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  [No.2626] 空を飛んで 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/09/19(Wed) 21:03:11   105clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 いきなり視界が揺れ、衝撃と共にハルカの体はフライゴンから投げ出された。
 白い雲と同じくらいの高さから落ちていくのを感じる。その感覚にハルカは悲鳴をあげた。フライゴンは自分の視界に入って来ない。
 下は海。けれど運悪くこのスピードではあの顔を出した岩に頭から落ちてしまう。
 散々いろんな人から注意を受けた。それに事故のニュースもたくさん見て来た。ポケモンの技で空を飛んでも、その途中で落ちてしまうことだってあるのだ。落下して死亡するニュースなどたくさん見て来た。
 けれど自分だけは大丈夫だとどこかで思っていた。フライゴンは振り落としたりしないと。
 そんな考えをぐるぐるまわしているうちに岩はどんどんハルカに近づいて来る。
 ああ、もう死ぬ。いやだ、いやだ! 死にたくないダイゴさんに会いたい 助けてダイゴさん いやだよう!



 トクサネシティにあるダイゴの自宅ではその主が紅茶を飲んでいた。今にも血管が浮き出そうなくらいに目が怒っている。落ち着こうと紅茶をいれても焼け石に水。
 約束の時間を過ぎても一向にハルカが来ない。もう2時間30分も遅刻している。新しい子をもらったから修行してくださいと頼み込んだのはハルカの方なのに。
 これはまず遅刻する時は一報することから叱らなければならない。さっきから一分刻みで記されているハルカへの発信履歴を見て、何をいってやろうか考えを巡らす。そしてまたポケナビに手を取るとハルカへと発信した。1秒、2秒……16秒と表示され、留守番電話サービスにつながる。
 機嫌の悪い主人の八つ当たりの対象にされたポケナビはたまったものじゃない。ダイゴの力で叩かれても抗議の声もあげずに、新たな発信履歴を刻み込んだ。
 紅茶が空になる。カップに注ぐ。少し濃くなった紅茶が満たされるが、ダイゴの心は怒りに満ちたまま。
 あと30分しても来ないなら明日以降にみっちりと説教をする。泣き出しても構わない。約束を2時間以上もすっぽかし、連絡にすら出ないなど人としてあり得ない。


 ふわふわとした感触にハルカは目をあけた。視界がぼんやりしている。見た事もない原っぱに、石碑がぽつんとあった。
 ここが死んだ後の世界? 花畑も川もないけれど、そんな気がした。
「ダイゴさん……」
 会いたい。死ぬ前に会いたかった。あんな誰も通らないような場所で一人で死にたくなかった。
 けれどこれが現実だった。せめて一言だけでも言いたかった。
「あまりに強い恋心は貴方の障害になりますよ」
「誰!?」
 姿は見えない。けれどとても落ち着いた声だった。死後の世界の役人かなにかだろうか。
「ダイゴサンはどこにいるの?」
 ハルカの問いには答えようとしない。さっきとは別の声がハルカに話しかける。
「ダイゴさんは、トクサネシティの……」
「あの家ですね」
 家の形を思い浮かべた瞬間だった。ハルカが何も説明していないのに声は答える。
「ダイゴさんをどうするの!?」
「貴方が会いたいと願ったのでしょう。ならばそれを叶えるまでです」
 そんな。まさか。ここに連れてきてしまっては、ダイゴが死んでしまう。それだけはやめて。ハルカが言い終わらないうちに視界が消えた。



 ダイゴのイライラは頂点を通り越していた。あれから30分。紅茶は5杯目、茶葉は3種類目。その他にチョコレートせんべいポテトチップスを並べてるが、ハルカが来る気配が全くない。
 ダイゴは窓に近寄ると、外で日光浴をしているユレイドルに話しかける。主人の声にユレイドルがひらひらを伸ばして来た。遊んで欲しい時にユレイドルはいつもこうする。
「おせんべい食べる? 1枚だけだよ」
 ダイゴの手からしょうゆせんべいを受け取る。水中で獲物を捕まえたりする触手は器用にせんべいを口に運ぶ。そしてそのままぱっくんと飲み込んでしまった。期待するようにダイゴをみている。もう一枚くれ、といったところ。触手をダイゴの腕にからめて甘える。
「ダメだよ。ポケモンにあげるには塩分高いんだから。はい」
 かわりにポフィンを出した。あますっぱポフィンはユレイドルの大好物。
「シンオウ小麦とバターだって。ドライチェリー入りの高級品だよ。こんなことユレイドルにいっても解らないけどね」
 シンオウへ父親の代わりに出張した時のお土産だ。留守中のポケモンの世話を引き受けてくれたハルカには琥珀とソノオの花畑で取れるハチミツ。
 ああまた思い出してしまった。今日はハルカのことを思い出すだけで怒りがぶり返す。満足そうなユレイドルに背を向けてダイゴは紅茶を飲んだ。
 主人の怒りを察知して、ポケモンたちはみな部屋の隅っこの方にいる。ネンドールは気配すら消して部屋と同化している。エアームドはいつでも命令が聞けるよう、ダイゴの後ろにいた。一回も振り向くことはなかったが。
 約束の時間から3時間20分が経つ。
 今日の夕食の買い物に行かなければならない。家の鍵をしめてダイゴは出かける。

 一人分とはいえ野菜は重くてかさばる。そんなときにボスゴドラは荷物を持ってくれるのだ。キャベツにタマネギ、リンゴとカボチャ。牛肉が安かったから多めに買ってしまった。納豆もこれだけあればしばらく料理しなくてもいい。パンは質量の割に場所を取る。タマゴはいつも安いから行くたびに買ってしまう。
 ダイゴが玄関を引いてみた。鍵はかかったままだ。期待などするからこうなる。怒りのこもった手で鍵をあけ、中に入った。
 買ったものを冷蔵庫に入れた。残ったビニール袋をまとめると、後ろからメタグロスがダイゴのことを見ていた。
「ああ、お腹減ったんだね。今日は何にしようかな」
 メタグロスの金属製のボディを撫でる。この感触がやめられない。固いポケモンの触り心地が大好きなのだ。
 そんな幸せに浸っていると、チャイムが鳴る。さあなんて叱責しようとダイゴはゆっくり玄関に向かう。
「今何時だと思ってるの?」
 ドア越しに聞いた。その向こうにいるであろう人間に。
「あ、すみません。夜は遅くないと思ったのですが」
 予想と反する声が返って来る。全く知らない声だ。間違えてしまった。
「あ、いえ。こちらこそ知り合いかと思ったので。どちらさまでしょうか?」
 強盗でも困る。玄関をしめたまま向こうにいる人に訪ねた。
「実は貴方に会いたいと言う方に会いました。家がここだと聞いたので来たのです」
「どういうことでしょうか?」
「ダイゴサンって人ですよね?」
 違う声がする。声の高さからいって男女二人。名乗らないことも妖しい。玄関の鍵をあけるか開けないか迷っていると、ダイゴの足元にメタグロスがいた。その隣にはエアームドも。何かあったら実力は任せろ、と言わんばかりだ。
「はい、私はツワブキダイゴですが。その会いたいという人は誰ですか? そしてどちら様でしょうか?」
 チェーンをかけ、鍵をゆっくりと開ける。これで相手から開かれても一回くらいは防げる。
「この子ですよ」
 隙間から見えた男女二人。頭のキレが良さそうな男と、大きな琥珀色の目が特徴の女。そしてその男の腕の中で眠っているハルカだった。
「ハルカちゃん!?」
 思わずチェーンを外し、玄関を全開にした。強盗など気にも止めずに。
「この子とどこで?いやなぜうちに?とにかくお二人とも上がってください」
「いえ、私たちは帰ります」
「私たちは長居できません」
 男はハルカをダイゴに差し出す。起きる気配のないハルカを受け取り、二人に上がるよう勧めるがうなずこうとしない。本当にハルカが世話になったのならお礼をしたいし、そうでないならば家の中の方がやりやすい。
 ハルカを腕に抱く。その体は冷たく、長いこと海風に当たっていたかのようだ。
「本当に何もありませんが、夕食くらいごちそうさせてください。遠慮せずにどうぞ」
 ダイゴは食い下がると、二人はお互いの顔を見合わせて相談している。
「どうしたらいい?」
「人間はここで入るのが自然なようです」
 二人はそんな会話をした。ちぐはぐな会話。ダイゴは二人を逃がさないように見る。その目は睨んでるとも言える。
「ではごちそうになります」
「ではごちそうになるね」
 家の中に入る二人。ダイゴはハルカを抱いたまま鍵をしめ、チェーンをかけた。すぐには逃げられないだろう。
 ネンドールに二人の世話を頼む。お茶とお菓子を出して、と。ネンドールは解ったと台所にいった。その横にはメタグロスもついている。二人は任して大丈夫だろう。
「ハルカちゃん、起きて」
 軽く揺すっても叩いてもハルカは起きない。ハルカを寝室につれていく。布団をかけて優しく頬を撫でる。
「ダイゴ、さん?」
 ハルカが目をあける。
「ハルカちゃん!? 大丈夫かい?」
「ダイゴさん!? ダイゴさん!」
 目に涙をためて、ハルカはダイゴに抱きついた。ただごとではない様子だ。ダイゴはなるべく優しくハルカを抱いた。
「ごめんなさい!私が、ダイゴさんに会いたいっていったから、ダイゴさんが!」
「どうしたんだい? 何があったの? 嫌な事されたの?」
 泣いてばかりで、ハルカはまともに言うことができない。冷たい背中をなでる。怖いことがあったのだろう。落ち着くまで優しくさすった。
「ハルカちゃんを送ってくれた人たちがね、今待ってるんだ」
「ダメ!」
 ハルカは顔をあげる。ダイゴつかむ力が強くなった。
「ダイゴさん、ダメ……死んじゃう!」
「どういうこと?」
 かちゃ、と寝室のドアが開く。振り向くとあの二人が立っていた。無機質な表情だ。ダイゴはハルカを自分の後ろへと隠すように向く。
「起きた」
「起きましたね、よかったです」
 ハルカはダイゴにさらにしがみついた。二人を見ておびえている。
「君たち……一体何者なの? 答え次第では実力公使も考える」
 ダイゴは睨む。ひるむとは思っていない。それに二人の背後にはネンドールとメタグロスがいる。合図をすればすぐに動いてくれる。ネンドールはつねにこちらを見ている。
「それは答えられない。けど私がその子とぶつかっちゃったのだから、その子が行きたいところに送るのは当たり前」
「小さな子をこんなに泣かすまで何をしたの?」
「ぶつかったからじゃないでしょうか。相当なスピードでぶつかってしまいましたし、フライゴンもしばらく気絶してましたし。これに関してはこちらが前を見ていなかったからなのです。その子はおろかフライゴンの方に非はありません」
「それだけ?おかしいだろう?」
「気に触ったのなら私たちはもう帰ります。すみませんでした」
 あっさりと頭を下げる。二人は足並みをそろえて玄関へと向かう。
「待ちたまえ!」
 ハルカをこんなに泣かせ、ただで帰れると思うな。ダイゴが男の方を掴む。首根っこを掴んだのだ。
「……翼?」
 ダイゴの腹には青いものが当たっている。そして掴んでいるのは服の感触なんかではない。目の前にいたのは人間の男であったのに、なにか違う。
「ラティ……オス?」
 絵本や絵画の中でしか見た事のないポケモン。ホウエンの海を飛び、祝福を与えるポケモンと言われている。ダイゴのつかんでいるのはどうみてもラティオス。赤い瞳が後ろのダイゴを見ている。
「じゃあ、まさか君は」
 金色の瞳は人間の女と思われていた。正体がバレたと観念してラティアスは本当の姿を現す。ラティオスと対で描かれるポケモンだ。
「姿消して飛んでたらぶつかった。だからその子とフライゴンは悪く無い。だから送り届けた」
「人間にしては力が強い方ですね。申し訳ないのですが放していただけませんか」
 ラティオスは穏やかに、そして冷静に言った。ポケモンと話している。その事がダイゴは信じられない。
「ああ、はい」
「それでは、改めてすみませんでした。私たちは帰ります」
「ああ、待って」
 2匹は振り向いた。
「やっぱり夕食をごちそうしよう。それからでも遅く無いと思う」
 2匹はお互いを見てしばらくだまった。2匹にしか解らない会話をしているようだった。
「……貴方、ポケモントレーナーでしょう」
「ポケモントレーナーは私たちを捕まえる。だから一緒にいられない」
 ポケモンとトレーナーが対等というのはあり得ない。それはダイゴが一番よく知っている。
 どんなに仲がよくても所詮は人とポケモン。そしてそのポケモンを理解し、管理するのがトレーナーの役目。上下関係なんてないという青臭い意見をダイゴが持っていた時期もあった。
 違うのだ。あって当然。人はポケモンの状態を見て戦わせる。その逆は決してないのだ。だからこそ一緒にはいられない。どうしても一緒にいるには、ダイゴがラティオスとラティアスを従わせる他、方法はない。
「待って!」
 ハルカが呼び止める。ラティオスは振り向いた。やや遅れてラティアスが振り向く。
「あの、海に落ちて死んじゃうって思った時に助けてくれたの、ありがとう!」
「いえいえ、こちらこそラティアスがすみませんでした」
「だから、私もお礼がしたい!夕食だけでも!」
 ハルカはラティアスの翼を引っ張る。再び2匹はお互いを見ていた。

「こんな時間にどうしたんだダイゴ」
 リビングではラティオスとラティアス、そしてハルカがにぎわっている。他のポケモンたちも一緒であるが、フライゴンだけは隅っこの方にいる。ハルカがどんなに呼んでもフライゴンはじっとしている。
 そして台所ではダイゴがポケモンたちのご飯を作っていた。自分のポケモンはまだいい。特にラティオスとラティアスは何を食べているのか不明だ。
「うん、ドラゴンタイプのポケモンって何を食べてるのか解らなくて。ゲンジなら解るかなあって」
 解らないなら専門家に聞くべきだ。ホウエンリーグの四天王、ドラゴンタイプのゲンジに連絡する。
「普通のポケモンと同じだ。ポケモンによって好きな味があったりなかったり。ああ、年齢にもよるが人間より味濃くても大丈夫だぞ」
「じゃあポフィンとかポロックも?」
「もちろんもちろん。ちなみにボーマンダはゴーヤーチャンプルーが好きだ」
 思わぬ好物に吹き出しそうになる。あの強面なボーマンダがゴーヤーチャンプルーをほおばっているところを想像すると、似合わないところがかわいく思えた。
「なるほど。ゴーヤはないな。豆腐ならあったかな。ありがとう」
 冷蔵庫の中身と相談して、ラティオスとラティアスの食べるものを作る。そういえばあのまま人間だと思っていたら、今頃はグラタンを食べさせていた。
 ハルカの方は、作ったばかりというポロックをラティオスとラティアスにふるまっていた。おいしいだのまずいだの、三つの味がするとかこっちは五つだとか。


 ダイゴはラティオスとラティアスにすき焼きを振る舞う。甘辛い出し、牛肉、豆腐、ネギ、しらたきの奏でる鍋は誰もが楽しみにする食べ物。2匹はあっという間に平らげ、人間の食べるものはおいしいと感想を告げる。そしてすぐに帰ると言い出した。
 そのままハルカも帰るという。元々今日は夜までには帰る予定だったのだ。ダイゴは2匹と一人を玄関で見送る。
「ツワブキダイゴ」
 ラティオスは帰り際に言う。
「全ては縁。過去があったのも今があるのも未来に向かうのも。私たちがツワブキダイゴみたいなトレーナーを知ったのも縁。私たちは興味があります。貴方が今後どのような人生をいくのか」
 靴ひもを結び、ハルカが立ち上がる。そしてフライゴンのボールを開けた。
「じゃダイゴさん、次に新しい子見せますね!じゃあ!」
 ハルカが一瞬ダイゴを見た時だった。フライゴンはおびえて2枚羽をしまい、ラティオスとラティアスから見えない影に隠れてしまう。
「フライゴン!? 大丈夫だよ、フライゴン!?」
 ハルカが呼びにいっても、フライゴンは飛ぼうとしない。その羽が震えている。墜落したことがトラウマになってしまったのか、技を命令しても全く言うことを聞かない。
「ちょっと、フライゴン飛んでよ!そうじゃないとミシロタウンに帰れないよ!」
 いやいやとフライゴンは飛ばない。2枚の羽はトクサネの風にただ吹かれていた。
「帰る?ハルカの家はツワブキダイゴのところじゃないの?」
 現れたラティアスを見るとフライゴンは地面にうずくまり、起き上がろうとしない。いくら一回墜落したからって、この調子ではフライゴンと共にいることができないではないか。
 そしてラティアスは何を言っているんだ。フライゴンを起こしながら言われた言葉にかみつきたかったが、的確にかみつける材料がない。
「……フライゴンがその調子なら、私が送って行きましょう。ミシロタウンの、あの家ですね」
 ハルカの考えを読み取ったようにラティオスは言う。そしてハルカが乗りやすいようにラティオスが地面に足をつけた。遠慮しながらもハルカはラティオスの背中に乗ろうとする。慣れないポケモンなのか、中々ハルカも乗ることができない。棒立ちしたままラティオスを見つめてる。
「ハルカちゃん、早く帰らないと」
「わかってます、解ってますけど……!」
 フライゴンだけじゃない。空中で衝突し、岩に激突する寸前まで光景を見ていた。そのことがハルカにとってトラウマとなってもおかしくはない。大人ですら二度と乗れなくなる人がいるというのに。
 ハルカの足は震えている。ラティオスの翼を掴むのもやっとだった。けれどすぐに手を放してしまう。
「ラティオス、ラティアス。せっかくだけど夜も遅いから、明日の朝に方法を考えるよ。君たちはハルカちゃんの恩人だから、またいつでも遊びにきてくれ」
 2匹は顔を見合わせ、そしてダイゴとハルカに一礼すると闇夜に溶け込んで消えていく。
 地面に座り込むハルカに戻ろうと声をかけた。それに気付いてハルカが立ち上がる。
「しかしどうしようかね。ラグラージはいるのかい?」
 トクサネシティは島にある街だ。ミシロタウンはかなり遠く、空を飛んでいつも行き来していた。空の足が使えないとなると、海なのだが。
「今日はダイゴさんに新しい子を見せるために、フライゴンとその子しか持ってないんです」
「その子は水タイプではないのかい?」
「泳ぎますけど水タイプじゃないんです……」
「そうか。どちらにしろ今日は帰れないか」
 そして明日の天気は悪い。空を飛べなくなるのがこんなにも不自由など思いもしなかった。
「じゃあ、せっかくだしその新しい子、見せてくれない?」
 ダイゴがそういうと、ハルカはモンスターボールを取り出した。そして開いたボールから出て来たのは、頭に白い石灰化した兜がある青い竜、タツベイだ。ユウキにもらったタマゴが孵ったのだそうだ。
「ねえハルカちゃん。タツベイは」
「知ってます。空を飛びたいポケモンです」
 知ってるなら話は早い。空を飛びたいタツベイが、空を飛べなくなったフライゴンとその主人を、もしかしたら救ってくれるかもしれない。
 そんな勝手な期待をしてはいけないだろうか。タツベイはダイゴをじっと見ていた。

 元気のいい足音の後に鳴るチャイム。玄関を開ける前から訪問者の名前は解ってる。いつもは一人なのだけど、最近は二人で来るのだ。それも仕方ないことなのだけど。
「いらっしゃいハルカちゃん。ユウキくんも入って入って」
 家の主であるダイゴは小さな友人を迎える。そのユウキは何度きても落ち着かない様子ではある。
「なんか二人の仲を邪魔しちゃ悪いような……」
 二人の仲を知ってるだけに、なんだか気まずい。ダイゴの友達とかその他の人たちと一緒に遊びに来るのはまだいいのだけど、二人っきりの時間を奪っている。そんな気がするが、ダイゴは気にしないでと笑うだけだった。
 ユウキがそれでもハルカと来る理由。それはハルカの方にあった。
 フライゴンと共に空を飛んでいる時に墜落事故があった。そしてその原因のラティオスとラティアスに助けられた。命は助かった。けれど心に空は怖いという感情を深く刻み込んでしまった。フライゴンもハルカも空を飛ぶ事ができない。
 それをハルカの父親に連絡して迎えにきてもらおうと思ったらなぜかユウキが来たのだ。その理由は、彼の持ってるネイティオ。空を飛んで帰ろうとしたのかと思ったが違った。
「テレポートで帰ろう。こいつ俺んち覚えてるからそこからなら歩いて帰れるし」
 その手があったのかとダイゴは感心した。有名なオダマキ博士の子供らしく、ポケモンの知識が豊富なのだ。子供ならではのひらめきも。ただその顔は父親に頼まれたから来てやったという顔だった。色々と感受性の高い時期に差し掛かったのだろう。
 そしてその日は二人で帰った。それからというもの二人でやって来るようになったのだ。
 カウンセラーにいってみただの、フライゴンもポケモンセンターに預けてオオスバメと一緒に遊ばせてみただの。そんな報告をしていくが、どれも効果がないことはダイゴにも理解ができる。
 ある有名カウンセラーには、これを機にポケモントレーナーをやめて違う道を選んだらどうかとも言われたと。さすがにそれはないと答えたという。
 
 今日もユウキとハルカはダイゴの家に遊びに来ている。ダイゴは二人のためにお茶をいれている。楽しそうにソファで並んで話しているのが、横目に入った。
 そして同時にわき上がる感情。即座にそれを否定する。僕は何を子供に嫉妬してるんだ、と。
 けれど否定すれば否定するほど、心に入り込んで来る。それはおかしいことだと否定しても。ユウキはハルカの友達であって、父親が知り合いなのだから仲良くても仕方ない。それはダイゴも解っている。それにハルカはジョウトから来た。ホウエンで初めての友達なのだから、特別に仲が良くても当たり前なのに。
 戸棚からスティックシュガーを出した。その瞬間に楽しそうな笑い声が上がる。ダイゴの視線がきつくなった。それに気付かず二人は楽しそうに話している。ハルカのことを言えた義理ではない。ハルカは自分のものではないのだから、仲がいい友達や男の子とか話すのだって彼女の自由だ。そこまで否定する相手とは付き合いたいと思わないだろう。
「はい、どうぞ」
 紅茶と茶菓子を二人に出す。嬉しそうにハルカはカップに口をつける。俺はこんなもの飲まないけどもったいないから飲んでやるといった顔でユウキも口をつける。
「ダイゴさん」
 ユウキがいじわるそうな目をしてダイゴを見る。もしや頭の中を読まれたのだろうか。ダイゴは冷静を装って返事をする。
「バトルフロンティア難しいですよ!」
「ああ、エニシダさんの」
「知り合いの息子がチャンピオンだったから、難しさの調整をしてもらったって言ってたけど、皆が皆チャンピオンレベルじゃないんですから! 解ってます!?」
「そんなこといったって、頼まれた以上はやるしかないさ。結果的にやたら強くなってしまったからね、そこは反省しているけど」
 窓の外からユレイドルが覗いていた。その後ろにはボスゴドラが。珍しい客でもないだろう。ダイゴがなだめようと窓を開ける。
「ツワブキダイゴ」
「ツワブキダイゴ」
 同じタイミングで聞いた事のある声がする。それは覚えてる。
「お久しぶりです。今日は様子みにきました」
 少しずつ姿を現していく。青い翼のラティオスだ。ハルカが墜落した時に助けてくれたポケモンで、隣にはラティアスもいた。こんな昼間に訪ねてくるとは思わなかった。
「あれ、どうしたの? 一週間前も来たけどお久しぶり?」
「長いこと会わないと人間はお久しぶりと言うらしいのですが違うんですか? 用件があるのでハルカ呼んでください」
「ハルカちゃんは今来てるけど、お友達も一緒で……大丈夫なの?」
「……じゃあ姿かくして様子みますので入ってもいいですか?」
 窓からラティオスとラティアスは姿をまわりの景色に溶け込ませて入って来る。リビングに戻って来るダイゴを、ユウキとハルカは不思議そうに見た。ラティオスとラティアスには気付いていないみたいだ。本格的に溶け込むと、ダイゴですらもうどこにいるか解らない。
「ああ、いやちょっとユレイドルとね遊んでたんだ」
 軽く言い訳をして逃れた。ユウキは呆れたような目で見ている。
「ツワブキダイゴ、この子がハルカの友達?」
 ダイゴの後ろからラティアスが小声で話しかけてきた。2匹ともダイゴの後ろにいるようだ。


 ポケモンの話で盛り上がる。ダイゴはうんうんと頷いていた。はきはきと喋るユウキに主導権を奪われっぱなしだ。全てハルカではなくダイゴに話しかけてるような、そんな感じだ。俺はこんなにポケモンのことに関して知識があるんだと見せつけんばかりに。
 専門外となるとダイゴの知識も妖しい。自分のポケモンたちに関しての知識は負けないと思っているが、あまり意識のしなかったこととなると疎い。コンテストは観客でしかないし、ポケスロンとなればテレビで見るくらい。
 そういった弱点を見抜き、次々にあれはどうだ、これはどうだと話しかけて来る。きみの勝ちだよ、と遠回しに言ってもユウキは話す事をやめない。完全に認めるまでやめてくれそうにない。ユウキの隣ではハルカが笑っていた。
 時計は夕方を指していた。ユウキの攻撃も止んでいた。ダイゴに積極的に話しかけるのは変わらない。
「そろそろ夕飯だね。何食べようか?」
 ダイゴがそういって席を立つ。
「じゃあその前に挨拶しましょうか」
 今まで黙っていたから寝ていたのかと思ったがそうではない。ラティオスとラティアスは確実にダイゴの後ろで見ていたのだ。そしてユウキとハルカの前に姿を現す。
「こんにちは、初めまして。ラティオスです」
「ラティアスです。そしてハルカ久しぶり」
 ユウキは驚いて何も言えなかった。いきなりポケモンが現れれば驚かないはずがない。そしてそれが喋っている。絵本や物語の中でしか語られていないラティオスとラティアスなのだからなおさら。いくら詳しいといっても、実物を見た事がなかった。
「な、なんで……ダイゴさんちに……」
「ハルカとぶつかったのが私。そんな仲だけどやっぱり来ない方がよかったかな」
「とりあえずハルカに用事だけ伝えて帰りましょう」
 ラティオスは光る石をハルカに見せた。真珠のようだけど、全く見た事がない。ダイゴも思わずその石を見た。
「空を飛ぶのが怖いのは、多分人間じゃ治せません。人間で治るなら、ハルカが空を飛ぶのが怖いとツワブキダイゴに言ったところで解決されてます。これは心のしずくで、生き物の心を浄化することができます。記憶が抜けるというわけじゃないので、空を飛んで怖かったという記憶は残りますが、もう二度と飛びたく無いという傷は回復できます」
「けどね、もしかしたらなんだけど、ハルカがその前後で思ってたことも普通になっちゃうというか……あっさり言うと、ツワブキダイゴが好きだったっていうことがなくなるかもしれない」
 その場の空気が重たくなった。誰もが声を出す事ができない。
「どうしますか? この石をハルカの心の傷に当てる事はできます。今までハルカがツワブキダイゴと一緒にいた記憶も残ります。けれど気持ちだけは残るかどうか疑問です。人間のガンの治療で、正常な組織もごっそり取ると聞きました。それみたいなものだと思ってください。そして消えた気持ちは戻りません。これは確実に言えます。その賭けに出るならば、私たちは協力します」
 そのまま空を飛べなければトレーナーとして不自由なことが待っているのは事実だ。交通機関があるけれど、お金がかかる。ポケモンに全ての投資をするトレーナーとしては死活問題だ。
 けれどハルカにはそれ以上に告げられた事実は衝撃的だった。ポケモントレーナーを続ける代わりが、ダイゴと今まで築いた関係を全て捨てることになる。どちらも選べないし、どちらも選びたい。
「それだけです。人間が人間を好きになってその人が大切なのは知っています。だからこそハルカにはよく考えてほしいです。ハルカにはユウキみたいな仲のいい友達もいますし、ツワブキダイゴのことを忘れるわけじゃありません。そして絶対に気持ちがなくなるわけじゃないです。半分くらいの確率だと思います。あくまでも、最悪の事態の話。そこは間違えないでください」
 ラティオスとラティアスはそれだけ告げると窓を開けた。
「どうするかまた明日来ます。保留なら保留でいいので、答えを聞かせてください」
 景色に溶け込み、ラティオスとラティアスは消えた。夕方の冷えた風が家の中に入り込む。


 その後の夕食で三人はろくに話もしなかった。話してはいけない雰囲気がそこを支配していた。そのかわりに、つけっぱなしのバラエティ番組がずっと喋っていた。
「まさかラティオスとラティアスと知り合いとは思わなかったな」
 ユウキが沈黙を破った。食べかけのじゃがいもが箸から落ちる。彼もが動揺していることは解る。
「僕も最初はラティオスとラティアスだと解らなかったんだけど」
 その後は会話が続かなかった。ハルカはずっと黙ってテレビを見ていた。彼らの話が最初からないかのように。


 夕食の片付けを手伝い、一段落したところでユウキは帰ろうとハルカに声をかける。その言葉にハルカは立ち上がった。
「あの、ユウキごめん。今日はダイゴさんちに泊まる。お父さんにもそう言っておくから。ごめんね、いつもわがままいって連れてきてもらってるのに」
 ユウキは何かに気付いたようだった。黙ってダイゴに一礼すると、玄関から出て行く。ダイゴはその姿を見送った。
「ユウキくんの前じゃ言えなかったんだね」
 隣にいるハルカに声をかけた。ずっと何か言いたそうにしていたから。
「ダイゴさん。私はジムリーダーになって、その街の人たちにポケモン教えたり戦ったりしたいです」
 とりあえず座ろう、とダイゴはハルカを座り心地のよいソファに座らせる。
「だから、ポケモントレーナーで不自由するのは辛いです。私はラティオスの力を借りようと思います」
「それがハルカちゃんの決意なら僕は止めないよ。そこまで覚悟しているのは凄いと思う」
「でもダイゴさんが好きだってことを忘れちゃうのは辛いです。ホウエンに来て、ポケモンもらって石の洞窟で会ってからずっとダイゴさんが好きで……それなのに忘れたくないです」
「大丈夫だよ。ラティオスの言っていたのはもしかしたら、じゃないか」
「でもそのもしかしたらが来たらどうしますか? ダイゴさんのことを覚えていても、ダイゴさんが好きだったことはなくなるなんて私には耐えられません」
 ハルカはダイゴに抱きついた。そしてダイゴをソファにそのまま押し倒す。
「抱いてください。ダイゴさんに抱かれたという記憶を、ダイゴさんが好きなうちに残しておきたいんです」
 逆光にハルカの表情がさらに艶かしく見えた。ダイゴは目の前にあるごちそうに手をのばさないわけにいかない。ハルカの腕をつかんで、自分の方に引き寄せた。そしてもう二度と離れないように強く抱きしめた。
「ハルカちゃんが好き。それはハルカちゃんが僕のことを好きじゃなくても変わらないよ」
 唇に触れる。やわらかくて、ずっと触れていたい。このまま一緒になれたらいいのに。ちいさな舌を包み込んでも足りない。心がこんなに触れているのに、体は一度たりともつながった事がない。だからこそ忘れないうちに、愛しているうちに。
 ハルカの手がダイゴのズボンを緩めてるのを感じる。彼女の手がダイゴの下着越しに触れているのも感じる。
 熱を帯びていた。いつでもいいと言うかのように。それを解っているからこそ、ハルカはダイゴの下着の中に手を入れた。
「よく考えて。ハルカちゃんが僕のことを好きじゃないのに、僕としたことだけが記憶残る。好きじゃない人間としたことを後悔してしまうよ」
 ハルカの手を取る。このままさせておきたかった。そして彼女によっていかせてほしかった。けれどそれは二人にはまだ禁じられていること。
「ダイゴさんは、やっぱり私としたくないんですか?」
「違うよ。したいからこそできないんだ。もしハルカちゃんと結婚して子供ができてね、その子がまだ14才なのに10も年上の男としているなんて聞いたら、僕はその男をぶちのめしに行くかな。それに僕はハルカちゃんが抱けないからって不満に思ったこともない」
 ハルカの体によって押し付けられている。それだけでまだかと急かされてるようだった。
「でも、嫌です。ダイゴさんが好きじゃない私はやだ!」
「大丈夫」
 ハルカの頭を撫でる。冷静を装って。でなければ本当にこのまま押し倒してしまいそうだ。
「ハルカちゃんが僕を忘れることなんてない。もし僕のことを好きだということを忘れても、僕はきみをもう一度好きにさせる自信がある」
 ハルカは泣くのを必死にこらえていたようだ。目がいつも以上に潤んでる。
「それにハルカちゃんが僕をこんなに大好きなのに、忘れるわけなんてない。僕はそう信じてる」
 ダイゴにしがみつくように抱きついた。ダイゴの名前を何度も呼んだ。子供が親を探すかのように、ハルカは離れない。
 そんな彼女を今すぐ脱がせ、一方的にでも犯したい。泣いても叫んでもかまうものか。自分のものとして一生閉じ込めておきたい。そうすればこんなに悩まなくて済むことだ。
 ダイゴが性欲につかった思考から我に返ったのは、名前を呼ばれたからだ。
「一緒にお風呂はいりませんか?」
「入りたいのはやまやまだけど、先に入っておいで。僕はやることがあるから」
 こんな時に裸を見せるなど、襲ってくれと言わんばかりではないか。ダイゴだからこんな関係を保てるが、他の男だったら骨の髄まで食べられてしまっている気がする。
 それにまだ急かしているものの処理もしなければならない。ここまで熱を持ってしまったら後にひけないのだ。
 ハルカが手袋を外す。モンスターボールを掴みやすいのだそうだ。なんとなく彼女を見ていたが、ダイゴは気付いた。彼女の左手薬指に、自分があげた指輪があることに。あれはそう、ハルカがダイゴのことを好きでいると約束した指輪。
 もしハルカが好きだということを忘れても、二人で過ごしたたくさんの時間までは忘れないと言った。何を恐れているのだろう。過ごした時間に、好きという記憶が残っていないはずがない。
 大丈夫だ。ラティオスの言った通りにはならない。ダイゴは確信した。


「それでいいのですね?」
 次の日、ラティオスは二人の答えを聞いて心のしずくを取り出した。ハルカの隣にはフライゴンがいる。同じく心が傷ついてしまい、空を飛べなくなってしまったのだ。
「では、いきましょう。ラティアス」
「うん、ラティオス。ハルカ、心のしずくをじっと見ててね」
 心のしずくの輝きが増す。白く光ったり赤だったり黄色だったり。緑、青、紫と色を変えて行く。それは光の洪水となって、ハルカの心の中に入って行く。フライゴンはじっと見続けていた。
「まだ目を閉じちゃダメ」
 耐えきれずに目を閉じたくなる。目をほそめて心のしずくを見続けた。
「まぶしい……」
 金色の光になった時、ハルカは目を閉じる。同時に心のしずくは元の真珠のような石に戻っていた。
「どう? ハルカ」
「これで終わりですが、どうでしょうか? 目をあけてみてください」
 ハルカは目を開ける。隣ではフライゴンがぱたぱたと2枚の羽を動かした。部屋の窓から海風に乗って空へ飛んで行く。
「飛んだ! フライゴンが飛んだ!」
 ハルカは外に出て、フライゴンを呼ぶ。そしてその背中に乗る。恐怖心はもうない。フライゴンの体が浮き上がっても何も怖くない。エアームドに手伝ってもらったのに、ちょっと浮いただけで吐いてしまったこともあった。タツベイと一緒に段差から降りてみたが、そんなに高くないのにしばらく歩けなくなってしまった。
 そんなことが嘘のように、空の風が気持ちいい。この新鮮な感じは、初めてフライゴンの背に乗った時以上だ。
 ハルカとフライゴンを見上げ、ダイゴは嬉しく感じた。久しぶりにポケモンに乗って空を飛んでる彼女は、本当に生粋のポケモントレーナーらしい。
「ツワブキダイゴ」
 後ろからラティアスが話しかけた。
「ハルカの心はどうなったか解らない。けど傷はもう痛まない」
「そうか。ありがとう、ハルカちゃんのためにしてくれて」
「元々は私がぶつかったから。ツワブキダイゴとも知り合いになれたし、ハルカは気のいい人間だ。ユウキもポケモンのことたくさん知ってた」
 最初は一緒にいられないと拒絶されたものだった。けれどハルカのこともあって、ダイゴの家に時々来るようになっていた。嫌々のようだったが、いつの間にか友人くらいの親しさにはなっていた。
「またいつでも来てくれ。留守の時もあるけれどね」
「意外に楽しかった。また来ると思う」
 ポケモンの友達がいるなど、おそらく誰に言っても信じてもらえないだろう。ダイゴもこんなに話せるポケモンがいるとは思っていなかったのだから。
「それで、もしハルカがダイゴのこと好きじゃなくなってたら」
「それはないと思っている。あの話は万が一、ってことだろう?」
「そうだけど……その確率は半分だよ?」
「じゃあ賭けようかラティアス。僕はハルカちゃんを信じる」
 ダイゴはフライゴンと共に空を飛んでるハルカに声をかける。戻っておいで、と。



 ミシロタウンのオダマキ博士の研究所で、ユウキとハルカはラティオスとラティアスの話をしていた。実際にいたこと、そして心のしずくと呼ばれる綺麗な石を持っていたこと。それは心の傷を癒す話もした。
「なるほど、だからハルカちゃんは突然空を飛べるようになったんだね」
 オダマキ博士は何かが解ったように頷いた。
「はい! すっごく気持ちよくて、怖かったのが嘘みたいです」
 目の前のジュースを飲みながら、ハルカは答える。ユウキと言えばラティオスとラティアスから聞いた話をまとめていた。時折、ハルカのタツベイがかまって欲しそうにユウキを見上げている。
 来客が研究所のドアを叩いている。オダマキ博士は迎えるためにその場を離れた。
「そういえばハルカ……その……ダイゴさんは?」
 ユウキの問いに、ハルカはそっと左手の手袋を取った。そして薬指にある指輪を見せびらかす。
「私がそう簡単にあんなイケメン、逃がすはずがないわ!」



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空を飛んでる最中にニアミスとか接触事故とか墜落事故とか絶対あると思う。
かつてトレーナーだった人たちがやめていくのはそういう事故のトラウマかかえて夢を諦めなければいけないとかあってもおかしくない。
ダイハルでかいたけれどダイハルじゃなくてもいいよねなんて声は聞かない聞こえない。
【好きにしてください】


  [No.2629] 爽やかな 投稿者:イサリ   投稿日:2012/09/21(Fri) 00:21:40   81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 夜遅くにこんばんは! イサリです。
 先日は過剰に反応してしまい申し訳ありませんでした。
 無礼をどうかお許しください。

『空を飛んで』を読ませて頂きました。描写が自然と頭に浮かんできて、とても読みやすいです。タイトルの通り、吹き抜けるような爽やかな読了感のあるお話でした。
 愛する人のために共に苦難を乗り越える話は、やはり良いものだなあと思いました。

 ダイゴさんはイケメンでした!
 昔ルビーをプレイした時の彼の印象は「信念はあるのにつかみどころのない人」でしたが、こういう、いざというとき頼りになる姿はいいですよね。



『星空を見上げる海の上』で危うい印象を持っていただけに、最後はハルカちゃんが強かで安心しました。

 お前が言うなの嵐でしょうが、やっぱりハッピーエンドが一番ですね!(


 それでは、失礼いたしました。


  [No.2635] どうもどうも! 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/09/21(Fri) 21:53:41   95clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

感想コメントありがとうっす!

高いところから落ちるアトラクションが嫌いで嫌いで嫌いなので、怖い人から見た落下の仕方というのが伝われば幸いです!

好きな男より自分の夢優先はどうなんだってげしげしされると思ってたけどそんなことなくてよかったです!

ダイゴさんはイケメンです。
ダイゴさんください
ダイゴさんください!
ダイゴさんください!!

私はダイゴさんをずっとかいていきますし相手はもう誰でもいいです
男でも女でもポケモンでもいいからダイゴさんが欲しくてたまりません


では

【ダイゴさんください】