タグ: | 【擬人化注意】 【タマザラシたんもふもふ。】 【3043】 |
買い物から帰ってきて庭の球体達の様子を見ると、ブロック塀の向こうから青い髪の男の子が球体を見ていた。
「こんにちはー」
庭に降りて声をかけると男の子はビクリと肩を震わせこちらに目を向けた。
「あ……こんにちは。勝手にすいません」
「いえいえ。取っていかないなら見学自由ですよ」
「え?」
「あはは、冗談冗談。可愛いでしょ。うちのタマザラシ」
「はい……凄く可愛いです」
視線の先ではきゅっきゅと泳ぐタマザラシたん。そろそろ水も温くなるだろうし、引き上げようかな。
「あー、こんなとこにいた!」
違う声が聞こえたのでそちらを見ると、おだんごとツインテールを組み合わせたような髪型の女の子がいた。年は私よりすこし下だろうか。
「ほら行くよー、他の奴らも探さないと」
「……ああ。じゃ、俺はこれで」
男の子は軽く頭を下げると、女の子の後を追いかけていった。後ろから見ると、着ているパーカーのフードには兎耳がついていた。可愛いけどタマザラシたんには叶わないな。私は鼻で笑った後、首をかしげた。
「……ここら辺じゃ見ない子達だなー」
旅行者だろうか? この時期は多いんだよなー。友人の家がやってる民宿もエネコの手も借りたいって言ってたし。実際借りてるらしい。
「ほーら、そろそろ出て。ふやけちゃうよー」
「きゅー!」
「だーめ。温くなってきたでしょ」
「うきゅう……」
最後までぐずる玉二郎を最初に抱き上げふと振り替えると、あの女の子が見えた。けど。
「あれ?」
男の子がいなくなっていて、代わりにマリルリが早足で隣を歩いている。
「……?」
「きゅっきゅきゅー!」
「ああ、ゴメンゴメン」
暴れだした玉二郎を縁側に乗せる。玉一郎は水の中でぼんやりしている玉三郎に体を押し付けて起こそうとしていた。可愛いなこのやろう。
「ま、いっか!」
難しいことは嫌いだ。タマザラシたんがいればそれでいい。
「ただいまー! おねーちゃーん!?」
「おーお帰りー! 庭だよー!」
夏の終わり。私のちょっとだけ不思議な昼下がり。