第一章「悪の組織登場」
(全28話の総集編)

 

[前書き]
 ちなみにこの小説書いたのはルビサファ発売よりもっと前であり、当然スナッチなんて概念が存在しなかった頃の話です。普通にモンスターボールで他人のポケモンを捕まえ一時的に行動不能にしたりしますが(実際に奪ってはいない)、その辺はご愛敬という事で(ぇ)。
 後、無駄にキャラクターが多過ぎて分かりづらいのも申し訳ありません……何分、昔書いたものなので(凹)。

 

 

 

・動き出す悪

 

 赤いニドラン♀「赤ニド」を、ついにゲットしたムキル。
 そんな彼と双子の妹ユウは、かつて少しの間だけポケモンチャンピオンになったという青年、グリーンと出会う。
 続いてマサラジムのリーダーを名乗る、ドルという少年も登場。

 グリーンによれば、現在カントージムは12あり、内8箇所でバッジを貰えばポケモンリーグに行けるという。
 マサラジムも、新たに作られたジムの1つだった。

 

 彼等と別れた後……。
 ムキルとユウはアカデミーの者に見つかるのを避け、トキワの森で特訓をしていた。

 が、あっけなくクラスメートのラセツ、ユウタ、ミルトに見つかってしまう……。
 アカデミーで仮免試験を合格していないのにポケモンを持った事がばらされれば、退学にされてしまうのだ。

「ムキル。対戦で俺に勝てたら、お前のニドラン♀の事は秘密にしておいてやる。だが、俺が勝ったら……分かるよな。」

 そう言ってきたのはラセツ。
 あのアカデミー長とその息子リキヤに、どうしても負けたまま引き下がりたくないムキルは、退学を避ける為にラセツへバトルを挑む事にする。

 同時にユウとミルトも、ついで(?)にバトルをする事に。
 ミルトのマリルリにユウはムウマで応戦するが、虫と幽霊が大嫌いなミルトは大混乱。
 森の虫達も出現した事もあり、結局ユウがミルトに勝利した。

「あ〜あ、負けちゃったぁ。ユウちゃん、強いわね〜♪」

「え!? そ、そう? そうかなぁ……えへへ♪」

「……絶対、何かが違う……。」

 見ていたユウタがそのように思ったものの、あえて触れない事に。

 一方でムキルの赤ニドは、ラセツのストライクを相手に善戦するも結局敗れてしまう。
 このままポケモンを持った事がアカデミーに伝えられ、退学をまぬがれないか……と思った時。

「俺達、トキワの森で道に迷ってたんだ。君達は、トキワシティの子達か?」

 そう言って、17歳と13歳の兄弟が現れた。
 弟ジンによると、何でも兄フェイがいつも読書しながら歩くクセがあり、そのおかげで森に迷ったんだとか。
 『正義の旅人兄弟』と名乗る意味不明な彼等がトキワに向かう目的は、次のようなものだった。

「俺達は、とある悪の組織を追って旅をしているんだ。最近この辺に、その連中が現れたと言う情報をキャッチしてな。とりあえず、近くの町を目指していたって訳さ。」

「そうそう。兄貴と俺が、この世を救うんだぜ♪」

「こら、ジン。俺達は、世のため人のために仕事をしてるんだ。自慢っぽく言うな!」

 ゴン!
 ……と、フェイの本がジンの頭にぶつけられた。しかも角で。
 もちろんムキル達にとって、彼等の行動がサッパリ分からなかったのは言うまでもない。

 

 いつもムキルのクラスメート3人組として、大体一緒に登場するラセツ、ユウタ、ミルトだったが……。
 その時、ユウタは1人トキワの森に残り、とある人物を待っていた。

「……! 来たか、ミドリ。」

「えへへ。鋭いねぇ、ユウタ君。」

 現れたのは、1人の女の子だった。
 更に彼等の話は、こう続けられる。

「ところで、ユウタ君。何か変わった事があったの?」

「何か、変な連中がやってきたぜ。悪の組織を追って、旅をしてるとか言う兄弟……。どうする、団長に連絡するか?」

「でも〜、実際に表立って動き出すのは、まだまだ先でしょ? その間に、いなくなっちゃうんじゃないの? その人達。」

 彼等は、何かしらの計画を企てているらしい。
 ユウタ達のリーダーとなる存在が戻り次第、作戦を実行するという話だった。

「ユウタ君もその間に、アカデミーの次の卒業試験日が来ちゃうのよね? 折角だから、卒業しちゃえば〜?」

「バカ言え、ミドリ。俺はアカデミーを卒業する為に忍び込んだんじゃねぇぞ。俺はあくまで、調査の為にスパイとしてアカデミーに入学したんだからな。俺達、GR団(グレートロケット団)の目的を達成する為によぉ!」

 

 

 

・アカデミーとの戦い

 

 フェイとジンの謎な兄弟をトキワシティへ案内する途中、アカデミー三強の1人でムキルのクラスメートでもある、レネレスが現れた。
 彼の話によれば、何とムキルが特別に仮免取得を認められたのだという。

 これは、落ちこぼれのムキルを追い出そうと企むアカデミー長が立てた、一度トレーナーにさせてからの方が絶望に追いやり易いだろうという策略だった。
 しかし息子のリキヤは、その程度でムキルが自らアカデミーをやめていくのか疑問に思う。
 そこへ、アカデミー三強の1人に数えられるシホが、アカデミー長室に訪れた。

「……なんや、一体? うちをこんな所に、呼び出しよって。」

「君に話があるというのは、他でもない。君を、副アカデミー長に任命したいのだ。」

「……嫌や!」

 シホは即答した。
 アカデミー長は、アカデミー三強の1人という実力を持ち、またその中で最年長であるシホこそ適任だと説得。
 更に、こう続けた事で、シホの表情が一変する。

「もし君が副アカデミー長としての仕事を成し遂げられれば、特別に卒業試験無しで卒業させてやろうではないか。」

「な、なんやて!?」

 卒業試験は当然、仮免試験を圧倒的に上回る難易度のものであり、シホ程の実力者ですら合格は難関。
 だが、卒業しない限りはいずれアカデミーに貰った最初のポケモンを返さねばならず、誰でも卒業したいと思うのは当然だった。

「君はもう、充分に力をつけてる。君程の腕前のトレーナーなら、卒業させても何ら問題は無いだろう。それに副アカデミー長といっても、そこまで難しい仕事でも無いし、やる事が大量にあるわけでもない。実に楽な仕事だ。さぁ、どうかな……?」

 結局アカデミー長の企み通り、シホは副アカデミー長の役割を担う事になってしまう。

 

 一方、新たな仮免取得者として、ムキルとユウには(人間の)パートナーが決められた。
 アカデミーでは1人でのバトルの他に、2人で戦うタッグバトルの演習も行われるからだ。
 ユウのパートナーになったのは、あの明るい関西弁少女シホであり、2人は姉妹のように仲良くなる。
 一方ムキルのパートナーは、ぼぅっとした様子のお姉さんだった。

「俺は、ムキルって言います。」

「…………?」

「??? あ、あの?」

「…………。あ、そっか。私、パートナーが来るのを待っていたんだったわ。……あぁ、あなたが新しいパートナーね。私はミズキ。よろしく♪」

 ミズキは、どこかとぼけてる様子の少女だった。
 少々ガクっとするムキルだったが、優しそうなミズキはムキルに1つのボールを手渡す。
 仮免取得者には1匹ポケモンが与えられ(卒業できなければ返さなくてはならないが)、ミズキはムキルのポケモンを持ってきてくれたのだという。

「本来なら、何匹かのポケモンの中から選べるのだけれど……。あなただったら絶対、この子を選ぶんじゃないかと思って、私が代わりに預かってきたのよ。はい。」

「……!? ハ、ハネッコ! お前、あの時のハネッコじゃねぇか!!」

 どうやらムキルの序章での行動がウワサになってたらしく、ミズキはムキルの事をよく知っていたようだ。
 こうしてムキルは、一度はアカデミーに返さざるを得なかったハネッコと、再び一緒の仲間になれたのである。
 ……が、そこへ思いがけない人物が登場。

「な゛、リキヤ!!?」

「……ふっ。また会ったね、ムキル君。邪魔するよ。」

 やってきたのは、アカデミー三強の1人にして、アカデミー長の息子。あの、リキヤであった。

「今まで黙っていたけど、はっきり言おう。君はアカデミーを出て、去って行くべきだ。君みたいな落ちこぼれが卒業できるほど、当アカデミーは甘くない。」

「もう1回言ってみろ、このやろ!!」

「ム、ムキル君!?」

 慌ててミズキはムキルを手で止めようとするが、ムキルはその手を振り払って、リキヤに突っ込む。
 だが、リキヤの繰り出すゴーリキーの強さには、ムキルは歯がたたなかった……。

 

 リキヤに敗れたムキルだが、改めてアカデミー卒業を目指し、ミズキと共に特訓に励む事にする。
 だが、演習バトルでの結果は散々な物だった。
 それでもムキルは、少しずつでも実力を身につけていく。

 一方、ユウのパートナーになったシホは、ある悩みを抱えていた。
 彼女は過去にいじめを受けていた事があり、今でこそ明るい性格だが、仲の良い人が離れていく事を極度に恐れる。
 しかし副アカデミー長になり、卒業試験なしに卒業できてしまう事が、頑張って卒業試験に臨もうとするユウや他のトレーナーから見て良く思われないのではないかと危惧していたのだ。

 

 副アカデミー長の任を断らなかった事に後悔するシホ。
 そんな折、授業中にアカデミー長が直々に姿を現し、ある事を生徒一同に告げた。

「今回のバトルは、ある重要な意味を持っておる。それは……このバトルが、卒業試験の予選を兼ねているという事だ!」

 抜き打ちの予選に、一同はみな戸惑う。
 聞けば、今回の予選は参加が自由。
 勝利しなければ、当然卒業試験は受けられない。
 そして予め予選を辞退するならまだいいが、もし予選に参加し負けた場合、仮免許が剥奪されるというのだ。

 予選を受ける決意をしたムキル達だが、なんと試合はタッグバトルでムキル・ミズキvsユウ・シホとなってしまう。

「あ、ここにいたんですか。副アカデミー長さん。」

 わざとらしく、そこでシホに声をかけてきたのはリキヤだった。

「副アカデミー長さんは約束通り、無条件卒業だからね。負けても関係無いですよ。」

「!!?」

「まぁそう言うわけで、適当にやる程度でいいですから。じゃ、ほどほどに頑張って下さい。どうせ負けても、シホさんは合格だし。」

 初めて聞く事実に、ムキルとユウの兄妹は戸惑う。
 だがシホにとって、仲良くなったユウの卒業試験の受験資格、そして仮免剥奪の有無がかかるこのバトルを、適当になんてやれる訳がない。
 ユウに裏切られたと思われる事を恐れたシホは、リキヤの目論見通りに、いつも以上の激しさでムキルに攻撃をしかけてしまった。

「悪いけど、容赦できへんのや。覚悟しいや!!」

 戸惑うユウをよそに、アカデミー三強の1人シホの猛攻がムキルとミズキを追い詰める。
 ユウもシホの気持ちを受け取り、タッグバトルに参加。
 激しい攻撃にさらされるムキルとミズキだが、どうにかギリギリで耐えしのいでいた。
 だが……ピカチュウの電撃を無理に使わせ過ぎるという、普段のシホにはあらぬミスで状況は逆転。

「……ピ、ピカ君!! もう1回、頼むわ! 電撃を放つんや! ほら、10万ボルトや! 早く! ……お願い……やから……!!」

「シホさん、もういいよ。私の為なのは嬉しいけど、ピカチュウがかわいそうよ。」

「……落ちついて……普段通りに……やれば……!! ほんま……ほんまに……ごめん……。許してや……!!」

 シホにここまでやらせたのは、全てリキヤとアカデミー長の策略。
 バトル中にそれを知ったムキルは、リキヤを睨む。

「さんざん汚い手を使った挙句に、シホさんの弱みまで利用しやがって……。俺を潰してぇなら、回りくどい事せずに俺を狙いやがれ、リキヤ!!」

「……ふん、いいだろう。」

 かくして、そのままムキルはリキヤとの再戦に臨む。
 だがアカデミー三強の1人たるリキヤの力は凄まじく、彼の繰り出したゴーリキーに押されていってしまった。
 ボコボコにされてしまうムキルの赤ニドだったが、リキヤの卑怯な手段を逆利用して反撃に出る。
 残りわずかな体力でもムキルの意志をしっかり受けて、ついに赤ニドはゴーリキーを撃破。

「な゛……な゛……あ゛ぁ……!?」

「ハァッ……ハァッ……!! ど、どうだ……リキヤ……アカデミー長……ざまぁみやがれ……!」

 戦いを制したムキルのおかげで、負けた者の仮免剥奪もやめさせる事ができたのだった。

 

 

 

・グレートロケット団(GR団)動き出す!

 

 ついに卒業試験の日がやってきた。
 が、そこへ招かれざる敵が襲来する事を、ムキル達は知る由もなかった。

 現れたのは、よく分からん怪しい仮面をつけた4人。
 GR団員1号〜4号と名乗る彼等は、試験中のミズキとアカデミー長を倒し、アカデミーのポケモンを奪い去る。

 ムキル、ユウ、シホの前にも、ミユキと名乗るGR草森団のメンバーが出現。
 それでもガンテツ流スピードボールで、ミユキのリザードをとらえ動きを止める事に成功するムキル。
 だが、なんとムキルの相棒である赤ニドや、シホのポケモン等が奪い取られてしまう。
 更にはGR団員1号〜4号も現れ、ユウがさらわれてしまった。

「ゴースト♂。こいつらを少し、黙らせろ。」

 GR団員1号だけが1人残り、ムキル達に襲いかかる。
 しかしムキルが赤ニドの攻撃で仮面を割ると、そこから意外な素顔が現れた。

「あんた、確かムキル君のクラスメートやないか!」

 シホの言う通り、GR団員1号はムキルのクラスメートの1人。
 よくラセツやミルトと共に3人組で行動している、あのユウタだった。

「俺は見ての通り、GR団の構成要員だ。アカデミーに初心者のフリをして入学したのも、スパイの為。このアカデミーが仮免許取得者に渡す用に持っているポケモンは、前々から目をつけていたからな。」

 アカデミーのポケモンを奪い取るのが、GR団の目的だったらしい。
 ユウタも撤退し、ムキルはミズキを助け、マサラジムリーダーのドルとも合流。
 ドルもまたマサラジムで、ポケモンを奪われたのだという。
 かくしてムキル達は、奪われたポケモンを取り戻すべくGR団を追いかけるのだった。

 

 GR団員2号〜4号は、先にアジトに帰る。
 更にGR団の『協力者』なる少女が現れ、その少女もアジトに戻っていった。

「リリ〜? どこに飛ばされたの〜?」

 GR団員1号ことユウタは、仲間のミドリ、ミユキと合流して森で待機していた。
 ところがこの声と共に現れたのは、クラスメートのミルト、そして後からラセツとレネレスが登場。
 しかしユウタは、すでにGR団としての本性を表した後なのである。

「あいにくだったな、特にラセツとミルト! お前達とは今まで3人組だか何だかで仲間みたいにふるまって来たが、俺はGR団の一味なのさ。」

「あはは。ユウタ君、変なカッコ〜♪」

「うるさい、ミルト(怒)!! とにかく俺達は、GR草森団だ。お前達のポケモンも奪って、GR団の為に使ってやるぜ!」

 こうしてトキワの森での戦いは、ミルトvsミドリ、ラセツvsミユキに分かれる。
 更にアカデミー三強の1人レネレスはユウタとの戦闘を開始するが、アカデミーの時には見せなかったユウタの真の力が発揮された。

「『悪魔の森』、始動!!」

 自分達の周囲の木々が異様な形に変化し、煙のような花粉の攻撃がレネレスのポケモンを苦しめる。

「これが、俺のナワバリの力だ。『悪魔の森』から放出される『嫌な花粉』は、お前のポケモンの体力を削り、更に動きを抑制させるんだ。」

「(『悪魔の森』の秘密を暴かない限り……状況は好転しないな……。)」

 ユウタの強力な攻撃に苦戦するレネレス。
 だが、ついにユウタのフシギバナが悪魔の森を作っている事を発見。

「ちっ、バレたか……!」

「しかし……周囲の植物に……ここまで多大な影響を与えるとは……。」

 ユウタのポケモンの力に驚愕するレネレスではあったが、最後にはどうにか勝利する事ができた。
 しかしミルトはミドリと引き分け、ラセツはミユキに敗れていた。
 レネレスもユウタとの戦いでほとんど戦力を消耗し尽くしており、結局3人はGR団に捕らえられて繩で縛られてしまう。

「いた! ……もう逃がさへんで!」

 ところが、そんな所へシホがやってくる。
 彼女はユウと奪われたポケモンを追って、ムキル達より一足先に追いかけてきていたのだ。
 必然的にシホvsミユキの戦いになるが、シホは手元に残っていたポケモンでミユキを撃破。
 倒された彼女は、アジトまで撤退していく事に。

「あ゛―!! ちょ……待ち〜な!! 逃がさへんで、追跡や!!」

 シホは他のものには目もくれず、ミユキを追いかけた。
 結果、レネレス達はほったらかしに……。

「行ってしまった……。」

「頑張ってくださいね〜♪」

「って、そうじゃなくて、縄を解いてくれー!!」

 レネレス、ミルト、ラセツの順で、上のような言葉を述べるしかなかった。

 

 

 

・クローンの運命

 

 ムキル達はフェイとジンの兄弟とも合流し、GR草森団のアジトに潜入。
 そこでGR団の『協力者』だという少女リクに遭遇するが、一応ムキルの赤ニドも含め、全員が自分達のポケモンだけは取り戻す。
 更にGR団の団長と名乗る男モリノが出現するも、想像とは違いおっとりそうな優男だった事に一同驚く。

 彼はアジトの最深部で待っていると告げて去り、ムキル達はGR団員との戦いを開始。
 GR団員2号ことイシイに対し、フェイとジンは序盤優勢になるものの、後から追い詰められてしまう。
 しかし、そこでまた現れた謎にして異様な強さを持つ少女ミチのおかげで、何とか危機を脱した。
 GR団員3号ことイチカワはミズキ、GR団員4号ことミワはムキルが対戦するが、各々撃退に成功。

 更にアジトの奥に進むと……。

「お爺ちゃん。ほら、人が来たわよ。」

「ふむ、例の成果を試すチャンスじゃな。」

 GR団の『協力者』リクと、その祖父だという老人が待ち受けていた。
 そして老人の名前は……。

「わしは……オーキド博士じゃ!」

「なっ!! って、嘘言うな。確かに似てなくも無いけど、別人だろ!」

「まぁ、それなら偽オーキドと呼ぶが良い。」

「あっそ。(適当な奴……)」

 よく分からないが、とにかく偽オーキドなる老人はGR草森団にある技術を提供していた。
 そして現れたのは、アカデミーから奪われた何十匹ものポケモン達。
 だが、いくらなんでも多過ぎると思った矢先、敵側にいた赤ニドが突然ムキルに襲いかかる。
 いや……ムキルもちゃんと赤ニドを連れており、襲って来たのは明らかに別のポケモンだった。

「……クローンだ。」

「え゙!?」

 ドルの出した推測に、ムキルは驚く。

「あの偽オーキド博士は、ポケモンのクローンを作り出していたんだよ。クローンを作り出す為に、アカデミーから多くのポケモンをGR団に盗ませたのさ。」

「このポケモン達を、あいつが作ったって言うのかよ!?」

「あぁ。これらは、『生産されたポケモン達』なのさ。もちろんクローンの元になった、盗まれたポケモン達自身も半分ぐらいは混じってるだろうけど……ね。」

 赤ニドも一度はGR団に奪われていたので、その時にクローンを生み出されたのだろう。
 すると偽オーキドは、得意げに話し始めた。

「どうじゃ? これこそが、わしの長年の研究の結晶! GR団は言うとるぞ。ポケモンは戦う為の生き物、戦わせる事こそポケモンに対するトレーナーとしての礼儀じゃと。」

「……!」

「そしてわしが、この実験内容をGR団に教えたところ、GR団の連中は大いに賛成してくれたぞい。強いポケモンを大量に生み出す事は、そういった思想を持つGR団としての正義に、合うものらしかったからのう。」

「だ、黙れ!! ポケモンを道具みたいに、大量生産したって言うのかよ!! てめぇ、そんな事のために……!!」

「おぉ、そうじゃよ。じゃが、『道具』とは聞き捨てならぬのう。これこそが、ポケモンに対する真の愛情じゃと、GR団は言っておったぞ。」

「違う!! そんなの、絶対に間違ってる!!」

 クローン技術をGR団に提供した、リクと偽オーキド博士……。
 彼女等は名乗った、自分達は『ジョウトの支配人』だと。
 それは現在のジョウト地方を支配する組織であり、リク達はその一員なのだという。

「私達が、ここで敵を食いとめるわ。だから、ムキル君だけはアジトの奥に進んで!」

 ミズキに促され、仲間達がクローンも含めたポケモンの大集団を食い止めている間に、ムキルはGR団団長モリノがいる部屋まで突き進む。
 途中で妨害すべく再来したGR草森団の主要メンバー……ミドリ、ユウタ、ミユキはフェイが撃破にかかる。
 ドルはジョウトの支配人リクと対戦するが、戦いの最中で思いがけない情報を耳にした。

「そういえば、あんたさっきドルって言ってたわよね? 名前。」

「あぁ、そうだが?」

「やっぱりね。じゃあ、ビリジアンを知ってるわよね。」

「……!! なっ、ビズを……知ってるのか!?」

 リクの話によれば、ビズことビリジアンはジョウトの支配人に所属する戦闘要員なのだという。
 それは、ドルが生き別れた幼なじみの名前だったのだ。
 突然の事に驚くドルだが、何とかリクのポケモンを全滅させ、彼女は偽オーキドと姿を消す……。

 

 一方ムキルは、さらわれていた双子の妹ユウを発見し救出。
 だがそこに、追いかけてきていたクローンの赤ニドが再び襲いかかり、俊敏な動きでムキルを翻弄した。

「……こうなりゃ、これでどうだ? ガンテツ流、ムーンボール!」

 自作のボールで、クローンの赤ニドを捕まえたムキル。
 しかしムキルとユウは、クローンとは偽者扱いされかねない運命にある事に気づく。
 本物の赤ニドのように、ムキルに捕まえてもらって一緒に行きたい、本物と同じ扱いを受けたい……そんなクローンの赤ニドが抱く気持ちを、ムキルは感じ取るのだった。

 

 

 

・GR草森団団長モリノ

 

 ついに団長モリノの元に辿り着いた、ムキルとユウ。
 そこへ例の、幼いが異様な強さを見せて突然現れた謎少女ミチが、再び駆けつける。
 かくしてムキル・ユウ・ミチの3人で、モリノに挑む事となった。

「さぁ、ラフレシア♂。『狂える花びら』……発動ですよ!」

 最初は一進一退の戦いを続けていたムキル達。
 だがモリノの必殺技『狂える花びら』が襲いかかり、無数の花びら攻撃に手がつけられなくなる。
 おまけにソーラービームも絡め、物凄い攻撃の嵐がムキル達を襲った。

「これが、『狂える花びら戦術』の最高の技。ソーラービームと同時に、毒の花びらの舞いを放ちます。つまりビームと溶解と斬撃……この3つが合わさった、究極の無敵攻撃です!」

 モリノの攻撃の矛先は、ムキルが相棒とする赤ニドに向けられる。
 だがその時、ムキルの赤ニドは2匹いたのだ。
 一瞬の動揺を狙って2匹の赤ニド、更にはミチの追撃が加わり、ラフレシアをふっ飛ばした。
 ……ところが、一度は倒したと思ったラフレシアが立ち上がり、更なる強烈な技を発動する!?

「……まずいですね。ラフレシア、キレちゃってます……。」

「何!?」

「『花びらの渦』……。竜巻状にさせた花びらを、周囲もろとも強力に攻撃する『裏・狂える花びら』なんです。こうなると、もう僕にも止められません……。」

 暴れまくるラフレシアだが、最後はムキルのガンテツ流ラブラブボールが決まる。
 ラフレシアをボールに閉じ込め、今度こそ戦いは終わった。

 ムキルの仲間達によって盗まれたポケモンやクローンポケモンも回収され、GR草森団は壊滅。
 だがモリノ曰く、GR草森団は9つある全GR団の1つに過ぎないのだという……。

 

 最後に……。
 謎だった、幼いながらも強力なトレーナーである少女ミチ。
 彼女はある人物より、情報収集を頼まれていたのだ。

「やっぱりGR団って、かなり強い軍団みたい。」

「だからこそ、情報収集が不可欠なの。これからも頼むわ、ミチちゃん。」

「はいは〜い。任せてちょーだい、クリスさん♪」

 

To Be Continued   Next Chapter 2 !!

 

<第一章−簡易キャラクター紹介>

・GR団員1号〜4号

 ポケモンは戦う為に存在し、強くさせる為に力あるトレーナーが持つべきだ。
 これを信条とするのがGR(グレートロケット)団であり、従来のただ悪行にポケモンを使うだけのR団に比べると異なる部分が見られる。
 何故、R団の名を受け継いでいるのかは不明。
 実はGR団は『ポケモンカードGB2』というゲームに登場するキャラクター達であり、本来カードトレーナーなのを実物ポケモンを扱うトレーナー達にアレンジしたもの。
 実際のゲーム内でもGR団はいくつかに分けられているが、当小説では計9つのGR団が存在する。

 仮面をつけて行動するGR団員1号〜4号は、どこかへ遠征する際に出動される模様。
 GR団員1号の中身は草のGR団ユウタ、2号は無の番人イシイ、3号は雷のGR団イチカワ、4号は超のGR団ミワ……というのはゲームの設定と同じ。

・モリノ
 GR草森団の団長。
 意外にも優男だが、その実力は超一級。
 ちなみに実際のゲームでは『狂える花びら』デッキというのを使用、『花びらの渦』という技を持つカードを使ってきて、当小説に登場した技名もそこから引用。

・ミドリ、ユウタ、ミユキ
 GR草森団の主要団員。
 草や毒、虫タイプのポケモンを用いる傾向がある(総集編で虫は出さなかったかも)。
 ユウタは序章でも紹介したムキルのクラスメートだが、実はスパイとしてアカデミーに潜り込んでいた。
 (という訳で実はユウタだけ実際にあるゲームの登場キャラだった)
 本来の戦闘能力はアカデミー三強にもひけを取らず、上記のGR団員1号も兼任する。
 なお、ユウタの技名も、実際のゲームで彼が使う『悪魔の森』デッキと、カードの技『嫌な花粉』より。

・ドル
 7年前から見て新しく作られたマサラジムのリーダーで、実はある人の息子(答えは第2章)。
 口調は大人しい少年といった感じだが、実は腹黒で心の奥底ではひねくれてたりする。

・ミズキ
 アカデミーでムキルのタッグバトルのパートナーになった、17歳の少女。
 優しいが、よくぼぅっとしている事がある辺り、少々天然っぽい某美少女に通じる所があるような……。

・フェイ、ジン
 正義の旅人兄弟と名乗る、今いち正体のつかめぬ兄弟。
 とりあえず悪の組織に敵対して活動しているらしく、特に兄フェイの実力はなかなかのもの。

・リク、偽オーキド
 現在のジョウト地方を支配する組織、ジョウトの支配人の者達。
 偽オーキドの孫、リクの方はオリジナルキャラ。
 しかし実はポケモンカードには『偽オーキド博士』という名のカードが存在し、偽オーキドの元ネタはそれ。。

・ミチ
 GR草森団との戦いで、いきなり現れた謎の少女。
 ムキルよりも年齢は下なのに、とてつもない実力を秘めており、かつてのチャンピオン:クリスともつながりがある様子。