本作は、ずーっと以前に書いた某短編小説の続編的内容です。
しかし、以前の話を見ていなくても本作単体で楽しむ事も十分可能なので、あんまし気にしないでください。
以前書いた某短編小説とは、「バレンタインデー(コトキver)」です。
どんぐらい前だったかな……2年かそこら?(オイ)
あれ書いた時、当サイト以外でその小説を掲載してくださった方からのコメントに、「3月の続編に期待します」という一文がありました。
……まぁぶっちゃけ、続編なんて考えてなかった訳でして(駄)。
結局、あれから書いてませんでした。
しかし(推定)2年が経った今、ついにその続編を書く事にしました。
それが、本作という訳です。
まぁ前回の話を見た人は、あまりの意味不明かつ支離滅裂な話に困惑した事でしょう。
いっそ前回の話を見ないまま今作だけ見た方が、意味不明度数(新語?)が少なくて済むかも?
ともあれ、宜しければどうぞ。
純白のBOX
純白のボックスを片手に持ち、少年は目印となった木の前で待っていた。
彼が待つ相手とは、今から丁度1ヶ月前にチョコレートをくれた、とある少女である。
「コトキさ〜ん♪」
不意に名を呼ばれ、少年は振り向いた。
少女は手を振りながら走って来るが、その容姿は結構かわいい。
そして少年を驚かしたのは、彼女の服装である。
何か……思いっきり気合いを入れてめかしこんで来たというか、そんな雰囲気が伺えた。
「はぁ……ちょっと遅れそうになったけど、時間には間に合ったみたいね。せっかくコトキさんがホワイトデーにデートのお誘いをしてくれたのに、遅刻しちゃ悪いし」
「オイコラ。誰もデートだとは言ってないぞ」
「まっ、いいじゃない♪」
それを、「いいじゃない」で済ますのも凄いと思うのだが……。
少女がいきなり腕を組ませて来たが、もうコトキはほっとく事にした。
無用な反抗は、自分が疲れるだけである。
「それはそうと、セレナ。一応、先月のバレンタインにチョコ貰ったから、コレお返しな」
コトキは持ってた純白の箱を、ごく自然と手渡した。
「ありがと。デートに誘ってもらった上に、ホワイトデーのお返しまで貰えちゃうなんて。今日は最高の1日だわ」
というより、そもそもコトキが彼女を呼び出した理由は、ホワイトデーとしてのお返しを渡す為だった。
先刻コトキが述べた通り、そもそもデートという単語を彼は1度も用いていない。
「……セレナって、いつもそんなノリなんだな。初めて会ってから1ヶ月経つけど、毎度テンション高いし」
「そうかしら。明るめの性格だって事は、自分でも自覚してるけどね〜」
初めて会って1ヶ月……そう、コトキがセレナに出会ったのは、バレンタインデーだった。
コトキもポケモントレーナーで、近場でバトルの特訓をしている事がある。
そんな時、突然現れたのがセレナ。
彼女曰く、コトキに一目惚れをしたから、チョコをあげるんだとか何とかで……。
「けど、1つだけセレナに聞きたい」
「ん、なぁに?」
「お前……いつから、俺を知ってるんだ?」
さっき説明した通り、セレナが現れたのは本当に突然だった。
恐らく彼女は、日々ポケモンバトルの特訓をしているコトキの姿を、こっそり見ていたのだろう。
少なくとも、コトキはそう解釈している。
となると、いつからコトキを見ていたのか……それは当然、彼が抱く疑問だった。
「…………。知ってたわよ、ずーっと前から」
「ずーっと前? それって、いつだよ」
「ずーっと前は、ずーっと前よ」
「……答えになってね〜し」
呆れた様子で、コトキは言った。
するとセレナは、やや声のトーンを下げて話し始める。
「コトキさんは……自分の事を、全て分かっているの?」
「……何?」
「よく言うでしょ? 『自分の事は自分が一番分かる』って。それって、真実なのかしら? 人は、その身に起こった全てを記憶している訳じゃない。何かは記憶に残り、何かは忘れ、それを無意識の内に取捨選択していくものなのよ」
「…………」
「コトキさんがホワイトデーとしてくれた、この純白の箱。本当に綺麗だし、コトキさんがこれをくれた事は凄く嬉しい。けど、私は白という色が少し恐い。何故なら、それは何も描かれていない色だから……何かがすっぽり抜け落ちたような、何かを忘れてしまったような色だから……」
「……セレナ、俺っ……」
「コトキさんは、自分が知らないと思う事を、本当に知らないって断言できる? 知らなかったって、決め付ける事ができる?」
セレナの言葉は、不思議とコトキの心に響く何かを持っていた。
憶測……あくまで、憶測だが。
自分もまた、セレナの事を遠い昔に知っていたのではないだろうか。
何かのキッカケで離れ離れになり、やがて自分がそれを忘れてしまっただけではないのだろうか。
コトキの想いは、静かに渦巻いてゆく。
「…………」
「……でも、いいの」
唐突に、セレナの声のトーンが元に戻った。
「私は、今が幸せならそれでいい。……うん、それで大丈夫♪」
「セレナ……」
「行こっ、コトキさん。今日のデートは、ゆっくり付き合ってもらうんだからね!」
コトキの腕を、セレナはぐいぐい引っ張ってゆく。
まるでつられるような足取りで、コトキは彼女と歩いて行くのだった。
……もし本当に、さっきの憶測が真実ならば。
自分はいずれ、思い出せるのだろうか。
抜け落ちた色を、取り戻せるのだろうか。
コトキの想いの渦は終息に向かいつつも、なおも根強く回り続けていた。
終わり
今作だけ見ても、意味不明度数は変わらなかったかも知れない(凹)。
後書きとして述べる事が特に見当たらないんですが(ぇ)、この2人は自分のオリトレ中でもかなり好きなキャラクター達です。
いずれアクジェネにも出演予定。
その時は、改めて宜しくお願いします。