「わぁ〜♪ 綺麗ですね」
今年の12月24日は、町に素敵な雪が振りました。
トキワの森にも雪が積もり、木々の緑色が白く染められて行きます。
そして、そんな中……。
「ピカ、こっちだ……わっ、ニョロ。やったな!?」
「! レッドさん」
積もっていく雪を使って、早速ポケモン達と雪合戦をするレッドさんがいました。
レッドさんは、こんなに寒い中でもお構いなしです。
元気なところが、レッドさんらしいと言えばらしいんですけど。
「おーい、イエロー!」
と、レッドさんが僕の名を呼びます。
「一緒にやらないか?」
「あっ……はい」
僕は一瞬ためらったものの、頷いて答えました。
レッドさんは、本当に元気です。
けど、その元気さが、ときどき僕の心に不安を呼び込みます……。
白雪の聖夜
「ふぅ〜。遊んだ、遊んだ」
「ピカァっ♪」
気づいたら、もう日が暮れてました。
今夜はホワイトクリスマス。
とてもロマンチックな夜になりそうです。
……レッドさんにとっては、あんまり関係ないのかな?
「…………」
僕は視線を横にして、隣を歩くレッドさんの顔色を伺いました。
レッドさんは、全く気づく様子もなく、ずんずん進んで行きます。
「…………」
僕が女の子だとレッドさんに知られたのは、出会ってから1年以上も経ってから。
……ううん、ホントはもっと前に、レッドさんには森で助けてもらった事があります。
でも、やっぱり気づいてないんでしょうか?
けれど、ただ1つ嬉しかったのは……。
レッドさんが、僕との約束(その時の相手が僕とは気づいてないかもだけど)を覚えていてくれた事。
「ねぇ、レッドさん」
「ん?」
思わず僕は、レッドさんに声をかけていました。
特に、何か用がある訳でもないのに……自然と声が出てしまってたんです。
「……な、何でもないです」
「ん、そうか?」
何故だか僕は急に恥ずかしくなって、顔を真っ赤にしてしまいました。
自分でも、何をやってるのか分かりません……。
ただレッドさんは、僕が女の子だと知った後も、今までと変わらず接してくれています。
それは凄くレッドさんらしいと思いますし、僕もそれで構わないと思ってます。
……いや、そう思ってました。
なのに僕は、それ以上の目で見てもらいたいという勝手な欲求を持ってる事に、気づいてしまったんです。
「僕……わがままですね」
「え、何で?」
「いえ、その……」
「……?」
不自然な会話になり、そこで途切れた言葉が次に続く事はありませんでした。
本当に、自分でも何をやっているのかと思います。
せっかく今日は、素敵な雪が降るホワイトクリスマスなのに。
これでレッドさんとの、今日の会話が終わりだなんて……。
……寂しい……。
「なぁ、イエロー」
「ふぇっ!?」
唐突に声をかけられて、僕は気持ちの入らない返事をしてしまいました。
後になってから、自分のおかしな声の恥ずかしさを自覚して、また顔を赤くしてしまいます。
「ちょっと、来てくれないか?」
「は、はい……」
「よし、行こう!」
それだけ言って、レッドさんは僕を連れてどこかへ向かいます。
僕は正直、どこへ行くのでもいいと思いました。
レッドさんと一緒なら……本当に、どこへでも……。
「……トキワジム……ですか?」
さすがに、ちょっと意外でした。
すっかり辺りは暗くなり、近くの電灯が積もった雪を幻想的に輝かせています。
でも……ジムに来て、何かあるんでしょうか?
「これは、一番最初にイエローに見てほしかったからな」
「え……?」
ジムの入口部分に掘られた文字を見て、僕は目を疑いました。
そこには、ハッキリと書かれていたんです。
『トキワジムリーダー レッド』……と。
「昨日、ジムリーダー就任試験の結果が届いてな」
「……!」
「これで、昔の約束が果たせたぜ。昔……トキワの森で、イエローと初めて出会った頃の約束がな」
「っ!? 気づいて……たんですか……?」
レッドさんは、ただ僕に笑顔を向けるだけでした。
けれども僕にとっては、これは最高のクリスマスプレゼント……。
白い雪が積もった聖夜に……思わず僕は、レッドさんの胸に飛び込んでしまいました。
慌てふためくレッドさんを、私は心地よく抱きしめたんです。
いつもの僕なら、とても恥ずかしくてできない行動……。
暖かい勇気をくれるのは、いつもあなたなんですよ……レッドさん。
終わり
今までレブルを沢山書いてきましたが、それとはまた別世界のレッドと認識してください。
決して浮気じゃないですよ?(ぁ)
レイエを書いたのは、初めてでした。
けど、何故かぼんやりと話が浮かんだので……せっかくだから書く事に(何)。
普段、一人称形式の小説って難しい傾向が強いんですが、今回のイエロー語りはすんなりできましたね。
イエローみたいに気持ちを表に出しにくいキャラは、かえって裏側を書き込んだ方が書き易いのかも。