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  [No.2855] 酒樽ポケモン 投稿者:No.017@イラコン開催中   投稿日:2013/01/21(Mon) 12:43:55   165clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

開催中のイラコン(http://pijyon.schoolbus.jp/irakon/sp2/)の宣伝PR絵として
ツボツボなんぞ描いてみました。
金銀のきのみジュース設定、私は作らせた事は無いのですが素敵ですよね。
ジュースが出来るならワインもきっと…ということで。

酒樽ポケモン (画像サイズ: 800×800 245kB)


  [No.2856] Re: 酒樽ポケモン 【書かせて頂きました】 投稿者:NOAH   投稿日:2013/01/22(Tue) 10:11:09   171clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

カラッと晴れた、秋晴れの空の下。
バラの花に囲まれた、カゴの実だけがなる大きな農場で、3匹のツボツボが
せっせと木の実を収穫をしている。

その後ろでは、老夫婦が、慣れた手付きで、カゴの実を皮と果肉と種に分けている。
種をつぶさずに皮を破り、中の果汁を流出し易くするために、慎重かつ素早く果実を潰す手は、カゴの実独特の
青紫色の果汁で染まっている。

ここは、俺の祖父母が働くワイナリーだ。
今日から、俺はここでこのツボツボ達と、そして隣で優雅に立つロズレイド(♂)のディオと共に
ワイナリーの新人従業員として、そして次期跡継ぎとして働くのだ。


「ユウ?…いらっしゃい。そういえば、今日からだったわね。」


祖母が俺に気付いた。そういいながら、手を止めずに分けているのはさすがだ。
後ろに見える大きな貯蔵庫には、ビン貯蔵を終わらせて、そろそろ出荷されるもの。
何年も前に出来た、当たり年のヴィンテージワイン。
それから、まだ樽熟成中の若いワインに圧搾も、後発酵も何もしてない
ワイン酵母を入れたばかりの、未完成のワインが眠っている。


「まずは荷物を家の中に入れてきてらっしゃい。」

「……そうするよ。ディオ、こっち。」


指先も爪の中も、果肉や汁で汚れた手を、祖母はまた再び動かす。
祖父はずっと、黙ったままだ。

赤ワイン作りに合うのは、カゴの実だけだと思っている。

……これは祖父が昔、まだスボミーだったディオと
木の実栽培の手伝いをしていた時にぼやいていた言葉だ。

たぶん、あの渋味に何かを感じたんだろう。
ワインなんて、俺の周りではだけど、若い人はあまり好まないし
あの渋味を嫌う子が多い。

俺も最初はワイン作りなんて……と思ったが
そういう人を見ていたら、若い人にも飲みやすいワインが作れないかと思った。
それに、同じ物1つで通せるとは、思っていない。経営学を習った俺からしたら、だか。

貯蔵庫の横を通ったところで、あの収穫場所に居たのとは別のツボツボ達が
もう使わなくなった樫木の樽熟成用の樽の上で眠ったり、余った木の実を
食べたりして休憩しているようだった。
その側で、義足を付けたグラエナが寝そべっている。

その樽の上に、ビン貯蔵され、ボトルに入れられた
1本のワインが置かれ、どういうわけか、飾られている。
たくさんの、木の実とバラの花と共に、だ。


「そのワインはな、お前が生まれた、正にその日にできた
時価300万のヴィンテージワインだ。」

「300万!?」


いつの間にか、寡黙な祖父が居たことにも驚いたが、このワインの値段にも驚いた。
300万もするワインなんて聞いたことがない。しかし、どうしてこんな場所に?


「神話の中に、木の実を作り、それでジュースやワインを作った神様がいるらしくてな。
ここにあるのはまあ、形だけだが、その酒の神への供え物だ。お前の生まれた日のワインが
ここでいちばん、うまいワインだったからな。」


気が遠くなる話だ。何年も掛けて熟成したワインが、ある時は1000円程度の安いものに
ある時は、今目の前にある、何百万とするものになるだなんて……。
でも、正直嬉しかった。俺の誕生日の日に出来たワインを、この目で見ることが。


「飲んでみるか?」

「え?」

「待ってろ。」


祖父はそれだけ言うと、十字を結んでから祈り、そのワインを持って
家の中へと入って行った。少しして戻った時には、ワイングラスが3つ。
祖母にも、飲ませるのだろう。ディオは、バラの花をじっと見ていた。

コルク栓を取り、赤いバラ色の液体がグラス注がれる。
あのカゴの実の青紫色ではなく、全く違う色になっていたことに驚いた。
こんな綺麗な深紅は、始めて見たかもしれない。


「……あら、それ、開けるの?」

「ああ。」

「なら、少し待ってて……テテュス、他の子も呼んでおいで。」


祖母の掛け声で、義足を付けたグラエナがゆったりと起き上がると
そのまま農場の方へと向かって行った。

祖母もまた、何かを取に行く。祖父は既に、何の躊躇もなく
時価300万の高級ワインを口にしていた。


「はい。チーズ。ガチョカヴァロっていうんですって。」

「へえ……。」

「ユウ。」

「……ん?なに?」

「お前がやろうとしていることに口は出さん。
……が、コレの味を、値段を越えるのを作れよ。」

「……約束するよ。」


そう言って掲げて飲んだこの濃密なワインの味を
たぶん一生、忘れることはないだろう。


*NOAH*
イラコン宣伝絵を見たら、書いてもいいのよタグを見て

気付いたら書いてました(笑)

しかし、見事にポケモンの描写が少ない……なんたる事。

途中で出てきたワインを作ったとされる神様は
ギリシャ神話のディオニュソスという男神でして

バラの花は、ワインの材料となるブドウはバラ科の植物でして
ワインの本場のフランスの農場(日本でも)は、バラの花を一緒に植える事で
病気になってないかチェックするんですよ。

なぜ詳しいのかは、私が農高出身だからです。
ワインは作ってませんが、高校時代にちょこっとだけ触れた知識を思い出したので。
うんちくと言った方がいいかもしれないです(笑)

イラストは苦手なので、こういった形でしか参加できませんが
皆さんの作品を楽しみにしてます!!

*No.017様へ*
誠に勝手ながら、小説を書かせて頂きました。
ツボツボがメインの絵なのに、ワインの方にスポットが当たってしまいました……。

本当にごめんなさい。そして、イラコン楽しみにしてます。
これからも頑張ってください。

NOAHより。