あとがき。
この世にもっとも必要なものが何なのかと訊かれたら、恐らく僕は答えることが出来ないのだろうと思う人間です。では逆にこの世にもっとも不必要なものが何なのかと訊かれたら、それにも答えることは出来ないでしょう。いや、ただ言葉として発するだけならば、「それは僕です」と言えないことも無いですけれども、実際問題僕がいなくなった瞬間に僕の『この世』が無くなってしまうのですから、僕がいらないと答えるのはなんだか矛盾を含んだ回答のような気がしなくも無いわけです。では、この世でもっとも必要なものが何なのか? と訊かれたら、僕は何て答えるだろう。この世にとって必要なものでは無くて、この世の中で一番必要なもの。まあ色々、千差万別十人十色の答えがあると思うのですけれど、その中で一つだけ選ぶとしたら、僕は愛を選びたいと思う人間であるわけです。
本作『ポケモン。』は、ダークライというポケモンのために書き始めた小説です。ですが、書いているうちに心変わりが起き続け、次第に少年と少女の物語。ボーイミーツガールへと変化していきました。勿論無意識にそうなったわけでは無く、しっかりと構想を練って少年と少女の愛を確かめるに至ったのですが、何分勢いが先行した作品だったために、稚拙な点がありそうです。ですが書き終わって、『了』の字を記した以上、誤字や脱字の修正以外でこの作品を変えていくことは僕には出来ないでしょう。
実際物語です。作品です。ただの文字です。でも、それを改変した瞬間に、物語は物語以下の『可変である筋書き』になってしまう気がして嫌なのです。ハクロ君が言葉を発したら、それが正しい。緑葉が何かを想ったら、それが答え。人間の人生のように、生々しい日常を描くためには、一度発した――一度生を受けた時点で、改変出来るものでは無いのだろうなと思うわけです。
なら誤字脱字も修正するなよ、という感じですが、まあその辺は、あくまでも『生々しい小説』であるための一線ということで、ご容赦いただきたい次第です。
それでは、本作をご覧になってくださった皆様方、本当にありがとうございました。思いつきで書き始め、途中から掲示板で連載をさせていただき、執筆環境をころころ変えていた物語でしたが、完成にこぎつけて幸いです。
出来れば次回作、やりたいところです。期待してくださっている皆様もおられるので、がんばってみたいと思います。
ということで、あとがきでした。機会があれば、また別の作品で。