0

 そして私は目を覚ます。
 長い永い眠りから覚め、遠い逖い世界から戻る。
 いつから永遠だっただろう。
 私が巻き込まれた世界は、いつ約束されただろう。
 いつから永久だっただろう。
 私が取り込まれた世界は、いつ確定されただろう。
 いつだって、世界は可変であるのに。

 1

 例えば回転木馬(メリーゴーラウンド)
 どれだけがんばって、自分の木馬の尻を叩いてみても、実際に速度が増すことは永遠に無い。それはもう、単純な意味合いで、加速しない。
 しかし減速もしない。一時の夢が終わるまで、木馬は回転し続ける。同様に、同じ空間に紛れ込んだ馬車でさえ、減速することは無い。
 さらに、同じ場に居合わせた、木馬にも、馬車にも乗っていない人間――舞台を共有しただけの人間ですら、同じ速度を保っている。
 木馬、馬車、人間。
 その中に速さの優劣は存在しない。
 あるのは、愚かしい幻想だけだ。

 ■

 この世界での生き方にも慣れて早三日、勘違いされていた日々ともおさらばである。
 と思ったのだが、やはり私に挑戦しようと声をかける人の足が途絶える様子は、一向に無い。
 町を歩けば噂され、道を歩けばおずおずと、声をかけられる。最初は上機嫌になれたこの仕打ちにも、苦痛が伴ってきた。
「あの……レッドさんですか、た、対戦してください!」
 レッド。
 誰だろう。
 私はその度に、断りを入れる。私はレッドでは無い旨と、ポケモントレーナーで無い旨。そもそもまだ、ポケモンという生命体について、詳しく知らないということ。
「すみません、どうやら似ているようですけれど、私はレッドという方ではありません」
「……そうですか」
 断る度に、肩を落として残念がる少年の姿を見るのは、苦痛以外の何物でも無い。だけれどそうしなければいけないのだから、するしかないのだろう。放置して嘘を突き通すより、よっぽど健全だ。
 しかし……ポケモンとは、何だっただろう。
 勿論聞き覚えはある。というか、有名なものだ。ポケモン。詳しいことはあまり知らないのだけれど、何度も何度も、その名前を耳にしたことはある。
 ゲーム……だっただろうか。アニメだったかもしれない。
 馴染みはあるのだが、上手く思い出せない。何かで制御されているかのように、頭に靄がかかっているのだ。
 その旨、現実で言うところの病院のような施設である、『ポケモンセンター』とやらで聞いてみたのだが、極稀に私のような『記憶を失いかけた人間』が訪れるというから不思議なものだ。まあ、前例があるということは、そこまで気にすることでも無いと、私は結論付けているのだが。
「しかし……どうしたら帰れるのだろう」
 独りごちてみても虚しいだけだが、しかし何かしなければいけないような気がする。
 東京……では無く、山吹、だったか。地形はほぼ変わらず、『タウンマップ』と称される全国規模の地図を見てみても、ここが東京であることは、ほぼ間違い無かった。
 しかし人々は皆同じように、『ヤマブキシティだよ!』と繰り返す。無論、この発言が大多数であるということは、それが正しいと考えて良いのだろうけれど……同じ地形でも違う土地とは、不思議なものである。異次元。並行世界とでも言うやつだろうか。
 私はそして、現在、途方も無いままただただ山吹の夕日を眺めている。三日目ともなると流石に噂が行き届いているからか、挑戦者の数も減ってきているのだ。とは言っても、まだ一日に十人程度の申し込みを受けねばならない状況ではあるのだけれど。
「……レッド、か」
 聞いたことがあったはずなのだが。
 何分過去のことなので、思い出せない。人の名前、であるのだけれど……。
 しかしそれよりも私の理解を苦しめるのは、この世界の人々の異様なまでの生活体系だ。
 仕事をしている人が、極端に少ない。
 仕事――言ってしまえば、私にとってそれは会社である。世界の歯車の一端として、私は社会に駆り出された。
そして気づけば五年間ほど、私は社会人として、囚われていた。
 だというのに、今はこんな、世界の生活速度があまりに遅い世界で、有名な人間と勘違いされて日常を送っている。
 不思議なものだった。しかし、嫌な気がするでも無い。荒廃した日常から、こんな不思議な非日常に迷い込めるのならば、私は案外、大多数の社会人よりも、めでたい脳をしていたらしい。
 と思いながら夕日を眺めていたが、ふっと夕日が沈み、突然のように夜が襲う。この突然さにも、三日目にして慣れてしまった。
 夜になっても、人々の生活様式に変化は無い。たまに動きを見せる人もいるが、少数派。この世界では、あまり朝夕の区別というものが無いらしいということを、私は二日目にして理解している。
 寝床のない私は、『ポケモンセンター』に入ると、ジョーイさんと呼ばれている女性に頼みごとをする。きっと『女医』の発音が訛っているのだと思われるが、この世界では『ジョーイ』という発音が一般的のようだ。
「すみません、今夜もここで一泊させていただいて宜しいでしょうか」
「ええ、構いませんよ。公共施設ですから」
 言ってしまえば、ホームレス。そんな私を、しかしこの世界の住人達は、嫌な顔一つせずに受け入れてくれる。
 これがもし、私が抱いた幻想だとするのならば、そんな風に都合の良い世界が広がっているとしても不思議ではない。無論、私という人間が描く『幻想』に自分の家が無いことは、いささか不思議ではあるのだけれど。
 そうして私は、二十四時間体勢で営業する『ポケモンセンター』に設置されたソファを陣取り、睡眠を取ることにする。『ポケモンセンター』内で私と同様に生活している人も何人かいるようで、昨日見た顔ぶれが、今日も同じように存在している。
 このまま私も、この『ポケモンセンター』のオブジェとして生涯を終えるのだろうか。しかしそれも悪く無い。
 そんなことを思いながら、私は三日目の夜を終えようとしていた。


 朝日が昇ったからなのか、それとも時間がきたからなのか。
 とにかく世界は朝日に包まれていた。私はこの三日間、現実世界での疲れを癒し切るかのように、たっぷりと睡眠時間を取っている。私は持っていないのだが、この世界には時計という概念も存在するようなので、何とか生活リズムを知っておきたいとも思っている。
 ……のだが、どうにもこうゆったりしている世界観を知ってしまうと、時刻による焦りを感じたくなくなるという考えも、私の中に生まれていたりする。時計が無いのなら、時間が無いのなら、それでいいか。と、社会人にあるまじき思考を展開している。
 私はソファから起き上がって、ジョーイさんに一泊のお礼を言う。
「三日とも、お世話をおかけいたしました」
「いえ、気にしないでください。誰でも使える場所ですから」
 どうやらこの世界には、特別という概念が薄れているらしい。
 基本的に平等。その中で特出した人だけが、特別として扱われる。
 ……不思議なものではあったが、しかしそれなりに、考えられた社会体制なのだろう。私が住んでいた現実とは大きく違うそれに当初は戸惑ったものだが、今となっては人類はこうあるべきなのだろうと、痛感する。三日目にして早くも、である。
「それでは、今日も出かけてまいります」
「はい、いってらっしゃいませ」
 にこりとジョーイさんに笑顔を貰い、私は晴れた気分で今日も探索に乗り出す。
 一日目は困惑したまま。
 二日目は帰宅を願って。
 三日目は無謀と知って。
 四日目の今日は――帰ることよりも、世界に順応しようとして、探索に乗り出すのだろう。
 元の世界が嫌いなわけでは無かったけれど、良い世界を知ってしまったのなら、帰りたいとは思わないのが人間なのだろう。
 そうして順応することが、どこか危険を孕んでいるのでは無いだろうかと、その時の私は、既に理解し、納得していたはずなのに――
 いつか来るのならば、別れは早めにやってくるべきなのだ。

 ■

 回転木馬、回転木馬。
 少年は足並みを揃えたがらず、舞台から降りた。

 2

 例えば絶叫列車(ジェットコースター)
 連なった箱のどれか一つにその身を委ね、とてつもない速度で私達を振り回す機械。
 どれだけ懇願しても、絶叫しても、その速度が緩むことは無く、唯一減速する上り坂に至っては、地獄への降下をあざ笑うかのような、ねっとりとした陰湿な速度展開をする。
 そして、これに関しては平等性は皆無。前方に乗るものと後方に乗るもので、速度の感じ方が変化する。前に居る者は早い段階で地獄を、後ろに居る者は落下を知る前に、加速を味わう。
 前方、後方。
 そして真ん中にいる人間は、どうなのだろう。
 何を思って、その特色の無い場所を選んだのか。

 ■

 私は東京から千葉へと続く道を歩いていた。
 どうにもこの世界は、何分の幾つかといった縮尺度合いで縮んでいるようだ。東京から千葉――山吹から朽葉、と言ったか。とにかくその間に存在する歩行距離が、現実世界とは比べ物にならないほどの短距離でしかないのだ。
 私はその間の道――『タウンマップ』に記載されている通りだと『六番道路』という場所で、観戦をしていた。
「コラッタ、電光石火!」
「オニスズメ、突く!」
 あれがポケモン、という生命体なのだろうか。何処かで視たことがあるような、不可思議な形体をしている。アニメのように動物がデフォルメされたような、そんな姿。
 私は呆然と立ち尽くし、その戦いに目を通していた。人間同士が、しもべを従え、戦う。自分の手は一切下さずに、動物同士を戦わせる。
 何だか――気分が悪い光景であった。そこに正義はあるのだろうか。憎しみや悲しみは? 闘争理由は何なのだろう。一体どういった気持ちで、自分の『ポケモン』を戦わせているのだろう。
 ……私には、理解出来そうにない。
 しかし、それは格闘技とて同じことだ。私に格闘技のテレビ中継などは理解出来ない。己のみを磨く修行者の気持ちは幾分わからないでもないが、ショーのように映し出される戦いの理由は、分からない。
 ならばそれと同じような――
 好奇心、なのだろうか。
「くっ……コラッタ、戻れ!」
 鳥の形状をしたポケモンが鼠を戦闘不能に追い込み、短パンを穿いた少年は『コラッタ』とやらを、何やら不思議な構造の球体に収めた。この世界では、科学の分野が現実世界よりも数歩進んでいるらしい。小さい頃ゲームを好んでいた私が映し出す幻影なのだとしたら科学が進んでいてもおかしくは無いが……それならば、車が空を飛んでいても不思議では無い。
「いけっ、ポッポ! 砂かけ!」
「オニスズメ、空を飛ぶ!」
 ……車?
 車。そういえば私はこの三日間の内に、一台でも車を見ただろうか。現実世界で、どれだけ目を反らそうと視界に収まり、目を瞑ればエンジン音が鼓膜を揺らし、耳を塞げば排気ガスの匂いが鼻腔を刺激する存在が――何処にも無いではないか。
「ポッポ、空を飛ぶ!」
「くそ……」
 ある一方の分野にばかり特出し、他の分野を捨てた世界なのだろうか。だとしたらこの世界は、非常に何か――そう、ポケモンにばかり固執した世界と言える。
 私の生きている世界が人間を中心としているように、この世界はポケモンを中心としているのだろうか。
「オニスズメ、戻れ」
 見れば少年同士の戦いは終焉を迎え、制服に身を包んだ方の少年は、悔しそうに地団駄を踏んでいた。
「くっそ……ほら、賞金だ」
 と、私の目の前でその行為は繰り広げられた。
 少年が――十五歳にも満たないであろう少年が、金銭のやり取りをしていたのだ。
 にわかには信じがたい光景であった。勿論、私が少年であった頃に十円程度の金銭の取引をしたことは揺ぎ無い事実であるが……しかしそれにしても、戦いで負けた人間が、勝った人間に金銭を譲渡するなんて……。
 私は気づけば、少年達に歩み寄っていた。
 二十七歳の大人が、十代前半の少年に向かって、説教をたれようとしている。
「君達……」
「なんだよ、今俺はムカついて――」
「え、あ、あ!」
 歩み寄って初めて、私は思い出した。
 そうか、私はレッドという人と似ているのだったっけ……。
『れ、レッドさん!』
 声を揃えて、二人の少年は言った。どれほどまでに、レッドが有名人であろうか、この反応を見るだけでも分かりそうなものである。
 私はしかし――明確な否定も肯定もしないまま、二人の少年に尋ねることにした。
「……そのお金、君は何で渡すの?」
「なんでって……負けたからです」
「負けたから、お金を渡すの?」
「はい」
 勝った方の少年も、特に不思議がってはいない様子。どうも、この世界で勝負における金銭のやりとりをすることは、常識的なことらしい。
「二人とも、同意の上?」
「ていうか、そうしないとアイテムとか買えないし」
「強い人がお金を稼ぐんじゃないですか。レッドさんだって、そうなんじゃないんですか?」
 ファイトマネー……ということだろうか。しかもそれが常識として根付いてしまっているようだ。
 子供にならば、まだ分からないとしても、おかしくはない。
 しかし大人が分からない理屈は無いだろう。『強い人がお金を稼ぐ』という悪循環を。
 これが根付いてしまえば、弱い人はどんどん堕ちて行くだけだ。『アイテム』と少年は言っていたが、では弱い人はどうするというんだろう。どうやって、生きていくのだろう。
 人間は一人だけではない。人の数だけ、その人生がある。
 自分以外の人間の人生など、捨ててしまって良いと、そう考えているのだろうか。
 そう思っているのなら、たとえ子供でも――否、子供だからこそ、正さねばならない。
「その考え方は、間違ってるよ」
「……え?」
 レッド、という人物に似た私が言ったからか、少年達は酷く意外そうな顔を私に向けた。
「君たちの言い分を聞くと、勝った人だけが強くなる世界が出来上がっているように思えるけど」
「だって、勝った人はそれだけ努力したから勝ったんじゃないですか」
「強くなれるから、みんな努力するんだ! 俺達もいつかはチャンピオンになりたいから、こうやって友達と戦って強くなるんだ!」
 言い分も、ある見方では正論だ。そのチャンピオンというのが何なのか、私にはさっぱりだったのだけれど……努力するという点では、正当な理由に思える。
 だからと言って……それでは平等な世の中にはならない。
「それじゃ、弱い人はどうなるんだい?」
「弱い奴は努力しなかったやつだから、気にすることなんかないよ」
「そうですよ。努力しなかった奴をわざわざ気にかけてやる必要なんて無いです」
「君達が弱者の立場だったら?」
『俺達は努力するから弱くない!』
 図ったように、少年達は声を揃えて言った。
 自分はそうでは無いから、自分以外の人間のことなど、理解出来ない。とでも言うように。
 いや、実際そう言っているのか。
「……そうか」
 恐らくは、そういう世界に育ってしまったせいで、分からないのだろう。私が彼らを分からないように、彼らも私を分からないのだ。
「それで、レッドさんのポケモンはどんなやつなんですか?」
「是非戦ってください、俺達と!」
 言われて、しかし、私は戦うことが出来ないから、否定するしかない。
「私は戦いません。戦う理由が、ありませんから」
 強くなるために戦う――そんな理由をもっている限り、その人間が強くなることは、永遠にないだろう。
 何かを追い求めるうちは、それには辿り着けない。
 不必要と思えた時に、初めて到達している。
「でも……がんばってください」
 少年達の心を治せないと、心のどこかで理解した。
 きっと違う世界なのだから、当たり前だ。
『はい!』
 また同じように、彼らは言葉を揃えた。
 その輝きに満ちた眼が、私の心を重くする。

 ■

 絶叫列車、絶叫列車。
 少年は同じように叫びたがらず、列車に乗らない。

 3

 例えば遊戯単車(ゴーカート)
 自分の技術によって、その車体の速度を上げることも、下げることも、運転技術で場内を如何様にも走り回ることが出来る。
 機体による差は微々たる物。無いと一蹴してしまっても良いほどに、どれを選んでも同じ。
 ほぼ平等。
 ほぼ平均。
 そして努力し、選ばれたものだけが、その場内で栄光を手にすることが出来る。
 しかし上には上がいることを、遊戯単車場内だけで生活する彼らは、知る由もない。
 知ろうともしない。

 ■

 私は財布を持っていた。
 そしてこの世界の通貨は、現実と同じだった。
 私は会社の帰りにここに迷い込んだようで、着ている服はスーツだった。残念なことにカバンは持っていなかったので、携帯電話やノートパソコンなどは失ってしまったのだが……ズボンのバックポケットに財布を入れるという長年の習性が功を成し、私はこの世界での経済観念に参加することが出来た。
 フレンドリィショップ。
 コンビニエンスストアのような造りのその店は、そう呼ばれているらしかった。
 日本語と多少の英語が混じった言語。カタカナ文字が多いのも、そんな影響なのかもしれない。
 私は少年達と別れてから山吹へと戻り、フレンドリィショップとやらに足を運んでいた。
 別に何を買おうと思っていたわけでは無い。ただ、どんな商品があり、どんな性能なのか見てみたくなったのだ。
 それに――食欲がわかないので忘れていたが、食事を取った記憶が、この四日間、一切無かった。
 出来ればここで、何か食べておこうとそう思ったのだ。
 が――しかし、フレンドリィショップに、人間用の食事は販売されていないようであった。
「ようこそ! おかいものですね?」
 私が店員に食料の有無を尋ねようとすると、言葉を遮るように、店員は言う。
 確かにお買い物であった。
 が、ここに並べられている物の中で、しかし特に買いたいものがあるわけでも無い。
「すみません、特に欲しいものがあるわけでは無いので」
 私は店員に丁重に断りを入れて、店を出る。傷薬や虫除けスプレーは良いとして、モンスターボールとは何なのだろう。少年達が持っていた球体のことだろうか。さっぱりである。
 とにかく私は、この世界に順応するつもりはあったが、あの汚れた闘争心に身をおくつもりは無かった。流されやすい体質の私である。あの球体に手を出したら、きっとそのまま少年達のように無意味な争いをしてしまうことだろう。否、手を出すところまでは問題ではない。自分を失わずにいられるかという問題なのだ。
 だからこそ私は、ポケモンを介さずにこの世界と折り合いをつけようと思った。


 そして、しかし、それから、一日中、ただただボーっと、私は時間を喰った。
 私は……そして、目的を失った。
 ポケモンに塗れた世界の中で、ポケモンと関わらないで生きるということは、社会的な死を意味するのだろう。私がしなければならないことなど何一つ無く、そしてそれを責める人間も、誰一人いない。
 食欲は沸かない。
 身体も汚れない。
 一日中、ただ起きて何かをして寝るという、そういう行為しか出来ないような、そんな世界になってしまう恐れがある。
 例えば現代のようにインターネットが普及していたら――私はそれを使い、一日を棒に振るだろう。
 例えば現代のように世界が新聞や書物に塗れていたら――私はそれを読んで、一日中図書館に篭るだろう。
 だけれどこの世界は、何をするにも、ポケモンを中心としている。
 私は四日目の夜、ジョーイさんに何も言わずに、ソファを陣取ろうとする。まるで私のためにあるかのように、ソファはただ席を開けて存在していた。
 しかし何だか、そこにいることも、歯がゆい。そもそも明りが眩しすぎるのだ。三日間、室内で眠れるだけで満足していた私だが、眩しさに目が眩み始める。贅沢を覚え始める。
「……」
 一瞬の沈黙の後、私はポケモンセンターを後にする。ここで高みを望むのは危険だ。
 どうせ車は走っていない。
 危険な人物も存在しない。
 だったらいっそ、外で寝る。
 私は二十七年間の人生で初めて、寝袋もテントも無い状態での野宿を経験した。


 そして五日目の朝。
 目が覚めた私には、自由があった。
 多少の金銭。気にすることの無い日常。失うものの少ない人生。囚われることの無い自分。
 私は立ち上がる。
 そしてフレンドリィショップへと向かった。
 別に、失敗して誰かに笑われるわけでは無いのだ。
「ようこそ! おかいものですね?」
 恐らくは二十四時間営業なのだろう、朝早くから店は開いている。店員の顔が昨日と同じに見えるので少々不安になるが、恐らく仮眠でも取ったのだろう。店員のことは気にしないことにして、私は一万三千円あった所持金から、二千円分――つまりは十個分のモンスターボールを購入することにし、店員に二枚、札を渡した。きっとこの球体を買えば、ポケモンと触れ合えるのだろう。
「はいどうぞ、毎度ありがとうございます」
 箱にもいれず、袋にも入れず。ただ十個の球体を、私は店員から素のままで渡された。
 背広の右ポケットに三個、左ポケットにも三個、内ポケットに二個。そしてズボンのポケットに左右一個ずつ入れて、私は計十個のモンスターボールを入手した。
 恐らくこれをどうにかすれば、ポケモンを捕まえられるのだろう。説明書はついていないし、ボール自体に説明書きもなされていない。ということはつまり、現実世界では、食品を買うようなものと同じほど、一般的で常識的な道具なのだ。『この肉はこうして調理します』などということは、いちいち書いていないことだし、それと同じだろう。
 私はフレンドリィショップを出る。よもや現代世界に帰りたくないと思っているわけでは無いが、だからと言って帰る方法が明確なわけでは無いし、そもそもこの世界で生きるなら、ポケモンを持っていた方が色々と有利である気がした。
 ――などと言う、多少の言い訳も含みながら、私は二十七歳という年齢に密かに残った少年心が疼くのを、感じていた。
「あの、すみません」
 町に存在していた女性に、私は躊躇いも無く話しかけた。
 初対面という恥など、この世界には存在しないのだ。
「はい?」
 既に私がレッドの人違いであるということは浸透しているのか、それともそのイベントは既に過去のものとして処理されているのか。とにかくその女性は私に対して何の驚きも含まずに、ただただ、言葉を返した。
「ポケモンの捕まえ方を教えて欲しいのですが」
 説明が無いのなら、求めるしか無いのだ。
 出来ないのならば、出来る人に尋ねればいい。
 四日間、私は受身で、何かが起こるのを待っていたのだろうか。
 人間の人生なんて、自分から動き出さなければ始まらないようなものだと、理解していたはずなのだけれど。
 ペダルを踏まない限り、エンジンをかけない限り、車が動き出さないのと同じ原理だと、知っていたはずなのだけれど。

 ■

 遊戯単車、遊戯単車。
 少年は同世代の子供が低俗に思えて、単車を捨てた。

 4

 例えばお化け屋敷。
 造られた恐怖に触れて、人々は驚きを感じる。それは何なのか。一体何のために、人々は自ら恐怖を求めるのか。
 快楽のため? それならば快楽を求めろ。
 絶叫のため? それならば絶叫を楽しめ。
 興奮のため? それならば興奮を感じろ。
 別段大した理由では無いのだろう。
 安心感を前提においた恐怖で、知的好奇心を満たしたいだけなのだ。
 人間の欲求なんて、仮想現実で満たされてしまうちんけなものである場合が、大半である。

 ■

「これを、投げます」
 女性が教えたのは、つまりそういうことだった。投げるまでに幾つかの手順を踏んでいたように思えたが、それは見よう見まねで理解しろ、ということらしい。
 私は女性に連れられ、近くの草むらに来ていた。本来はこちらも同様にポケモンをくり出し、野生のポケモンと戦わせて弱らせ、その末にモンスターボールを投げるのが一般的のようだが……私のようにポケモンを持っていない者は、直接投げるしか捕まえる方法が無いということだった。
「ではやってみましょうか」
 女性は終始笑顔のまま、私に接してくれる。その笑顔が少し不気味でもあったが、優しくされることにこしたことは無い。私は自分で買ったモンスターボールを取り出し、女性がしたように、ポケモンが出現したらモンスタ・br>[ボールを投げることにする。
「はい、やってみます」
「それでは、がんばってくださいね」
 ――と、女性はしかし、私を置いて去っていってしまった。教えを授けたら、他に用は無いとでも言うことなのだろうか。それとも、突然のお願いで迷惑だったのだろうか。
 女性は振り向きもせず、私の視界から消えて行く。
 ……まあ、仕方ない、か。
「……一人でやってみよう」
 いなくなったのなら、仕方ない。これ以上迷惑をかけるわけにもいかないし、引き止めるわけにもいかない。それに嫌われたとしても、今後あの人に会う予定も無いのだから、そこまで気にすることは無いだろう。
 私は草むらを歩き回る。何処にもポケモンが潜んでいる様子など無いのだが、女性が言うには草むらを歩けばポケモンが飛び出してくる、とのことだった。
 確かに草むらの草は背が高い。私の腰ほどまで伸びている。が、生物が存在しているかどうかくらい、草むらが揺れるか何かして分かるだろう。だとしたら、本当にこの場所に、ポケモンなどいるのだろうか。騙されているのでは無いだろうか。
 あまり好印象を与えた雰囲気では無かったし。
 と――そんなことを考えながら草むらを歩いていると。
 突然、背後で気配を感じる。
 振り返る。
「……う、うわぁっ」
 私はそして、無意識のうちに、手にしていたモンスターボールを、捕獲するという意味合いでは無く、見たことの無い生命体に対する防衛反応という意味合いで、投擲していた。
 黄色い、狐のような、しかし宇宙人のようでもあり、赤子のようでもある生命体は、紅白のモンスターボールをもろに受け、炸裂したモンスターボールの中へと――収納される。それがどういう原理で行われていることか、定かでは無かったのだが、とにかく中へと、収納された。
「や……やったのか?」
 私は草むらに落ちたモンスターボールに手を伸ばす。
 ドクン――
 と、モンスターボールは揺れた。
 私は手を引っ込める。まだ危険であるようだ。私の本能が、そう告げている。
 ドクン――二回目の揺れが確認される。
 そして三回目の揺れが確認された後、カチリ、と、何かが閉じる音がした。
「……」
 もう、モンスターボールは揺れない。
 触っても、大丈夫のようだ。
「つ……捕まえたのか?」
 私はモンスターボールを手に取って、真ん中のボタンを押してみる。
「わっ」
 モンスターボールは炸裂して、中から先ほどの、黄色い狐のようなポケモンが現れる。
「……何なんだ、こいつ」
 生き物としては、やはり我々がイメージする宇宙人にほど近い。が、同様にそれは人間にも近い形体という意味合いであり、四肢があるということだ。
 とは言っても――やはり尻尾と耳があるという点では、狐だろうか。
「ケー」
 ポケモンは鳴いた。小さく鳴いた。
 人語を話す様子は無い。
 ポケモンは細い目で私を見つけると、横着そうな足取りで擦り寄ってきた。どうやら私に懐いたようである。これもモンスターボールの効力だろうか。
「……よ、よしよし」
 頭を撫でてみる。
 お互いに、危害を加えるつもりは無い。
「ケー」
 ポケモンは満足そうに鳴いた。
 そして私は、そのポケモンと共に、この世界を歩き回ることにした。
 戦闘――闘争本能によるものではなく、このポケモンの実力の調査として、戦闘を行ってみることにもした。


 ――――そして、一体どうしたことか。
 私のポケモンに対する認識が甘かったということなんだろうか、それともポケモンとは往々にして好戦的でない種族もいるということか。
 私が捕まえた狐のようなポケモンは――野生のポケモンと出会う度に、瞬間移動をして逃げ出してしまう。
「ケー」
「……」
 しかし、責めるわけにもいかないだろう。
 私は何も、戦いたくてポケモンを捕まえたのではないのだ。この世界に存在するには、一匹くらい持っている必要があるのでは無いかと、そう思ったのだ。現代で言う、携帯電話のようなものだろうか。
 とにかく私は、そうして山吹の草むらから遠ざかる。このポケモンに何が出来るのか、私は知らなかったから、そうするしかなかった。それに、このポケモンをモンスターボールとやらに収納することも、私には出来なかった。
「帰ろうか……と言っても、分からないよね」
「ケー」


 そして一瞬。
 私はポケモンセンターの前にいた。
「ケー」
「……」
 私は何も分からなかった。
 しかしこのポケモンが何度かしたように、瞬間移動を私自身もしていたのだろうと、そんな気はしていた。
「はは……」
 信じられないことというのは、常に実現する可能性で溢れている。
 同様に私も、移動してしまったんだろうか。
 分からないまま、私はひとまずポケモンセンターに入って、ジョーイさんにポケモンを預ける。
 このポケモンがどんな生物で、どんな性質を持ち、どんな能力を使ったのかは分からなかったけれど。
 とにかく私は、初めてこのポケモンセンターを、正式な形で利用することにしたのだった。

 ■

 お化け屋敷、お化け屋敷。
 少年は、怖いのに強がって、目を開けずに突入する。

 5

 例えば飛行塔。
 塔に繋がれた飛行船に乗って、一時に限り、飛行士の夢を叶えることが出来る。
 しかし、時間も、距離も、高度も、速度も、限られている。
 自分の意志など、そこには存在しない。
 ただ空を飛べるという――飛ばされるという、そういう目的であるだけなのだ。
 だとしたらそこに、楽しみはあるのだろうか。
 残るのは虚しさだけでは無いのだろうか。
 飛べないのなら諦めもつくだろう。
 しかし一度飛んでしまったら、様々な想いを、実らせてしまう。
 一度も飛ばないほうが幸せだった。
 一度も知らないほうが幸せだった。
 離れるのなら最初から、触れたくなかった。

 ■

 私は現在、ある人物と一緒に行動している。
 私があまりに稚拙な態度を取っていたのが哀れだったのか、それとも単純に私と知り合いたいだけだったのか。いや、後者は無いとしても。
 彼女は私に誘いをかけた。好意的に。
 少女との二人旅。悪く無い選択肢だった。
「ねえ、一緒にシオンタウンに行かない?」
 シオンタウンという場所を知らない私にとって、それはどちらでもいいことだった。だけれど、冒険の予感がしたので、その誘いに乗ることにした。
「ええ、いいですよ」
「私はアオカ、あなたは?」
 そして私は、彼女に名乗る。
 同様に、ポケモンのことも紹介した。
 彼と知り合ってから既に一週間が経過している。
 未だに彼は戦闘の度に逃げ出してしまうけれど、私は彼と一緒にいるだけで、特に不満は無かった。なので、その逃走に関して何も言う気は無かった。
 ――言っても、通じないことだし。
 彼女のポケモンの名前も、自分のポケモンの名前も、何も知らない。だけれど別に、どうでもよかった。アオカという少女の名前も、どうでもよかった。
 どうでもよかった――というよりは、どちらでもよかった、と言ったべきか。
 知っていても、知っていなくても、どちらでも、私の人生に多大な影響は与えないのだろうと、そう感じていた。
「私はニビシティ出身なの。あなたは?」
 少女は快活に、そう問いかける。
「私は……」
 タウンマップを確認して、自分が住んでいた場所を探す。日本地図的に見れば、このへんだろうか。
 私は少女にタウンマップを見せながら、指差した。
「え……ここ、セキエイこうげんじゃない!」
「セキエイこうげん?」
「やっぱりあなた、レッド……じゃ無いわよね。似てるけど、何か違うし」
「ああ、はい。よく知らないですけど、どうやら違うみたいです」
 そんな、生産性の無い会話をしながら、私と少女は草むらを進んだ。
 そして突然、ポケモンは、沸いたように現れる。
「あっ、行くわよ」
「ああ、はい」
 少女は素早くモンスターボールを投げて、ポケモンをくり出した。何か、鼠のようなポケモンだった。
 私も同じように、モンスターボールを投げる。収納の仕方は、何度か行動を繰り返しているうちに覚えることが出来た。が、敵は一匹だったので、私はポケモンを繰り出したはいいが、しかし傍観に徹することにした。
「ヒノアラシ、ひのこ!」
 彼女のポケモンは、背中の火を爆発的に増加させ、焚き火の時に舞う火の粉のように、火を敵に向かって放った。草むらが燃えてしまうのでは無いかと思ったが、その心配は全く無いようである。きっとそういうものなのだろう。
「よし!」
 少女は言う。見れば野生のポケモンは、力尽きて倒れていた。死んでしまったのか、どうなのか。私にはさっぱり判別がつかなかったが、それでも悲哀であるということだけは、理解出来た。
 野生のポケモンは、突然現れただけだ。
 危害を加えるつもりは、無かったかもしれない。
 それなのに私達は、現れた生命体を、危険視する。
 動物であったり。
 宇宙人であったり。
「……すみません」
「ん?」
「やっぱり、私は一緒には行きません」
 私は自分のポケモンの手を引いて、抱き上げる。
「私は戦いを好みません。平穏無事な世界を好みます。無駄な戦いや、殺生を、好みません。すみません」
 私は言いながら、この無害なポケモンが成長して、他のポケモンと同じように凶暴化するのが、急に恐ろしくなった。
「……は? どういうこと?」
 心底理解出来ていない様子の少女。当たり前の反応だ。
「とにかく、私はポケモンを戦いの道具にしたくないので、これで失礼します。ごめんなさい」
 そして私は、少女の反論を耳に入れずに、来た道を引き返す。突然の私の豹変に、少女は呆れ返っている様子だが、そんなことはどうでもいい。私はやはり、この世界の住人には向かない人間だったのだ。
 人には向き不向きがあると、私は知っている。
 恐らく観ている分には――実際に行わない分には、こういう世界を、嫌わずにいられるかもしれないけれど。
 私には、不向きである。
 二十七年間の歳月を経て、私は理解した。
 夢が叶う、夢が叶わない。
 そういったことを、何度も見てきた。経験してきた。
 だからこそ、性格による差異というものを、よく知っている。ポケモンという生命体が、私に向かない生物だと、私はよく知っている。
「……悪いなあ、私のような人間が捕まえてしまって」
「ケー」
 彼は笑ったように見えた。そもそも、いつでも笑っているような顔なのだ。そう見えても不思議じゃない。
 私は途方に暮れる。
 家に帰りたい。
 この世界は、私には合わない。
 いつも現実から逃げたいと思ってきたけれど。
 この世界は――私には不釣合いすぎる。
 重荷すぎる。
「なあ、どうしたらいいかな」
「ケー?」
 私はポケモンに、通じない言葉を、発してみた。
 何が帰ってくるわけでもなく、ただ理解出来ないと言うように、鳴かれるだけだ。
「ケー」
 しかし私は、意志のあるようなポケモンの鳴き声を最後に――
 意識を手放した。

 ■

 飛行塔、飛行塔。
 少年は小さな夢じゃ満足出来ずに、パイロットを目指す。

 6

 例えば観覧車。
 大人になって、観覧車の意味を履き違えた人間がどれだけいることだろう。
 異性と一緒に夕焼けを眺める箱と勘違いしたのは、いつからだろう。
 頂上以外に価値は無いと思い違ったのはどうしてだろう。
 観覧車に乗り込んで、上昇して、気づけば私の少年心は、折り返してしまったのだろうか。
 頂上を、昔に通り過ぎてしまったのだろうか。
 だとしたら私は、その時の景色を眺めていない。
 だとしたら私は、その時の頂上を覚えていない。
 私の観覧車は、頂上に達する前に、退廃したのだろうか。

 ■

 夢が長引いた場合には、事故に遭った時だと、私は小さい頃に、人身事故に巻き込まれて理解していた。
 目を開けると白い天井が見える。そして身体を動かすと痛い。この経験は二度目。実に十五年ぶりの感覚となった。
 深層心理という物を、私は知っている。だけれど説明は出来ない。しかし経験したとなれば、理論だけを知っている人間よりも、詳しい人間と言えるのでは無いだろうか。
 ケーシィ。
 私が好きだったポケモン。
 レッド。
 私が憧れた主人公。
 そして、少女との旅路。小さい頃の憧れを、一挙に詰め込みすぎたのだろうか。
 忘れたままなら、思い出さずに済んだのだろうか。
 小さい頃の思い出を忘れるはずが無いと、小さい人間は思うだろう。
 しかし、大人になるにつれて、失う物は確かにあるのだ。
 小さい頃の夢を思い出せないように。
 小さい頃に遊んだゲームの物語を、忘れてしまう。
 あんなにも、簡素な世界だったのか。
 車も無く、インターネットも無く、新聞も無く、仕事も無い。
 仕事が無いだけで不安になるという、あんな世界。
 しかし子供の頃には、そのどれもが不必要なものだった。
 車なんて乗らない。インターネットよりも、友達との会話が楽しい。新聞なんかより、日々の冒険に胸を躍らせた。仕事なんかより――毎日、遊んでいたかった。
 夢と冒険だけで、心の中は満員だった。
 そのうちに、不必要なものを詰め込みすぎて、夢と冒険は、居場所を失ったのだろうか。
 だとしたら――それは、思い出すべきだったのか。
 忘れたままならば、欲しがらずに済んだというのに。
 私は誰もいない病室で、看護師を呼ぶために、ナースコールを押した。
 一体どれくらい寝ていたのだろう。
 その分を取り戻すつもりは、毛頭無かったけれど。
 もし回復に時間がかかるなら、私は家の押入れからポケットモンスターを探してもらって、入院中にもう一度、プレイしてみようと思った。
 私が夢見た、空虚な幻想を。

 ■

 観覧車、観覧車。
 少年は、一周分の感動を思い出すために、もう一度観覧車に乗り込んだ。

 0

 そして私は目を覚ます。
 長い永い眠りから覚め、遠い逖い世界から戻る。
 いつから永遠だっただろう。
 私が巻き込まれた世界は、いつ約束されただろう。
 いつから永久だっただろう。
 私が取り込まれた世界は、いつ確定されただろう。
 いつだって、世界は可変であるのに。
 いまだって、世界は可変であるのに。