____アナタハ何ヲ信ジマスカ? ________スベテヲ失ッテモ信ジラレルものガアリマスカ? ‘What Do You Believe?’ 私があいつにあったのはちょうど一年前だった そいつの頭は星形で、青い紙のようなものがぶら下がっていた すやすやと無防備に眠り込んでいたそれはピカチュウより少し小さかった 恐らく30pくらいだろう ___トクサネシティの端の方 私はそこへスケッチブックを持って毎日そこへ通っていた ホエルコ、メノクラゲ そこから見える海の水ポケモン達は私にとって凄く魅惑的だった ある日そこへいつものようにそこへ言ったら先客がいたので少し驚いた あまり人も来ないしポケモンなら尚更だ 私はそいつを初めてみた まるで 昔からそいつはいるように 景色はそれを受け入れ 一つのできすぎた絵のようにも見えた 見たことのないポケモンだ 昔来たトレーナーに図鑑を見せてもらったがそんなポケモンはいなかった なんて言うポケモンだろう 知りたかったけれどこのポケモンに聞くわけにも行かない 捕まえたかった だけど相手は眠り込んでいるのだから今捕まえたら卑怯だろう 取りあえず 私はそいつから少し離れたところでいつものようにスケッチブックを開いた 草の間から見える穏やかな寝顔 私はそいつを描こうと思った 何だか今描かない限り会えないようなきがして すうっと他の景色がぼやける 写るのは黄色いそれとその周りの草むら 鉛筆を取り出して簡単な形を取る かりかりと規則的な鉛筆の音 そのポケモンは起きる気配もない 私は絵を黙々と描いていた やっと書き終わる頃には 頭の上にあった太陽も西の空へと傾き東の空には満月が覗いていた その日は7月7日だった いろんな家から七夕の笹が見えていた 潮風が私の方を撫でていく 星が輝き初めてもそのポケモンは目を覚まさなかった もしかして息がないのでは 妙な心配に駆られ少し近づいた 規則正しい寝息が聞こえた 良かった生きていた 妙なところでホッとしてしまった それにしてもなんて長い間ねむっているのだ 妙なところで感心してしまう ケーシィにも似たところがあるな こいつも一日八時間以上寝ているのだろうか? ふとその頭に着いている青い紙のようなものに目が留まった あたかもそれは短冊のようだった そこに願い事を描きたいという衝動に一瞬駆られたが どうにか自制することができた その代わり・・といのはは何だが私は歌を歌った どうせ、こんなに長い間眠っているのだから私が歌ったくらいでは目を覚まさないだろう 「笹の葉さらさら」 七夕の歌だ 私はこの歌が好きなのかもしれない 純粋な子ども達が願い事を叶えてもらうために 短冊に願い事を書くというのが羨ましいからかもしれない 「お星様キラキラ〜金銀光る〜♪」 歌を歌うとすっきりした気持ちになった 私はもう一度そのポケモンを見て家に帰ろうとした ・・・・ 私はスケッチブックを取り落とした その黄色いポケモンは 私の方を眠そうに半分閉じたような漆黒の瞳で覗き込んでいた 綺麗な瞳だった どんな黒曜石よりも美しい瞳だった 『あなたはだあれ?』 声がした 声がした、というのは正確かどうかは分からない 頭に響いてきた、というのが正確な表現だろう 「私?」 間抜けなことを聞いてしまったと悔やんだ ここにいるのはポケモンと私だけなのだ そのポケモンもさも当然だ、という風に首を縦に振った 「私の名前はね、ユウって言うの」 『ユウ?』 そのポケモンはオウム返しに聞いてきた 「ウン」と答えるとそのポケモンは楽しそうに私の名前を連呼した 「あなたのお名前は?」 私が聞くとそのポケモンは暫し考えるように頭をひねると 『ぼくはね、ジラーチ』 そう答えた それがこのポケモンの種類のことを指すのか名前を指すのかと聞くと ジラーチは「種族名」と答えた 本人(?)曰く名前はないらしい 種族名で呼ぶのはあまり好きではない 私は彼に何と呼べばいいかと聞いた 彼は少し思案し「ナナ」と答えた 私はそれ以来ナナとよく遊ぶようになった ポケモンの知識がなかった私は彼のことについて知りたいことが沢山あったが 知らぬ存ぜぬで通していた 結局は私もそれで言いと思うようになった それでもナナの種族は相当貴重・・・・もとい希少価値のあるポケモンだというのは分かった 時折来るトレーナーからもそういうポケモンの話を聞いたことがなかった でも私はそんなことはどうでも良かった ナナはナナで 私は私 一つ一つの生命 どっちが貴重かだなんて神にさえ決めることの出来ないたった一つの生命 ねぇ、ナナ あなたはいつまでも私の友達でいてくれるよね?? だけど私達の楽しい日々にもピリオドが打たれる日が来た マグマ団、だったと思う そいつらがナナを奪いに来た 「みんなが喜ぶんだぞ」 「ポケモンのためだ」等と言いながら 私とナナは逃げた 怖かった 悲しかった そいつらは言った ナナの種族、ジラーチ 別名、 『願い事ポケモン』と ナナの頭にある短冊に願い事を書くと願いが叶うらしい 何で、なんで、ナンデ・・・ ナナにそんな能力があることを私は知らなかった 否知らなくて良かった 私は叫んだ 「それでもなんでナナを狙うのよ!?」と 彼らに言わせれば、ナナ__つまりはジラーチ__ それは伝説のポケモンであって捕まえるどころか見ることもままならないと・・・ ずいぶん昔からお伽噺に出てくるようなミュウやセレビィのような存在らしかった 彼らは言う 「そいつを使って陸を広げるのだ」と 信じられない 耳を疑った 彼らは海を全て陸に変えるつもりなのだ 母なる海を 全ての源を 正気の沙汰じゃないとさえも思った そんなことはさせない 本気で思った 私達の日常にあまりにも関わりすぎている海 それがなくなったら皆はどう思うのだろうか 必死で逃げて浅瀬の洞穴の中に隠れた 「ねぇ、ナナ」 私はナナを抱いたままつぶやく 「海がなくなったら、みんな悲しむよね?」 『・・・・・』 「どうすればあいつらに太刀打ちできるんだろ」 別にナナに答えてほしかったわけではなかったのだと思う 胸の中に巣くう闇をどうにかして追い払いたいが故にしゃべっている気がした 不意の多数の足音によって洞穴の静寂は破られた 「おい、ガキ!  そいつを寄こせ!!」 私はナナを抱き上げるとそのまま走った 相手がポケモンを出すのが分かった 「グラエナ、噛みつく!」 そんな声が聞こえた 次の瞬間足に鈍い痛みがやってき私は転がった 足からは真紅の液体が流れていた 目の前には牙を紅くぬらしたグラエナが一匹 「グラエナ、そいつを奪え!」 マグマ団が命令したのが分かった ナナが奪われる それだけはイヤだった だが、躰は動かなかった ナナは倒れた私の躰からするりと抜け出した グラエナに奪われたわけではなかった ナナは自ずから飛翔し洞穴の上層部へと浮かんでいた ナナが何かを祈るのが見えた なんだろう 次の瞬間にはたくさんの光がマグマ団の方へと降り注いでいた __破滅の願い 後々にそういう技だと言うことを知人に教えてもらった あのときのナナの顔はどことなく神々しく美しく見えた マグマ団をナナが懲らしめた後私達は浅瀬の洞穴を出た 怪我の方はそう酷くなかったらしく 暫くするといつものように歩けるようになった あれ以来、私はナナにはあっていない 不意に姿を消してしまった あたかも昔から存在しなかったように だけど私は信じている ナナにはいつかまた会えるだろう 姿を消す前にそう約束したのだから 「また会おうね」と                  The End