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遠い昔のこと、孤独な巨人は氷と砂と溶けた土からそれぞれ1体ずつ、自らの似姿を作った。
作られた巨人の似姿は何かしらの力を持ち、自らの意志を持って動くこともあった。
後年にはその力を人に恐れられ、巨人も似姿もそれぞれ離れた土地に封じられたという。
それから、この伝説がとある国で掘り起こされた。
その国は戦争によって存亡の危機に立たされており、とかく兵力増強を求めていた。
巨人のように人形を作ろう。力を持った人形を作り揃えて敵国の武力を押し返すのだ、と。
国にひとり、人形職人がいた。土をこねて素焼きの人形を作り、素朴な土産物として売っていた。
その人形に目が付けられた。
戦争の駒となる人形を作れ。王命が下り、職人はそれに従った。
しかしただの土人形では動く由もない。
執政者たちは考えた。生命がなければ動かないのなら、その生命は他から投入しよう。土人形に小さな生き物を埋め込むことで人形を動かそう、と。
試みはそして成功し、人形は動き、兵となった。
人形は埋め込まれた生命を動力源とする。その生命は野鼠や虫のような小さな生命でも問題なかった。
そうして出来上がった人形は人間の命令に従うだけの能力を有していたため、人形は重宝した。
小さな生命の犠牲にしながら戦力は増していった。
しかしこれは一種の生贄であり、嫌悪を覚える人間もいた。
だから生命の投入は人形の役目となった。
ある日のこと。
小さな生命で人形が動くなら、人間ほどの生命ならばどれだけ活躍するか。これを考え試した者が現れた。
用済みの捕虜を人形に使え、と命令を下し、人形は人間を動く人形に変えた。
人間の生命を動力源とした人形は小さな生命の人形よりも強い兵となり、執政者たちを満足させた。
戦争の時代は長く続き、老いた人形職人はついに倒れる。
もはや人形は作れない。そうなってもなお、職人は命令に従い続けることを望んだ。
そして職人は、人形となった。
どれほどの時間が過ぎようとも、人形は人形を作り続けるようになった。
しかし戦争は終わる。
戦争の終わった国で、兵士人形は王の塔を守護するよう命じられた。
また人形職人は次に起こりうる戦争に向けて人形を作り続ける。
戦わずとも兵士人形はやがて動力が尽き、動かぬ土人形となった。
役目を終えた土人形は塔の地下にある溜め池に放られ、元の泥へと溶けてゆく。それは動力源とされた生き物の骨身と共に。
人形職人は命じられるまま、池の底に溜まった泥を次なる人形の素材とした。
埋め込まれた亡骸たちが溶けた泥で、新たな人形は作られた。その人形は呪いのためかひとりでに動き出したが、それは人形職人の与り知らぬところ。
それから、兵士人形は残らず池の泥となり、その泥さえも人形職人に使い尽くされた。
されど命令は消えず。人形職人は土を得るために池の底を砕き、新たに土を掘り始めた。
しかし新たな土は亡骸の呪いを持たず、その土の人形もまた動かない。ただ人型の土だけが塔の中に並べられた。
採掘の穴が塔の真下へと広がり深まる程に塔の地盤は脆くなっていった。その上、掘り出された土は真上の塔へと運ばれる。
増してゆく塔の重さに脆くなっていく地盤は耐え切れず、塔は土の中へ沈んでいく。いつしか入り口さえ土に埋まるほどに。
時代は流れて、入り口をなくした塔に立ち入る人はいない。
亡骸の泥人形たちが徘徊する中、人形職人は動かぬ人形を作り続ける。
新たな王が新たな命を下す、その時まで。