ハロウィンでの、お馴染みの文句。
 即ち、『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ』である。

「トリック・オア・トリート♪」

 10月の末、元気にそう言い放つ美少女の名は、ブルー。

「ん」

 そっけなく、彼女の差し出した手の平にキャンディを乗せる少年の名は、レッド。

「…………」

「…………」

 でもって両者、しばし無言で向き合い続ける。
 ただ言える事は、ブルーの表情がなんとも面白くなさそうという点だ。

「……少しは驚くとか、たじろぐとか、何かいい反応示しなさいよ」

「だって、もう慣れたし」

 理不尽な不平を口にするブルーに対して、レッドは極めて冷静に返した。
 それは、2人が出会って5年目の秋のことだったとか。

 

 

 

トリック&トリート

 

 

 

 色々トラブル続きだったレッドとブルーだが、さしあたり今現在は平和そのもの。
 16歳になった2人は時々、ごく自然と互いの家へ遊びに行き来するようになっていた。
 それは誰の目から見ても、カップルと呼ぶに相応しい間柄だっただろう。

「…………」

 口を尖らせながらも、ブルーは受け取ったキャンディを口に含んだ。
 5年も経てば、彼女の行動もレッドには手に取るように分かる。
 そして同時に、ブルーの趣味も自然と理解をしていた。
 人の反応を見て楽しむ性癖があるという、困った趣味についてを……。

「せっかく、レッドが何も用意していなかったら、何かイタズラしてやろうと思ったのに」

「用意してても、イタズラすりゃいいじゃんか」

 ソファに座り、寝そべって漫画を読みながらレッドは言った。

「あ、そうよね。あったまい〜♪」

 赤いミニスカートをわずかにひらつかせて、ブルーは元気良く振り返る。

「ていうか、指摘しなくても普通にする気だったろ?(汗)」

「じゃ、レッドも覚悟してるって事よね」

「何だよ、覚悟って……」

 レッドがブルーの方を振り向いた、その瞬間。

「んっ……!?」

 直後、レッドの口は塞がれる。
 ブルーが彼に抱きつき、その豊かで大きなの胸をわざと押し付けながら。

「っ!!」

 一瞬の間を置いて、ブルーが口付けしてきた事を理解するレッド。
 あまりに積極的でありながら、あまりにしおらしい態度で唇を重ねる、愛らしい少女。
 キスの味は、本当の意味で甘い……。
 何で本当に甘い味がしたのかは、前後の文章からの想像に任せます(オイ)。

「……ブルー……」

 気づけば、2人の顔は離れ合っていた。
 思わずレッドは、先ほどまでブルーと触れ合っていた、甘くなった自分の口を手で抑える。

「男がそんな仕草したって、萌えないわよ?」

「うるさい……」

 確かに、そういう仕草は本来、女の子側がするほうが……以下略(ぇ)。
 レッドは、しばし呆然とし続ける。

「……怒った?」

 その時間があまりに長かったので、ブルーは気になって尋ねてみた。

「……トリック・オア・トリート」

「え?」

 今度その言葉を発したのは、レッドの方だった。

「ブルーは、何をくれるんだ?」

「えっ! そ……それは、えーと……」

 予想外の反撃に、ブルーは少し慌てた様子を見せる。

「あ。ほ、ほら。今あげたじゃない♪」

 開き直り、クスっと笑いながら口元に手を当て、その意味を行動で示す彼女。
 だが、レッドの反撃はそれでは終わらない。

「そう、確かに貰った。けどブルーだって、俺がキャンディあげてもイタズラしたよな?」

「……え?」

 直後、ブルーの視界は一転する。
 レッドが彼女の腕を引っ張り、ソファの上に倒しこんだのだ。

「レ、レッド……!?」

「だから、俺もイタズラしてやる」

「……っ!」

 そして再び、2人の唇は重なり合った。
 ただし今回の場合、レッドの方から……であるが。

 

 口の中のキャンディは、すでに溶け切っていた……。

 

 続く

 

 あ、甘いな……この小説。
 ていうか裏とかじゃなくてよかったのか、これ(汗)。
 もう、いいや(オイ)。
 特にどんな話にしようとかは考えず、思うままにキーボード叩いてたらこうなりました。−−;
 何だかんだ言って、楽しかったです(ぇ)。