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  [No.3354] ゴーストハンター 投稿者:きとら   投稿日:2014/08/25(Mon) 21:11:47   60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:ヘルガー】 【ヌケニン】 【スピンオフ

「とりつかれました。祓ってください」

 それだけ書かれた紙をくわえてヌケニンが戻ってきた。ヌケニンから紙を預かる子供はもうすぐ10才になるというところ。背の順で並べば前の方だし、両親も成長の遅さを心配している。生まれたころから成長曲線(乳幼児の成長の平均を表したグラフ)の下であったし、言葉も覚えるのが遅かった。そして人見知りせず、知らない人でもついていってしまう。
 そんな危なっかしい主人を常に見守っているのが後ろにいる雄のヘルガーだ。生まれたときから一緒で、いつも黙ってついていくが、危険なときは大声で吠え、逃げない相手には噛みつき、それでもあきらめない相手には炎を吹きかける。ガーディ以上に賢いヘルガーだった。
「じゃ、いこうかヘルリン」
 顔に似合わないかわいらしい名前がある。ヘルリンと呼ばれ、ヘルガーは立ち上がった。
「今日の依頼は、ニビシティだ」
 パーカーに袖を通し、靴紐を結わえた。持っていくボールはヌケニンとヘルガー。こういう依頼はいつもこの二匹。見えないゴーストを相手に戦うポケモントレーナーの中でもゴーストハンターと呼ばれるトレーナーは持つポケモンがそんなに多くない。ゴーストたちの手は見えない範囲で行われることが多く、二匹が気を使える限界だ。
「いってきます!」
 トレーナーカードを忘れずに。そこに書かれた名前は「レン」とだけ。



 案内されたところは古い民家だった。特段なにもなさそうに見える。レンは道具からシルフスコープを取り出した。装着すると玄関から二階までゆっくりとまわる。途中、ロトムが洗濯機で遊んでいたのを見つけた。ヌケニンがなにやら話しかけると去っていった。しかしレンの感はまだ何かいると告げている。たくさんの、たくさんの何か。しかもシルフスコープで見えないような何か。
 ヘルガーがうなり始めた。こういう感覚はヘルガーが優れている。ヘルガーが吠える方向を見ると、たくさんの黒が集まっていた。集まりすぎて判別できなかったが、ヨマワルの大群のようだ。
「ぬっちシャドーボール、ヘルリンあくのはどう!」
 何匹かのヨマワルが攻撃に散って地面に落ちていく。けれど生き残ったヨマワルがレンに向かって一斉にやってきたのだ。普通のポケモンならポケモンに向かっていく。間違いなくこれは人の霊がヨマワルとなっている姿だ。確信したのは、大勢のヨマワルに囲まれ、押さえつけられ、口をあけさせられた時だ。取り付こうとしているのだ。依頼にも取り付かれたと書いてあった。
 声も上げられない。何匹のヨマワルが入ってこようとしているかカウントすらできない。わかっているのは、このヨマワルたちが生きているときに成し遂げられなかったことをレンの体を使ってもう一度行おうとしていることだ。
 背中に強い衝撃を受けた。まわりが熱い。ヌケニンがレンの背中に体当たりし、ヘルガーが炎を吹いたのだ。主人の命令もないが、ピンチを助けなければならないと認識していた。
「あり、がと。ヘルリン、もうだめだこの子たち」
 ヘルガーは息を吸い込むと、特大の炎を放った。畳やふすまに向けられ、家全体に火がつくように。
 レンはヌケニンとヘルガーをボールにしまうと一目散に走った。玄関を出て、避難して。火が家全体を包み込むにはまだ少し時間がかかろう。しかし炎が浄化できないものはない。家ごとヨマワルたちの怨念を天へ昇らせる。


 謝礼を受け取るために依頼主を呼び出した。だいたい都会のカフェだったりするのだが、今回は場所も近いトキワの森に来てもらった。相手が子供だと見ると依頼主はすごいねよくやったねとおまけでお菓子をくれたりするものだ。しかし今回はそれが目的ではない。レンはひとつの疑問を依頼主にぶつけた。
「あの家に、何人の子供を監禁して殺したの」
 レンは二つの表情を持っていると言われる。普段の無邪気な子供そのものの顔と、今みたいなロケット団のリーダーが失敗した部下に詰め寄るような顔。何のことか、と依頼主はレンから目をそらした。
「聞いたよヨマワルたち、みんな僕と同じくらいの子供。僕にみんな教えてくれた。おじさん、誘拐犯だったんだね」
「何を証拠に。すでに家が燃えて、何にも残ってはないじゃないか。それに君みたいな子供がいくら警察にいったからって」
「僕は警察じゃないよ。正義の味方でもないよ」
 レンはボールを投げた。
「ここだったら、誰もみてないでしょ?」



 ヘルガーは相変わらずレンの足元にべったり。テレビゲームをしているレンのひざを枕に寝ているようにも見える。
「トキワの森で、惨殺された遺体が発見され・・・・・・・」
「その手口がロケット団の手口に似ていて、ロケット団の残党を追っているところです」


 ロケット団も同じようなことするんだ。意外に面倒なんだよね、同じ目に合わせるって。人数が多いと特にさ。


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リメイクFRLGの主人公の男の子、レンちゃんです。
長編が元です。
彼はセレビィのお孫さんという設定だったりします。完全な人間です。
お父さんはリメイク前の主人公です。
おじいさんはロケット団ボスサカキという今思えば何かいてんだっていうのをかいてました。

なぜかこの子を唐突に書きたくなったのでかいてみました。
ヘルガーってゴーストを退治専門のようなタイプだったのでやりました。