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  [No.3501] 作り話 投稿者:フミん   投稿日:2014/11/14(Fri) 00:13:40   96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:カイリュー】 【ミミロップ】 【ルカリオ

「あなた、一体何をしているの?」

「ああこれかい? 友人の子供達に楽しんでもらおうと文章を書いているんだ」

「昔からあなたはそういうことが好きだったものね。ありもしない空想のお話を、そういう物語を考えること
が」

「小さな頃によく父親からそういう話をされていたからね。だから、僕達にも将来子供ができたら毎晩のようにお話を聞かせてあげようと思ってね。今からお話を書いておこうと思うんだ」

「それが良いアイディアね。お話は、知識を豊かにするものね」

「例えばね、これは父親が作った話なんだが『あるところに大きな国のお姫様がいました。美しいお姫様は豊かな暮らしをしていましたが、ある日大きな大きなカイリューが城を襲い、お姫様をさらっていきました。カイリューは次の満月の夜に、姫を妻にするため婚姻の儀を取り行うことを宣言します。困った王様はカイリューの住処に何度も兵士を攻め込ませましたが、いくらやってもカイリューに追い払われてしまいます。王様がほとほと困り果てていた時、伝説の剣を持った勇者が王様の元を訪れました。 私が姫様を救いましょう。王様は言います。 良かろう、そなたがあのにっくきカイリューを倒し、姫を救ったならば、この国の王位を開け渡そう。 勇者は勇敢にも、カイリューが住む山へ独りきりで攻め込み、途中勇者の足取りを拒む凶暴なポケモン達をなぎ倒し、ついにカイリューとの一騎打ちが始まります。伝説を生きる勇者の末裔といえど、巨大なカイリューを倒すのは並大抵のことではありません。その闘いは、何時間も何時間も続きました。互いに疲れ果てたその時、勇者が一瞬のスキをついて、伝説の剣でカイリューの胸を突きさします。心臓をやられたカイリューは激しく抵抗しますが、ついにその命は燃え尽きました。こうして姫を救い出した勇者は、一国の王として国を治めながら国民から信頼される王様として幸せに暮らしました』。どうだい?」

「素敵なお話ね。あなたのお父さんはとっても想像力が豊かだわ」

「後、これは僕が考えたお話なんだけど『昔、あるところに赤いずきんを被った小さな女の子がいました。ある日、女の子はお使いを頼まれます。山の中に住むおばあさんの家へお見舞いに行っておいで。おばあさんも喜ぶよと。でも決して寄り道はしてはいけないよ。女の子は果物等のお見舞いを持ち意気揚々と出かけます。目的地まで半分まで来たところへ、あるポケモンが離しかけてきました。にこやかに笑うルカリオは言います。 お嬢さん、一体どこへ行くんだい? 女の子は言います。 あら優しそうなルカリオさん、これからおばあさんのお見舞いに行くの。 ルカリオは笑いながら言います。 なら、あそこのお花畑のお花を積んだらどうだい? 今の季節ならとっても良い香りのお花が沢山咲いているよ。 女の子は、それは良い案だとルカリオにお礼を言い、道を外れてお花を積み始めます。ルカリオはしめしめと、女の子のおばあさんの家に先回り。病弱なおばあさんをぺろりと食べてしまいました。そしてルカリオは、おばあさんの洋服を着ておばあさんのベッドに潜り込みます。さて、綺麗な花を積んだ女の子は漸くおばあさんの家に辿り着きました。家の扉をノックします。おばあさん私よ。家の中のルカリオは答えます。よくきたね、おあがり。少々がらがらとした声を不審に思いながらも、女の子はおばあさんの家に入ります。 ルカリオは布団にくるまり姿を隠しています。こちらへおいでとルカリオは言います。まあおばあさん、その声は一体どうしたの。ルカリオは答えます。風邪を引いているからね、喉がやられているんだよ。女の子はもう一つ質問します。おばあさん、耳なんて生えていたかしら。ルカリオは言います。昔から生えているじゃないか。忘れたのかい? 女の子は言います。おばあさん、そんなに口が大きかったかしら。そしてルカリオは言いました。この口はね、お前を食べるためのものさ。そう言うとルカリオは女の子も丸飲みにしてしまいました。二人の人間を食べたルカリオは大いに満足したのか、そのまま眠りについてしまいました。その後、おばあさんの家をある知人の狩人が訪ねてきました。もちろん狩人は驚きます。すっかり眠りこけたルカリオの腹が大きく膨らんでいるのを見て、もしやと思い耳を当ててみると女の子とおばあさんの声がするではありませんか。狩人は急いでルカリオの腹をナイフで引き裂き二人を救いだすと、代わりに大量の石ころをルカリオの腹に詰め込み傷口を縫ってしまいました。そして三人は家から遠く離れます。さて目を覚ましたルカリオは、やけに重くなった腹を抱えながらおばあさんの家を出ます。おかしいなあ、こんなにお腹は重かっただろうかと疑問に思いました。移動するにもとても疲れてしまうのです。直ぐ側にはおばあさんがよく使う井戸がありました。丁度良い。喉が渇いたから水でも飲もう。ルカリオは井戸をのぞき込みます。すると、体が重くなったルカリオは足を滑らせて井戸へ落っこちてしまいました。石で重くなった体はどんどん井戸の奥底へと沈んで行きます。ルカリオはそのまま浮いてきませんでした。こうして自由になった女の子は寄り道をしてしまったこと恥じた上で、逞しく成長していきました』」

「少し長いけど悪くないお話ね。もうちょっと所々描写が細かくても良いかもしれないわ」

「そうだね。昨日突拍子もなく考えたからまだ修正が必要かな」

「じゃあ私もあなたの真似をして良い? 一つ思いついたお話があるの」

「君もか。是非聞かせてくれないか?」

「昔々、今よりずっと昔。とある場所で結婚式が始まりました。村の皆は、新たな夫婦が誕生したことを盛大に喜びます。旦那さんは働き者で力持ちであり、皆からの信頼も厚い逞しい人間です。おまけに格好良くて優しいので、村の女からは非常に人気がありました。今回いよいよ結婚するということで、大多数の村の女は新婦に嫉妬しましたが、あの男性が認めた相手ならば仕方ない。あの人が幸せになるならばと心からと夫婦を祝福しました。一方、女の方も負けてはいません。女も、男の負け劣らず村一番の美人でした。おまけに、我が儘を言わず他人を気遣いできる心まで美しい女性です。村の男性は誰が好きかと言われれば必ず彼女だと即答するでしょう。当然、女が結婚することが決まった時、村の男達は新婦を激しく羨みました。しかし、結婚相手が村一番の男性だと知ると、自分が叶う筈がないと皆諦め、心から女性を祝福しました。結婚式は盛大に行われました。なんと言っても、村一番の男性と女性が結ばれるのです。結婚式には村中の人達が集まりました。正装に身を包んだ男性と、美しい服で飾られたミミロップの女性の結婚式は、それはとても良い式だったと言います。そう、昔はポケモンと人間は一つの生き物だったから、これは当たり前のことだったのです」

「なるほど、その発想はなかったな。空想にしてはよくできている。あんなに恐ろしいポケモンと人間が結婚する話なんて考えたこともなかったよ。ポケモンと言ったら、種類によっては人間を容易く殺してしまうような奴もいるからね。しかも言葉も通じない、恐怖の対象だ。そんなポケモンと結婚か。なかなか考えられることじゃない。作り話にしてはよくできている」

「でしょう。わりと自信あるのよ」

「でもそれだと、どうしてポケモンと人間が同じものであるかがよく分からないよ」

「ああ、そうね。そこは突っ込まれてしまいそうだわ」

「お話には改良が必要だね。でも面白いから一応書きとめておくよ」

「お願いね」

「さて、今日はもう遅い。寝ようか」

「そうね、おやすみなさい。明日も良い日になりますように」

「ああ、おやすみ」







「どうだい? 古い書物の解読は終わったかい?」

「博士。凄いですよ。これは世紀の大発見かもしれません」

「なんだ、そんなに面白いことが書かれていたのか」

「これが、この本は昔話が沢山詰められていた本だったのです。勇者が悪のドラゴンを倒す話や、幼い子供と狼ポケモンの話のように、他の古い童話でも採用されている話も多かったのですが、その中に、人とポケモンが結婚する話が含まれているのですよ」

「ふむ、人とポケモンが結婚する話か」

「ここには、元々人とポケモンは同じ生き物だった と書いてあります」

「何とも不思議な話だ。興味深いね。確か、他に似たような文献があったような気がするな。となると、大昔はポケモンも人の言葉を喋れたのかもしれないな」

「もしその定説が確定すれば学会はひっくり返りますよ」

「面白くなってきたな。伝説や神話には、そこに根拠となる事実が含まれていることがあるからね。あながち間違いではないのかもしれない。もう一度、書庫の資料を漁ってみよう」

「私も同行します」


二人の学者は、研究室を後にした。



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最近紳士向けばかり書いていたので息抜きに。

今月の24日に開催される第十九回文学フリマにサークル参加する予定です。【イ-19 甘く香る杜若】です。真面目なポケモン小説本はもちろん、マサポケの管理人さんに「本当に取材していないの?」と言わせた紳士本も持って行きます。地味に在庫が少なかったりします。
586さんのホワイティな本を買うのを楽しみにしています。