配はない。足元が冷たいのに、顔は熱くなる一方。アダンの声に視線を上げて、水に飛び込む音がした。

 冷房の効いた部屋でぼーっとしていた。ずっと海にいて日に当たり過ぎた。夏の日差しは容赦ない。日焼けした赤い顔をして、ダルい体を休ませていた。エアームドがダイゴの顔を覗き込んでいる。
「ミクリ君に心配かけちゃったね」
 ふわっとした感じになった瞬間には、海に着水していた。そこから立ち上がったけれど、アダンに休んだ方がいいと言われてここまで送ってもらった。
 別れ際にミクリがすごく心配そうにしていたのが気になった。ずっと寝ているから、もしかしたらタマザラシを捕まえることが出来たのかもしれない。ルネに帰ってしまったかもしれない。
「また遊べるといいなあ」
 まだ熱が下がらない。目を閉じるとそのまま眠りの世界に行った。


 エアームドが嘴でダイゴの頬をつついた。目を開けてどうしたのと撫でる。起きると同時に冷たいものが飲みたくなった。布団を剥がして、起き上がり部屋のドアを開けた。両親にどうしたと聞かれたので、冷たいものが飲みたいと伝える。よく冷えたサイコソーダを貰った。
 チャイムが鳴った。出るとアダンとミクリが立っていた。手にダイゴへの土産を持って。
「ダイゴ君大丈夫?」
 心配そうにミクリが手にもっていたものをダイゴに渡した。ちりんちりんと高い音がする。白い貝殻のようなものに持ちやすいように紐がついている。
「おかげでミクリがポケモンを捕まえることができました。貝殻の鈴です、今後トレーナーになる君に御礼ですよ」
 早速エアームドにつけてみる。鈴の音にエアームドは難しい顔をしていた。自分が動けば音も鳴る。何かうっとうしい感じがしてならないようだ。
「ダイゴ君、本当にありがとう。今度会う時までには強くなるから、そしたら勝負してね」
「うん、タマザラシ強くなってるか楽しみにしてるよ」
「えっと、実はタマザラシじゃないんだけど」
 ボールから出したポケモンは、タマザラシではなかった。ダイゴも具合が悪いから見間違えたのかと思った。背びれに穴が開き、見た目からしてみすぼらしいポケモンがいたのかと思った。
「ヒンバスっていうんだ。でもきっと強くなるから」
 ヒンバスはボールに戻っていった。アダンに促され、ミクリは帰っていく。後ろ姿を見て、また会えるかなあとぼんやりと思っていた。







こんなミクダイ本を作ろうとして途切れている
鋼の翼がお気に入りのダイゴさんもしかして一番最初に会ったのはエアームドなのではなかろうか。
エアームドは傷つきながら翼を硬くするので、ダイゴさんも傷つきながらチャンピオンになればいいよ。


  [No.3446] 代理処真夜中屋(仮) 投稿者:GPS   投稿日:2014/10/14(Tue) 21:12:05   64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

不思議な不思議な生き物、動物図鑑には載ってない。
『ポケットモンスター』、縮めて『ポケモン』。

しかしそんな不思議なポケモンを以てしても、解明出来ない謎が世界にはたくさんあるのです。
それは普通ならば持っていない力を秘めたポケモンによるものだったり、魔法を手に入れた人間の仕業だったり……。
そんな不思議な出来事を解決するべく暗躍するのは、自らのその身にも不思議な力を宿すサイキッカー。
これは輝く月の下、深い不思議に囚われた者たちを助けるために駆け巡る、一人のサイキッカーの物語。



「ふわ〜ぁ〜ぁ、……ねむっ……」

カントー地方、タマムシシティ。ジムや大学のある中心部からは少し外れた繁華街の路地裏に一匹のコラッタがこそこそと走り抜けて行く。ラーメン屋に金券ショップ、マッサージの看板や今はシャッターが降りているスナックなどが立ち並ぶ、何とも言えぬ怪しさを醸し出すその路地に立つ雑居ビル。そこの五階に構えた事務所に、彼はいた。

「眠いよぉ〜……お日様が眩しいよ……」

寝ている間に腹の上に乗っかっていたらしい、バケッチャを乱暴に払い落としながら一人の青年が寝言のように言った。懲りずにしつこくよじ登ってくるバケッチャがドスンと腹部を襲い、青年はうぐ、と息を漏らす。
彼が寝ているそこは事務所と言えば聞こえは良いが、蓋を開ければタダの掃き溜めだ。本だのゴミだのペットボトルだの、呪術にでも使うのか禍々しい道具だの。散らかった床は足の踏み場がさっぱり無い。
日の光が注ぐ窓だけを上手いこと避けて、影になった部分のカーテンレールにはカゲボウズが5、6匹ぶら下がっている。ひびのはいった天井にくっつくようにして浮いているのはフワンテで、小さな冷蔵庫にぴたりと寄り添うのはユキメノコ。床に転がる本の上を這う影や、狭苦しい室内を横切る影。外から聞こえる話し声や雑音に混じって、カサカサという不穏な音が絶え間無く響く事務所はゴーストタイプの溜まり場であった。
ここから十分あるけば辿り着く大都会とはまるで別世界のような部屋で、古びたソファーに寝返りを打つ一際大きな影。無論それは先ほどバケッチャを振り落とした青年である、丸っこいかぼちゃは今度こそ、寝返りによってころころと転がっていった。
生まれつきよりも日に当たらない生活の方が原因である白い肌、バサバサと鬱陶しい黒の前髪、ふにゃふにゃと寝ぼけた両眼。よれたTシャツには「YADORAN」という気の抜ける創英角ポップ体と共に、これまた気の抜けるヤドランのイラストが描かれている。かなりのお手軽価格が人気であるファッションブランド、UNIRANで980円也。
寝転がったその青年は身体を丸め、シャツに合わせたスウェットのズボンに皺を作る。

「なんでお昼ってこんな辛いんだろうね……?ずっと夜ならいいのに……眩しい……僕はキマワリじゃ無いんだぞ……」

両腕で目を覆いながら呻いている彼は、その名をミツキと言う。どこからどう見ても完全なる特性なまけ野郎にしか見えないが、これでも立派なサイキッカーなのだ。
ミツキの力の拠り所は月の光である。それゆえ彼の力の強さは月齢と月の出によって変化し、よく晴れた満月の晩には、そんじょそこらのポケモンくらいならば容易に倒せるほどの妖術を扱うことさえ可能だ。
……が、何分今は昼。月の光など欠片も感知出来ず、ミツキはすっかり屍と化している。レベル1のコイキングだって、もう少しは役に立つだろう。
夜型にありがちな日光への弱さ、ミツキの白い顔がさらに青白く変わっていく。目を開けているのすら難しくなってきたらしい彼は、ぜえぜえと息を荒くしながらソファーの背から顔を覗かせて向こう側へと声をかけた。

「もう無理……お願い、ムラクモ……カーテン閉めて…………」

『甘えんなこのダメ人間!』

返ってきたのは無情な声……それも、文章読み上げソフトによる無機質な声。次いで事務所に響いたのは、寝転ぶミツキの頭が勢いよくはたかれる、景気の良い乾いた音だった。
うう、と唸ったミツキがソファーから身を起こす。眩しさいっぱいの視界に彼が見たのは、たった今自分をはたき飛ばした紫の腕をゴキゴキと鳴らす一匹のゲンガーだった。

『部屋も人間もポケモンも、この世のものは多かれ少なかれ日光当てないとダメになるんだよ。鏡見てみろ、それが日光浴びなかった結末だ』

辛辣な言葉が電子的な声で述べられていく。それの発信源であるパッドはゲンガーの手にすっぽりと収まっていた。短い指が器用に画面をタップして、主への暴言を次々に浴びせる。
このゲンガーは名をムラクモといい、一応はミツキのパートナーである。しかしその実態はどちらかと言うと保護者であり、だらしないミツキの世話を彼が子供の頃から焼いているという、なんとも面倒見の良いゴーストポケモンだ。
紅い瞳でミツキを睨みつけ、ムラクモが素早く文字を入力していく。

『データ入力の在宅ワーク、どうせ終わってないんだろ。さっさと起きてさっさとやれ!! そして一刻も早く部屋を片付けろ!!』

「わかってるよ〜、でも真っ昼間だから力が出ないんだもん……それにお腹空いたし……ねえムラクモ、僕ここ一週間主食がモヤシなんだよ……? 成人男性の主食がモヤシって、何? 許される?」

『それは知ってるが、仕事をサボりまくるお前の自業自得だ! あとついでに言うと、せっかく入った金を本やら呪具やらにつぎ込むのも原因だな。美味いもんが食べたいなら早く働け!!』

「意地悪……」

ぼやきながらもゆるゆると起き上がったミツキは、緩慢な動作でノートパソコンを起動させた。ぐうう、と鳴り響くお腹を押さえた彼の瞳が恨めしそうにカゲボウズたちを見る。

「いいなあ、アイツらは。人の感情なんていくらでも食べ放題じゃん、燃費良くて羨ましいよ」

『そうは言ってもお前は人間なんだから文句言うんじゃねえ。それにあんまり羨ましがると、その感情こそが奴らにとっては格好の餌になるぞ』

「あっ、いけないいけない……それは癪だからな……全然羨ましくなんかないもーん、ほんっと、ちっとも羨ましくない!!」

『…………』

大人気なさ皆無の主に、ムラクモは言葉を失った。大きな口が引きつったようにピクピク動くが、ミツキは全く気付いていないようである。まだ文句を垂れながら、嫌々と言った感じでパソコンに向き直った彼の頭をゴースが漂いながらすり抜けた。
しばらくはカタカタとキーボードを叩き、大量の数値をセルに打ち込んでいたミツキだがやがて集中の糸は切れるもの。「あーっ!」と声をあげた彼に驚いたらしい、部屋の隅の植木鉢にでっそり生えていたオーロットがびくりと枝を揺らす。

『なんだ、うるさいな! まだ15分しかやってないぞ、もっと頑張ってくれ!!』

「そんなこと言ってもさぁムラクモ! 最近こんなんばっかりじゃん、もっと血湧き肉躍るような、ちゃんとした仕事したいよ〜!!」

『これもちゃんとした仕事だ! 金をもらってる以上仕事に優劣も貴賎も無い、真面目に取り組まないとバチが当たるぞ!!』

「それはそうだけど! だけどさ、最近マジで暇なんだもん! データ入力にペットのポッポ探し、一番アクティブなのでスピアー駆除だよ!? もっと僕たち本来の依頼無いの!?」

『そのスピアー駆除は散々に苦労したじゃねえか!! いいからさっさとそれを終わらせろ!! そんな都合よくそういう依頼が来るわけ……』

「…………あの、すみません」

コツン、という靴音と、躊躇いを滲ませた少女の声が事務所の空気を震わせた。言い争いをしていたミツキとムラクモが言葉を切って、声した方を同時に向く。それまでは各々思い思いに過ごしていたゴーストポケモンたちも、ステンレス製の扉の前に立った来客にふっと気配を掻き消した。
無機質なカーテンレール、ただの観葉植物。色々な物が散乱する部屋にはミツキとムラクモだけ。すっかり静かになった部屋に向かって、少女は丁寧に頭を下げた。

「はじめまして。私は、ミニスカートのユミと言います」

短いスカートの裾が彼女の動きに合わせてひらりと揺れる。ムラクモ曰くの『都合よく』現れた突然の来訪者は、泣き腫らした眼でミツキをじっと見つめて、「お願いします!!」と叫ぶように言った。

「頼みたい、ことがあるんです……助けてください、真夜中屋さん!!」



代理処真夜中屋。
そのテナント名からは、何をしている事務所なのか全く読み取れない。が、実際のところはこっぱずかしい名前に反した単なる何でも屋で、先ほどミツキがやろうとしていた在宅ワークを請け負ったり日雇いのバイトを頼まれたり、野生ポケモンの被害など困りごとを解決する依頼を受けたりするだけだ。普通の便利屋と大差無い。
しかしそれは所謂『かりそめの姿』! チェリムで言うネガフォルムってとこなのだ。真夜中屋はただの便利屋などでは無い。冒頭に申し上げたような不思議な出来事、それこそただの何でも屋などには解決出来ないような事件こそが本職である。表立ってそう宣伝しているわけでは無いが、口コミやインターネットのSNSを通じ、足を運ぶ相談客は少なくない。
今訪れた少女もその一人。ネット掲示板でミツキと真夜中屋の存在を知ったという彼女は、どんな話を持ち込むのだろうか……。


「……それで、今日はどう言ったご用件で?」

ムラクモが運んできた、来客用の緑茶を啜りながらミツキが尋ねる。余裕ぶった態度だが、彼女の存在を認識した直後には自分の格好に絶望した表情になり、「ねえムラクモ女の子だよ!! この服装どうにかしないとヤバいよね!? ムウマージに頼んで今すぐ正装の幻覚見させてもらえないかな!?」『アホな心配してねえで早く応対しろ! ムウマージは今日小悪魔系ゴースト女子会があっていないし、そもそもお前もうその格好見られてるから手遅れだ!』「何それ!? あいつ小悪魔って言うよりマジもんの悪魔じゃん!!」とみっともない姿を晒しまくった男と同一人物である。
しかし諦めがついたのか、それとも久しぶりの『ちゃんとした仕事』が嬉しいのか。慣れた態度で話を聞く姿は、一人前のサイキッカーのものだ。胸に踊る文字列『YADORAN』がなんとも悲しいが、そこには目を瞑ろう。
茶器をテーブルにコトリと置いて、ミツキがユミに尋ねる。パッドを隠したムラクモも追従するようにソファーの横に立ち、ユミのことを見た。

「あの、……まず、真夜中屋さんはこれって知ってますか……?」

ミツキとは対照的に、お茶に一度も口をつけず切羽詰まった様子のユミは、鞄から取り出した携帯電話机に置く。なんだなんだ、とその画面を覗き込んだミツキとムラクモの目に映ったのは、一枚の写真だった。

「くろい、まなざし……?」

その写真はどうやら、パソコンの画面を写したものらしい。直接見るよりもいくらか荒い液晶に反射して、携帯を構えた人が微妙に映り込んでいる。動画サイトや芸能人のブログなどのサイト名が書かれたタブが並ぶ中、一番手前に来ているのは極めて簡易的なものだった。
黒い画面には、無機質な白のフォントで『くろいまなざし』と打ち込まれたものと、小さな一つのテキストボックスだけ。ホームページ作成技術が進んだ今にしては、ここまでシンプルなサイトも珍しいだろう。そのくせ広告はどこにも表示されていない。ドメインも独自のそれだ、地味に手が回してあるのだろうか。
しかしそれ以外に特徴もなく、ミツキは眉を寄せた。

「いえ、僕は見たことありませんが……このサイトに、何か問題でもあるんですか?」

「はい……これ、今流行ってる……と言っても、噂とか裏サイトとかで大々的なものじゃないんですけど。多分、小学生から高校生くらいかな、結構盛り上がってるんです」

ユミによると、サイト『くろいまなざし』は子供の間で囁かれる都市伝説のようなものらしい。タマムシにある高校の制服を纏ったユミの友人たちも、このサイトのことを何かと噂していたようだ。
インターネットを見ていると、ふとした拍子に現れるという謎のサイト。名前とテキストボックス以外に何も無く、なんの意味があって作られたものなのか、誰が作ったものなのか、何のためのサイトなのか。何もかもが不明なのだ。
悪質業者のそれと違い、リンクをうっかり踏ませたりする手法ではない。他のサイトを開くと同時に、いきなりアドレスが開かれるというのだ。だが実在してるか否かははっきりしておらず、ユミも少し前までは単なる噂、くだらない話だと思っていたと語った。

「でもユミちゃん。この写真見る限り、思いっきり存在してない?」

画面を指差したミツキに、ムラクモもうんうんと頷く。その問いに、ユミは「そうなんです」とポツリと言った。ポニーテールにまとめられた長い髪がゆるゆると揺れる。

「そんなもの、ありえないと思ってました……ただの馬鹿げた噂だと。時間が経ったら風化するような、そういう……」

「………………」

「でも、あったんです。この写真を送ってきたアイリ……あ、私の友達なんですけど、彼女はサイトへ辿り着いたんです。……辿り着いて、しまったんです」

「しまった?」

まるでそれがいけないことだというように、ユミが声を震わせる。そよ様子に首を傾げたミツキへ、ユミは「ああ、そうでした、まだ言ってませんでした」と慌てるように言った。

「このサイトは、ブラウザの閉じるボタンを押しても閉じないんです。閉じる方法はこのテキストボックスに、何らかのワードを打ち込む以外には無いと言われてます。閉じるボタンを何度押したところで、効かないらしいんですよ」

「ほうほう。入力するワードは……何でもいい、ってわけじゃないんだろうね。こういうものは」

ミツキの言葉にユミが頷く。流石サイキッカーさんですね、と言ったユミは言葉を続けた。

「くろいまなざし……つまりは、このサイトの閲覧者は技をかけられていることになるんです。『くろいまなざし』という技、逃げることの許されない技にどう対応するか。それを試されている、そんなサイトらしいです」

「ふむ……」

「……それで、本当に嘘っぽいんですけど……逃げることも出来ないこの技をかけられた時点で、こちらの負けは確定してる、と言うんです。テキストボックスに技名を入れて対抗しようとしても無理で、ボールとかの名前を入れても駄目みたい。何かを入力したら、そこでもうおしまいです」

「えっ……」

「言葉を入れてエンターキーを押したら、途端に目の前が真っ暗になると言います。そして恐ろしい夢を見て、何日も何日もうなされて……それで、……すごい熱が出てしまう、みたい」

「なんだよそれ!! どうしようもないじゃん、無理ゲーじゃん! フライゴンでマリルリに挑むようなもんだよ!?」

黙って話を聞くのに耐えられなくなったらしいミツキがとうとう声をあげた。しかしこれにはムラクモも同意したようで、赤い眼をきゅっとさせながら何度も頷いている。
そんな彼らに、ユミは慌てて首を横に振った。違うんです、ちゃんと対処法も噂にあるんです、と早口になったユミが手でぬいぐるみの形を宙に描きながら言う。

「絶対逃げることの出来るどうぐ、『ピッピにんぎょう』って入力すればこのブラウザは自動的に閉じてしまい、何事も無かったかのように元々あった画面に戻るだけ。何も起きないし、まるで『くろいまなざし』なんてサイトなんか最初から無かったみたいに」

「な、なんだ……じゃあ初めっから『ピッピにんぎょう』って書けば済む話じゃん、焦らせないでよもう……」

ほっ、と胸を撫で下ろしたミツキだが、対するユミの表情は曇ったままである。そればかりかその顔はさらに苦くなり、彼女はとても辛そうに眉を寄せた。

「そう、ですよね……真夜中屋さんの言う通りです。対処法があるなら、大人しくそれに従えばいいんです。ホント、その通り……」

「ユミちゃん…………?」

「でも、そう出来ない人もいっぱいいるんです。私の知らない子供たちも、どっかに住んでる高校生も、掲示板で語られる被害者も、……そして、アイリ、も……」

「……どういうことだい」

声だけでなく身体を震わせ始めたユミに、ミツキが声色を変える。ムラクモがユミの茶器を手に取って飲むように促した。それを受け取ったユミがお茶を口に含み、幾分か落ち着いた声に戻る。

「昨日の夜、アイリからこの画像が送られてきたんです。その時はびっくりしました……まさか、本当にあるだなんて。でも、私はすぐ『ピッピにんぎょう』って打ち込むように言ったんですよ。だって君悪いじゃないですか、誰かのイタズラだとしても、なんか……だからとりあえずそうしとけって、アイリに……でも、アイリは……」

「……いいよ。その先は言わないで」

「…………それきり、アイリから返事はかえってきませんでした。何度電話してもメールしても、何しても駄目でした。それで、今日アイリの家まで行って、お母さんに聞いたら、……アイリ、突然熱出して、病院に…………」

そこまで言って、ユミはガタンと音をたてて立ち上がった。抑えていた涙を一気に零した彼女は、机を挟んだミツキへと掴みかからんばかりの勢いで叫ぶ。机に押しつけられた両手はぶるぶると震えていた。

「お願いです、真夜中屋さん!! アイリを助けてください……!! 病院じゃ駄目だと思うんです、病院じゃアイリは治らないんです……勿論何の根拠もありません、でも! それでも、アイリを……」

「…………ユミちゃん、」

「お金ならいくらでも払います、私に出来ることだったら何でもします!! だから、どうか、……力を貸して欲しいんです!! お願いします、真夜……」

「ユミちゃん」

ミツキの鋭い声が、ユミの言葉を遮った。それは短い言葉だったが、不思議なほどに張り詰めていて、場の空気を止めるには十分なものだった。
口を開いたまま、声を途切れさせたユミのスカートに涙が染みを作る。そんな彼女の目を見て、ミツキはゆっくりと言った。

「ユミちゃん。僕は、ユミちゃんに三つお願いがある。これが出来ないと言うのならば、今回の話は無かったことにしてもらいたい」

ミツキがゆっくりと話す言葉に、ユミは目を擦りながら頷いた。いいかい、とミツキが指を一本立てる。

「まず最初に、落ち着こうか。酷い言い方をするけど、ユミちゃんが慌ててもどうしようもない。君までそんな状態になって、そのせいで他の揉め事まで起きたら笑い話にもならないよ」

とりあえず深呼吸深呼吸、とおどけて言ったミツキに、ユミが大きく呼吸をする。まだ涙は流しているものの、荒くなっていた息遣いが収まった彼女へとミツキは二本目の指を立てる。

「次に、もう『お金ならいくらでも払う』とか『何でもする』とかは絶対に言わないこと。そういうこと言っちゃうと付け込まれるからさ、たとえ焦ってても、誰にも言っちゃいけないよ」

ユミが申し訳なさそうに頷いた。その様子に少し笑ったミツキが「そういうのは、おとなのおねえさんになったら言うものだからね」などとのたまうが、その言葉に呆れ顔になったムラクモがユミに見えないようにミツキのふくらはぎを割と本気の力で蹴飛ばす。おおう、と呻いたミツキは片足をさすりながらも、三本目の指を立てた。

「それで、三つ目だけど」

そこで一度言葉を切ったミツキに、ユミはごくりと喉を鳴らす。どんな条件がくるのだろうか、自分には想像もつかないような、恐ろしいことなのだろうか。そんな考えがユミの頭の中をぐるぐると回り出す。
前髪に隠れたミツキの目は細まっていて、何の考えも読み取れない。隣にいるゲンガーはじっとしているだけだ。それなのに、何故か、事務所中に何かの気配が蠢いているような感覚をユミは覚えた。
ミツキの瞳が、とてつもなく暗く見える。そんなはずはない、普通の色をしているはずなのに、そうだとわかっていても、ユミはそう感じずにはいられなかった。
ざわざわと空気が揺れる。存在しないはずの何かの音が鼓膜を震わせる。ゲンガーは黙ってこちらを睨んでいる。
カーテンは開けられているが窓はしまっている、風も無いというのに、真夜中屋の黒髪がふわりと動いた。

この人は、普通じゃ、無い。

ユミはここに来て初めて、恐怖というものを感じた。逃げたい。今すぐこの部屋を出て、路地裏から抜けて日常へと戻りたい。そんな思いが心へ一気に押し寄せる。
でも駄目だ。ここで私が逃げたら、アイリは助からない。アイリだけじゃない、くろいまなざしのせいで、熱を出して苦しんでいる、知らない誰かも。
ユミは必死に足を踏ん張った。怖くてたまらなかったが、ミツキのめをしっかりと見返した。ここで粘らなければ負けだ、本能か第六感か、理性じゃないどこかがそう告げていた。
ミツキの口が開く。どんなことを言われても構わない、ユミは手をぎゅっと握って彼の言葉を待った。

「三つ目は、えっとね……今日の夜、お月様が綺麗に輝くようにお願いしといてくれるかな?」

「…………………え?」

ユミは自分の耳を疑った。想像してたよりもずっと、いや、想像の範疇にも無かったレベルで拍子抜けもののミツキの台詞はしかし、聞き間違いでは無かったらしい。出来ればテルテルポワルンとか作ってもらえると嬉しいな〜、などとミツキがへら笑いをかましながら言う。
呆然としたまま、ユミはどうにか頷いた。ありがとねー、と笑うミツキからも事務所からも先ほどの雰囲気はすっかり消えている。

「……はい、わかり、ました……」

「うん! じゃあここに名前と連絡先と、一応今回の件詳しく書いといて。あ、書きたくないとこは空けといていいから!」

いそいそとペンや紙を手渡してきたミツキと、いつの間にか持ってきていた急須でお茶のお代わりを淹れるゲンガーに、ユミは身体中の力を抜かしてしまった。手にしたペンの冷たさだけが鋭く思える。
ユミが紙に記入している間にミツキが話したのもとりとめのない与太話で、さっきの恐怖の片鱗も感じさせない。気をつけてね、というミツキの言葉に会釈を返し、グレーの扉を閉めて外に出た時には、あの時の感覚は夢だったのではないか、とさえも思えた。なんだか化かされたような気分になりつつ、ユミは手すりを歩くニャースとすれ違いながらビルの非常階段を降りていく。
地上に辿り着いて見上げた先、たった少し前まで自分がいた五階の窓には、白い雲の浮かぶ青空をバックにして『代理処真夜中屋』の看板が確かに取り付けられていた。



『……相変わらず、お人好しが過ぎるな』

ユミが帰った事務所に電子音声が響く。来客の帰宅に安心したらしい、ゴーストポケモン達の姿や気配が続々と復活していく中で、ムラクモは呆れたように肩を竦めた。大体あんなのただのデタラメで、単なる風邪かもしれないだろ。高校生って年頃のヤツはそういう勘違いも多いものなんだ。パッドのスピーカーからムラクモの言葉が流れ出る。
その赤い瞳に睨まれて、決まり悪そうな顔のミツキは空中に浮かび上がったシャンデラの傘を撫でてやりながら、「困ってるみたいだし仕方ないでしょ。逃げ出さなかったから、本気も本気だし」と返す。その答えにムラクモはふん、と鼻を鳴らしたが、特別突っかかることは無かった。

「それにさ、ちょっと気になることがあって」

「気になること?」

ムラクモが聞き返した時には、ミツキは既に床に散らばる紙束を漁っていた。スーパーのチラシやセミナーの広告などに隠れていたバケッチャが、本日三回目の転がりに見舞われる。橙色のまんまるは転がっていき、床付近でふよふよしていたヨマワルに衝突した。
そして勃発する争いには気づいていないらしい、ミツキはごそごそと紙の束を調べている。何冊かの本がぽい、と放り出された末に彼が「あったあった」とようやく取り出したのは、一週間ほど前の新聞だった。
なんだこれ? と聞きながら、ムラクモがミツキからそれを受け取る。ミツキの指差した記事の見出しには、『原因不明の高熱、世界に拡大』と書かれていた。

「小さい子や若い人たちを中心に、ポツポツ出てる新種の病気。どんな薬も効かないから、今お医者さんたちが必死に調べてるんだって」

『病状……高熱、回復件数ゼロ……』

「長引く熱のせいで、視力を失った人も出てしまったみたい。このまま放っておくと、どんどん増えちゃうかもしれないんだ。さっきのユミちゃんの話、無関係には思えなくってね」

新聞に視線を向けたままそう言ったミツキを、ムラクモはじっと見つめる。前髪の間から覗く瞳は、彼にとっての昼間のそれではもう、無かった。一見寝ぼけているようなその瞳に、確かな月の光が宿っている。
ムラクモの紫の拳が握りしめられる。声は出さずに一度頷いた彼は、ああ、と返事をパッドに打ち込んだ。

『確かに、ここまで知って見ないフリは出来ねえな。よしミツキ、そうと決まったら早速サイト探しをーー』

「あ、それは無理」

『は?』

短く告げられたミツキの言葉に、ムラクモの大きな口がぽっかり開いた。いや待てよ、どういうことだよ、と目で聞いたムラクモに「えっとさぁ〜」と、ミツキが情けなさそうに笑いながら言う。

「実はネット止められてて……ごめん、内緒にするつもりは無かったんだよ、今日の夜言うつもりで……」

『……………………』

「いやぁ、どうせ止めるんなら電気の方が良かったよね! 証明はシャンデラたちがいるし、冷蔵庫もユッキーがいるし、本当僕ってバ……ム、ムラクモ……?」

『そこじゃねえよこの大馬鹿もんがぁぁぁぁ!!』

タマムシのとある路地裏に、シャドーボールが炸裂する音と「ごめんなさぁぁい!!」という叫び声が響き渡った。次いで、代理処真夜中屋があるビルの一階に店を構えるラーメン屋の店主の、「うるせえよ!!」という怒鳴り声も。

輝く月が空に昇る時間まで、まだまだ、だいぶ長いようだ。






−−−−−−−−−−−
夢は大きく、シリーズ化。


  [No.3447] ディアマイフォロワー 投稿者:ピッチ   投稿日:2014/10/15(Wed) 00:37:27   122clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

『間もなく船の前方にグレン島が見えて参ります、どうぞ窓から火山島の勇姿をご覧くださいませ……』

sasaRaiRai ささら@旅
島みえたらしい
現在

 タマムシやヤマブキを走るバスの車内放送と何ら変わらない声色の合成音声。俺はそれを聞くとともにいじっていたスマホをポケットに突っ込んで席から立ち上がり、そのまま前方へと向かう。漁船に毛が生えたんじゃないかと思えるような小さな船なのにも関わらず据え付けられた席は空きだらけだ。そこにまばらに座っている奴も、ほとんどは背もたれに身体を預けて寝こけている。他に立ち上がったのは一人もおらず、せいぜい音に身じろぎしたのがいたくらいだ。
 グレン島へ向かう人間はだいたい二種類しかいないとマサラの小さな船着き場のおっさんが言っていた。曰く、自分の水ポケモンで島へ行くジム目当てのトレーナーと、船で行く研究者。特に地元がマサラだから行くのもこちらに来るのも研究者だと言っていたおっさんは、今この船の舵を取っている。
 要するによそ者は俺くらいしかいないのだ。島をわざわざ珍しがるような奴は。
 見てみれば確かに、グレン島らしき島。その半分以上を占めているんじゃないかと思えるほどの火山から雨雲と見間違いそうな濃い煙が出ているのが見えた。ポケットのスマホを取り出してカメラを起動する。風景撮影モード、パチリ。
「お、なかなかよく撮れたんじゃないの」
 思わずそう自画自賛する程度にはいい出来。そのままカメラを終了、親指でチルットマークのアプリをタッチ。数秒の読み込み時間の後に表示されるタイムライン。その中に色の違う呟きがいくつか。左へフリックしてそれだけを確認。

pikaaaach ピカチュウは俺の嫁
@sasaRaiRai うp
3分前

masa_tan 永遠のたんパンこぞう
@sasaRaiRai おつかー
3分前

osososos おす
@sasaRaiRai おつおつ
2分前

mokutanfire もくたん@炎愛
@sasaRaiRai 凄いらしいね噴煙 気になる
1分前

 全部への返信代わり。さっき撮ったのを添付して送信。

sasaRaiRai ささら@旅
火山すげえな pic.poketter.com/wd2pkoz
現在

 画面から顔を上げれば、ゆっくりと島が近づいてきている。カントー地方巡り、最後の一カ所。
 トレーナーの才能なんててんで無くて、修行のために始めた旅はただの観光旅行と化した。だから俺はこれを旅でも何でもなく「地方巡り」と呼んでいる。他のトレーナーが言う「旅」の重みは俺の旅には何一つ無い。野生のポケモンと出会わないよう草むらや山道を避けて歩く。結果的にそこを通る他のトレーナーとも関わらずに済む。街の中では徹底的に「僕はトレーナーじゃありません」って感じのオーラを出しながら歩く。ポケモンたちはモンスターボールに入れて荷物の中。ボールの中にさえいればデータのまま更新されることのないこいつらは、そうすることで懐かなくなることもなければ、ボールの外で俺が何をしているか知ることもない。こんな生活を送っていることは、リアルじゃ誰にも話せない。知られたくない。同じ年に旅立った奴らにも、親にも。でも、そんな負け犬そのものの旅をやめない理由もはっきりあって。
 がくん、と船が大きく揺れた。山はもう、窓の中になんて到底収まりきらないほどに近くなっていた。
『グレン港到着です。お降りの際は足元に十分お気をつけてお降り下さいませ』

 船を下りた後、ひとまず手近な倉庫の陰に入ってスマホを取り出す。さっきスリープさせたままの状態で、開きっぱなしの更新されていないポケッターの画面を下へスワイプ。更新が始まる。数秒してから表示され直した画面に、待ち望んだ文字列。

Fuka_kazahana 風花
お疲れ様です。そろそろ到着の頃でしょうか。こんなに早いと思わなかったので準備が間に合っていなくてすみません。今から家出ます。
1分前

sasaRaiRai ささら@旅
@Fuka_kazahana 今船降りたけどそっちのペースでいいよ 気をつけて! じゃあポケセン前で
現在

 旅を支えたのは、行く先々に住んでいる俺のポケッターのフォロワーたちだった。リアルじゃ言えないこの地方巡りの実態もポケッターでだけは赤裸々に話していたから、何も気負わずに会うことが出来た。そもそもそんな話をする段階で本気のリーグ出場を目指す意識の高いトレーナーはほとんど離れていったから、残るのはみんな似たような挫折経験を持つトレーナーかそもそも旅をしたことがないという人たちだった。そんな皆にはトレーナーらしいことを何もしていなくてもカントーのほぼすべての街に行ったことがあるというのが珍しいようで、会って話をしてみてもトレーナーとしての在り方をさほど責められることもなく、本気でリーグに出られると思っているうちが華なんだよ、などと笑い合った後に、今まで旅してきたところの話をするのが常だった。
 写真をアップするのもそうした旅をなんとか続けていることが珍しがられるということもあって、何かと好評なせいだ。そして今リプライを返した彼女は、おそらくそうした写真を一番楽しみにしてくれている人だった。
 いつもどこかの写真を載せて呟く度に、必ず何かしらの反応をくれる。


  [No.3448] 10月4日分の感想です。 投稿者:ななし   投稿日:2014/10/15(Wed) 22:28:22   43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

10月4日分の感想です。
毎度毎度遅くなって申し訳ありません…。


*箱入り娘の一人旅(冒頭部分)  αkuroさん
> オリジナル小説を書き始めたら早速レビューが来て興奮し過ぎて吐いたαkuroです。
おやまあ、それはおめでとうございます。
で、でもどうかお大事に…。
> 思いつきでエメラルドの主人公エンジュと姉妹にしてみましたが、全く似てないですね。
姉妹だからって似てるとは限らないですし、むしろ違う方がキャラが立っていいかもしれないですよ。
というかエレンって進撃のky(
つ、つい思い出してしm(
す、すみません、まじめにいきます。
ママン、ほんとうにそれでいいの…?
センリパパもですけど…。
親でもない一読者なのにこの子大丈夫かしらと不安に…。
ナックラーがパートナーとは、意外なチョイスですね。
フライゴンになる日が楽しみー。


*ピカ姫様(腐向け) 焼き肉さん
腐向けとか合ったから警戒しいしい読んだんですが、まだその段階じゃなかった!
いやでも、ピカチュウだから別に問題ないですね(にっこり)
やっぱり焼き肉さんらしくほのぼのとしたお話。
ふりふりドレスのぽっちゃりぴかさま!
かわいい(失神)
ぽっちゃりした子が…好きなんです。


*原石磨き WKさん
ヤミラミがいい子過ぎてつらい(涙)
ええ話や…
カンテラ持ってるヤミラミとか似合いすぎる…。絵になりますねえ。
たくさんのヤミラミがお仕事している姿、幻想的…とはちょっと違うんですけど、なんかこう、非日常っぽくて印象的です。
書きかけというには区切りがいいですが、このあとは小説家になった彼女が書く物語なのか、それともヤミラミに原石をもらった他の人の話なのかな、などとあれこれ想像しちゃいました。


*クーウィさん
ちょwwwwwwwwご利用ありがとうございますww
これをきっかけに完成しますよう、心からお祈り申し上げます。
ていうかあのですね、おもしろすぎるんですよ(半ギレ)
なのに続きがないってどういうことなんです…?
特にコジョンドの話!始まったばかりすぎですよ!
つーづーきー!ぷりーず!

ザングースとマニューラの話も、あれだけ書いてあって本題が全然見えてこないし…おおう…。
いやしかしマニューラに拾われたザングースとかなんですかこの素敵シチュ。
そしてこの、この濃厚な文章!
こんなの書いてたらそりゃ〆切に間に合わないですよね…ああクーウィさんの理想の高さよ…そしてそれを実現できる能力…うう…。

こ、このピッピ人形の話、先行きが大変不安なのですが、ホラーですか…?
あいつのせいって一体何が…。

ちなみに煙山甲冑記が一番好きですねー。
そりゃあ、読みにくいって思う人いっぱいいるかもですけど、そのくらい尖っててもいいじゃない!
むしろけしからんもっとやれですよ!
いやでもまあ、ちょっとメモ帳に移したらみっちりすぎて、クーウィさんこの状態で書いてるのやばいって思ったのは事実ですけど(
メモ帳だと見づらいことこの上ない…。行と行の間に隙間ぷりーず(笑)
掲示板だとそうでもないので大丈夫です。ギリギリ(
というか早う続きを(
しっぴつの神様、どうかクーウィさんにしっぴつ速度を与え給え…。

はああああ…それにしても、いずれも冒頭部分の情景描写にうっとりしちゃいます。
自分はこうやってじっくり腰を据えて情景を書くことができないので憧れ…。

と、まあ、Twitterで感想書けないと愚痴ってたら書かなくてもいいよなどとお優しいお言葉をいただいたのでご好意に甘えて、まとめてかつ簡易的なものにさせていただきました…。
クーウィさんありがとうございます。
完成バージョン投稿してくれていいのよ?(


*絵画から零れ落ちて(仮題) MAXさん
ふぁあああああああああああああ!
な、なん、ななななんすかこれ!めっちゃいい!
読むの最後になったけど、最後にとっておいてよかった!
リザードンのお話が一番、胸キュン…じゃなくて、胸が締め付けられるというか。
>  尻尾の炎は星の炎とひとつになったが、溶岩から離れた途端、その身体は冷え固まった。
>  火を囲むガラスを退ければ忽ち火も消えるだろう。
この二つ。
あ、身体固まっちゃったんだ…というのと、消えてしまうなんて…。
切ない…。
チルタリスもかわいそう…。
> 「こいつは鳥に過ぎないが、ドラゴンでもある」
ひどす…(´・ω・`)
メモ書き一つ一つから広がる想像!
期待で胸が高鳴ります。


  [No.3452] 義足、ワイン、薔薇の花 投稿者:NOAH   投稿日:2014/10/16(Thu) 19:34:51   148clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日】 【企画】 【書き出し】 【書きかけ】 【福祉】 【グラエナ


『ポケモン用の義肢、販売致しております。』


この売り文句に釣られて開いたサイトのページには、ポケモン用の義足や義手、そして人工尾鰭といった、身体の一部が欠損してしまったポケモンたちのために作った義肢の写真と値段、そしてこれをひとつひとつ、ポケモンの状態や用途に合わせて手作りしているのだという技術開発を進める福祉道具会社のものだった。

インターネットで改めてその会社を調べ、その会社が信用に足る企業だと知ると、俺はまず、うちの農場の片隅で眠るメスのグラエナ・テテュスを思い浮かべた。

彼女の後ろ右足は、昔ハンターの罠に掛かってしまった際に切り落とされてしまったらしく、祖父が保護してポケモンセンターに駆け込んだときは、義足を付けないとダメだ、と判断されていらい、ポケモンセンターのドクターさんお手製の義足を付けていたのだが、強度があまりないため壊れやすく、いたずら好きの1匹のツボツボの格好の餌食となる。

それを考えると、少々値は張るが、正規品を購入した方がテテュスのためにもなるだろうと、そのサイトをお気に入り登録してから、まずは祖父母とテテュス本人に相談するべきかな、と考えて、部屋を出た。





「じいちゃん、話があるんだ。」

「ん?」


家のすぐ横にある厩舎の中で、祖父は他のよりも何倍も大きく精悍な顔つきのオスのギャロップたちの世話をしていた。こいつら本当は格闘タイプでもついてるんじゃないのか?と見まごう程に筋骨隆々としたギャロップ1匹1匹にエサを上げながら、彼らの状態をチェックしながらも、顔をこちらに向けてくれた。


「どうした。お前さんがそんな顔をするとは珍しい。」

「……あのさ。テテュスの足のことで、相談なんだけど。」


少し遠くの方で、ギャロップが一匹嘶き始めた。よく聞くと、ソイツは祖父と一緒にテテュスを助けたオスのギャロップのクロノス号だった。あぁ、心配してくれているんだな、クロノス。それでこそ爺ちゃんの1番の相棒だよ。


「クロノス。落ち着きなさい。……それで。テテュスの足がなんだい。」

「うん。……テテュスの義足だけどさ。彼女を思えば、ちゃんとした、少し高いけどあの子の負担にならないものを選ぶべきだと思うんだ。」

「ドクターの腕を信じてないのか。」

「そうじゃないよ。ただ、すぐいたずら好きのツボ郎に壊されちゃうからさ。ドクターの義足が間に合わない時の予備としても、一個くらいちゃんとしたのを持っていても差し支えないとおもうんだ。専用の車椅子でもいいけど、そっちの方がもっとお金かかるし。」


この町のポケモンセンターに在籍してる温厚なじいちゃん先生の器用さは目を見張るもので、テテュスの義足は全てそのじいちゃん先生が全部1人で作りあげている。
それでも強度の問題なのか壊れやすく、いたずらの格好の餌食となっている。ダメだと言ってるというのに聞き分けが効かないのでほとほと困っている。


「それで、テテュスの足の状態を見て、ちゃんとしたのを1つ。彼女に、用意してあげようと思う。薔薇の園を駆け回る、あの子の姿がみたいから、さ。」

「……わかった。1つだけだぞ。」

「……!ありがとう!!」


ダッシュで厩舎を出て、ポニータとメリープが草を食む牧場の脇を抜け、カゴの実やぶどうが生る畑の横の農道の先の、薔薇園の前の小屋。
そこを右に曲がり、先にあるワインクーラー横の家の玄関へと続く、壊れた酒樽を再利用して作った花壇の道。そこにある小さな小屋の中で、頭に野生のネイティが止まっているのにも気付かず寝そべる、テテュスの姿。


「トゥー、トゥー、」

「や。こんにちは。……テテュス。」


そっと話しかけながら、ふわふわする首の辺りを撫でてあげると、テテュスはぴくり、と耳を動かしてからゆっくりと起き上がった。彼女の頭に止まっていたネイティは、そのまますぐそばの、この前出来たばかりのワインをお酒の神様へと捧げるための簡易な祭壇に乗った。


「ネイティ、そこに乗るとばちがあたるよ。……テテュス、見回りに行こうか。歩ける?」


ゆっくりと起き上がり、テテュスは俺のてのひらを何回か舐めたあとで、義足のついた足の調子を見た。今日は大して痛まないようなので、ならばこのまま行こうか、と、テテュスを先頭に歩き始めた。なぜかネイティが俺の頭に乗っかってきたが、まあ邪魔するつもりはないようなので放っておく。

彼女だけでは、薔薇や木の実にいたずらをするヤミカラスや他の野生のポケモンを追い返すのは無理があるので、俺はレントラーのユピテルと、ロズレイドのディオを出す。(どちらもオスだ。)
ユピテルがムダに気合い満々なのは、まあとりあえずはスルーの方向で行こう。


「テテュス、この見回りが終わったら、君に話しておきたいことがふたつあるんだ。」

「………?」

「そのうちわかるよ。」


首を傾げる姿もなかなか美人さんだねぇ、と惚気ていたら、どうやら察知したのか、義足の方の足で軽く小突いてきた。地味に痛いから本当はやめてほしいが、彼女なりの照れ隠しなのでスルーしておこう。しかし、痛いなぁ。






書きかけ小説を出してしまおうというこの企画を見て「なにか書きかけのお話しがあったかなぁ。」と探しに探してスマホのメモ機能に書きかけの小説を見つけたので誤字脱字だけ修正して出してみました。
お話しに出てくるワインセラーとかは以前にイラコン宣伝で書いてみた例のワイン農場さんが舞台です。
けっこう気に入ってるので時々小出ししようかなぁとら思ってますが、如何せん名前が決まってません
……。それもあって書きかけのまま保存してました。

あとこのグラエナたちの名前はギリシャ神話の神々からお名前をお借りしてます。
ネイティの名前だけ決まらなくてうんうん悩んでたのもこれが書きかけの原因でした。
もう少し書きたかったんですが、うまいところで一区切りついてたのでそのままお出ししました。

ご感想やご指摘がございましたらぜひお願いします
.


  [No.3456] 負の味 投稿者:WK   投稿日:2014/10/17(Fri) 15:52:46   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 以前、あまりにもカゲボウズ達が大食いなので、健康に悪いと思い少しの間食事の量を減らしたことがあった。彼らが食べる物は、普通のポケモンフーズではなかった。あんな粉っぽい物食べてらんねー、と五匹の中の一匹が叫んだのを覚えている。
 私の周りのゴーストタイプは皆美食家だった。不味い物はどんなに安くても、またそれしか食べる物が無くても決して口に入れようとはしなかった。そして、大衆が群がるような店よりも、自分で見つけた美味しい店の料理を好んで食べることが多かった。私も幾度か連れて行ってもらったが、非常に美味だった。
 彼らは食事だけではなく、甘味も大好きだ。カゲボウズは負の感情を食べるポケモンとして知られているが、実際に美味しいのかと聞くと、甘いのだという。特に長年降り積もった感情は少し嗅いだだけで全身が融けるのではないか、というくらい甘い香りがするとか。少し気になったが、人が嗅いでも不快な気持ちになるだけだから、と言われたのでやめておいた。
 彼らは言う。人は毎日のように負の感情を抱く機会に恵まれるけど、何処かで必ず発散しているのだという。それは人によって様々で、無自覚に発散している場合もあれば、さあ、今から発散するぞと気合を入れる場合もあるらしい。
 そんな人間の感情は、たとえ負でもあまり甘くないらしい。短い時間の合間に大量に発散するからだそうだ。
 反対に狙い目なのは、真面目な人や自分の思ったことを上手く口に出せない人間。そういう人間は普段は大人しくても、ある時不意に爆発するのだという。それはまさに、ポップコーンの飴玉版みたいだという。弾けるのはコーンではなく、飴玉。それを我先にと口でキャッチして食べるらしい。それもまた、娯楽のようで楽しくて良いという。
 そんな話を聞いた数ヵ月後、突然カゲボウズ五匹だけが私の群れから姿を消した。私はいつものことだろうと思い、そのまま日常を過ごしていた。彼らは何か大きな餌を見つけると、それを他のカゲボウズに取られないようになるべくその本人の近くに潜伏する。そして帰ってくる時は、あの角付きの頭がこれでもか、というくらいに膨れ上がっている。下のひらひら部分はそのままなのに!
 太る部分が違うのだろうか。しかしこれは……。
 
 それからたっぷり一ヶ月経って、彼らは帰って来た。意外と顔の形は変わっていなくて、私は意外に思った。どうした、と聞くと凄い物を見た、と帰って来た。
 その女性はとにかく人の悪口を言うのが大好きだったらしい。テレビを見ても芸能人の悪口を言うし、陰口はもちろんのこと、トイレに立った同僚の悪口を一緒にいた同僚に吐くのだという。
 コンプレックスが強い人間は、他人を落とすことで自分を上げようとするという。彼女もその一人だったのかもしれないが、赤の他人である私はどうでもよかった。
 彼女には誰もがうんざりしていたようで、その念も相まって職場は凄まじく甘い匂いに包まれていたという。各地からカゲボウズ達が集まってきており、どれだけ甘くなった時に齧り付けるかの駆け引きの場になっていたという。
 しかし、その女性の感情の熟すスピードはあまりにも速かった。
 そろそろか、と先に齧りついた数匹が、吐き出した。不味い。とても食べられた物じゃない。
 見れば、彼女の体は腐りかけていた。人の目には、普通に人間の姿に見える。しかし彼らには、熟しすぎて腐り落ちて行く姿が見えたという。
 負の感情を抱きすぎて、自らがその塊へと変貌し、とても食べられた物ではない腐りかけ――『悪』になってしまったのだと彼らは言った。だから、職場の感情だけ食べてきたという。
 そちらは普通に美味だったらしい。
 
 青すぎるのも不味いが、熟しすぎても不味い。
 彼らはその丁度良い境目を見極めるために、今日も程よい人間を探している。


――――――――――――――
 一応レディ・ファントム視点のつもり。
 そして彼女を生み出してから既に四年近くが経過していて驚く。


  [No.3477] 【お知らせ】来月の一粒万倍日は10日11日22日23日です&お休みします 投稿者:ななし   投稿日:2014/10/30(Thu) 22:30:20   86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:お知らせ

皆様ごきげんよう。
東北は紅葉も散り始めていますが、皆様のところはこれからが見頃でしょうか。
日毎に寒さも増して、秋の深まりを感じますね。

さて、まずはお休みのお知らせです。
しばらく感想つけるのをお休みいたします。
大分前から感想をつけるのが大幅に遅れていて大変申し訳ありません。
二週間ほど精神的に不安定で、皆様の作品もあまり読めていない状態です。
回復するかな、と思っていたのですが、予想外に長引いている上、回復する兆しが見えず、このようなお知らせをすることと相成りました。
日々を過ごすだけならなんら支障はないのですがね…。
とある方に、休むなら休むと宣言した方が楽になると言われまして、アドバイス通り、お休みさせていただくことにいたしました。
感想はお休みいたしますが、皆様におかれましては気にせず投稿してくださって良いのですよ…!
ただちょっと、感想つくのがものすごく遅くなるだけです。
ちっ、感想つかないのかよ、参加する意味ねーな!などと思う方もいらっしゃるかもしれませんね。申し訳ありません。
まあ想定以上に参加していただき、かなりの数が投稿されたので、もういいかな、なんて思ったり。
今年中にはなんとか書きたいと思っているので今しばらくお待ちいただきますよう、平にお願い申し上げます。


では、来月の一粒万倍日です。

11月
10(月)11(火)
22(土)23(日)※大安

連続での一粒万倍日とかどういうことなの…?(今気づいた
22,23日は土日ですから狙い目ですね!


これからますます朝夕冷え込むようになりますから、皆様どうかご自愛くださいませ。
それではまた。


  [No.3493] 10日とか待ってられるか、今投稿する! 投稿者:No.017   投稿日:2014/11/06(Thu) 22:52:48   74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

■鯔の皮の賛美歌(仮)


 タマザラシって怖いわ。
 昔、姉がそう言ったのをナツミは強烈に覚えている。
 どうして? と、尋ねると彼女は続けた。
「だって生首みたいじゃない」


 びゅうびゅうと海の風が吹きつけて、潮の香りが鼻についた。温暖なホウエン地方とは言っても十二月ともなれば風は冷たい。都会には無い風景を表現するよりも肌に刺す寒さが先に来る。
 思えばトレーナーとして旅立った事の無かった彼女は一人でこんなに遠くまで来る事は初めてだった。
「まったく交通の便が悪いったら」
 と、バスを待ちながらナツミは悪態をついた。しかし、ポケモントレーナーという人種ときたら、この行程を徒歩あるいはポケモンに乗ってこなすというから、それに比べればマシなのかもしれない。同じ人間とははなはだ信じられないが。
 カントーから飛行機で「そらをとぶ」こと、約二時間。さらに空港のあるカナズミシティから地下鉄で「あなをほる」こと、三十分。駅弁をほおばりながら電車を乗り継いで三時間。さらにはキンセツシティからフェリーで「なみのり」をする事一時間である。そうして彼女はやっとの事、このシマバラの地に足を踏み入れた。
 彼女はもう一度、あたりの風景を見渡した。彼女の両目の視野いっぱいに青く輝く海とそこに浮かぶ緑の島々が浮んでいる。海と島の街、シマバラ。着陸前に飛行機から見たカナズミシティの賑わいとはまったく異なる風景がそこにあった。
 やがて本数も乗車人数も少ないバスが到着し、彼女は乗車した。目的地に向かいバスは走り出して、窓に風景が流れるように通り過ぎた。建物はまばらで、林や森、畑が続く。ただ特徴的なのは時折屋根に十字を戴いた小さな建物が見えた事である。一度だけ、同じ十字が地面に何十本か刺さっているところを彼女は見た。
 キリシタンの街、シマバラ。この街にはカロス地方をはじめとした西欧から伝わった宗教を信じる人々がたくさん住んでいる。バスの窓が切り取る風景の中に時折、十字が見えるのにはそういった理由がある。
 そして何より今回のナツミのお目当てもその十字を戴いた施設の一つであった。
 ナツミはバスの振動に揺られながら、一月ほど前の事を回想した。



続くかもしれない


  [No.3616] ナイスなお心意気 投稿者:小樽   投稿日:2015/02/28(Sat) 00:50:09   27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ご無沙汰しております、こんにちは。第二豊縁昔語のかおりを感じました。
単行本に……とまでは言わないまでもぜひ続きを拝読してみたいです


  [No.3499] 永遠の話 投稿者:音色   投稿日:2014/11/10(Mon) 21:42:32   57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

1、カリバーン

 我が名はカリバーン。一振りの大剣と堅牢なる大楯なり。つまるところのギルガルドである。カリバーンとは我が主たる永遠の姫君が付けられた有難き銘であり、我が誇りたる名である。つまるところのNN(ニックネーム)という奴である。仰々しいと言うなかれ、我は結構気に入っておるのである。
 何? 主が永遠の姫君とはなんであるか? ははぁ、確かに気になる所であろう。けれど存外難しい事ではない。比喩でも揶揄でも何でもない、文字通りの永遠である。つまるところの不老不死という奴なのだ。無論、我も右に同じくして不老であり不死である。
 見よ、この錆ひとつない刃を! 手入れを怠っていないことは勿論だが、全盛期から不老を取り付けられたと考えるとその点においては悪くはなかったのだろう。……もっとも、物語における不老不死と違わずに、良い点悪い点など数えれば不思議な事に悪い事ばかりが多いのも変わらないのだが。
 少し話がずれたが、我が主の話であったか。若々しさ、初々しさ、変わらぬ容姿はもはや枯れぬ華と同じくして、けれどそれは造花でも干した花でもない! あぁ、なんと麗しい事か。カロスの娘はみな流行に敏感というだろうが、我が主の前には一時の流行り物に身を包んだだけの付け焼刃の小娘などかすんでしまうだろうよ!
 ……あぁ、すまぬ、我が主の素晴らしさではなかったな。何故不老不死などというけったいな事になったのか、が知りたいのだろう? 皆同じことを尋ねる顔をするのでね、分かっておる分かってる。
 けれど何も難しい話ではない。大昔、不老不死になった男がいた。何故その男は不老不死になったのか? カロスの400年前の戦争は知っているだろう? 最終兵器の光、だったか。そいつをあびると消えた命がもう一度灯り、輝く命は永遠のものとなるという。それを100年ほど前だったかな、優秀な、それはそれは優秀な紅い科学者が紅い服の集団をまとめ上げてもう一度使おうとしたのよ。
 それを止めたのが、当時まだ駆け出しのトレーナーだった我が麗しき勇気溢れる主よ。あちらこちらで騒動を起こして回るフレア団、とか言ったそいつらを鮮やかに蹴散らして周り、遂にはボス所まで追い詰めて、見事うちまかした。無論その時の吾輩の活躍足るや、主の指示の元ばっさばっさと敵を切り伏せたものだ。
 けれどな、最後の最後で最終兵器は天に向かって一発放たれてしまったのだよ。けれどその光はくるりと空で宙返りして兵器そのものに降ったのだ。かくして兵器は二度と光を撃つことなど無くなった。……これが、当時の見解だ。
 けれどな、けれど、その光をな、我が主と、主を守護する我を含む6体のポケモンは、天に昇っていくその光を浴びてしまったのだよ。その時は浴びたなんて思いもせんかったのだ。何せ敵の大将首を倒してから、主の御友人たちを先に逃がし、そして自らが逃げるのに必死で、背後の強烈な光になんて気が付きなどせんかったのだから。
 長らく地中に埋まっていて、老朽化が進んでいたのかもしれぬ。天に昇るだけの光は、おそらくどこかの日々から漏れていたのだろう。そして、我が主と、当時敵のボスとやらを討ちとるがために我が主が選りすぐった6体の猛者には幸か不幸か、不老不死がプレゼントされた、というわけだ。どうだ、実に面白くとも何ともないだろう。
 最初は誰もが気が付かなかったのだ。それはそうだろう。たったの1年か2年のそこらで気が付くはずはない。主はそのあと、破竹の勢いでこのカロスのチャンピオンまで上り詰め、しばらくのんびりしておられたしな。
 異変に気が付いたのは5年だか、いや10年だったか。もう年月など曖昧でな。ただ、主殿の御友人殿には明確な変化が現れ出していたのにも拘らず、主殿だけは何も変わらなかったのだ。背が伸びるだの、声が変わるだの、そういう変化が、主殿には一切起らなかったのだ。これは妙だ、と主殿は考えたし、友人殿も考えた。さらに10年か何かが経過して、いよいよそれは確信にしか変わらんかった。
 ついに主殿はカロスの地を飛び出した。廻った先は別の土地よ。自分を知らぬ人間しかいない場所へ主殿は飛び出して、ぐるぐるぐるぐるあちらこちらを回られた。無論我もついておったさ。と、いうよりも、あの時の6体以外は主殿はほとんどつれなかったのだ。

 ふむ、延々とこの話では暗くなるな。
 ひとつ、我と主殿の出会いの話でも致そうか。


―――――――――――――――
 お風呂の中でなんか浮かんだフレーズを書きなぐっただけ。
 XYの最終兵器の光をうっかり浴びちゃって主人公とその手持ち6体が不老不死になった、っていうネタがずーっとあったんだけど、いまいち形にならなかった。
 のを、お風呂入ったら突然カリバーンとかいうギルガルド(手持ちにギルガルドは絶対入っているっていうイメージはあった)が登場して語りだしたのでしばらく語らせてみたけどなんだこの主人公大好きな大剣は。
 そういう話。続くかどうかは知らない




 


  [No.3522] シンデレラ・ガールはくじけない(仮) 投稿者:   《URL》   投稿日:2014/11/30(Sun) 22:40:21   70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ガタゴト揺れるトラックの荷台。その片隅で眠る、眼鏡を掛けたひとりの少女。

「……トウマ、君……」

頭をかくんと揺らして、かすれた声でぽつりと呟く。その声を聞くものはおらず、その声が誰かに届くことはなく。言葉を発した少女の耳にさえ入ることなく、瞬く間に形を失って消えてゆく。

ゆらり揺られて数時間。いつまでも走りつづけるとさえ思われていたトラックが徐々にスピードを落とし、やがて完全に停止した。ガチャリ、とドアを開ける音が聞こえ、運転席から誰かが下りてくる。

そして車から下りてきた「誰か」が、荷台の扉を開く……!

「おーい! 着いたぞ夏実(なつみ)! ホウエンのミシロタウンだ!」
「……はっ!」

少女の名は夏実。夏の果実と書いて「なつみ」と読む。

「お父さん……もう着いたの?」
「ああ、思っていたより道が空いていたからね。さあ、ずっとそんなところにいて疲れたろう? 外へ出てゆっくり休むといい」

父に促された夏実は、すぐ側に置いていた小ぶりなボストンバッグを手にすると、すっくと力強く立ち上がって見せた。夏実が外へ出ようとしているのを見た父親は踵を返して、自分の荷物を取りにいくべく運転席へ戻る。

コツコツと足音を立てながら歩き、夏実はトラックの荷台から降りて――大地に一歩を踏み出す。

「ここが……ホウエン地方・ミシロタウン!」
「前に、どこかで聞いたことがあるわ……ミシロタウンのテーマカラーは、一点の曇りもない<白>だと!」
「人はその白を『何者にも染まらない』白だと言う……だけど、わたしの考え方は違う!」
「白! それはまるでからっぽのキャンバス! すべての始まりの色、すべての下地になる色!」
「そして……キャンバスには必ず絵が描かれるように、その<白>はずっとずっと続くものじゃないっ!」
「ただ<未だ白い>だけ! いつか何かが描かれ形をなす! だから<ミシロ/未白>なんだって!」
「……これよ、これ! 新しい……まったく新しい自分に生まれ変わるための一番初めの場所には、これ以上ない場所よ!」

ボストンバッグを地面へぼすっと落とすと、両腕を目いっぱい広げて、夏実が上を、空を、天を仰ぎ見る!

「さよなら昨日までの自分! こんにちは今日からの自分!」
「今までとは違う新しい毎日が! このミシロタウンからスタートするのよ! ここはわたしが<リスタート>する町!」
「ド派手に描いて見せるわ! この未だ白いキャンバスに! パーフェクトな<理想の自分>をっ!」

引越し作業をお手伝いする働き者のゴーリキーさんたち数名が、空に向かって最高にハイなテンションで絶叫する夏実を軽ぅーくざわつきながらチラ見していたのは、これまた別のお話。

 



 

「お母さん! 来たよ!」
「いらっしゃい、長旅お疲れさま。なっちゃんの部屋は二階よ。軽く片付けもしておいたから、なっちゃんの好きなように使ってちょうだい」

先に新居に入っていた母親と軽く言葉を交わしあってから、夏実は自室のある二階へ向かっていく。

夏実は今年十二になる少女であり、家族としては父親と母親がいる。以前はいささか歳の離れた兄も一つ屋根の下で暮らしていたが、もう五年ほど前に旅立ったきりまともに姿を見ていない。最後に顔を合わせたのはいつだろう、夏実の記憶は覚束ない。こんな時、自分の記憶を掘り起こせたら、あるいは過去の出来事をリプレイできたら便利だろうに――と、無駄話はこれくらいにしておこう。彼女はそのような家庭環境で育ち、そして今日! 父親の仕事の都合でここミシロタウンへ引っ越してきたのだ。

だが、彼女は父親の転勤に巻き込まれて、言われるまま着いてきたというわけではなかった。

「――なんでも、ホウエン地方で最近、新しいエネルギー資源になりそうな鉱石が発掘されたらしい」
「父さんは直接石を掘りにいく訳じゃあないが、エンジニアとしていろいろお手伝いをしなきゃいけなくなった。拠点はミシロタウンという小さな町の近辺にあるそうだ」

父は最初、ミシロタウンへは単身赴任で来るつもりでいた。元々住んでいたカントーのクチバシティからはあまりにも、あまりにも遠すぎるし、なんといってもミシロタウンは「℃」いや「ド」の付く超田舎! そんなところに多感な時期の娘を連れて行こうとするほど父親は無粋では無かったし、無茶をする人間でもなかった。割と気の利くお父さんだったのだ。

「というわけで、父さんはしばらく家を空け……」
「お父さん! わたしもミシロタウンへ行きたいっ! みんなで引っ越そうよ!」
「……えぇえぇええぇぇ〜っ!?」

そんなお父さんの配慮を一撃でブッ飛ばしたのは、他ならぬ夏実自身だった。単身赴任でしばらく家を空ける、夏実、それに母さん。しばらく寂しくなるが、必ず帰ってくるからな。その間家を頼む――とカッコよく言い終える前に、夏実が「ミシロタウンへ行きたい」と身を乗り出してアピールしてきたのだ。

「そうね! やっぱり家族みんな、ひとつにまとまってた方がいいわ!」
「か、母さんも!?」

家族はいつも一緒にいた方がいい、母親もそう言ってきたことで、ミシロタウンへは単身赴任ではなく家族総出で引っ越して向かう方向へ一気にシフトした。まったく予想外の展開に、お父さんはすっかりタジタジだ。

「いや、母さんはもしかしたら着いてくるんじゃないかと思ってたから、正直なところそれほど驚いたわけじゃないが、まさか夏実が付いてくると言うとは……」
「そのミシロタウンって、自然がいっぱいのキレイな場所なんでしょ? わたしそういう場所好きだから!」
「ねえお父さん、みんなで引っ越しましょうよ。会社も補助を出してくれるんでしょう?」
「ああ。単身赴任じゃなくて家族みんなで引っ越す方が会社としては負担が少ないし、父さんもそうできるならそれに越したことはないと思っていたが……夏実、本当に一緒に行くのか?」
「もちろん! それに――ちょうど心機一転、新しい場所で新しいことを始めてみたいって思ってたの!」

とまあこんなやり取りの末、夏実は一家揃ってミシロタウンまで引っ越してくるという流れに相成ったわけだ。

さてさて、その夏実が今何をしているかというと――。

「あったあった。お母さん、ちゃんと鏡をここにセットしてくれたんだ」

二階の部屋へ上がって真っ先に向かったのは、部屋の隅に設置された立て鏡だ。普段から自分の容姿をチェックするために使っている何の変哲もない鏡――別に鏡の向こうに別の世界があったりするわけでもない、受けた光を機械的に跳ね返すだけのただの鏡だったが……。

「いよいよ……いよいよ! この時がやってきたのね!」

それを見つめる夏実の瞳は、真夏の炎天下を齎す太陽のように燦々と輝いていた。「キラキラ」などという可愛げのある形容ではまるでなまぬるい、「ギラギラ」した強烈な眼光をほとばしらせながら、鏡の向こうにいる自分――眼鏡を掛けて、少し野暮ったいワンピースを身に着けた<自分>に語りかける。

「さあ夏実、目に焼き付けておくのよ」
「――これが<わたし>よ。さよならを言う<わたし>……!」
「ここでお別れをして……もう二度と! 戻ってこない!」

言い終えるや否や――夏実は手に提げていたボストンバッグのジッパーを、バァァァッ! と勢いよくオープン!

「男は度胸、女は愛嬌って言うけど、女の子にだって度胸が必要な時があるわ!」
「そう! 今この瞬間こそ! わたしには<度胸>が必要なのよ!」

バッグの中から取り出した真っ赤な布を掲げて、夏実は大きく目を見開いた……!

 



 

夏実が部屋にこもってから……きっかり一時間が経った。

「……OK、OK」
「バッグに入れてあったものは全部使った、何も余ってない、足りないものもない」
「チェックリストには全部○が付いた、空白も×もひとつもない、ただ○があるだけ」
「おかしな感じがするところはどこにもない、このまま走り出すことだってできるわ」

パタパタと体を払い、腕をぐるりと回し、ついでに首もぐりぐりやっておく。どこをとっても異常は無い、まさしく最高のコンディションだ。

夏実にとって、この一時間は人生で二番目か三番目かに長い一時間だった。蛹が羽化し蝶となるには相応に長い時間を必要とするが、彼女の変身にもまた、これくらいの時間が必要だった。

そう――彼女は<変身>したのだ!

「どジャアア〜〜ン!」

なんだかイマイチよく分からないがとりあえず見てくれのインパクトだけはある両手を広げたポーズをキメて(少なくとも夏実の認識ではキマっているのだ)、夏実が今一度鏡を見やる。

「で……できた……ついにできたわ……! イメチェン第一歩・大成功よ!」
「これが新しいわたしっ! 言わばニュー夏実っ!」

そこに映し出されていたのは! 先程までとは似ても似つかない、別人としか思えない少女の姿だった! テンションの上がった夏実が、ひとつひとつ丁寧に自分の容姿について説明していく!

「坂道だって山道だってずかずか歩けるスパッツ! アンド・スニーカーっ! でもってグローブも装着!」
「腕も脚もこーやって肌を見せて、健康的に! それでもってテーマカラーは派手に燃え上がる赤!」
「地味っ娘の象徴・『眼鏡』も今日でおさらばよ! コンタクトに変えただけで……ホラっ! お目々ぱっちり!」
「髪だってばっさり切ったわ! それだけじゃないっ! 見てこの左右オンリーのオリジナリティあふれる髪型! アクティブ感六割増し!」
「そしてそして……これよこれ! モンスターボールのシルエットの入った……真っ赤なバンダナ!」

夏実が自信を持って語るだけあって、その容姿の変貌ぶりは間違いなくホンモノだった! イメチェンという言葉がここまでストレートに伝わる変化も珍しいだろう。彼女の思い描く「新しい自分」への変身は、確かに成功していた!

「どうよこれ! どこからどう見たって『外でアクティブに動いてそうな活発な女の子』そのものよ!」
「『窓際で頬杖を付いているか図書室で借りた本を読んでそうな女の子』……そんなのとは無縁のアグレッシブさ!」

窓際で云々というのは、彼女が昔クラスメートから言われた言葉を丸々引用したものだ。見てくれを変える前の夏実は、その文句がぴったり当てはまる、超の付く「地味っ娘」だった。いつもどこかおどおどしていて自分に自信が持てない、穏やかな性格という言葉は臆病な気質と紙一重。

そんな自分にサヨナラバイバイすべく、夏実は今こうして革命的なイメチェンを図ったのだ!

「か……完璧、だわ……! まるでわたしじゃないみたい……!」
「はっ……! そうよ、<わたし>じゃない! <わたし>じゃないんだわ!」
「これからは<あたし>! もっと強気でアグレッシブでイケイケ感たっぷりの<あたし>にする!」
「<あたし>は地味っ娘をやめるわ! 夏実ぃーっ!!」

文字通り言葉通りのドヤ顔を決めて絶叫し、最後に夏実は満足げにニヤリと笑った。

さて、ひとしきり満足したところで、夏実は次なる一歩を踏み出す。

「さあ! この<あたし>の見事な変身っぷりを見せつける最初の相手には、やっぱりお母さんが相応しいわね! だって今までの<わたし>の姿を一番見慣れてるわけだし!」

ノリノリで階段を降りる夏実。心なしか、いやどう見ても確実に足取りも軽い。生まれ変わった自分を見て、母はどんな顔をするだろうか、どんな声を上げるだろうか、どんな反応をするだろうか。想像するだけでワクワクしてくる。こんなに清々しい気持ちになったのは久しぶりのことだ。夏実は鼻歌を歌いながら、階段の最後の一段を降りた。

と、ちょうどそこに母親が立っていたではないか。そしてそのまま、階段を降りてきた夏実とハタと目が合う。

「あら――」

驚きの表情を見せる母。そう、これが見たかったのだ、夏実が不敵に微笑む。

そして、母親が口にした言葉は――。

「――もう遊びにきてくれたなんて、うれしいわ。ごめんなさいね、家の中、まだ片付いてなくって」
「……はい?」
「夏実は二階にいるわ。おとなしくてちょっとのんびり屋さんだけど、仲良くしてあげてちょうだいね」

明らかに反応がおかしい。というかどういう反応だ、これは。

(ははあん。お母さんったら、あたしのことをミシロタウンに元から住んでた別の子だって勘違いしてるのね。直感で分かったわ)

「ちょっとちょっとお母さぁん、何を言ってらっしゃるの? あたし夏実よ、二木夏実。押しも押されもせぬ、あなたの実の娘でございますよ?」
「……えっ? なっちゃん? あなた、なっちゃんなの……?」
「もちろん。ちょーっと見てくれは変わっちゃいましたけどネ! ついでに一人称もチェンジチェンジ!」

左右にぴょこんと伸びた髪をファサアッとやりつつ、夏実が本日二度目のドヤ顔を決める。お母さんはぽかんとアホの子のように口を開けて、完全に別人と化した娘を見つめるばかりだ。お母さんの驚きっぷりに、夏実も満足している様子。

「さ、ちょっと出かけてくるわ! なんか今すごくいい気分なの! 新しい自分に生まれ変わったって感じでね! なんかこう首から下が別人になったみたいだわ!」
「あっ、ちょっと、なっちゃん……!」
「行ってきまぁ〜す!」

母親の声をよそに、夏実は玄関のドアをバァン! と開けて颯爽と外へ歩き出す!

「新しい町、新しい風景、そして新しい自分! 何もかもが新しいっ! とっても気分がいいわ!」
「ついでに家も新しく……あらぁん?」

夏実はてっきり、今日ここミシロタウンに越してくるような人は、自分たち一家くらいのものだろうと思っていた。

だが――夏実は目にする。お隣もピッカピカの新品であること、そしてまだ配送業者のトラックが止まっていることを!

「へぇ〜、お隣さんも引っ越してきたんだぁ!」

そう! 新居は「二軒」あった!

「新しいのはお隣さんもってことね。ここはひとつ! 挨拶回りといきまっしょい! やるっきゃないのよ!」

得意気にふんと鼻を鳴らして、夏実がずかずか歩いていく。夏実は外見の変身に成功したのをきっかけに、自分の内面にも容赦なくメスを入れていこうと意気込んでいた。引っ込み思案で臆病なかつての自分を捨て去るべく、今までではまずやらなかったようなことにも大胆かつ果敢にチャレンジしていこうというのだ。

して、お隣さん家の扉の前までやってきた夏実。すぅーっと一度深呼吸をして、準備はすっかり整った。お隣さんがどんな人でも、元気いっぱい挨拶して見せよう。これは新しい自分に完全に生まれ変わるために必要な試練なのだっ。夏実は固い固ーい意志を持って、扉をコンコンとノックした。

「ノックしてもしもぉーし?」

今行きまぁーす、という元気な声が聞こえてくる。ふーむ、この声色は女の子かしら、それもあたしと同い年くらいの。一体どんな子かしら、けどどんな子でも仲良くなって新しい人間関係を――。

などと結構のんきしていた夏実の目に飛び込んできたもの、それは!

「はぁーい! こんにちは!」
「こんにち……はぁぁぁああ!?」

夏実が目にしたものを彼女の口から説明することは期待できなさそうなので、私の口から説明しよう。

現れた少女の風貌は――夏実とほぼ同じ背丈の、夏実とほぼ同じ体型だった。ここまでは何も珍しいことではない。その少女は赤・白・黒でカラーリングされたスポーティな服を身に着けていた、夏実とまったく同じだ。アンダーは黒いスパッツ、夏実とまったく同じだ。手にはグローブ、足にはスニーカー、夏実とまったく同じだ。左右にぴょこんと伸びた独特のヘアースタイル、夏実とまったく同じだ。そして頭には白いモンスターボールの柄が入った赤いバンダナ。

夏実とまったく同じだ。

(ど、どどっ、どういうことぉ!?)
(あああ……あたしが! あたしが目の前に<いる>っ!?)

目の前の少女は――夏実とまったく<同じ>だったのだ!

「ま……まさか――D4Cっ!? D4Cの攻撃が始まってるって……!」

夏実は恐怖した。こんな何の取り柄もないただの女子小学生を、大統領が直接攻撃してくるとは! もしかして自分は合衆国にあだなす存在だと思われたのだろうか。これといって何か敵対的な行動を起こした記憶はないし、大体合衆国には行ったこともない。人違いか何かとしか思えない! 夏実の頭はグルグルするばかりだ!

とまあ、混乱の極みに陥ってひたすらグルグルしている夏実を見た相手の少女。しばらくきょとんと首を傾げていたものの、やがてポンと手を打って。

「<引越し>……あっ! もしかしてあなた、隣に引っ越してきたっていう『ナツミ』ちゃん?」

あまりの活舌の悪さに「D4C」を「引越し」と聞き違えられてしまうほどだったが、それは偶然にも会話の扉を開くキーワードになった。

「は? え? あ、はい……確かに今日、お隣に引っ越してきたばっかりですけども……」
「やっぱり! さっきあなたのお母さんがうちに挨拶しに来てくれたのよ。その時に『ナツミという娘がいますので、よかったら仲良くしてあげてください』って言ってたわ」

母の言っていた不可解な言葉の意味を、ナツミはここに来て正確に理解した。母は先にここへ挨拶に出向いていて、その時にこの少女――イメチェン後の自分に徹頭徹尾クリソツなこの少女と既に出会っていたのだ!

「見ての通り、私も今日引っ越してきたばっかりなの。ほら、あそこに止まってるトラック。そこの荷台に乗ってきたのよ!」
「えぇえーっ!? そ、そちらさんもたった今日来たばっかり!? それもトラックの荷台に乗ってぇーっ!?」

ナツミはもう驚きっぱなしだ。何から何まで自分にそっくりな女の子が、手を伸ばせばハイタッチできそうなくらいの近くにいるのだから!

(『イメチェンしたらお隣さんと双子みたいになっちゃった』……これはピッピも月までブッ飛ぶ衝撃……!)
(か、変えてみる……? 細かいところをちょこちょこと……い、いや! そんなわけには行かないわ! だってこのスタイルにたどり着くまで一ヶ月と二十日かかったのよ! 今更ちょこまかいじるなんてできっこない! やりたくない!)
(それに――これは<あたし>が作ったイメージ! このお隣さんに目玉が飛び出るくらいソックリなのは絶対的な事実だけど、それとこれとは話は別っ! あたしはあたしで、他の何者でもないんだから!)

一人で葛藤しつつ、チラチラとチラーミィよろしくお相手の容姿を窺う。

(で、でもほら、細かいところを見ていけば結構違いが……)
(……ああぁあ〜っ! 違いが見つかるどころか細部まで余すところ無く徹底的に似ていることを今一度再認識せざるを得ない〜っ!)

見れば見るほど完璧に一緒で、ナツミはその度に衝撃を受けまくるのだった。もういろいろとボロボロだ。

「ええっと、大丈夫?」
「だ、だいじょぶです……すいません、めっちゃくちゃ取り乱しちゃって……」
「ううん。仕方ないよ。だって扉を開けたら、自分にすごくそっくりな人がいたんだもの。私だってすごくビックリしたわ。でも、なんだかすてき! めったにできない経験だもの!」

ビックリした、そう言いながら朗らかに溌剌とした笑みを見せる少女の姿を、ナツミは食い入るように見つめる。明るく、アクティブで、元気な女の子。自分はこんな女の子になりたくてイメチェンをしたのだ。彼女の様子を見るに――イメチェンの方向性そのものは、決して間違っていなかったのだと自覚する。

「そっか……そうですよね! こんなこと、ちょっとやそっとじゃ起きないですし!」
「うん! 私とナツミちゃんだから起きたことだよ。これって、なんだか運命を感じちゃうね!」

はきはきと明るく話す少女に、ナツミはとても強い好感を抱いた。こんな人のそっくりさんなら、あたしだって大歓迎だ。暖かな気持ちが満ちていくのを感じる。

「改めて――初めまして、ナツミちゃん。私、<ハルカ>っていうの。よろしくね!」
「はい! ハルカさん、よろしくお願いします!」
「あははっ、そんなにかしこまらなくていいよ。もっと気軽に呼んでほしいな」
「気軽に……じゃあ、ハルカちゃん! よろしくね!」
「うん! その方がいいよ! ナツミちゃん!」

ナツミとハルカ、ハルカとナツミ。まるで鏡写しのような二人が、互いに手を取り合って笑う。

「あっ……そうだ。ひとつだけ聞かせて」
「えっ? ハルカちゃん、どしたの?」
「私のこと――どこかで見た記憶って、無いかな?」
「ハルカちゃんを……見た記憶……?」

今までとは少し違う神妙な面持ちで、ハルカがナツミに訊ねた。自分をどこかで見た記憶は無いか。突然の質問に、ナツミは大いに困惑した。

(ど、どうしよう……)

何故か、というと。

(全っ然そんな記憶無い……! もしかして超昔にハルカちゃんとどこかで会ったり遊んだりしたのかもしれないけど、さっぱり思い出せない……!)

これっぽっちも記憶に無かったからである。ハルカも「初めまして」と言っていたし、多分これが初対面のはず。けれどあの訊ね方は「昔どこかで会っていて親しくしていた友達」に訊ねるような言い方だ。あるいはどこかで面識があったのかも知れない、だが悲しいかな、ナツミはちっとも思い出せなかった。

追い詰められたナツミは、最後の手段を取ることにした。

「ご、ごめんなさいっ! まったく無い、です……昔どこかで会ってたら、本当にごめんなさいとしか言えないよ……」

最後の手段というか、普通に謝罪した。忘れたことを怒られようとも、やっぱり人間正直なのが一番なのだ。

「ホントに? ホントだよね?」
「うん……はあ……あたしってこう、人の顔覚えられなくって……」
「私たちは完全に初対面で、ナツミちゃんは私のこと全然知らなかった、顔も見たこと無かった、そうだよね?」
「そう、その通り……あっ、でもでもっ、今のでハルカちゃんの顔は覚えたよ! 覚えたっていうか憶えた! うん、今ので憶えたっ!」

これが完全な初対面だ、ナツミがそう言いきったのを見たハルカは。

「――よかったぁ! やっぱり運命だったんだね! すっごく嬉しい!」
「へ? ハルカちゃん、あたしには何がなんだかさっぱり……」
「ふふふっ、何でもないよ。ただ、ナツミちゃんに会えてよかったってだけ!」

ナツミの立てていた予想に反して、大いに喜んでいた。いまいち理由が飲み込めなかったものの、ナツミにとってよい流れになっているのは間違いなかった。

「ごめんね、ヘンなこと聞いちゃって」
「ハルカちゃん……」
「でもね、聞いときたかったんだ、どうしても。もしかしたら、って思っちゃって」
「……分かる、分かるわその気持ち! だって<納得>はすべてに優先するもの! あたしだってそう思う!」
「分かってくれてありがとう、ナツミちゃん。さ、この話はもう終わりにして……」

うちへ上がってお茶でも飲みましょ――ハルカがそう言いかけた、刹那のことだった。

 

「うわああぁあ! たっ、助けてくれえっ!」

 

二人の耳に飛び込んできたのだ! 助けを求める誰かの悲鳴がッ!





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本当は12/4まで待つべきところですが、今日の朝から書き始めたらほぼノンストップでここまで来た(来てしまった)ので投稿しました。いいや! 限界だッ! (投稿ボタンを)押すねッ!

キリのいいところというか、本来この先まで書いて初めて第一話だろ! と言われそうなところでぶち切れてますが、
来年の頭くらいから本文を書き始めて、年末くらいにどーんとまとめて公開できればいいな、と思ってます。
うちにしては珍しく(自覚有)、全編通して明るくド根性なノリで攻めていきたいです。
がんばれナツミちゃん! 泥まみれになっても血まみれになってもイメチェンを果たすべくがんばるのだ!

それにしてもセリフにも地の文にも後書きにもつくづく「!」が多いお話だと思います。


(以下余談)
先日遅ればせながらアルファサファイアを始めまして、せっかくなので女の子主人公を選んだのですが、
うちの悪い癖で小説と絡めたくなり、さりとてルビサファ♀主人公モデルのキャラクターなんで誰も居ないぞ……
と諦めかけていた時、「かごの外へ」に「ホウエンに従姉妹がいるモブ(※大介君)」がいたことを思い出し、
じゃあそのキャラクターになりきろう、せっかくだからここで名前も付けちゃおう! ということで爆誕したのが
このナツミちゃんです。
外見は本文中でもしつこく触れていますが、ルビサファ♀主人公そのものです。が、本人が知恵を絞って
イメチェンした結果偶然似てしまったというあまり類を見ない(考えついてもやらない系のアレ)設定の持ち主であり、主人公本人ではありません。
そんなある意味「コスプレしただけのただの一般人」とも「ハルカとユウキに続く第三の主人公」とも言える何とも言えない立ち位置のナツミちゃんを主人公に、
うちがプレイ中に起きた出来事や思いついたネタを混ぜた半プレイレポ的な凸凹珍道中を描けたらいいな! なんて思っています。期待せずにお待ちください。


(さらに余談)
投稿ボタンを押す直前に、なんとなくスレ全体を読み返しました。
するとなんということでしょう! ナツミちゃんが既に登場していて目を疑いました。
これこそD4Cの攻撃と違うん? と思いました。

(´・ω・`)<鳩さん……名前が衝突したのも運命なんや……堪忍な……


(エクストリーム余談)
「鳩さんの新作と586の新作でキャラクターの名前が衝突する」事件は、実は去年も「シズちゃん」で起きていました。

(´・ω・`)<あのね、「ツクシ」のお母さんやから「スギナ」にしてん……原作に無い名前やったしこれしかない感あったから即決やってん……


完。


  [No.3534] ポケモン福祉養護施設『葛の葉』の日常 投稿者:NOAH   投稿日:2014/12/18(Thu) 00:00:43   231clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ホウエン地方、シダケタウン。

ポケモンコンテストはあるが、小さな田舎町である。が、療養地としても有名な場所で、そこへ移住してくる者たちは多い。


その町に、最近新しくある施設が建てられた。トレーナー側の事情でめんどうが見れなくなったポケモン・怪我や病気、生まれつきなものや事故で体の一部が欠損したポケモン・親を亡くしたポケモンなどを預ける施設である。


その施設を建てたのは、ジョウトからやってきた2人の姉妹である。姉はポケモンドクターとしてとても有名な人物で、その妹はブリーダーをしている。


そしてこのお話しは、この2人の姉妹と、彼女たちの支援者である、イッシュ地方ではその名を知らない捕獲屋たちのお話しである。







<Case File_1 "英雄"ザングースと"居眠り"チルット>


「さ、診断は終わりよ、新しい包帯持ってくるからここで待ってなさいね、ザングース。」


顔の左側と右足の付け根辺りが禿げ、そこから覗く皮膚は赤く腫れ上がっている。
左目は色素が抜けたのだろうか、本来その瞳の色は黒であるはずなのだが、灰色に変色している。
さらに、爪は左右で長さが違い、こちらにも火傷痕がある他、大小様々な傷痕が痛々しくその両手両腕に残っている。
しかし当のザングースは特に憶することも気にする様子でもなく、むしろ堂々とした態度を取っており、両腕を組んで治療室の椅子にどかりと座っていた。


「クルミ姉さん、診察終わった?」

「あら、お帰りカエデ。あとはあの子に包帯巻けば終わり。」

「?……あ、ザングース。ここにいたの。」


クルミと呼ばれた、白衣を来たハニーブラウンの髪の女性の下にやってきたカエデと呼ばれた少女は、その自慢の赤い髪の上で図太くも居眠りを決め込むチルットと共にやってきた。落ちないようにこっそり手で支えているあたり、その行為を許容してるようである。

が、その居眠りチルットを目にした瞬間、それまで堂々としていた態度のザングースが一変して心配そうな顔付きになる。
椅子から降りて慌ててカエデに近づき、眠りほうけているチルットの顔をそっと覗き込んできた。


「はい、あなたに預けに来たの。姉さんのギャロップにうっかり踏まれそうになったのよ。」

「あら、ヴァニラが?」

「うん。ていうか、踏まれそうになったのに普通に寝てたよこの子。一度起こしたんだけどね……。」

「ふらふらとあなたの頭上に移動してまたそのまま寝ちゃったってわけね……ほんと図太いわね……。」






<Case File_2 "盲聴"バクオング>


「朝っぱらからうるっさいわね……なんなのよ一体。」


いつもは静かなシダケタウン。しかしその日の朝は、カナシダトンネル方面から響く爆音によってかき消されていた。
その爆音に不満をもらしながら、寝癖だらけのハニーブラウンの髪をボサボサとかき乱すクルミに、彼女の妹のカエデが真新しい白衣を渡す。


「なんか、カナシダトンネルに住み着いたバクオングが暴れまわってるんだって。ジュンサーさんがきて、その対処にリラさんが向かってった。」

「はぁ?なんで車椅子のリラが……。あぁ、ヴィンデとシュロは昨日から留守にしてたわね……。」

「そういうこと。もう少ししたら連絡が来るんじゃないかな。」

「なるほどね、だからリーリエ嬢ご自慢のお紅茶さまが淹れられてないわけだ。
バクオングか……カナシダトンネルはゴニョニョの一大生息地だからね。その中の一匹が進化したのかしら。」


まあ今は考えても始まらないか、と考えて、クルミは寝癖だらけの髪を整えようと洗面所へとその足を向けた。そしてそれと入れ違うように電話が鳴り、カエデがその受話器を取った。


「お電話ありがとうございます。こちら、ポケモン福祉養護施設『葛の葉』の秋風です。」

『あ、カエデちゃん?我らがミス"破天荒"はお目覚め?』

「あ、リラさん。うん、姉さんならさっき起きてきて、いま寝癖治してる。」

『そ。なら早急にカナシダトンネル内に来てって伝えといてくれる? 爆音の元凶さん、ちょーっと様子が変なのよ。』







人間にも特別養護施設があるんだからポケモンにもあっていいじゃないかと考えて出来た施設が
「ポケモン福祉養護施設『葛の葉』」


我が家のオリジナルトレーナーの設定を何人か改変したうえで小出ししてみました。


ほんとはちゃんとここの長編板に書くつもりだったんですがお仕事が忙しくて進まなかったのでこちらの一粒万倍日の企画の方へと流してみましたん。


Case File_1 は、体中に重度の火傷痕を負いながらもポケモンのタマゴを助け出したザングースと、大火事の後でそのタマゴから孵ったチルットのお話し。


Case File_2 は、生まれつき盲聴のドゴームがバクオンに進化して、その突然の事態に混乱してカナシダトンネル内で暴れてしまうのを、クルミさん(オリトレその1・ポケモンドクター)とリラさん(オリトレその2・車いすに乗ったエリートトレーナー)が鎮めるお話しです。

それぞれザングースとチルットのお話しは前々から書き溜めていたもので、バクオングの話しはツイッターで

「生まれつき盲聴のバクオングが、どれくらいの声量を出せば人間や周りのポケモンたちに迷惑をかけないか試すために、毎日のように大声を出していたら、とかどうでしょうか。」

というりぷを頂いたのをきっかけにそれだ!!と思って書いてたものです。
内容はちょっと違う感じになってしまいましたけどね。

それぞれきちんと形にするつもりではいたんですけどね。時間が許してくれませんでした。でもまた機会があったら再挑戦するつもりです。




to 砂糖水さん
一粒万倍日企画にまた投稿させていただきました。
前に載せていただいた『義足、ワイン、薔薇の花』だけのつもりだったのですが、結局このお話しも書きかけになってしまったのでリサイクルさせていただきました。


まだまだお休みが必要でしたら焦らずゆっくり休んでくださいね。砂糖水さんの体調が良くなりますように。


NOAHより
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  [No.3540] 感想まとめてどーん!&お世話になりました的な挨拶 投稿者:ななし   投稿日:2014/12/31(Wed) 18:23:25   255clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

皆様、大変長らくお待たせいたしました。
溜めに溜め込んだ感想でございます。
企画主なのに思い切り放置かましてすみませんでした!!!(土下座
来年以降につきましては、宣伝はしないけど、投稿されたものにはなるべく感想書くよーって感じです。
今までとあんまり変わりませんね!すみません!
感想はかなり前に書いたものと今日になって書いたものが混在しているのでなんだかちぐはぐなとこがあるかもです。
あとわりと投げっぱなしな感想も多いです。
重ね重ねすみません。


・少女の旅・2 - WKさん
続きキター♪───O(≧∇≦)O────♪
おおおお、彼女が引きこもってた理由編ですね!やった!
ああああああまだ幼かった彼女には酷な出来事でしたね…。
なんて軽々しい言葉で表せるようなものではないでしょう…。
こんな経験をしてもわ旅をしようと決意した彼女の強さには頭が下がります。
前のを読み返すと、余計にそう思いますね。
色々と吹っ切れたんでしょうか。

>  視界の片隅で、ちらちらと星のような光が見えた。
>  腕の中の塊が、熱さと重さを増した。
>  
>  ぼろ雑巾が、飛び出した。
>
>  沢山の金色の星が、向こうに向かって流星のように飛んでいく。大きいのも小さいのも、沢山。

ここの表現がまるで目に見えるようですごく好きです。
生死の境で本人たちそれどころではないのはわかっているんですけど、場違いなほど綺麗だなあって。

なんかこう、他の感想に比べるとテンション低いように思うかもしれないですけど、めっちゃ続き待ってますからね!
お願いします!!!


・鋼の翼 - きとらさん
最近きとらさんのうまい話を読んでは、うめえ(ムシャア うめえ(ムシャア ってやっている気分です(
本人以外意味不明ですみません。
最初、スクロールバーの長さを見て、おおう…となったんですが、読み始めてみればさほど長さは気にならずあっという間に読めました。
カップリング要素がたとえなくとも面白いです。
もちろん、最後のヒンバスであるとか石集めしてるところとか、公式キャラであるからこその面白さもあるんですけどね。
なんて書くと、じゃあオリジナルでなんて話になりそうですが、やっぱりこれはダイゴさんとミクリだから面白いんだろうなあとひしひしと感じました。
というか、カップリングなしでも面白い土台の上に公式キャラ同士のあれやこれやがあってさらに面白さが引き立っていると思うんですよね。
あーちなみにBLは基本苦手なんですがミクダイは割と平気です(
なぜでしょうね(


・代理処真夜中屋(仮) - GPSさん
いやあ、もう、読んでてやられた!と思いました。
室内の様子が詳しく書かれている冒頭読んで、ああ、これが私に足りないものか…と切に思いました。
具体的な描写って苦手なのですよね…苦手とか言ってないで書けやオラって話なんですけどね!(涙
あと私がいつか書きたいなと思って温めていた話とキャラとかネタが被ってて涙涙涙…な、泣いてなんかないんだから!!!
シリーズ化ですとお!いいぞもっとやれ!(
って書いてたんですけど、続ききてますね…(白目
どう解決するのか気になるところで終わってたので、嬉しいです。
こ、この涙はうれし泣きなんだから!(


・ディアマイフォロワー - ピッチさん
ポケッターってポケッターって…これですか?!
http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=3283&reno= ..... de=msgview
最初、タグにWKさんの名前あって、??だったんですけど、これのことだったのですね…。ええ、だからと言って何もないです(
ジム戦するわけでもコンテストに出るわけでもないそれを「地方巡り」と呼ぶそのセンスが素晴らしいですね。
うまくその状態を言い表していて。
実際、成功する人なんてごく少数で、主人公のような人がいっぱいいるんでしょうねえ。
たいていは、本気じゃなかったなんて嘯いて日常に戻っていくのでしょうけど。
でも、そうやって戻ることも、一生懸命トレーナー業に励むでもない中途半端な人がきっといるんだなあ、ってこの話を読んでしみじみ思いました。
彼が旅をやめない理由ってなんなのさ!と気になるので続きを所望いたします!
待ってます!!!


・義足、ワイン、薔薇の花 - NOAHさん
やっぱりこういう、福祉関係の話は珍しいので、それだけで、おっと思いますね。
ポケセン見てるとなんだか万能にも思えますけど、実際にポケモンがいる世界を思い描くと、四肢の欠損を抱えた子たちはざらな気がしてきます。
あれだけ派手なバトルしたりしますし。
オーダーメイドの義足となると、細かい測定とかしないといけなかったりと大変そうです。
でも体に合ったものが一番なんですよねえ。
ちゃんとしたものを身に着けたらどう変わっていくのか、考えると楽しみです。


・負の味 - WKさん
WKさんは短くまとめるのがお上手ですよねえ…はふう。
というかこれだけでちゃんと完結しているような…。
これは何か長編の一部かなんかなのでしょうか。
もっと書いていいのよ?(
負の感情を抱きすぎてもはや人間ではない何かに変貌してしまた彼女の末路を想像するとぞっとしますね。
そこまでいくともう救いようがない…。
手の施しようがないのは明らかで放置するしかないんですけど、なんというか、それに対して平然としている様が怖いというか恐ろしいというか。
ああ、なんて表現したらいいんでしょうね。


・鯔の皮の賛美歌(仮) - No.017さん
www放置気味の時なのにありがとうございますw
海首の話と合わせて読むと楽しさ倍増ですね!(誰向け
移動時間が具体的で、現実感があります。
ふわっとさせがちなわたしは反省しきりです。
> 続くかもしれない
つ、続けましょうよ!!!
ああ、でもお忙しいですもんねえ…。
気長にお待ちしています。


・永遠の話 - 音色
うにゃあああああなんすかこれ!!!
素晴らしい!!!
心躍る設定!!うましうまし!!!
こういうどこか気取った感じの口調大好物です。
XY未プレイなもので細かいとこよくは知らないんですけど、ギルガルドがかっこいいのはわかりました(
悲しい結末へ向かうのか、それともそんなの笑い飛ばす強さがあるのか…。
って、
> 続くかどうかは知らない
続けましょうよおおおおおおおおお!!!(じたばた

・シンデレラ・ガールはくじけない(仮) - 586
しょっぱなからハイテンションすぎるwww
ずっとツイッターでナツミちゃんの珍道中…じゃなくて道中を読んでて楽しみにしてたんですけど予想をはるかに上回るハイテンションでななしさんびっくりしてますよ。
どうして超地味っ娘だった彼女がハイテンションキャラになったんでしょう…(困惑
いくらイメチェンするにしても変わりすぎやん…(´・ω・`)
地味っ娘メンタルこそ偽りだったのね…(いいえ
ハルカちゃんがナツミちゃんにした質問の真意とは…これ伏線です?
ちなみに名前被りについては…お二人って気が合うんですね!(


・箱入り娘の一人旅(出会い編 ・ミシロにて。 - αkuroさん
まとめてになりますー。
続きの投稿ありがとうございます〜。
エレンちゃんそれにしても方向音痴すぎやしません…?
大丈夫かなと読者も心配になるレベル…。
あれ、前も書きましたっけ?
そんでもって、エレン、ポケモンをもらうの巻。と思ったけどそれにしてはちょっともらうシーンあっさりですね…。
まあこれから旅立つぞー!ってことで。
これ、ユウトくんがエレンちゃんのお世話係になる、とか…?いやいやそんなまさか。
先行き不安な彼女ですが、一体どんな旅路になることやら…。


・ポケモン福祉養護施設『葛の葉』の日常 - NOAH
おおお、いいですねこの設定。
養護施設か…。色々と妄想が膨らみますね!(
卵の頃とはいえ、危ない目に遭ったのにチルットのこの図太さ…w
反対に自分のことは脇に置いてまで心配するザングースが愛おしいです。
何を思ってザングースは卵を助けたのか…今もって心配しているところを見るとそれなりの理由がありそうですね。

盲聴バグオング…盲聴って言葉の響きだけでなんだか悲しい感じですね。
助けてあげたいですね。
ところで車椅子のリラさんというのも気になりますね。
その辺のエピソードは別の機会ですかね…。
そちらも楽しみにしてますね(キラキラ
是非とも完成した暁には投稿お願いします!!!

> まだまだお休みが必要でしたら焦らずゆっくり休んでくださいね。砂糖水さんの体調が良くなりますように。

優しさが!半月遅れで届いた優しさが!痛い!(
元気なくせにさぼっててすみませんでした!
お気遣いありがとうございました!
焦らずが焦げ(こげ)的な何かに見えたとかそんなことはないですよ?(



感想書き漏れありましたらご連絡お願いします!!!

******

最後に、皆さんへお伝えしたいことがあります。
もっと…感想書こう?
いろんな物語であれだけ語られているように、言葉にしないと伝わらないのです。
拍手数いっぱいもらうより、たった一個の感想のほうが心に響きますよ。
管理人の鳩さんもツイッターでこういっています。

https://twitter.com/pijyon/status/462307107224559616
なんか、面白かった同人誌の作者さんにツイッターリプライで感想送ったら「感想でモチベ上がったので続編出しちゃいました」って言われたのでみんなどんどん感想送れ。感想送ると続編が出来るらしいぞ!!!!

同人誌かどうかに関わらず、だと思います。
感想もらって嬉しくない人は…あんまりいないと思います。
感想の返信に困るから〜ていうわたしみたいな人種もいますが、嬉しくないわけじゃないですよw
だから、どうか感想を…。
みんなは続き読みたくないんですか!!!
わたしは読みたいぞ!!!!!!!
まあさぼりまくってたわたしが書いても説得力ゼロですけどね!!!

あと、書き手の皆様へ。
完結しないことを恐れないでください。
続きは読みたいけど、無理して書いてほしいわけじゃないんです。
読みたいけど!読みたいけど!!!!
でも、追い詰めたいわけではないのです。
ご自分のペースで書いてください。
わたしも感想書くの頑張るから…。



ていうか謝罪のほうが先でしたね()
突然こんな企画をぶち上げたくせに、途中から思い切り放置してすみませんでした!!!!
身の丈に合わないことをするものではないなあと反省しました。
でも、予想以上にみんな書きかけ作品溜めこんでいるんですねえ…。
こんなに来るとは思ってなかったです。
だからって感想書くのをさぼる言い訳にはなりませんが…。
ええ、ほんっとにすみませんでした。

放置かましてる間にも投稿していただきありがとうございました。
冒頭にも書きましたが、宣伝はしないけど、書きかけ小説はいつでも受付中ですぞ!

そんなわけで。
本年は大変お世話になりました。
ご迷惑もおかけしました。
来年もこんな感じだと思いますが、改善へ向けて努力していく所存なので、何卒よろしくお願いします。

ななし


  [No.3603] 開店休業状態だけど投稿は受け付けてるのですよ 投稿者:ななし   投稿日:2015/02/18(Wed) 21:23:14   92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日

タイトル通りです。
まあでも感想書くのは遅いですが…。
投稿してもいいのよ…?


今年これからの一粒万倍日

2月
18(水) 23(月)

3月
2(月)10(火) 15(日)※ 22(日) 27(金)※

4月
3(金)6(月)9(木) 18(土) 21(火)※ 30(木)

5月
3(日)※ 15(金)※ 16(土) 27(水) 28(木)

6月
10(水) 11(木) 22(月)※ 23(火)

7月
4(土)※ 5(日) 8(水) 17(金)※ 20(月) 29(水)

8月
1(土) 11(火) 16(日)23(日)28(金)

9月
4(金) 12(土) 17(木) 24(木) 29(火)※

10月
6(火)9(金)12(月) 21(水)※24(土)

11月
2(月)※ 5(木) 17(火) 18(水) 29(日) 30(月)

12月
13(日) 14(月)※ 25(金) 26(土)


(※)一粒万倍日 + その他の吉日

引用元
http://www.xn--4gqo86mdy5bh3z.net/


  [No.3618] 【狐の涙石】 ルチルクォーツの物語 投稿者:ラクダ   投稿日:2015/03/02(Mon) 23:57:24   150clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日】 【書きかけ】 【芽出し中】 【狐ポケモン

 いろんな石を売るお店、いしやへようこそ! 
 何かお探しですか? 炎の石、水の石などの進化関連はこちらに、コハクや化石の類はあちらのショーケースにありますよ。そちらの棚には各種鉱物標本を取り揃えておりますので、どうぞごゆっくりご覧くださいね。

 
 はい、お呼びですか? 何か気になる物が見つかりましたか。
 ああ、こちらは変わり水晶の一つ、ルチルクォーツですね。透明な水晶の中に他の鉱物の針状結晶が内包されたものです。まるで金色の針がたくさん入っているように見えて、とても綺麗でしょう? 原石や磨いてカットしたもの、これはルースというんですが、どちらもコレクターの皆さんに大変人気があります。
 
 これらの石は厳密には宝石ではなく、半貴石という扱いになります。一般的には天然石やパワーストーンとも呼ばれていますね。宝石ではないと聞いてがっかりされる方もおられますが、別に価値がないというわけではありませんよ? 宝石は希少性の高さや美しさ、年月を経ても劣化しないなどの特徴を持つもので、半貴石はその定義から微妙に外れるものだと解釈していただけばいいと思います。例えば石の産出量が多いとか、人工的に作られたものであるとか。とはいえ、定義に外れるといっても美しいものは沢山ありますし、鉱物学上ではともかく流通上では案外宝石と半貴石の区分は曖昧なことが多いですね。
 
 さて、話が少々それましたが、今からパワーストーンとしてのルチルクォーツについてお話したいと思います。
 この“ルチル”はラテン語で「黄金色に輝く」の意味を持つ語が起源です。黄金の水晶、ご覧のとおりまるで金そのものを包み込んでいるような石です。この姿から、特別に美しく輝く物は金運のお守りとして、また集中力や精神力を高める力があるとして珍重されてきました。勝負運を高めたり人を集める力があるとも言われているので、起業家の方たちに好まれる傾向があります。
 その謂れとなる物語がカロスに伝わっておりまして。お聞きになりますか? ……はい、ありがとうございます。では長くなりますので、どうぞそちらの椅子にお掛け下さい。
 さて、と。それでは始めましょう、ルチルクォーツにまつわる物語、題して【狐の涙石】。
 

 昔々、カロスのある地方に鉱山の採掘で名を成した街がありました。その山一帯には良質の鉱石や貴石類が豊富に眠っていると噂され、それらを目当てに押し寄せる人々で大層賑わっておりました。
 その噂を聞きつけて、遥か遠い遠い地方から一人の青年がやってきました。田舎の貧しい青年は、金銀宝石が湯水のように湧き出るという夢のような話を信じ、長い長い旅路を一心に駆け抜けてきたのでした。
 ところが、慣れない場所で右往左往しているうちに、彼は荷物を盗まれ、ならず者相手のポケモン勝負に負けて手持ちを奪われ、あっという間に無一文になってしまったのです。
 鉱山で働くためには相棒となるポケモンが必要で、ポケモンを捕まえる為にはボールが必要で、ボールを手に入れる為にはお金が必要で……しかし、彼には何も残っていませんでした。
 目の前が真っ暗になった時、救いの手を差し伸べてくれた老人がいました。老人は鉱山の麓の森の管理人で、路頭に迷った青年を見かねて声をかけてくれたのです。
 青年は老人の元に身を寄せ、森番の仕事を手伝いながら日々を過ごすことになりました。助けてもらった恩を返そうと、青年は熱心に仕事を手伝い、老いた森番の代わりに進んで力仕事をこなします。良い働き手が来てくれたと老人は喜び、何くれとなく世話を焼いてくれました。
 忙しく、それなりに充実した毎日でしたが、未だ採掘の夢は心の奥底でくすぶっていました。気がつくと、彼はいつも山を見上げては溜息をついているのでした。
 
 ある日、平穏な日々を揺るがす事件が起きました。一匹の凶暴なポケモンが、鉱山から大切な物を奪って逃げたというのです。森に逃げ込むかもしれないからくれぐれも気をつけろ、という伝言を聞いて青年は勇み立ちました。もしその犯人を捕らえる事が出来たなら、自分にも採掘場へ出入りする許可が与えられるかもしれない、と思ったのです。
 果たして、そのポケモンは森に現れました。見慣れない色が森を走るのを見つけ、意気揚々と後を追った青年は息をのみました。


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 ふと気付けば今日が一粒万倍日だったので、思い立って投稿。
 「一作仕上がるまで次を出さない」とか言った気がするけど、そんなことはなかったのさ!
 こちらが短いので何とか芽が出そう、かもしれない。
 
 炎馬の王? 脳内でまだ逃げ回ってます……。 ※進捗していない