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  [No.3336] もうひとつのお月さま 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/08/10(Sun) 00:53:05   121clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:イーブイ】 【ルナトーン

 絵本っぽいものの二本立てその一。
 即興二次小説のお題で書いたものです。



 ふよふよと月夜に浮かぶもう一つのお月さまに、イーブイは長い耳をピクピクさせます。

「こんばんは、もう一つのお月さま」
「こんばんは、かわいらしいウサギさん」

 下方からの声に、呼ばれたお月さまはウサギの元にふよふよと体を下降させました。
 降りてくるお月さまの背後には、もっと大きな、似た形のお月さまがあります。

「この辺りにはいっぱいルナトーンがいるのに、よくわたくしだとわかりましたね」
「簡単だよ、だってぼくの知ってるお月さまには、目のすぐ下にまあるい穴があるからね」

 イーブイは胸を張って、見覚えのあるお月さまの真っ赤な目の下にある大きなクレーターを指さしたのでした。

「わたくしもすぐにウサギさんがわたくしの知るウサギさんだとわかりましたよ。その首から下げているフシギな形の石は、見間違えようがありませんからね」

 ルナトーンはイーブイの首から下がっている、どこかルナトーンに似た形の石を見ていいました。

「シャワーズ兄ちゃんもブースター兄ちゃんも、サンダース姉ちゃんも、みんな石を使って進化したのに、ぼくはぜんぜん進化する気配すらないんだ。変なの。ずーっとこうやって、月の形をした石を首からさげてるのにさ」
「うーん、どうしてでしょうねえ」
「お月さま成分が足りないのかなあ。ねえ、お月さま。今夜はあなたの体の上で眠ってもいい?」
「かまいませんよ」

 OKの返事が来たので、イーブイはルナトーンの硬くてほのかにあたたかい体の上で眠ることにしました。ルナトーンがイーブイの体を鼻の下に乗せて、すみかに帰る途中だというのに、イーブイの意識はすでに半分ほど夢の中へうずもれかけています。

「ねえお月さま、ぼくいつ進化できるのかなあ」
「そうですねえ、わたくしにもまったくわかりませんが、まだウサギさんはお小さいのですから、急ぐ必要はないのではないでしょうか」
「ぼくはねえ、お月さまにピッタリな、真っ黒な夜の体になりたいんだ。なのにぼくの首の下にある石は、いつまでたってもお願いごとをかなえてくれやしない」
「あせる必要はありませんよ。あなたのお兄さんお姉さんも、ウサギさんくらい小さかった時は、まだイーブイだったのでしょう?」
「うん、そうだけど……ぼくは早く進化したいんだ。そうしておとなになりたい。おとなになったら、お月さまのおヨメさんにしてくれる?」
「そうですね、あなたの騒がしおてんばが直ったら」
「むー、ひどいや、ぼくは本気なのに」
「フフフ、直ったら、考えてあげますよ」
「ほんとうに? うれしいなあ」

 その言葉を最後に、イーブイは完全に夢の中へ意識をうずめてしまいました。


 みなさんもご存知のように、イーブイはつきのいしで進化することはありません。イーブイの望む真っ黒な体になりたいのなら、誰かとの信頼関係が必要なのです。

 誰か。そう、誰か──。

 例えば、イーブイが夢中なお月さまが振り向いてくれたら──。イーブイは念願の、真っ黒な夜色の姿に変化をとげることが出来るかもしれません。



 お題:見憶えのある月

 

 自分の趣味的には最初から相思相愛のが好みなんですがオチにつながらないのでボツになりました。
 なつき度進化なんだからなついてればいけそうな気もしますけどね。

もうひとつのお月さま (画像サイズ: 400×333 53kB)


  [No.3337] ポケモンどこだ 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/08/10(Sun) 00:57:12   72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 絵本っぽいものその二。



 ポケモンはね、何も草むらにばっかりいるんじゃないんだよ。
 ぼくがやってるみたいに、耳をすませて、じーっとあたりをよく見てみて。

 ほら、いるでしょ? 景色に隠れたつもりでいる、たくさんのポケモンたちが。
 あそこの花畑の中に紛れた、一際目立つ大きなお花はラフレシア。
 あんなに大きなお花を頭に乗っけておいて、自分はうまく隠れてると思い込んでるみたい。
 小さな花が揺れるのに合わせて、自分の自慢の花も揺らしてる。
 すっごい花粉が辺りに振りまかれてるけど、不思議なことに、周りのお花はくしゃみの一つもしないみたい。
 仲の良いお友達なのかもね。
 綺麗だから、まあいっか。



 こっちのひまわり畑に紛れてるのは、キマワリ。
 こっちは本当にそっくりだから、ラフレシアよりも自信満々みたいだけど、ムダなんだからね。
 そんなふうにニコニコ笑ってるひまわりなんて、キミだけだよ。
 背の高いお花の中で、キミだけ少しちいさいし。
 楽しそうだから、まあいっか。



 こっちのため池のハスの花の中に紛れてるのは、ハスボー。
 そっくりさんだからキマワリよりもっと自信満々に見えるけど、ムダなんだからね。
 そんなふうにポケモンを運んでるハスの葉っぱなんて、キミだけだよ。
 どうもちっちゃなコラッタが向こうに渡るのを手伝ってるみたい。
 まるでバタフリーに蓮の葉っぱを引かれて移動する、おやゆび姫みたいだね。
 陸に上がったコラッタが、しっぽをブンブン振ってる。ありがとう、って言ってるみたい。
 ほのぼのするから、まあいっか。

 

 ふー、ちょっと疲れたなあ。
 あ、あそこに腰かけるのにちょうどいい岩があるぞ。
 よいしょっと……う、うわ、動いた!?
 わー!! 石かと思ったら、道ばたでねてたゴローンだった!!
 ごめんなさーい!!!!



 ふう、ひどい目にあった……。おうちに帰って休もうっと。
 あれ? おうちの入り口にカボチャがゴロゴロ転がってる。
 なんだろう。あ、一こだけ張り紙がしてあるカボチャがある。

 「いっぱい取れたから、いっぱい食べなさい」だって。
 近所に住んでるぼくのおばあちゃんからだ。
 どうせならあがっていけばいいのに。あとでお礼にいかなくちゃ。
 その前にこのカボチャをお母さんのいる台所に運ばないとね……あれ、こっちのカボチャ、割れてる。
 その近くのカボチャは、体があるぞ!?
 わー!! カボチャだと思ったら、フシギダネの背中のタネだった!!
 自慢のカッターでカボチャを割って、中の種とオレンジの部分を食べてたみたい!
 ゆるせなーい!!



 フシギダネはぼくのいかりを感じとって逃げたけど、絶対に逃さないぞ。
 むしとりしょうねんの近所の兄ちゃんもまっさおな、ボクのうでまえを見せてやる!
 そりゃー、のしかかり!! どうだー、カビゴンほどじゃないけど、ぼくもなかなかのもんだろう!
 おどろいたみたいで泣いてる。ふっふっふ、泣いたってもう逃げられないぞ。





 フシギダネはお腹がすいてたみたいだ。
 おかあさんにフシギダネをかかえて見せてきたら、今日のお夕飯は一人分増えるわね、だって。
 おばあちゃんのカボチャは、おかあさんのほうちょうとおナベと調味料で、スープになっちゃった。
 フシギダネにもおすそわけ。
 カボチャが好きなくせに、カボチャがスープになったことはわからないみたい。
 ボクがスプーンですくって飲んでみせたら、フシギダネも顔をお皿に押しつけて飲みだした。
 一心不乱にスープを飲んで、顔をあげるフシギダネ。
 おいしい、ってほっぺに書いてあるよ。
 フシギダネも飲むスープだけど、べつにフシギスープじゃないんだ。
 フシギダネ、じゃなかった不思議だね。




 アニポケのDVDのサイドストーリー3に収録されてる新米トレーナーのお話に出てきた、
 カボチャに紛れてるフシギダネに悶死したので書きました。
 季節感が謎ですが、一応カボチャの収穫時期は夏だそうなので
 ヒマワリと同時期に存在しててもありかなあと。

ポケモンどこだ (画像サイズ: 600×500 12kB)