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  [No.2082] 友人がポケモンに侵されている件について 投稿者:紀成   投稿日:2011/11/21(Mon) 19:18:50   64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

カントー地方……間違えた、関東地方、西寄り。マサラタウンほどではないけどタマムシシティ、ヤマブキシティには程遠い土地に、その学校はある。
来年度の受験生向けのパンフを見せてもらったが、そこには『おいこの学校何処だよ』と通う私が突っ込んでしまうくらい嘘で覆われた内容と写真が載せられていた。堂々と野球部載せんなよ。知ってるんだぞ、一学期期末試験の結果発表の日、お前達が甲子園予選を戦いに行ってコールド負けして帰ってきたこと。なんだこの爽やかな笑顔は。この予算泥棒。
これ以上書くとカゲボウズ塗れになりそうなのでやめておく。ことの始まりは、甲子園おろか夏休みも終わって二学期が始まって二週間近く経った日のことだった――


これはどういうことなのだろう。パンデミックなのか。今まで何の予兆も無かった。私はまだいい。元々好きでこうしてサイトに小説を投稿しているくらいだから。だが、彼らは。彼らはどうなってしまったのか。
女子トイレ。教師陣が使えないのをいいことに休み時間は携帯電話による通話、メール、その他諸々校則違反のオンパレードの地となる。
そこの一角で、友人がDSをいじっていた。覗かせてもらえば、そこはイッシュ地方だった。
「お前ポケモン持ってたの」
「最近ハマった」
よくもまあぬけぬけと言えるものだ。中一の時私の趣味を聞いて『この歳でポケモン?ワロスwww』などと言っていたお前が!
「ブラックか……」
「紀成は持ってんの?」
「あたぼうよ」
何か意味が違う気がしたが、彼女は気にしない。図鑑を見てため息をつく。
「あー、サファイア今更やるのもな」
「図鑑完成か」
「紀成ってどのくらいポケモン持ってんの?」
ここでちょいと自慢したくなる。小学校の時はテレビゲームなんて持っていなかった。コロシアムをプレイしている男子が当時は珍しいジョウト地方の御三家を持っていて、羨ましかった覚えがある。
今度は私がその男子になる番だ!
「ほとんど持ってるよ」
友人が喰らいついてきた。
「最初の三匹は!?」
「え……うん。最終進化系なら」
「タマゴ頂戴!」

とまあ、ここまでで『中間終わったらね』と言って戻る。いやー驚いた。メアド交換して、中間終わった後で『欲しい奴あったらメールして。タマゴ生ませるから』とソフトを渡す。
で、その夜のこと。原稿をしていたら、メール着信の合図の曲が流れてきた。差出人は友人。

『おいなんでこんな伝説持ってんだよ』

そりゃあ、サファイア→パール→プラチナ→ソウルシルバー→ブラックと経由してきたんだもの。プラチナは数回やり直してギラティナが二体くらいいたはずだ。確かディアルガも二体、ルギアも……
『どれか一匹くれない?』
さてどうしようか。被ってるやつを教えてもらう。一番弱いディアルガをあげることにした。イベントで入手したものだ。
『ありがとう!』

それから早二ヶ月――

11月21日、月曜日、一時限目。左斜め前の友人が下を向いたまま動かない。ゲームだ。しかも機種はかなり古い。十年くらい前に発売されたGBA。まだ充電できないSPより前のモデルだ。今の小学生に見せたら、きっとカチンとくる答えが返ってくることだろう。何せ白黒画面のゲームの存在を、『戦後?』というくらいだから。
だがしかし。いやしかし。入っているソフトがいやに大きい。アドバンスのソフトはきっちり挿入できるサイズのはずだ。だが今入っている物は半分以上はみ出ている。
……まさか。
休み時間、見せてもらった。サファイアより色が少なく、グラフィックも粗い。ヒノアラシが戦っている。
そのまさかだった。

彼女は、ポケモン『銀』をプレイしていたのだった。

「ちょっと、電気ランプ点滅してるんだけど」
「ああ、何かメモリ切れちゃって、セーブできないんだよね」
「え、じゃあこのまま?」
「そうなるね」

二次元目の日本史。隣の男子がしきりにその古いアドバンスと格闘している。どうやらジム戦らしい。セーブできないのは辛い。一度負けて、鍛えなおしたら勝てたという。ちなみに所要時間、四十分くらい。
一時限の時間は五十分。何やってんだ、お前ら。
そして三時限目前の十分休み。さっきの友人がブラックをプレイしている。ディアルガが戦っている。
「おい紀成、このディアルガ、お前がくれたやつだよ」
「……」

すっかり忘れていた。ゴメン、ディアルガ。


――――
オチなし。でも本当のこと。いいよね、ポケモン(遠い目)


  [No.2649] 続?友人がポケモンに侵されている件について 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/26(Wed) 20:13:15   70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

登場人物

私:語り手。時折辛辣な突っ込みを放つ。周りからは酷いと良く言われるが、この場合は相手のボケが酷いのでそこまでこちらは悪くない。
K:友人。別に自分の意思の弱さに絶望して自ら命を絶つような性格は全くしていない。そして好きな子もいない。今のところポケモンがいればそれでいいらしい。
S:主に国語担当の先生。今回は古典講読の授業を受け持っている。パッと見カリスマデザイナーのような外見をしている。どんなだよ!好きな物は愚痴を言うこと、嫌いな物はうるさい子供。
何で学校の先生してるん?


美術室にて。

ガガガガガガガガガ

「ねえ紀成ー」
「何」
「欲しいポケモンやっと思い出した」

ガガガガガガガガガ

「あんまり珍しいやつは私でも持ってるか分かんないよ」
「エネコ欲しいんだよね」
「エネコォ?ブラック貸した時にボックスにいなかった?」
「わかんない。でも欲しいんだよね。ほら、あたしのブラック2じゃん?なんだっけ、ウサギの」
「ミミロル」
「そうそれ。それしか出てこない」

ガガガガガガガガガ

「別にいいけど、進化はそっちでしてね。石無いんだから」
「りょうかーい。後さ、電気タイプの」
「電気タイプだけで分かると思ったら大間違いだ」
「えー、なんだっけ。エレキブルの」
「持ってない」
「違う違う。一番最初の」

ガガガガガガガガガべキッ

「あ、折れた」
「力入れすぎなんだっての」
「変えてもらわなきゃ……。で?エレキッド?」
「そうそう。お願い!こっちは炎のやつ捕まえたから、交換!」
「ブビィね。分かった分かった。せんせー、糸ノコの歯が折れたー」

歯を変えるのに時間がかかるということで、もう一台でやる。再び部屋に響き渡る、耳障りな音。

「そういやさ、W(男子の名前)に言ったらミュウくれるって」
「アイツが?もらう前にID見た方がいいよ」
「……最初っから信じてないんだね。別にいいけど。てかさ、まだSS返してもらってないの?」
「催促してるんだけどねー。どうしよ」
「頼むよー、ルギア欲しいんだから。ついでに言えばグラードンとレックウザも欲しい。あとミュウツー」
「グラードンはともかく、レックウザはHG無いと無理だよ。あとミュウツーは殿堂入り後だし」


↓ここから先はポケモン要素ないです


古典講読。受験生にはいらない授業と仕分けされ、来年から無くなるらしい。だから私達は事実上、最後の生徒となる。
……シリアスな空気で始まったが、そんなことを思わせる暇などこの人は与えてくれない。
何で授業開始から二十分経っても話してんだよ!授業しろよ!そして皆も止めろよ!受験生だろ!

「だからさ、何で高三からいきなり中一の担任になったのか分からないワケよ」
「校長先生に直接聞いたら?」
「聞いたよ!『これはどういうことですか』って!でもさ、あの人いつもの飄々とした感じで『えー、いやー、それはですねー』しか言わないんだよ!」
「何か思い当たること無いんですか」
「……」

あるらしい。私はため息をついた。あくまで私は冷静な生徒を演じる。時折辛辣な突っ込みも入れる。
だってそうしないと、誰がこの先生と皆を止めるのよ!

「そういや文化祭といえば」
「何ですか」
「いや、一番初めに受け持ったクラスでさ、文化祭にクレープ作ることになったんだよね」

聞けばスペースがないため教室で、ホットプレートで焼くことになったという。生徒達にホットプレートを各自で持って来させ(ある人は)、教室内のコンセントをタコ足配線にし、『さあやるぞー』と、一斉に電源を入れた。
そして。


ブチン


「……」
「焦ってさー、慌てて電源消して、幾つか隠させて、来た人に『いやー、電源入れたらこうなっちゃったんですよー』ってごまかしてさ」
「ブレーカー落ちるって予想しなかったんですか?」
「白熱灯が沢山あるから、電気タンクみたいなのあるんじゃないかなー、って。いや、業者のおっちゃんがすごい怖い人でさ、何回頭下げたことか」
「……」

怖いのは業者さんじゃなくて、それを予想できなかった貴方の頭です、先生。そして白熱灯と電化製品を一緒にしないでください。何のためにワットとかアンペアがあるのか、分かってますか?


―――――――――――
今日古典講読の授業で聞いた話。本当に大丈夫か、この学校!
今なら笑い話で済むところだけど、実際に起こされたらたまったもんじゃないぞ!