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  [No.3930] ポケモン権について 投稿者:浮線綾   投稿日:2016/07/23(Sat) 07:34:42   58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]




ポケモン法学:ポケモン権運動について



●概要
 ポケモン権運動とは、現代において各先進国を中心に活発化してきたものであり、以下の内容を主張するものです。

・人間社会で暮らすポケモンに、人間と同様の人権(ポケモン権)を付与すべきこと。

 この主張によれば、具体的には、ポケモンが種々の契約を締結したり、刑事裁判の被告人となったり、人間の遺産を相続したりすることなどが可能とされます。



●背景
 近代以降、ポケモンはただの物体ないし客体と見なされてきました。人間に捕らえられたポケモンは、人間の所有物として、一切の権利が認められませんでした。人間社会において奴隷や女性、外国人といった社会的弱者に権利が認められる段階にあっても、ポケモンにはその権利が認められることはありませんでした。人間に捕らえられたポケモンは人間社会の発展に寄与すべきとされたのです。
 このように、近代法でのポケモンと人間の区別は非常に厳格でした。
 その主な理由を以下に挙げます。

1.ポケモンが動産として認識されるようになり、物権法を含む民法の制定が進んだこと。
2.ポケモンを扱う技術が向上し、社会におけるポケモンの数が実に人口の数倍にのぼったことから、ポケモンに諸権利を認めるのは非現実的であったこと。
3.近代以降の世界経済はポケモンを奴隷的に使役することによって支えられていたため、ポケモン権を認めれば世界的な経済の混乱が避けられないこと。
4.ポケモンは知能が低く権利能力を有しないと見なされていたこと。『ポケモンは人間に劣る生物である』というのが一般認識だった。
5.宗教的理由により、ポケモンを人類と同等の権利を有する生命体とすることへの反発がみられた国も多く存在したこと。

 これらの理由により、近年まで世界各国の世論は、ポケモンになんら権利が認められないことについてもやむなしとする意見が圧倒的多数を占めていました。

 そのような世論が変化する契機となったのが、現代における科学の発展です。
 ポケモンには人間に勝る知能を有するものも存在する、という事実が確認されて以降、ポケモンを奴隷的に拘束し使役する現在の制度に対する疑問が各国で噴出しました。
 さらに、モンスターボールやボックスの発明によってポケモンの捕獲・管理が容易になったことから、いわゆる“ポケモンへの配慮の欠如”が世界的に多くみられるようになり、これに対しても批判が殺到しました。
 このように近代以降劣悪な環境におかれていたポケモンを救済すべきということで、ポケモン権運動は世界各国で叫ばれるようになり、活発化しました。



●権利主体と権利内容の範囲
 ポケモン権運動の中にも、主張の分裂は見られます。
 ポイントは主に2点、『どのポケモンに権利が認められるべきか』、そして『ポケモンにどこまでの権利が認められるべきか』、これらが争点となっています。
 ポケモン権運動が依拠する主な学説を三つ挙げます。

(1)ポケモン・人間平等説
 この世界に存在するすべてのポケモンについて、人間と同等の権利を付与します。
 この説に対する批判としては、ポケモンの中には知能の低い種族も存在するためすべてのポケモンに権利を認めるのは不当というもの、また、すべてのポケモンに権利を認めるというのは非現実的であることなどが挙げられます。
 なお、実現可能性が限りなく低いことから、この説はほとんど支持されていません。

(2)被捕獲ポケモン・人間平等説
 人間に捕獲されたポケモンについて、人間と同等の権利を付与します。
 『捕獲』とは、人間がポケモンをモンスターボールに収めたということを指します。
 被捕獲ポケモンとその捕獲者は、対等な関係で一種の契約を締結したと見なされます。すなわち、被捕獲ポケモンは捕獲者の命令に服する義務を負い、捕獲者は被捕獲ポケモンの生命維持及び福利厚生を保証する義務を負います。
 この説に対する批判としては、『捕獲』によって既に『ポケモンの持つ人間と同等の権利』が害されているというものがあります。

(3)被捕獲ポケモン・人間不平等説
 人間に捕獲されたポケモンについて、ある程度制限された権利を付与します。
 (2)説に対する批判を受けて(2)説を修正したものです。
 この説に対する批判としては、ポケモンに対する権利の制限の範囲が不明瞭であり、場合によっては無制限にポケモンの権利が奪われ、ポケモンに権利を付与する実質的意味じたいが失われてしまうというものがあります。
 これが多数説として支持を集めており、かつ判例もこの考え方を採用しているようです。ただし、どこまでの権利をポケモンに認めるかという点について、さらに細かくいくつもの学説が対立しています。



●現状
 現代は、条約においてポケモンの軍事利用や非人道的実験等が規制されるなど、国際世論に応える形で世界的に足並みを揃え各国が協力してポケモンの権利向上に努めています。しかし各国個々の法整備という点では、ポケモンの権利の確保はまだまだ不十分であると国際世論は感じているようです。ポケモン肉を食する文化や、ポケモンを蔑視する宗教との軋轢も問題視されています。
 ポケモン権をめぐる議論は混迷を極めており、各国の立法機関もなかなか法整備に踏み切れず、『ポケモン法は空白だらけ』とも言われています。行政機関や司法機関もポケモンの権利については踏み込んだ判断を下せないのが現状です。

 ポケモン権運動は、ポケモンの存在するこの世界において、世界中の哲学者や法学者、政治学者を大いに悩ませる問題です。ポケモンへの差別的待遇を描いた文学作品がベストセラーとなるなど、世間の関心を集めるテーマでありつつも、未だ統一的な見解が出るに至っていません。
 イッシュ地方においてはポケモン権運動が過激化したとみられる『プラズマ団』なる組織が暗躍し、また一方でカントー地方などにおいては『ロケット団』によるポケモン虐待等が社会的に問題視されています。これらの過激な組織を弱体化させ治安を維持するためにも、一刻も早くポケモンの権利について法律が整備されることが望まれます。






○雑感
 ポケモン法について考察しようとしましたが、まだまだ能力不足です。とりあえず現代において活発化しているであろうポケモンの権利に関する運動はこんなものだろうと思います。


・現在のポケモン世界でポケモンと人は結婚できるのでしょうか?
 私は近代革命以降ポケモンと人が法律上厳格に区別されたという説を支持しているので、現代法においてもポケモン権なるものは未整備と考えます。ポケモンはそもそも人間と婚姻契約を締結する権利能力を認められず、人間の戸籍に入ることは(今のところは)できないのではないでしょうか。
 伝統的に人とポケモンの婚姻が行われていたとしても、近代法が深く根付いている現代法を改正することは現実的にはひじょうに困難だと思います。上にも述べた通り、国際世論や国際経済や国際関係への影響、権利主体と権利内容の範囲の問題、宗教問題などなどが大きく関わるからです。
 また、現代では人間がモンスターボールという強力な武力を有していることから、この武力によってポケモンの意思を抑圧することもかなり容易になっているため、婚姻の要件を両者の合意とする現代法において、いかにポケモンの自由意思の存在を判定するかという技術的問題もあります。

・ポケモンは人間から遺産を相続できるのでしょうか?
 同様に、これも(今のところは)不可能だと思います。たとえ被相続人の遺言によりポケモンに遺産を相続させる旨が記述されていたとしても、ポケモンには財産を有する権利は存しません。ポケモンは権利を有さない物体であって相続人とはなり得ず、むしろ相続される動体のほうに当たります。
 ただしポケモンの価額の決定方法については法律で定められておらず、しばしば遺産分割をめぐって紛争が発生しますが、大体の場合においては、個々のケースにおける事情を慎重に検討した上で慣習に従った分割・価額賠償が成されるようです。
 ちなみに、遺言によって動産であるポケモンの処遇について定めることは可能です。

・また、たとえトレーナーのポケモンが何か事件を起こしたとしても、(今のところは)おそらくポケモン自体の責任が問われることはないでしょう。ポケモンが刑法に定められた犯罪を実行したとしても責任が阻却され無罪となります。
 したがって、ポケモントレーナーがポケモンを介して何らかの事件を起こした場合、ポケモンがそのトレーナーの責任範囲外でその事件を引き起こしたということが証明されたときは、トレーナーはその責任を逃れ、またポケモンが責任を問われることもありません。
 トレーナーの責任の認定については、各国のトレーナー政策の影響を受けるところがあります。トレーナーの育成を政策的に重視しているほど、司法においても被告人たるトレーナーは責任を逃れやすくなる傾向があります。
 ただ、このような制度は被害者に著しい不利益を強いることとなり、対策が求められています。



 というのが私の考えるポケモン法の現状です。
 つまり現状としては、いわばポケモン権利否定説に従った近代以来の法制度が基本的には継続されていると思います。そこにプラスアルファで、ポケモンの権利を受容するような国際条約が締結されているのではないかと。

 ただし、ほんの日用品のおつかいくらいならポケモンだけでも購入できると思います。お店の人は商品をポケモンに売ってくれますし、たとえポケモンが勝手に買ってしまったからといってトレーナーが商品を返品しようとしてもそれは不可能だと思います。(成年被後見人の法律行為に関する民法の規定を準用)

 私はとりあえず(3)説を支持しておきます。これもかなり大雑把な説で、(3)説の中でさらに数十の学説に分岐しそうな予感はしますが、面白くもないと思うので深くは立ち入りません。


 ポケモン権運動はおそらくポケモンの存在する世界で普遍的に見られる政治的動向です。
 ところで、この運動の最も不思議なポイントは、『ポケモン権』なるものを主張しているのがポケモン自身でなくて人間だという点でしょう。
 ポケモンは人間に対して自分たちの権利を主張しないのでしょうか?


 というネタ出しでした。本作の内容はネタとしてご自由に使っていただいて構いません。
 では失礼します。


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