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  [No.3902] 「冬を探して」戦闘シーン改稿案 絶対零度 投稿者:あきはばら博士   投稿日:2016/03/20(Sun) 00:35:10   35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 動いたのはリョースケだった、かじかんだ手を動かして腰のボールを掴み、中にいるポケモンを繰り出した。
「行け。 サクラ、かえんほうしゃ!」
 炎を纏ったポケモンが現れたと同時、リョースケは叫んだ。途端、辺りの冷気とそのポケモンの放つ熱気がぶつかり合い、急激に暖められた空気の風でコハルは思わず目を閉じる。風がおさまり、コハルが前を見れば炎を纏った一角獣、ギャロップがいた。ギャロップは主人に視線をやるでもなく、その場を低空をホバリングする氷の鳥を真っ直ぐに見ていた。
 冬の神様と呼ばれる存在に、いきなり攻撃をすることに内心ためらいはあった。不意の攻撃から身を守るために、こちらもポケモンを出して牽制するだけで良かったかもしれない、だがトレーナーとしてのリョースケの体は反射的に戦闘を選択した。
 もしも―― 万が一。
 この氷の鳥を捕獲することができたならば、リョースケはトレーナーを辞めることなく旅を続けることができるだろう、これが自分がトレーナーで居られるかどうかの最後のチャンスであることを、リョースケはうすうす気づいていた。
 対する氷の鳥は少しも慌てた様子もなく、ただ悠然とその場に留まっていた。これは神と言われるほどの力を持つことからくる余裕だろうかとリョースケは思った。しかしリョースケはこの考えを振り払う。今は考えているときではない。氷の鳥はどうやら逃げる気はないようだ、と判断する。逃げられたらそれはそれでこの場の危機を脱することになったが、これで捕獲のための場は整った。コハルのユキカブリはあてにならない。戦えるのは自分自身のポケモンだけだ。
「サクラ、ほのおのうずで捕らえろ」
 ギャロップもリョースケの覚悟が分かっているのだろう、相手がどのような存在であろうとなんら躊躇うことなく、大きく首を振って、炎のたてがみをなびかせて、その炎を縄のように伸ばし、相手の周りをぐるりと一周させる。氷の鳥は、大きく羽ばたいて風を起こし、出来かけた炎の渦を消し飛ばしてしまった。
 氷の鳥は自らの翼を前に向けると、その翼で挟まれた場所に青白い光の球体が作られ、そこから一直線にギャロップを目掛けて光線が放出された。
 冷凍ビームだ。
「炎を纏え、そしてフレア――」
 ギャロップはその場で炎をまとって、自分自身の熱を高めることで、命中した凍て付く光線を消し飛ばす。
「ドライブっ!」
 全力でその場を踏み切り、炎の槍となる。駆け抜けた場所の雪はその熱で融け、本来の砂利の地面があらわになる。
 ギャロップのフレアドライブは勢いをそのままに跳躍し、氷の鳥を目掛けて突撃をする。氷の鳥は翼を交差させて光の障壁を作り出し、まもるでその攻撃を防いだ。
 うまく決まらなかったようだったが、手ごたえはあった。炎タイプと氷タイプなのだ、防御をするにも攻撃をするにもタイプはこちらが優勢である。このまま押せばいい。
「出力を上げろ。今度は、だいもんじだ」
 ギャロップは大きく息を吸い込み、大の字の炎を吐き出した。氷の鳥はギャロップを見透かすような眼差しで見つめながら、大きく羽ばたき、上へその攻撃をかわした。
「そこだっ!」
 上に避けることは分かっていた。リョースケはそのタイミングに合わせて、大きく腕を振りかぶり、手に持っていた空のハイパーボールを氷の鳥に目掛けて力強く投げつける。だが、ハイパーボールは風に煽られて、氷の鳥にはかすりもせずに、柔らかい雪の上に着地してそのまま埋まって消えた。
 ちゃんと攻撃を当てて弱らせて、もう少し近づく必要があるかもしれない、とリョースケは感じた。
「もう一度、かえん……」
 リョースケが再び指示を繰り出そうとした時だった。
 その瞬間。

 空気がぴしりと音を立てた。

 蝋燭の火を吹き消すようにギャロップの炎のタテガミが一瞬で消え、その場で固定される。
 その場に一瞬だけ白い霧が発生すると、ギャロップの体を四方八方、全方向から貫くように無数の氷柱が形成され。あっという間にその体は細い氷柱で埋め尽くされた。
 炎で融かされた雪から生まれた、空気中にばら撒かれた大量の水分が、ぜったいれいどによる急激な低温変化によって一気に凝固したのだ。

 透明な澄んだ空気の真ん中に、大きな菊花状の氷の華が、見事に咲き誇った。

 その中心部には、自慢のタテガミを失い、本来の白桜色の肌のみとなり、透き通った氷でコーティングされたギャロップがあった。
 白桜色の肌と氷柱が白く同化し、光を受けてキラキラと輝いて、美しい氷像が出来上がっていた。

「な…… うそ、だろ」
 リョースケは呆気に取られる。何が起きたのかわからなかった。
 だが確かなことはある、凍り付けにされたならば早くその氷を融かさないと中にいるギャロップは、死ぬ。
 しかし、リョースケはその氷を融かせるポケモンを持っていない。
 リョースケが今までのトレーナーの旅で、辛い時も嬉しい時も、一緒に横で旅をしてくれていたポケモン。町から町への移動の度に、その大きな背中に跨り、道路を駆け抜けてきた。
 ポニータ時代から今に至るまで、彼女と共にあったからこそ、数々のバッジを手に入れることができていた。それが今、目の前で……
「うあああああ! サクラああああああ!!!」
 悲壮感に駆られて、急いで駆け寄ろうとするリョースケだったが、氷の鳥と目が合った。その心を見透かすかのような静かな眼差しを向けられて、リョースケは一歩も動けなくなった。
 このままではまずいとリョースケは思った、氷の鳥に自ら手をかけて危害を加えてしまったのだから、このままでは自分達はただで済むわけが無い。せめてコハルだけでも逃がさなくてはと、横に立つ彼女を見る。コハルは真っ直ぐ氷の鳥を見ていた。何を思っているか、リョースケにはわからない。
 やっと出会えた喜びか、それとも恐怖しているのだろうか? とにかく守らなくてはと、リョースケはコハルの前に立とうとした。
 けれど、それまでコハルにしがみついていたユキカブリが、何か声を発しながら前へ出た。説得でもしようとしているのだろうかとリョースケは思う。同時に無茶だ、とも。しかし意外にも氷の鳥はその場に降り立ち、静かにユキカブリの声に耳を傾けているようだった。ギャロップのような異分子とは違い、ユキカブリはこの土地のポケモンだからだろうか?
 今のうちに逃げた方がいいのか、とリョースケの脳裏に過ぎったが、ギャロップを置いて逃げるわけには行かないし、下手に動いて氷の鳥を刺激するのは良くないのではと考えると動けなかった。コハルも動く気がないようなので余計に逃げるのは難しかった。
 と、甲高い声が真正面から聞こえた。歌うような美しい声、というのは本当だったなどとリョースケは思う。氷の鳥は翻し大きく羽ばたいてその場から飛び去って行った。同時にその羽ばたきで雪混じりの強い風が吹いて、視界は白で覆いつくされた。そこで緊張の糸が切れてリョースケの意識は途絶えた。

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最後にリョースケが笑って、清清しく「あー負けた負けた」と言えるようなバトルにするために、問答無用の絶対零度ではなくリョースケが自分できちんと敗因を理解できる、身の丈にあわせたバトルにするように心がけ、
また、凍り付けにすると「それを融かせるポケモンがいないから死ぬ」のでボツにして、凍える風で衰弱させるという誰も死なせない優しい展開にしたのですが。
ロマンを優先して絶対零度を使うべき、派手にやれ、とのことなので、 やりました。
清清しくトレーナーを辞めるには難しそうですが、要望通りに派手な感じにはなったと思います。

↓サクラのイメージ画像です。

「冬を探して」戦闘シーン改稿案 絶対零度 (画像サイズ: 599×399 72kB)

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