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  [No.3966] 秋の始まりに 投稿者:αkuro   投稿日:2016/10/12(Wed) 04:34:47   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:R-18

 幼い男の子が泣いている。その隣には、同じ年くらいの男の子が寄り添っていた。
『ひっく、うっ……ぐす』
『かいと、きょうもおとうさんとおかあさんかえりおそいのか?』
『うん……さみしいよ……』
『だいじょうぶだ。おれはこれからずっと、かいとといっしょにいるから』
『……ずっと?』
『ああ、ずっとずーっといっしょにいる。やくそくだ!』
『うん……りくたとずっといっしょ、やくそく』
 幼いふたりは小指を絡ませて、永遠に寄り添うことを約束する。
 ……懐かしい、夢だ。
 
 
 
 新学期が始まって2日。俺のモヤモヤは頂点に達していた。
 海人のやつ、一体何を隠してやがる。あれから何度問い詰めても口を割らない。
「暁」
 俺に隠し事なんてしたことねーのに。
「おい、暁」
 俺はあいつのことなら何でも分かる。俺が隣にいないとよく眠れないことだって、お見通しなんだ。幼馴染みなめんなよ。
「返事しろ、暁陸太!」
「あぁ? んだよてめぇか」
 けたたましい怒号に重い頭を動かし見上げると、そこには担任の教師がいた。
「先生と呼べ先生と!」
「あーはいはい、なんの用だよ」
「くっ、こいつは本当に……。月影どこいったか知らないか」
「海人ならトイレだぜ」
「そうか……プリント1枚配り忘れてしまって急いで戻ってきたんだ。でもこれから職員会議だからまたすぐに行かないと……」
「バカだなてめぇは」
「先生に向かってバカとはなんだ!」
「一年目だからって2学期にもなってプリント配り忘れる先生がどこにいんだよ」
「ここにいるだろ!」
 ああ分かった。こいつは馬鹿じゃない、大馬鹿だ。
「……海人になら俺が渡してやんよ、どうせ帰り一緒だし」
「そうか、助かる!」
 あいつのことはなんでも分かるが、今回のことは皆目見当がつかない。
 
 帰り道。沈みかけた夕日を横目に海人と並んで歩く。海人は相変わらず何も喋らない。
「ん」
「……なんだこれ」
「配り忘れだとよ」
「ふーん」
 海人は俺から受け取ったプリントをカバンにしまうとまた黙りこんでしまった。
 さて、どう声をかけたもんか。
 川原に差し掛かりふと下を見ると、そこではポケモンバトルが繰り広げられていた。自然と足が止まる。
 ダブルバトルで、手前はグラエナとマッスグマ、奥はライボルトと……水色のツインテールの見たことないポケモンだ。色からして氷タイプだろうか。
 水色のポケモンが冷気を放ち足止めし、ライボルトの電撃が確実に当たるようにサポートしている。
 奥側の方が有利と思ったその時、マッスグマが砂かけで2匹の目を眩ませ、その隙にグラエナが水色のポケモンの後ろに回り込んで硬い尻尾の一撃を食らわせる。ライボルトがそれに気をとられていると、マッスグマのタックルが直撃。勝負は手前のトレーナーの勝利で終わった。
 海人は瞬きすらせずに、それをずっと見つめていた。その瞳はきらきらと輝いていて……。
「海人」
「っ! な、なんだ?」
 声をかけると海人は肩を大げさに震わせていた。
「今日、うち誰もいねえんだ。泊まりに来いよ」
「お、おう。いいぜ」
 
 
 大体の地方では子供は10歳になるとトレーナーになる権利が与えられる。ホウエンも例に漏れず、10歳の誕生日が近付くとやたらとダイレクトメールが届いていたのを覚えている。内訳はトレーナー入門口座だの、新型モンスターボールの紹介だの。中には怪しげな宗教の勧誘も混じっていた。
 混乱を防ぐため、小学校では4年が終わった春休みに希望者にまとめて講義を行い、5年が始まる前に一斉に旅立たせる。子供は大体トレーナーに憧れて旅立つから、4年までは3クラスあったのが5年は1クラスなんてザラだ。6年は挫折して戻ってきた子供を受け入れるため2クラスに増えていたりするが。
 俺達はトレーナーにはならなかった。理由は、単純に興味が無かったから。
「おい、人にデカブツぶちこんどいて何考えてるんだよ」
「……ああ、悪い」
 止まっていた腰を動かす。例のローションはなかなかに使い心地がよく、既に一度なかみがとびだしてしまっていた。
 俺はポケモンなんざ興味ない。4年まではトレーナー学の授業があるから最低限の知識はあるが、トレーナーになろうなんて微塵も思わない。姉貴がタマザラシを拾ってきた時もどうでもよかった。
「はっ、は……」
 俺には海人がいる。それでいいんだ。海人以外、何もいらない。でも、こいつは。
「んっ、くっ……!」
 体を震わせイった海人に続いて思い切りナカにぶちまける。2回目だっつーのに量が凄まじい。引き抜くと糸を引いていて、まだまだイケそうになるがこれ以上は海人の負担が大きい。そのまま出したモノを掻き出すことにした。
 2回分の濃厚な液体を掻き出し終わると海人は起き上がった。なにやら呆けている。それを横目で見ながらベッドの下に脱ぎ捨てた下着に伸ばした俺の手を、海人が掴んだ。
「なんだよ」
「……お前ばっか不公平だろ。俺にも抱く側やらせろよ」
「あぁ? 出来んのかてめぇに」
「馬鹿にするなよ」
 ま、こいつにも童貞捨てさせてやるか。
「いいぜ、ほらさっさとしろよ」
「言ったな? 泣かせてやるから覚悟しろ」
 押し倒された俺の上に海人が覆い被さる。あの日よりも数段たくましくなった腹筋がよく見えて、ごくりと唾を飲み込んだ。
 
 10分後。後ろを解して挿入した海人に、俺は冷や汗を流しながら声を噛み殺していた。
 上手いのだ。俺より遥かに。指使いも愛撫も。
「陸太……気持ちいいか……?」
 腰使いもヤバい。なんだこいつ、キリンリキか。いやその例えはよく分からないし多分双方に失礼だ。俺が言いたいのはつまり、頭が機能を放棄するほど、きもちいい。マジ何なんだこいつ。あ、やばい、声出る。
「うぐっ……ん、あっ……!」
 抱かれる側が癖になったらどうしてくれんだこの野郎。
 
 事後、ぐったりしている俺を放って海人は服を着始めている。この薄情者め。
「おいてめぇ、なんでんなうめぇんだよ。本当に俺が初めてか?」
「は? 誰がいつそんなこと言ったよ。俺、経験あるぜ」
 ……今こいつなんて言った?
「あぁ!? んだそれ聞いてねえぞ」
 がばりと起き上がった俺を見ても、海人は表情ひとつ変えなかった。
「言ってないからな」
「なんで言わねぇんだよ」
「……逆に、なんで俺が童貞だと思ったんだよ」
「俺がそうだったからに決まってんだろ。俺はお前じゃねえと勃たねえんだから」
「……帰る」
「は? おい、海人……!?」
 けたたましい音を立てて閉まるドア。階段を駆け降り、玄関から出ていく音もしっかり聞こえた。
「んだよ、それ……」
 
 
 翌日。今日は朝からほっとんど口を聞いてない。事態が悪化してるじゃねぇかこの野郎。
 それでも帰りは一緒なのは、小学生の頃からの習慣だからだろう。
 ふと、前を歩く海人が話し出した。
「コンテスト会場、改修工事で半年休みだってよ。サファリゾーンも無料になって、ポケモン戦わせられるようになるんだってさ」
 早口でまくし立てる海人の声は、かすかに震えていた。
「俺達も……変わるのかな」
 立ち止まった海人の背中が、やけにちっぽけに見えた。
 おい待て、それはどういう意味だ。
 肩を引っ付かんで振り向かせると、海人はぼろぼろと涙を流していた。
「なんつー顔してやがる……」
「陸太……陸太ぁっ……!」
 そのまま胸に飛び込んで泣きじゃくる海人を抱き締める。辺りには海人の泣き声と、風の音だけが響いていた。

 
「で、何があったんだよ」
 あの後、嫌がる海人を無理やり家に連れてきた。海人の泣き顔は姉貴にも妹にも見せたくなくて、挨拶もさせずに自室に引きずり込んでベッドに座らせた。
 ぐすぐすと鼻を鳴らす海人の涙を拭ってやろうと手を伸ばすと、海人はそっぽを向いてしまった。
「陸太は、俺以外に興味無いんだろ。その……性的な意味で。俺もそうだって、ずっと、思ってたんだ」
「違うのか?」
「お前じゃなくても……」
 うつむいた海人の手の甲に、ぽとりとしずくが落ちた。
「隣のクラスの女子に、好きだって言われて。俺には陸太がいるからって言っても諦めてくれなくて、それで……陸太以外をそういう目で見れないって証明してって言われて……」
「……ヤれちまったのか」
「まさか勃つとは思わなくて、頭真っ白になっちまって……勿論避妊はした、というか相手がゴム持参で来てた」
「……女ってこええな」
「顔面蒼白すぎて謝られたし、無かったことにするって言われたけど……無かったことになんかならない。俺はお前を、裏切ったんだ」
「この場合そうは言わねえだろうが……で、それいつの話だ」
「7月の頭……」
 ああ、そういうことか。こいつはそんなくだらねぇことで悩んで俺から離れたのか。
「お前がそばにいないと何も手につかなくて」
「で、宿題ためてたって訳か……あのな、お前は俺以外に勃つからって、他の奴とヤりたいって思うのか」
「思う訳ないだろ……俺はお前以外となんかヤりたくない」
「じゃあなんの問題もねーだろ」
「そう、だけど……陸太と違うのが、怖くて……ずっと一緒だったから、どうしたらいいか分からなくて……っ」
 ああ、また泣き始めた。めったに泣かねー癖に、一度泣き始めるとなかなか泣き止まないのが海人だ。そっと抱き寄せて背中を撫でる。こいつは俺が触れているのが、何よりも安心するんだ。
 ずっと一緒にいたいからこそ、些細なズレに酷く怯える。それでも俺と共に生きることを願うこいつが、愛おしくてたまらない。
 きっとこれから、違うことはたくさん出てくる。でも。
「大丈夫だ。俺が側にいる。どれだけ違おうが、俺はお前を手放したりしない」
 というか手放せる訳がない。例え海人の方から離れようが、俺は大地の果てまで追いかけていく。
 約束しただろ? ずっと一緒にいるって。
 しばらくそうして撫でていると、海人はやっと落ち着いたのか、やわらかく息を吐いた。
「……陸太って、太陽みたいだよな。あたたかくて、いい匂いがする」
「落ち着いたか」
「うん……ありがとう」
 ああ、久々に海人の笑顔を見た気がする。
「海人……」
 自然と唇が近付いていく。
 
 その時、部屋の扉がバタンと乱暴に開かれた。
「海人くーん!! 今日泊まっていくんでしょー!」
「ちょっとお姉ちゃん邪魔しちゃ駄目って言ったでしょ! ほらもー、どうみてもいい雰囲気じゃん!」
 顔を出したのは空気の読めない姉貴と妹だった。
「燐華さんと梨緒奈ちゃん……お邪魔してます」
「邪魔すんなよテメーら……!」
「……あ、あはは、ごめんねー、また夕飯の時に話聞かせてねー!」
「もうお姉ちゃんはー! ごめんなさい、海人さん!」
 再びバタンと扉が閉まってうるさい女ふたりは去っていった。
「ったく……」
「なんか、泊まることになってるけど、いいのか?」
「ああ? 当たり前だろ、お前なんだから」

 
 
 狭いベッドにふたりで寄り添って眠る。海人のぬくもりを存分に堪能できるこの時間が俺は何よりも好きだ。
「なあ、お前はガキの頃トレーナーになりたいと思ってたか?」
「……うん、まあ、人並みには。でも陸太は違っただろ。俺は陸太と一緒にいたかったから、旅には出なかったんだ」
「悪かったな」
「な、なんで謝るんだよ。別に後悔なんてしてないぜ」
「今でもそう思ってんだろ」
「うっ……」
 沈黙は肯定の証しだ。
「なるか。トレーナー」
「いや、だから、陸太と離れるのは……」
「バーカ、誰が離れるなんつったよ。ふたりで一緒に旅すりゃいいだろ」
 コツリと拳で額をつつくと、海人はポカンとしていた。
「え、陸太もトレーナーになるのか? あれだけ興味無いって言ってたのに」
「気が変わった。タッグバトルなら、俺達最強だろ」
「タッグバトルか……いいな、それ」
 ほがらかに笑う海人と目が合って、自然と唇が重なる。
 絶対に離さない。死ぬときまで一緒だ。
 
 
 秋の始まりに、ふたりの未来を誓った。


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