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[No.2103] 堀の外 投稿者:久方小風夜  投稿日:2011/12/07(Wed) 01:36:04   139clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 アクアラングの泡がのぼっていく。
 濁った水の中から、水面は見えない。

 幼馴染の親友と一緒に、水を蹴って水面へ顔を出す。
 僕たちの見えるのは曇った空と、町を囲む頑丈な石壁。

 灰色の空に、茶色の小鳩の群れが飛んでいくのが見えた。
 壁に囲われた空を、端から端まで飛んでいったのを見て、安堵する。
 時たま、ここまで落ちてくるポケモンがいる。
 残念ながら、彼らはほぼ助からない。ここには彼らの餌となるものも、石壁を登る手がかりも、足を休める止まり木さえもないからだ。


 この町が水の底に沈んだのは、僕たちが生まれるずっと前だったという。


 なぜ沈んだのか、その理由はもう誰も知らない。
 親友のおじいさんであるポケモン博士の話では、隣の海の神が怒って海流が変わったとか、南の地方の海の神が海を広げようとしたせいだとか、そんな説もあるとか。
 確かに、この町は雨が多い。雨が多いから、この堀も干上がらない。
 だからと言って、そんな遠くの海の神か何かの気まぐれ何かで、僕たちの町が水の底になっていいのか。それはあまりにも不条理じゃないか。


 僕たちの町はいつからか、『堀の中の町』と呼ばれるようになった。
 町を囲むあまりにも高い石壁が、まるで城の周りを囲む堀のようだからという理由らしい。
 家すら完全に沈む水から顔を出しても、石壁は未だ空に向かって聳え立っている。
 時折隣町の住人が物資を投げ入れてくれる他は、この町に近寄る人はいない。
 万が一堀の中に落ちたが最後、外に出ることはほぼかなわないからだ。


 親友はいつも、目を輝かせて同じ話をする。
 ずっと昔、この町に現れたポケモントレーナーだ。
 彼は堀の中に落ちた人間を、大きな飛ぶポケモンと一緒に救いあげた。

 その姿を見たのは、僕と親友だけだ。
 町の人たちは、水面から顔を出すことすら極力避けようとする。
 どうしてもこの水没した町から、離れようとしない。それがなぜなのかは、僕もわからないけれども。

 生まれた頃からそれが当たり前だった僕も、町から出る気は全くなかった。
 だけどその人は、僕たちに向かって言った。


 ポケモンと一緒なら、こんな堀の壁、簡単に乗り越えられる。
 ここから出て、広い世界を見てみないか。


 生まれた時からアクアラングを背負って、水の中で生きてきた。

 堀の中で産まれ、堀の中で生き、堀の中で死ぬ。
 それが半ば当たり前だと思ってた僕たちにとって、彼の言葉は衝撃だった。
 
 この堀の外には、僕たちには全くわからない、別の世界があるんだ。
 僕たちの力だけじゃどうしようもないかもしれないけれども。

 ポケモンが一緒なら。


「俺はいつか、絶対、」

 水没した町の上で、親友が言った。

「この堀を超えて、広い世界へ旅立ってやる」


 灰色の空から雫が落ちた。
 僕たち以外誰もいない水面に、波紋が広がった。




++++++++++


※どう見てもギャグです


イケズキさんとボイスチャットで朗読会していた時

久方「次は何読みましょうか?」
イケズキさん「じゃあ……『堀の外』で」
久方「……???」
イケズキさん「?」
久方「……それはまさか『塀の外』のことですか」
イケズキさん「はっ! あれ『塀』ですか! 『堀』じゃなくって!」

そんなノリで産まれた『水没都市マサラタウン』。
イケズキさんがいつまで経っても書いてくれないから勢いで書いた。反省はしていない。


【続きはイケズキさんに任せた】


[No.2104] 勘違いって怖い。 投稿者:No.017  投稿日:2011/12/07(Wed) 19:34:45   76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

普通に塀の外って読んで、
改稿版かな? と思って勘違いして見たらこれだよwwwwww

あの……これ、ベストカバー裏のネタ候補にしていいっすか?


[No.2106] 水中都市 投稿者:ピッチ  投稿日:2011/12/07(Wed) 21:51:40   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

後書きで初めてマサラタウンと悟って驚愕しました、申し訳ありません。
(「堀」と称される高い外壁、水との関わり、「海の神」などの単語からてっきりルネシティかどこかだと……)
あと「アクアラング」を水族館だと思ってたら全然違いました。アクアリウムでした。申し訳ありません。
(そりゃあ背負えないな。)

それはさておき、とある古いゲーム(GBとかGBCとか、あの辺りの頃の)に、こんな水中都市が本当にあったのを思い出しました。住民がみんなシュノーケル背負ってるんですよ。


「大きな飛ぶポケモン」に種別指定がないのは、主人公の彼らが「飛ぶポケモン」の種類を知らないからでは、と思ったり。
アクアラングを置いて旅立った彼らが再びそのポケモントレーナーに出会った時、彼らはその傍らの鳥ポケモンの種類を言い当てられるのでしょうか?

【続きに期待】


[No.2107] 水の外 投稿者:きとかげ  投稿日:2011/12/07(Wed) 22:51:10   95clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


「ただいま」
「おかえり。外の世界はどうだった?」
 擦り切れそうなスニーカーを脱いだ私は、幼なじみの手元を見つめながら旅の話をする。
 見たことのないポケモン、苦戦の末ゲットしたバッジ、なかなか勝てないライバル、遠い地方で行われるポケモンコンテスト、へんぴな島に住む変わり者の博士。進化した私の相棒を見せた時には「へえ、そんな姿になるんだ」と軽い歓声を上げた。
 その間に、幼なじみの手の中で新しいアクアラングが形を成していく。できた、という声と共に掲げられたそれは歪で、パーツのすき間からどんどん水が入ってきてしまうだろうどうしようもない代物だった。
「まだまだ、親父のにすら追いつけない」と彼は言う。
「……旅に出てみたら?」私は言った。
 彼は歪んだアクアラングを見つめながら、首を横に振った。

 私は古ぼけたスニーカーを履き、幼なじみの家を出る。小さな段差を飛び降りながら、南へ向かった。

 幼なじみの父親も、祖父も、ずっとアクアラングを作ってきた。きっかけは、この先にある小さな町。かつて、私たちが生まれるよりずっと前には、高い塀の中にあったというその町。今は水に、堀の中に沈んでいる。
 理由は、知らない。隣の地方にいる海の神の仕業か、あるいは遠い南の神が海を広げようとしたか。両方の地方に行って伝承を調べてみたが、そんなのは知ってるの範囲内に入らないのだと思う。

 ただ、事実として町は水底に沈み、それをきっかけに彼の家はアクアラング作りを始めた。堀の中から出られない町の人たちに、堀の外からアクアラングを投げ入れる為に。そしてこれからもずっとアクアラングを作り続ける。父親も、彼も、きっと彼の子どもも、子々孫々ずっと、ひたすら、堀の中へ送る為に。

 草むらから飛び出してきたポッポを、ボールから出てきた私の相棒が吹き飛ばす。
 ピジョットに進化した私の相棒も、昔はここいらをうろちょろするレベルの低いポッポだった。小さなポッポだったこいつが、立派な冠羽を持ち、大きな翼を手に入れ、その翼で空高く飛んで広い世界を見た。私の幼なじみは町から一歩も出ないまま、相変わらず下手くそなアクアラングを作り続けることに満足している。ポッポがピジョンを経て、立派なピジョットに進化することも、何も知らないまま。

 草むらを抜けた私の目の前に、高い堀の壁が立ち塞がった。
 今ならあの堀の中からだって、町の人を連れ出せる。
 けれど、そんなことはするなと、私の幼なじみは言う。堀の中にはゲームも、テレビも、本も、漫画も、最新のパソコンだってある。ポケモンが生きられない堀の中は安全だし、満ち足りているのだから、だから、私が彼らの幸せに手を出す必要はないのだ、と。

 でも、と私は思う。

 この堀の壁を超えたくないのは、――今の生活に満足していたいのは、
 堀の外にいる彼の方じゃないだろうか。


 灰色の空から落ちた滴が、私の古いスニーカーに染みを作っていく。
 この冒険が終わったら、新しい靴をおろして彼と一緒に堀の外に行こう。
 私のピジョットが大きく翼を広げた。


〜〜
生まれた時からアクアラングということは新生児用アクアラングに冠婚葬祭アクアラング(ry
一言で言うと、勢いが余りましたすいません。
【まずかったら消します】
【続きをイケズキさんが書くに違いないと期待して】


[No.2108] 感想ありがとうございます 投稿者:久方小風夜  投稿日:2011/12/08(Thu) 00:09:33   74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

『塀』と『堀』を読み間違えている人が存外に多くて恐怖と困惑と爆笑が同時に襲いかかってきている久方です。
言わずもがな100%ギャグですよ。全てはイケズキさんのせいです(


>No.017さん

>普通に塀の外って読んで、
>改稿版かな? と思って勘違いして見たらこれだよwwwwww
全てはイケズキさんの(ry

>あの……これ、ベストカバー裏のネタ候補にしていいっすか?
ベストのカバー裏は一体どうなるんですかwww
ネタは全然構いませぬよー


>ピッチさん

>後書きで初めてマサラタウンと悟って驚愕しました、申し訳ありません。
>(「堀」と称される高い外壁、水との関わり、「海の神」などの単語からてっきりルネシティかどこかだと……)
全て(ry
内容は割と勢いで書いたのですみませんwww

>あと「アクアラング」を水族館だと思ってたら全然違いました。アクアリウムでした。申し訳ありません。
>(そりゃあ背負えないな。)
ちゃんと調べたらアクアラングが商品名だったことは秘密です。

>それはさておき、とある古いゲーム(GBとかGBCとか、あの辺りの頃の)に、こんな水中都市が本当にあったのを思い出しました。住民がみんなシュノーケル背負ってるんですよ。
水中都市は浪漫ですよねぇ。
実際にはあり得ないだろうけれども、しかし素敵だ水中都市。

>「大きな飛ぶポケモン」に種別指定がないのは、主人公の彼らが「飛ぶポケモン」の種類を知らないからでは、と思ったり。
>アクアラングを置いて旅立った彼らが再びそのポケモントレーナーに出会った時、彼らはその傍らの鳥ポケモンの種類を言い当てられるのでしょうか?
どうでしょう(・∀・)フヒヒ

>【続きに期待】
つ【イケズキさん任せた】


>きとかげさん

まさか外伝を書いていただけるとは……!
しかも堀の外の人たちの話とはwww
ちょこちょこ挟まれたネタにニヤニヤ。
どうもありがとうございますー。

>生まれた時からアクアラングということは新生児用アクアラングに冠婚葬祭アクアラング(ry
もちろんあると思いますwww

>一言で言うと、勢いが余りましたすいません。
どんどん余っていいのよ。
むしろ余らせてくださいありがとうございます。

>【続きをイケズキさんが書くに違いないと期待して】
つ【自分も期待してますイケズキさん】


感想ありがとうございました!