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  [No.4138] やさしいせかい 投稿者:焼き肉   投稿日:2019/11/19(Tue) 00:19:04   28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 お久しぶりすぎて誰も覚えてらっしゃらないかと思いますが、ソードシールドで盛り上がってる中今更ウルトラサンやってる焼き肉です。ハウとアローララッタがすごくかわいいです。寄り道とレベル上げであんまり進んでないです。



 アローラの独特な響きとあいさつにもだんだん慣れて来た。今では現地人に溶け込めるくらいの手振りと発音が出来るくらいだ。

 出身は違うが、コウミはこの地方が大好きになった。人々は親切で、ポケモンは強くもどこか穏やかで、気温も暖かい。星の輝く夜、見知らぬ人と見たケイコウオの作る白い宝石のような光を、きっとコウミはこの先も忘れないだろう。

しかしだ。

(この地方の生物、知らない人に親切過ぎない!?)

 ベンチに座るコウミの横には、あいさつを交わしただけの人にもらったものの山が出来ている。何なら今かじってるたっぷりのサンドイッチも試食品と称してお店の人にもらったものだ。

 生物と称したのは人間に限った話ではないからだ。民家にいたデリバードが持ってる袋から道具を取り出してわけてくれたのはまだしも、実のなる木までボコボコきのみを落としてくれたのには笑ってしまった。ずいぶん乱獲した覚えがあるのだが次の日には復活しているというのだから驚きだ。

「そりゃあカントーだっておばあちゃんからもらったリンゴ近所にわけるおすそ分け文化くらい会ったけどさあ! ねえネズッタ、私が変なの? そうなの?」

 メンバーのラッタ♀のふくらんだほっぺをウリウリつまんでコウミが訴えたが、なにぶんラッタが一番気持ちいい部分のほっぺの上辺りを触ったものだから、「あ〜ええ感じなんじゃ〜」という顔つきになるばかりだった。

「いやいやいやコレ絶対ダメ人間になる! ヤバい! マズイ! いやコレは美味い!」

 おいしいサンドイッチを食いながらコウミはブツブツ言っていたが、やがて最近もらったものの食べ過ぎで体重が気になっているのを思い出し、半分はネズッタにあげることにした。大食いのアローララッタは「マジでうめえ〜」って顔をしながらモリモリサンドイッチを片付けていく。人に寄り添うように適応していったポケモン達に人間の食べ物は有効だが、食べ過ぎは良くない。アローララッタは全体的にぷっくりと太っているくらいが健康の証らしいが。

(アローララッタみたいにコロコロ体型になったらハウくんはどう思うかな……ハウくんだから、嫌われるとかはないかもしれないけど……)

 あっけらかんとした笑顔の彼への淡い恋心をつのらせつつ、コウミはネズッタの食いっぷりをサンドイッチが尽きるまで眺めつづけたのだった。


  [No.4140] 友達は美人(ポケ基準) 投稿者:焼き肉   投稿日:2019/11/23(Sat) 11:01:33   31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「やーコウミ、元気ー?」
「う、うん元気」
「だよねー! 相棒のラッタそっくりで丸いもん!」

 言われて手鏡を取り出し覗き込むと……そこにはアローララッタそっくりの頬のプクプクした女が!
 心なしか目もネズミネズミした三角になっているような!

「ポケモンとトレーナーは似てくるって言うもんねー」
「イヤァ! 違うの! ラッタは好きだけどこんなのは望んでいないの!」
「なんでー? 仲良しの証って感じでサイコーだよー」
「それはいやあああああっ!!!」



「ぎゃあああああああ!!! ラッタちゃーう! ザコちゃーう!!!」

 さけびながら起きると、そこはポケモンセンターの部屋だった。コウミは清潔でパリッとした布団に寝ていて、毛布は床に蹴り飛ばされていた。朝から騒がしいにも関わらず、床のポケモン用ベッドではラッタがスヤスヤと眠っている。

「こーんなでっかい耳してよく起きないなあ……」

 マイペースで寝てるラッタが恨めしくて、コウミは丸いお腹を撫でる。気持ち良さそうに目を閉じたネズミの眉間にシワが寄り、「ぐおお、そこは嫌だ、嫌なんだわ」と言うようにヂューヂューうめく。



 カントーでもそうだったが、アローラでもラッタは珍しいポケモンではない。進化前のコラッタが夜なら見つけやすいのもあって、手持ちにくわえて旅をするトレーナーは案外多いのだ。なにが言いたいかというとラッタのネズッタはモテた。人にも同族にも。オスのラッタにはエサをもらい、人にはほっぺをプニプニされた。ちっちゃなコラッタが頭に乗っても怒らずにじっとしていた。マダムの「美人さんのラッタねえ」という言葉には面食らったが。

 なるほど確かに進化した時そのぷっくりとした容姿の可愛さに悶えただけあって、ネズッタはかわいい。真っ黒な毛並みも不潔なそれではなく、ヤミカラスの濡れ羽色というようにツヤツヤしている。毛並みに触れるとフカフカして温かい。他のトレーナーのコラッタが頭に乗りたがるのもこのせいだろう。

「……人だったら多分黒髪の美少女なんだろうねえ」

 故郷のカントーのジムリーダーで言えばエリカとかナツメのような。そう考えるとオスのラッタに貢がれたポケマメをかじる姿もお嬢様の動作ぜんとして……いやコレは普通にネズミだ。

「あー、コウミじゃーん!おんなじポケモンセンターに泊まってたのー?」

 予想外の声に、コウミは撫でていたネズッタのほっぺを両手でギュウと押してしまった。くわえていたポケマメをポロリと落としたネズッタが「は〜そこごっつええ感じなんだわ〜」という顔になる。

「は、ははははハウくん!?」
「ははははハウくんではないなー。コウミもここのポケセン泊まってたんだー。気づかなかったなー」
「わ、私昨日は夕方にはここに来て早めに寝たから……」
「それですれ違っちゃったんだー。ねーせっかくだし朝ご飯一緒に食べようよー」
「えっ!  う、うん!」

 コウミはついガッツポーズを取る。やったー! という内心が隠せていない。

「朝はたくさん食べないと力が出ないからねー。コウミとご飯食べられたら効果も2倍かもー」
「わ、私は今朝はほどほどでいいかな……」

 ハウの天然な言動にどきまぎとしながら、コウミは心の中で叫ぶ。

(アローララッタと美形基準が一緒だったら、昨日の夢なんか引きずらずにすむのに!)