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  [No.3132] ある夏休みの一日 投稿者:白色野菜   投稿日:2013/11/28(Thu) 22:01:11   99clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

僕のおじいちゃんは、金魚鉢が好きだ。

おじいちゃんちに遊びに行くと、おじいちゃんは縁側で空っぽの金魚鉢とよく日向ごっこしている。
金魚鉢は、見るたび違くて大体がポケモンの形をしている。
それは、大体水に住んでるポケモンだけどたまにエネコとかその辺にいるのの形の時もある。

「ねぇ、おじいちゃん。なんで、金魚鉢に金魚いれないの?」
僕はそう、おじいちゃんに聞いたことがある。
おじいちゃんは、ゆっくりと笑いながら答えてくれた。

「それはねぇ、おばあちゃんが嫉妬するからだよ。」
おばあちゃんは、僕がおっきくなる前に死んじゃった。
おじいちゃんが、おばあちゃんの話をするとき懐かしそうに目を細めるんだ。

おじいちゃんは、僕に棒アイスを食べさせながら話してくれた。

おじいちゃんが、金魚鉢が大好きなこと。
おばあちゃんと結婚した後も、金魚鉢ばっかり見てたこと。
怒ったおばあちゃんが、金魚鉢に水を入れるのを禁止したこと。
慌てたおじいちゃんが、たっっくさん謝っておばあちゃんと二人でゆっくりする時にだけ金魚鉢に水と金魚を入れるようになったこと。

だから、おじいちゃんは約束を守って金魚鉢に金魚を入れないんだって。
天国に行ったときの楽しみにしてるんだって。

その話を聞き終わる時にはとっくに、アイスを食べ終わってて木の棒をがじがじかじりながら話を聞いてたんだ。

「もし、約束を破ったらどうなるの?」
僕がお母さんとの約束を破ったら、げんこつがとんでくる。
おじいちゃんは、どうなんだろう?

「さーて………破るつもりがないからなあ。」
おじいちゃんは、暑いのに熱いお茶を飲みながらのんびり言った。

僕は、ちょっと気になりながらアイスの棒を捨てに家の中に入ったんだ。




その日、おじいちゃんは家にいなかった。
何時もの縁側にはハスボーの形をした金魚鉢だけがポツンっていた。

僕はランドセルを玄関から、ちょっと広い部屋に持ってきながら家の中を見たけど誰もいなかった。

僕はわくわくしながら、台所に走っていった。
ちょうど良いお鍋を持って、今度は縁側から庭に飛び出す。

靴下越しに土のざらざらとした感じがする。
庭の隅っこにある池を見下ろしたら金魚が一杯元気に泳いでた。
ちょっと、よどんで緑色になってる水にお鍋を沈めてから頑張って持ち上げたら逃げ損ねたのが二匹捕まった。

白いお鍋の中をヒラヒラ泳ぐ赤い金魚を少しみてから、お鍋を金魚鉢へ持っていく。
ざばっと、中身をいれたけど水の量が足りなくてウパーが半分だけ緑になった。

駆け足で、台所にいってお鍋に水をくむ。
慌てすぎてちょっぴり水を廊下にこぼしながら縁側に戻ったら。

一匹のシャワーズがハスボーの金魚鉢を覗き込んでいた。
僕は結構たくさんこのおじいちゃんちに来てるけど、シャワーズを見るのははじめてだった。

シャワーズはハスボーに向けていた視線をこっちに向けた。
真っ黒な目と僕の目があう。
それから、僕の持っている鍋を見て、最後に僕の靴下を見て、ため息を吐くみたいに頭を下げた。

僕は持ちっぱなしで重くなってきた鍋を足元に置いて、鍋を蹴っ飛ばさないように注意しながらシャワーズにじわじわっと近づいた。

野生のポケモンに近づくみたいにゆっくりと、ちょっとづつ。

シャワーズは、そんな僕をちょっと見ると何も鳴かずにひょいっと金魚鉢の中に飛び込んだ。

それからは、あっというまの出来事で。


金魚鉢へ飛び込んだシャワーズは、まるで水みたいに入ってた水となじんで半分しか入ってなかったハスボーの金魚鉢が水で一杯になって。

それもすぐに、シャワーズなんでもないみたいに水から飛び出してきたんだ。
水がシャワーズの体になって、金魚鉢の中身は空っぽになったんだ。
そう、からっぽ。

金魚は、シャワーズの体の中をひらひら泳いでたんだ。
まるで金魚鉢の中にいるみたいに、池の中をおよいでるみたいに普通に。

シャワーズは、僕をちらっと見たあとすごい勢いで外にいっちゃった。

頑張って追いかけたんだけど、最後に池に飛び込んだ音がして、そっから浮かんでこなかったからどうなったのか僕は知らない。

みんな寝たあとに、こっそり水から戻って出ていったのかな?

僕?廊下を水びだしにして靴下も汚したから買い物から帰ってきたお母さんにたっっぷり怒られたよ。

でも、おじいちゃんにこの話したらなんだかとっても嬉しそうだったからいーんだ!








……文字数と纏まらない文章と格闘してたらいつの間にか出来てました。
いつか、チャットで話していたお話。