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  [No.4016] Re: バトル描写書き合い会 投稿者:空色代吉   投稿日:2017/07/07(Fri) 20:41:31   107clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

〜目と目を合わせて〜





湖畔に佇んで居たら、目が合うはずのない奴と、目が合ってしまった。

「そこのキミたち! バトルしようよ!」

その胴長のポケモン、オオタチを連れた同年代のトレーナーはオレと相棒に向けて、声をかけてくる。
一瞬戸惑い、周りを見渡すとオオタチ使いに呆れられた。それから彼は、オレの相棒の種族名を言い、こちらを指差す。

「キミたちに言っているんだよ? ゾロアーク使いさん?」
「お前……よくオレたちに気が付いたな。幻影で隠れていたはずだが」
「へへっ、僕のオオタチはそういうの見破るの得意なんだ! にしてもゾロアークの幻影の力で隠れているなんて、トレーナーを避けているのかい?」

かぎわけるとか、みやぶるの類で見つけられたのだろうか……と思考を巡らしていたら、からかい交じりの質問をされた。事実その通りだったので、首肯する。あっさりとした返答に彼は得意げになるわけでもなく、驚くこともせず受け流す。それから笑みを湛え、トレーナーの決まり文句を言った。

「でも目と目が合ったからには?」
「ポケモンバトル、だな。受けてたとう。ルールは?」
「シングルバトルの一対一で!」
「いいだろう。っと、名乗るのを忘れていたな……オレはコタロウ。こっちは相棒のゾロアークだ」
「僕はレット、こっちはパートナーのオオタチだよ! よろしく!」


*************************


湖の傍でオレとレットは向かいあい、お互いバトルさせるポケモンを選ぶ。

「任せたよ、オオタチ!」

レットは連れ歩いていたオオタチをそのまま出してきた。すると、オレの相棒が服の裾をつまむ。『ここは自分に行かせてほしい』というサインだった。
ゾロアークが素の状態で先陣を行くことに不思議そうにするレット。おそらく、ゾロアークの持つ手持ちのポケモンに化ける幻影の能力、イリュージョンを使わないことに疑問を持ったのだろう。そんなレットにオレはゾロアークの代弁をしてやった。

「多分、ゾロアークはオオタチに対抗心を抱いているのだろう。本来の役割とは違うが、こいつがオオタチに挑みたいって気持ちを今回は優先させていただこうと思う」
「なるほどなるほど、オオタチもどんと来いってさ!」
「では、レットにオオタチ、バトルよろしくお願いします」
「コタロウにゾロアーク、こちらこそよろしくお願いしますっ!」

互いに礼をし、バトルの火ぶたは切って落とされる。

「いくよオオタチ、こうそくいどうで翻弄させるんだ!」

レットの指示を受けたオオタチはその場でバック転をし、着地と同時にするりと滑らかな動きで駆け出す。短い手足にも関わらずどんどん加速してゾロアークを惑わしていくオオタチ。だが惑わすことにかけてはゾロアークの方が上手だ。それをこの技で見せてやる。

「翻弄とはこういうものだ! ゾロアーク、だましうち!」

ゆらり、とゾロアークの身体が揺れる。すると、ゾロアークの幻影による分身がオオタチの四方に出現した。包囲され、立ち止まってしまうオオタチにレットは取り乱すことなく指示を出す。

「辺りを確認して、キミなら見破れる!」

その言葉を受け、オオタチはすかさず頭を回して四体のゾロアークすべてを目視する。
全ての分身を見終えたオオタチは――――その場で首を横に振った。

「OK! 上から来るよ! 防いでオオタチ!」

だましうちが必中技ということも含めてのレットの防御指示に、オオタチは見事に応えてみせた。オオタチに攻撃をジャストガードされ、ゾロアークは焦燥感を覚える。

「ゾロアーク、落ち着いていくぞ……初見でこの技を対処するとは、やるな」
「へへっ、ギリギリだけどね! それじゃあ次はこっちの番! オオタチ、連続できりさく!」
「かわせゾロアーク!」

砂利を蹴り、小刻みに跳ねながら踊るように、じゃれつくようにその小さな爪でゾロアークに切りかかるオオタチ。紙一重のところでかわし続けるゾロアークだが、たぶん長くは持たない。
どうも、オオタチのペースに引きずり込まれている。なんとかして持ち直せないだろうか?
余裕のなくなり、斬撃を受け始めたゾロアークに、一旦オオタチの間合いから離れせるためだましうちを指示する。

「だましうちで距離を取れ!」

後転をし、再び幻影の分身を展開させるゾロアーク。オオタチは分身体を一つ一つ見て、ゾロアークの本体を見つけてくる。ゾロアークの突き出した爪をオオタチも両手の爪で受け止め、鍔迫り合いになった。

「今度は分身に紛れて来たね! でもオオタチに幻影は通じにくいって言っているよ!」
「通じにくいだけ、だろう?」

彼は、レットはオオタチがゾロアークの幻影を「絶対」見破れるとは一言も言っていない。恐らく、100%確実に見抜けるわけではないのだ。それでもここまでゾロアークの本体を見つけてくるのは、オオタチの熟練した経験による賜物なのだろう。
そのオオタチがゾロアークの幻影と本体を見分ける手段とは、それは恐らく――――観察眼。

「視界を制せ! ゾロアーク、ナイトバースト……!」

ゾロアークの影が広がっていく、それは地面だけにとどまらず辺り一帯を、空をも侵食していき、まるで夜の帳に包まれたかのように湖畔のフィールドを暗くした。
もちろんこの景色を映し出すのもゾロアークの幻影の力のなせる業である。

「凄い、本物の夜みたい」
「朝と昼に活動することが多いオオタチには、慣れないだろう?」
「決して夜が苦手なわけではないけれどね。オオタチ、こうそくいどうで走って!」
「逃がすものか、行くぞゾロアーク!」

二回目のこうそくいどうで素早さをさらに上げ、走って回避を試みるオオタチ。
ゾロアークを中心に、暗夜の力を纏った衝撃波が地を這うように飛んで行き、オオタチを襲う。吹き飛ばされ、砂利の上に落ちたオオタチの目もとに暗闇の霞がまとわりついた。ナイトバーストの追加効果の命中率ダウンの効果だ。

「オオタチ! くっ、命中率が下がっちゃっ――――」
「――――ては、いないはずだよな」
「……バレてるか」

レットの動揺したフリを、オレは指摘し暴く。レットは苦笑いしながらフェイントだったことを認める。
霞の奥でオオタチは……黒々とした小さな目を鋭くし、爛々と輝かせていた。

「オオタチの特性はするどいめ、だろ? 今までの幻影への対処はそのオオタチの目による観察のなせる業、なんだろう?」
「そうだよ。僕のオオタチは目が良くてね、オオタチは景色の揺らぎからキミのゾロアークを見つけていた……こうも背景ごと変えられちゃうと、ちいとばかしキツイけどね」

キツイ、と言う割にはまだ余裕の残る笑みを見せるレットとオオタチ。実際、ゾロアークがオオタチに繰り出した攻撃で、まともに通ったのはさっきのナイトバーストのみ。そのナイトバーストもいつ対策を練られてもおかしくはない。まだ奥の手を隠しているとはいえ、素早さの上がったオオタチにどこまで攻撃を当てられるのか……なかなか厳しいバトルである。

「ゾロアーク、ここはナイトバーストで畳みかけるぞ!」
「今だオオタチ! さきどり!」
「何っ?!」

オオタチが身構え、エネルギーを溜め始める。それは紛れもなくゾロアークの持ち技のナイトバーストの構えだった。
さきどりとは、相手より素早さが高い時に発動できる技。相手の出そうとした攻撃技を1.5倍にして、相手より早く叩きこむ技。こうそくいどうはかく乱ではなく、さきどりに繋げるための布石だったのかっ。
薄闇の中で互いのナイトバーストの衝撃波が炸裂する。ゾロアークの方が威力負けしており、押し切られてしまう。

「ゾロアーク!!」

今のダメージで暗闇の幻が少し剥がれかけた、なんとか幻影を留めるゾロアーク。次、ナイトバーストを放ったら、しばらく幻影を使いながらの戦いは出来ないかもしれない。

「まだナイトバーストで仕掛けてくるのなら、もう一度オオタチがさきどりしちゃうよ!」

分かっている。だからこそ、次のナイトバーストは絶対に当ててやる……!

「ゾロアークっ――」
「オオタチもう一回さきどり!」
「――いちゃもんで連続攻撃を封じろ!」
「え、攻撃技じゃないの!?」

ゾロアークが悪態を吠え、オオタチの動きが止まる。
さきどりは相手の攻撃技を奪い取る技。ゾロアークが攻撃技ではなく変化技を使ったことにより、オオタチのさきどりが不発に終わる。そして、いちゃもんをつけられたことによって、オオタチは連続して同じ技を出すことができなくなった。
つまり、先程のさきどりによるナイトバースト封じを破ったということである。

「さきどり封じたり! チャンスだゾロアーク、ナイトバースト!!」

ゾロアークのナイトバーストがオオタチに食い込み、突き飛ばす。波間に飛沫を上げて落下するオオタチ。それを見たレットはオオタチへ叫ぶ。

「オオタチ!!」
「やり過ぎたか、ゾロアー……なんだあれ!?」

湖の流れが、変わる。
ゾロアークにオオタチの救出指示を出そうとしたオレは驚愕する。ゾロアークもその光景に呆気にとられていた。
何故ならオオタチの落水した場所に渦が巻き起こり、黒い水流の中心点に何かが居たからだ。
幻影のタイムリミットを超え、太陽が姿を現す。光に照らされ、真っ青になった水の壁の真ん中。回転している水流にオオタチは――――乗っていた。

「がんばれオオタチ、なみのりだ!!」
「! こらえろ、ゾロアーク!」

波と呼ぶには激しい、輝く激流に乗って、オオタチはゾロアークに突っ込んだ。
水に揉まれ、ゾロアークは近場の岩に叩きつけられる。
波が引き、辺りの砂利石を濡らす。さんさんと輝く太陽に石粒の面が反射して輝いた。その濡れた砂利の上でオオタチはぶるぶると体を震わせ、湿った身体を乾かしていた。

「ゾロアーク……」

小さい声で呼びかける。そのオレの言葉にゾロアークは、弱弱しくも気合の入った鳴き声で応えてくれる。
岩を背に、ゾロアークはなんとか立ち上がってくれる。
ゾロアークはまだ、諦めちゃいない。

「そうだなゾロアーク、まだ終わっちゃいないよな」
「そうだよコタロウ、まだ終わっちゃないさ」

レットもオオタチも、まだ終わりを望んでいない。二人ともまだまだ戦いたいと、笑っていた。
けれど、決着の時は刻々と近づいているのは、オレもゾロアーク、そしてレットもオオタチも感じていた。
だからこそ、オレは宣言する。
勝利をつかみ取るための、宣言を。

「次で終わらせてやる!」
「それはこっちの台詞だよ!」
「いくぞレット! 解き放て、ゾロアーク!! ――――うおおおおおお!!!」
「させないよ! さきどりで決めるんだオオタチ!!」

オオタチが駆け出す。ゾロアークが構える。
技を出すスピードは、オオタチの方が上だった。
だが、技の威力は――――ゾロアークが勝っていた。
オレの咆哮と共に、ゾロアークはオオタチにクロスカウンターを叩きこむ。

「おしおき!!!」





決着は一瞬だった。
激しくぶつかり合う衝撃音の余波が止んだ頃、オオタチは砂利の上を転がり、そして目を回していた。
オレとゾロアークの、勝利だった。

相手のステータスのランク変化に応じて威力の上がる技、おしおき。オオタチはこの戦いでこうそくいどうを二回行っていた。つまりは素早さが4ランク上がっていたことになる。その素早さ分の威力がゾロアークのおしおきに加わっていたのだ。
オオタチが1.5倍の威力でおしおきを放ったとしても、それよりゾロアークのおしおきの威力が勝っていた。それだけの話である。
それに、同じ技のぶつかり合いで威力が高い方が勝つ可能性が高いのは、オオタチがさきどりのナイトバーストで証明していたことだった。

オオタチのもとに歩み寄り、抱きかかえてげんきのかけらを与えるレット。それから彼は悔しそうしながら、それでも笑っていた。

「やられたよ。ゾロアークが最後のひとつ、なにか技を隠し持っていそうだなとは思っていたけど、おしおきとはね……」
「なんとかさきどりを誘導できたからこそ、勝てた……こうそくいどうを使われていない場合や、なみのりとかを選ばれていたら押し流されていた……ギリギリの戦いだった」
「お見事。それにしても、あんな大声も出せるんだね、コタロウって。もっとクールな人かと思ってたよ」

そのレットの言葉に対して、オレは思わず笑ってしまった。
不思議がるレットとオオタチに対し、オレはゾロアークの肩に手を乗せ、言ってやった。

「バトルになったら、誰でも熱くなるものだろ?」

そう言ったら、何故かレットは爆笑した。オオタチも転げまわりながら笑いをこらえている。ゾロアークは動揺していた。オレも困惑していた。というかなんだか恥ずかしくなってきたぞおい。

「そこまで笑うことはないだろうふたりとも!!」
「くく、ごめん、そういうことさらっというタイプに見えなくて……」
「他人を見た目で判断するな」
「ごめんて、にしてもやっと目を合わせてくれたね」
「目? バトルする際合わせたじゃないか」
「違うよ。どうにも人の目を避けていたじゃん。でも今はこうして見てくれている。それがー、そのなんか、ちょっと嬉しいっていうか」

言われてみて、確かにレットたちの目を見ながら話せていることに気づいた。
彼に差し伸べられた手を取る。その行為にもなんの抵抗もない。
自分の中で、何かが変わっている、そんな気がした。
それもこれも、ポケモンバトルってやつのせいなのかもしれない。そう今は思うことにした。



* あとがき及び感想

私のスタイルはアニポケよりなのでたまに自分ルールを入れてしまうのを何とかしたいなと思いました。
とにかく技が豊富でどれを選んだらいいか迷いました。でもなみのりだけは入れたかったのでそこからフィールドを湖畔にしようと思いました。
あと書いてて思ったのはこのオオタチ全然可愛くないぞ……!
とにかく新鮮な対戦カードで戦えて楽しかったです。拙いながらもありがとうございました。

* 技構成

オオタチ 特性するどいめ
技 なみのり こうそくいどう さきどり きりさく
ゾロアーク 特性イリュージョン
技 ナイトバースト いちゃもん おしおき だましうち


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