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  [No.4096] 餓者我遮、我捨我赦・・・序章 投稿者:造花   投稿日:2018/11/15(Thu) 19:28:55   68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

取り敢えず、このエピソードで終幕予定。
完結できて気が向いたら隙間の話を埋めていきたいです。
中身の代わりに捏造・パクリ・ハッタリ・中二病等が詰め込まれていますが、どうぞよしなに()



 俺は任務中に立ち寄った組織の支部で休息をとっていた。今回は人間を狩猟の対象にする他種族のポケモンが組織化された連合「暮れなずむ人狩りの会」の統率者と幹部たちを捕獲するべく捜索していたが、連中は中々尻尾を出さず任務は膠着している。
 徒党を組むポケモンとは何度か遭遇しているが、わざわざ組織名を掲げて人間の真似事・・・或いは宣戦布告するような連中は初めて遭遇するかもしれない。
 奴等は人並み以上に知恵をつけ、一部の幹部は人の言語まで習得しており、うちの組織はその突然変異の頭脳を欲しているのだ。
 俺が最初に遭遇したキリキザンの幹部は、典型的な極左でタカ派なヤベーヤツで危険思想を垂れ流しなら襲いかかってきたが、組織からは何故か高く評価されてしまい行方を追う羽目になったのである。
 俺から言わせりゃ、自分から名を広めるたがる悪の組織なんて盛者必衰の理を突き進む二流だが、連中は自分達の事を正義の革命組織みたいに思っているのだ。馬鹿な連中だが、我等が「若様」曰く大成する奴は良くも悪くも馬鹿になれる奴だけらしい。どうでもいいが馬鹿を相手にする身にもなって欲しいよ。
 明日もあのキリキザンと不愉快な仲間たちの行方を探す旅に出ると思うと気が滅入ってくるが、受けた任務は果さなければならない。
 深夜頃まで連中を炙り出す作戦を練っていた。そんな時、あの音が聞こえてきた。

ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャ・・・!!!

 その音はいつもと違う。耳の奥に纏まりついて人の神経を逆撫でるような音ではなく、地響きと共にやってきた。
 俺以外の団員達にも聞こえているらしく、支部内に喧しい警報音が鳴り響き、非常事態のアナウンスが流れた。

『緊急事態発生!緊急事態発生!北東2キロ先に未確認巨大生物が出現!推定階級・災害級!現在我々の基地に接近中!防衛班は直ちに出動!繰り返すーーー』

 何やらど偉い事が勃発したらしい。ポケモンの襲撃はたまにあるが災害級の驚異はヤバイ。
 世界中のどこにでも人類に災いをもたらす災害級のポケモンは存在する。伝説・幻のポケモンに準ずる突然変異のイレギュラーな個体・群の事を指す。
 有名どころを挙げれば、かつて無数のゴースを引き連れてカントー地方を荒らし回った巨大ゴースト「ブラックフォグ」、たった一匹でジョウト地方を壊滅させられるポテンシャルを秘めた巨獣「黒いバンギラス」辺りか?俺が遭遇した連中から挙げるなら「虫姫」や「無貌の大蛇」「如水法師」は・・・違うか。
 まぁようは、そんな連中とタメを張れるようなヤツが、接近中となればこの支部も下手をすれば壊滅する恐れがある。
 黙って避難したいところだが、本部から来てる以上、未確認の脅威を見過ごすわけにはいかない。
 俺は支部の司令室に入ると、中は予想以上に混乱していた。それもそのハズ、監視モニターには闇夜の森しか映らないのだ。熱感知カメラ等視覚補助装置を次々と切り替えても姿を捉える事ができない。
 ゾロアークに化かされているのか?映像を見てそんな疑念を浮かべる者も少なくないだろう。しかし、地響きと共にガシャガシャと喧しい騒音だけが激しく自己主張をしており、現場には木々をなぎ倒しながら進撃する謎の巨大生物が確かに存在しているらしい。司令官は現場に出動した防衛班に連絡をとり状況を確認しているようだ。

『こちら防衛班!目標は体長約15メートル!頭から尻尾の先まで全身が骨や骸骨のような物で覆われた二足歩行の怪獣です!まるで骨が寄せ集まって動き出したガラガラの巨像のように見えます!!』

 現地に到着した防衛班は目標が見えているらしく、鼻息を荒らげながら謎の襲撃者の情報を説明してくるが、目標を確認する事ができない司令官やオペレーターたちは顔を見合わせながら困惑している。

「待て待て、司令部では目標の姿を捉える事ができない。君たちは本当に目標を認識できているのか?」
「しっかりこの目で見えていますよ!それより早く攻撃の指示をください!!もう目と鼻の先まで来ちゃいますよ!!!」
「・・・すまないが、まずは様子をうかがいたい。玄地八領(げんじはちりょう)の使用を許可する。君たちが見えている目標の進路を妨害してくれ」
『了解!!!』

 司令官の許可を受け、防衛班の隊長はモンスターボールから組織お手製の改造ポケモンを解放した。中から出現したのは見た目はなんの変哲もない鉄足ポケモン・メタグロス。
 謎の巨大怪獣と比べたら、体長2メートル弱のメタグロスはどうしても小さく見えてしまうが、大きさ比べて勝負する訳じゃない。「玄地八領」は我等が組織の最先端科学技術を集結させて産み出した次世代兵器「武装携帯獣」なのだ。
 主武装は体内に存在する四つの脳と四本足に埋め込まれた「PSI誘導型メタマテリアルシールド発生装置」メタグロスのスパコン以上の頭脳とエスパータイプのエネルギーパワーが装置の完全制御を実現し、全方位に不可視の防御壁を幾重にも重ねながら発生させる事ができる。生半可な攻撃では傷一つつける事すら出来ない鉄壁の防御能力に物を言わせて、数多のポケモンたちを打破してきた我が組織の切り札の一つである。

『いくぞ玄地八領!第八拘束機関解放!メタマテリアル領域展開!!起動せよ!!鬼門封じ・楯無ィ!!!』

 防衛班のリーダーは舞台役者みたいな迫真の口上を披露する。丸で意味が分からない命令だが、我が組織の最高頭脳であり組織の中枢を担う科学者「ドクター・ジョン・ピーチ」の趣味だから誰も文句は言えないらしい。 
 まぁ博士のネーミングはさておき、モニターに映る「玄地八領」は、司令室からは目視できない見えざる怪物相手に、不可視の不可進行絶対領域を周辺に展開して対抗しようとする。そのやり取りはできの悪いパントマイムのようにしか見えないのが残念である。
 派手さがないのは致し方ないが、しかし「楯無」の領域を正攻法で突破できたポケモンは俺が知る限り存在しない。堅実で信頼に足りる防衛機能である。

『なんだコイツ・・・どうなってやがる!そんな馬鹿なありえねぇ!!!』

 映像からは状況を確認する事ができないが、防衛班の連中は予想だにしない現象を前にして焦燥している。

「どうした?何が起こってる?」
『あの野郎・・・!た、楯無をすりぬけやがった!ダメだこっちに来る!!攻撃の指令をください!!』

 絶対の信頼を寄せいて切り札が無効化された防衛班たちは酷く焦っている。
 だが悲しいことに、その深刻な状況は司令部にはいまいち伝わらず、現場との温度差が激しい。

 司令官はすぐには攻撃の指示を出さず状況を俯瞰する。参謀やオペレーターたちも不可解な状況に慣れてきたのか各々の見解を述べ始めた。

「映像の解析は進んでいるか?」
「いいえ、依然として目標の正体を捉える事ができません」
「やはり幻影なのでは?我々は見えない虚像と戦ってるのかもしれませんな」
「それでは何故森の木々だけが倒木する?この地響きと騒音は何なんだ?」
「うーん、ガシャガシャガシャガシャ煩いけど、もしかしたら音を媒介にして精神に干渉する催眠術の類いかもしれませんね」
「その線はあるかもしれないな」
「思ったんですけど、あれが幻影なら相手がデカブツ一匹とは限りませんよね。最近徒党組むポケモンが流行ってるじゃないですか?なんて名前だったかな・・・」
「エリートハンティングクラブ?」
「素晴らしき青空の会だっけ?」
「あーたしか暮れなずむ人狩りの会でしたよ」
「そうそうそれ。まぁ何が言いたいかって複数犯の可能性ですよ。サーモグラフィーにデカブツは映らなかったけど、野生のポケモンたちは、この場から逃げる事なくチラホラ映ってたでしょう?木々が倒れるのは見せたい幻に箔をつける為の演出とかじゃないですかね?」
「ふむ、その可能性もあるな。・・・まずはできることから始めてみよう。ジャミングに防音装置・ポケモン避けのノイズを起動できるよう準備に取りかかってくれ」
「了解」
『司令!!攻撃の許可を求めます!!!繰り返します攻撃の許可を!!!』
「分かった許可する。ただし目標が幻影である可能性がある事を念頭に置いて欲しい。攻撃が効かなければ一旦後退してくれ」
『了解!!!』

 まともにコミュニケーションをとれている。この支部はポケモンマフィアのクズにしておくには勿体無いぐらいマシな人員が集まっているらしい。お陰で俺は傍観者のままでいられて有り難い限りだ。本部から「玄地八領」を支給されるだけの事はある。
 モニターに映る防衛班たちは次々に武装携帯獣をボールの中から解放していく。
 中には全身を鋼鉄の鎧で覆いつくし、両腕をサイボーグ化させて無数の爆弾イシツブテを乱射する改造ドサイドン「破城」、δ因子を適合させ電気タイプを複合させた改造カイリキー「轟」に、機関砲とロケットランチャーを合体させたマルマイン射出兵器「雷の十字架」を四丁同時に使いこなす特別訓練を施した精鋭中の精鋭「爆撃鬼」、見た目は普通のフーディンだが、様々な武器に変身するようプログラムされた改造メタモン「八百万」がコーディングされた二対のスプーンを変幻自在に使いこなす「奇術師」、中には戦闘補助装置を全身に装備した旧式武装のリザードンやカメックスもいるが、今なお現役で活動する辺り、ロートルだが相当な手練れである事は間違いないだろう。「玄地八領」も楯無が効かなかっただけで戦闘は継続可能である。
 ネーミングを馬鹿にしてたが、この錚々たる面子を目の当たりにして興奮しない男の子はいないだろう。いい歳したおっさんだという自覚はあるが年甲斐なくワクワクしてきた。
「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ」だったかな?やはりこの言葉は堪らなく好きだ。

『総員攻撃体制に入れ!玄地八領!お前もだ!いくぞ!領域形成!起動せよ!!竜王の如き・八龍ゥ!!!』

 防衛班のリーダーは勇ましく号令をかける。武装ポケモンたちも一斉に身構えた。この一斉攻撃を皮切りに未知の怪獣に対する対応が決まるだろう。実体があるならそのまま潰す。無ければあらゆる手段を用いて探る。正体不明の怪物が支部の目前まで迫ろうとも、俺たちは自分たちが信奉する組織の科学力に絶対の信頼を寄せて疑わない。

 しかし攻撃の号令がくだろうとする直前、全てが一瞬にして覆された。

『⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!!!』

 それはとてもこの世のものとは思えない。身の毛もよだつ悍ましい雄叫びがあがったと思えば、俺が認識する世界の全てが止めどなく揺らぎだした。
 誇張しているつもりはない。現場にいた防衛班の連中との通信は途絶え、司令部の連中も大半が気を失ったり、気が触れたようにのたうち回る者までいる。司令官は痙攣しながら意識を失っており使い物にならない。おまけにモニターは砂嵐に包まれ使い物にならなくなった。
 鶴の一声ならぬ怪物の雄叫で悪の組織が壊滅寸前に追い込まれるなんて洒落にもならないが、破滅は目前まで迫ってきている。
 音を媒介にしてこちらの精神に干渉するという予測は当たっていたかもしれないが、俺を含め司令部にいた連中は目標の力を完全に見誤っていたようだ。単なる幻影と高を括り相手を刺激したのが不味かったのだろう。
 酷い頭痛と目眩に襲われ、俺もいつ意識を失ってもおかしくない状況だが、支部の中枢が麻痺しかけている以上、いよいよ重い腰を上げなければならない・・・と言うよりは尻に火が付いたと言うべきか。暢気に傍観者を気取って支部の連中と仲良く死んだたら世話がない。
 俺は壊れかけたアナログテレビを叩く要領で、空元気だろうとも自分自身に活を入れながら、意識が残っていそうなオペレーターに声をかけた。

「よぉ・・・お前さん無事か?」
「あ、あなたは?」
「本部からたまたま来てた部外者だ。コードネネームは「狂犬」で通っている」
「ゲッ!あの不死鳥の「狂犬」かよ!?」
「ゲッ!?とは何だオイ?しばくぞ」
「し、失礼しました・・・」

 俺の悪運・・・不死鳥武勇伝もとい死神伝説はここまで伝わっているらしい。いつ頃からかは覚えてないが、どんな危険な任務を引き受けても、たった一人だけ必ず生き延びてくる様を皮肉られているだけで、不名誉な称号でしかない。
 こちとら気色悪い変態寄生携帯獣の群に凌辱された末に死の運命を預言されているというのに、人の気も知れないでまったく失礼なヤツだ。まぁ今はそんな事を気にしてる猶予はない。どんなに罵られようが嫌味を言われようとも、こんなところでつまらなく死ぬのだけは真っ平ゴメンだ。
 ・・・・・・というよりも日頃から聞こえるガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャ!!耳障りで不快な耳鳴りと、今の状況と結び付いてしまい自分の死期が迫ってきているような錯覚に陥ってしまう。冗談じゃないまったく。

「通信機材は生きてるか?」
「いや・・・どれも激しいノイズが混じりこんで使い物になりません」
「他に現場の状況を確認できるカメラは?」
「全滅です」
「ヤベーな。それじゃ防衛班の安否も不明だな?」
「はい・・・」
「こりゃ詰みだな。撤退しよう」
「早くない?諦めるの早くないですか?」
「化物との対決は引き際を見誤らない事が重要だ」
「なるほど・・・不死鳥さんの言うことは説得力がありますね」
「不死鳥じゃねーよ俺は狂犬だ馬鹿野郎。さっさと脱出するぞ」
「でも負傷者こんなにいるのにどうやって・・・」
「お前組織に何年いる?分かるだろう?」
「分かるだろうって・・・まさかみんな見捨てるんですか?汚いないさすが死神汚い」
「違うだろ間抜け!この基地には「脱出王」はいないのか?」
「嗚呼・・・!なるほど!!さすが不死鳥さんだ!!!オベッ!?」

 とりあえず間抜けがムカつくからひっぱたいた。ポケモンマフィアが三度も我慢すれば十分過ぎるくらい寛大だろう。それはさておき「脱出王」とはテレポート能力に特化した改造フーディンである。
 今じゃメタモンとトリオを組む戦闘特化した「奇術師」の方が人気だが、こういう緊急事態の時こそ「脱出王」の独壇場だ。
 冗談みたいなコードネームだが、精神感応能力を広域化させることにより、支部内に存在する団員を感知し、余す事なく全員同時に本部の非難シェルターに転送する神業はコイツだけに許された専売特許である。
 一方、頬を叩かれたオペレーターは突然我に帰り大事な事を思い出したらしい。

「あー!!でもうちの「脱出王」は今ボックスに預けてるから・・・」
「「脱出王」なら俺が連れてる」
「さすが不し・・・狂犬さん!」
「よし良い子だ。そうだそれでいい」

 何で俺はこの緊急事態に間抜けと即興コントをしてるのか?只でさえ酷い頭痛に襲われてると言うのに余計に頭が痛くなる。んでもって頭痛の種は予想だにもしないところからも芽吹き出す。
 そいつは間抜けの同僚だが、何やらいつの間にか復旧したパソコンのモニターを目にして酷く狼狽している。
 その画面に映し出されているのは、巨大な怪物でも徒党を組むポケモンたちでもない。ガシャガシャガシャガシャ喧しい騒音をあげ、森の木々を次々となぎ倒しながら進撃していたのは、頭を項垂れさせながらとぼとぼと歩く見たことのない小型ポケモン・・・・・・いいや、よく見れば見覚えがある。頭蓋骨の被り物を失い、素顔を晒している孤独ポケモン・カラカラだ。
 
「おい、この映像はなんだ?」
「か、監視カメラにシルフスコープ・プログラムを起動させた映像です」
「・・・・・・おいおいおいおいおいおいおいおい!ありえねぇ!寝言は寝てから言ってくれ!頼むからな!おい!」
「シルフスコープっていたらあのシルフスコープですよね・・・これってもしかして、ひょっとすると幽霊ってヤツじゃないですか!ヤダー!!」

 間抜けと初めて意見が一致した。シルフスコープ・システムとは、かつてシオンタウンに存在したポケモンの共同墓地・ポケモンタワーに巣食う幽霊と称される謎の怪異の正体を暴くため、シルフカンパニーが開発したトンデモアイテムの機能をそのまま流用した装置だ。
 幽霊などと騒いで持て囃されていたが、実際の所はポケモンタワーに生息するゴースやゴーストたちが人を驚かせる為に編み出した術・固有フォームの一種であるとされている。この幽霊の姿にカモフラージュしている時はどんなポケモンだろうとも相手に絶対的な恐怖心を与えて戦意を喪失させる事ができるらしい。
 今はなきポケモンマフィア・ロケット団はポケモンタワーを占拠し、幽霊の正体を暴いてその仕組みを解明し「テラーエフェクトシステム」なる装置を開発しようとしていた噂もあるが、実現までには至らなかったそうだ。
 ポケモンタワーが移転して取り壊されて以来、幽霊と呼ばれる存在は確認されておらず、他の地方でも前例のない事例故に今となっては検証不能な案件とされ、シルフスコープもそれ以来お役御免、過去の遺物でしかなかった。
 しかし、シルフスコープシステムで正体を捕捉したという事は、あの殻無しのカラカラは目撃談のように、自分の姿を巨大な怪物の幽霊であるかのように偽る事ができるらしい。
 ヤツが何故この支部に迫ってきているのかは、余所者の俺には分からないが、その原因は顔面蒼白な間抜けの同僚から明かされそうだ。

「幽霊なんて生優しいものじゃない。あれは復讐鬼だ!我々がしていたことを忘れたのか?」
「すみません、俺ここに配属されたばかりで」
「俺はそもそも部外者だから諸々の事情が分からん」
「どうりで呑気でいられるハズだ!我々はかつてロケット団が手掛けていた「テラーエフェクトシステム」を再開発しようとしていた!その過程で大量のカラカラやガラガラを乱獲して研究材料として消費していたが結果は出せずプロジェクトは白紙に戻ったが・・・・・・この現象はまさに我々が構想していたテラーエフェクトシステムそのものなのだよ!」
「なにそれ?エフェクトガードシステム?」
「もういいから分からんなら黙ってろ」
「超展開すぎて置いてきぼりじゃないですか」
「俺も置いてきぼりだから安心しろ」
「なにそれ?すげー安心できないですよ」

 間抜けは至極真っ当な突っ込みを入れてくれた。この緊急時に何度も話の腰を折られては堪らないが、暴走機関車のような超展開なのは間違いない。「テラーエフェクトシステム」なんてロケット団も途中で匙を投げたような突飛なオカルトプロジェクトを今になって再現しようだなんて正気の沙汰ではないし、何よりも腑に落ちない事がある。

「ところでなぜ研究材料はゴースやゴーストでもなく、カラカラやガラガラなんだ?」
「なんだアンタ知らないのか?ポケモンタワーで起こった怪現象の原因はカラカラやガラガラにあるんだ。タワーに生息していたゴースたちは、その影響を受けていただけに過ぎない」
「そりゃ初耳だ。それにしても凄い情報通だな?」
「そりゃ俺は元ロケット団員だからな。この支部の大半は元ロケット団員で構成されていて、当時の研究もここで引き継がれているんだ」
「マジでか」
「先輩って元ロケット団だったんだ!すげー!サインくださいよ!」
「サインなら後でいくらでも書いてやる!それより今は早くここから脱出させてくれ!さもないと・・・・・・!」

 元ロケット団員は、これから自分たちの身に降りかかるであろう災いを想像し身をワナワナ震わせる。早く脱出しなければならない事は同意せざるを得ない。
 ガシャガシャと騒音はすぐそこまで聞こえる。支部内にいる団員を避難させるべく、俺はボールから「脱出王」を解放した。
 その瞬間、天井から巨大な何かがすり抜けて現れた。支部が崩壊することなく、するりとそいつは壁を通り抜けたらしい。
 見れば至るところに様々なポケモンね骨や骸骨がひしめきながら集合している。真っ暗闇の虚ろな二つの孔がこちら見つめている。

「脱出おーーー」
「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!!!!!!!!!!」

 ▼

 記録 20××年8月 ××地方 ××支部付近。

 テラーエフェクトを発現した幽霊フォームのカラカラが出現。
 その擬態した姿を複数の市民・及び団員が目視で確認するが、監視カメラにその姿を捉える事は出来ず映像記録は存在しない。
 緊急事態のため基地の防衛班が出動し迎撃するが部隊は全滅、基地も襲撃を受けて全壊。
 偶然その場に居合わせた本部所属の団員が所持していた改造フーディン・コードネーム「脱出王」の大規模瞬間転移術により、基地内にいた全ての団員は本部の緊急避難シェルターに転送されたが、団員の半数は発見された時点で死亡していた。生存者の中には精神に異常をきたす者が大半を占めた。

 テラーエフェクトを発現したカラカラは、××基地破壊後、姿を消し行方不明である。


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