最終章「降臨の魔」
(全34話の総集編)
・博士誘拐
ジョウトの支配人は、ある大きな動きを見せていた。
いち早く彼等の動きを嗅ぎ付けたのは、自称正義の旅人兄弟を名乗るフェイとジン。
第三章で2人がチャンピオンロード前にいたのも、ジョウトの支配人の調査だったのだ。
しかしナツキへの協力を終え、改めて調査を開始した時……。
潜伏場所だったと思われるチャンピオンロードのとあるフロアは、すでにもぬけの殻だった。
一方、ナツキはお礼を言う為、マサラタウンのオーキド博士宅を訪れる。
しかしそこで見たのは、博士の孫娘ナナミがタンスの下敷きになって倒れている姿だった。
「……!! ナナミさん!?」
「お願い、お爺ちゃんを助けて……。突然、変な男がやって来て、お爺ちゃんを……。」
ナナミの言うには、オーキド博士は隣のウツギ博士の家に連れていかれたのだという。
何者かによって、オーキド博士、そしてウツギ博士が危険にさらされているようだった。
それを聞いたナツキは、すぐさま隣の家へと向かうが……。
その場に残ったナナミは、偽の顔を破り取って、本来の顔を露わにする。
「やれやれ……。偽者演じるのも、楽じゃないわね。まっ、『ジョウトの支配人』なんだから辛いのは当たり前か。」
ナナミに化けていたのは、ジョウトの支配人の1人、変装のリクだった。
隣の家では、ウツギ博士とオーキド博士が捕らえられていた。
捕らえたのは、カーミルと名乗る男。
そんな彼に、1人応戦するのはウツギ博士の息子ドルだったが、カーミルに圧倒されつつあった。
「ククク……。そう言えばウツギ博士の御子息は、マサラジムのジムリーダーだったな。しかし、そんなねずみ1匹が、俺のヘルガーに敵うものか。」
「痛っ……!(ちっ、何だコイツは!? それにあのヘルガー、最初から俺の後ろに? 気配なんか無かったぞ!?)」
しかし、そこへやってきたのがナツキだった。
「オーキド博士!!」
「ナ、ナツキ君か!?」
「あ、はい。けど、これは一体……!?」
突然の状況に戸惑うばかりのナツキだが、いずれにせよカーミルを倒さなくては博士達は助けられない。
だが……このジョウトの支配人『隠蔽のカーミル』の実力は、三幹部をも超えると言う恐るべきものだった。
果敢に立ち向かうナツキだが、あえなくカーミルの前に敗れてしまう事に……。
気を失っていたナツキを起こしたのは、後から駆けつけたシルバーだった。
しかし、すでに博士達は連れ去られてしまった後。
シルバーが言うには、ジョウトの支配人が狙っているのは大昔に封印された強大な力を持つ『究極の超ポケモン』なのだという。
博士は連れ去られたが、その封印を解くカギとなる『透明な羽』は上手く博士が隠し通していた。
残されたメッセージで、それを発見し手に入れたナツキ。
彼女は自分の不甲斐なさで連れ去られてしまった博士達を助けるべく、ジョウトの支配人と戦う決意を固めるのだった。
・前しょう戦
透明な羽は、破壊する事ができないという。
実際にシルバーが試すも、チャンピオンの手持ちポケモンが放つ技でさえキズ1つつかなかった。
おまけにジョウトの支配人の中には、ダウジングによる探知技術に長けた者がいるのだという。
即ち、その辺の土に埋めたとしても、発見される恐れがあるのだ。
処分のできない透明な羽は、守り通すしかない。
そこでキララとクロロが、カントーに残って羽を守る役を引き受けてくれた。
ナツキはムキル、ユウ、シホと共に、ジョウトへ博士救出に向かう事に。
その夜、ムキルとユウはぼんぐり集めの為に森へと入っていったのだが……。
突如トキワシティへ、敵襲が!
「マツバが言っていたムキルとか言う少年は、ここにはいないみたいだな。」
「!! マツバって……ムキル君が言っていた、ジョウトの支配人の三幹部の……。」
「じゃあ、あんた……ジョウトの支配人やな!?」
ナツキとシホの前に現れた男の狙いは、やはり透明な羽だった。
「マンタイン♀、滝登りです!」
「ピカ君、10万ボルトや!」
2人がかりで迎撃を行うナツキ達。
しかし敵のピジョンは、強力な風による攻撃をしかけてきた。
それを前に、2人は苦戦を強いられる。
「風起こしと吹き飛ばしを合成させた俺独自の応用技『ツイスター』だ。だが、この程度で一捻りできるような相手しかいないんだったら……本当に、マツバは連れてくる必要が無かったようだな。」
ナツキとシホは、今では2人共がカントー地方のジムリーダーである。
だが相手の男は不敵に笑い、こう述べた。
「同じジムリーダーでも、カントーとジョウトじゃ、随分と差が出来たものだな。」
「同じジムリーダー……って、まさか!?」
「俺は元、キキョウジムのリーダー:ハヤトだ。そして今は、ジョウトの支配人・三幹部の1人、『竜巻のハヤト』!」
「!!?」
「ジョウトの支配人・三幹部は3人全員、元はジョウトジムリーダーなんだ。同じ三幹部の『千里のマツバ』も、元エンジュジムのリーダーだからな。」
更にハヤトは、もう1人の幹部も来ていて、森に向かったという。
森にいるムキルとユウが危険と悟ったナツキは、まずはどうにかハヤトを倒す事に専念する。
「早く何とかして、ムキル君達を助けに行かなくては! マンタイン、もう一度お願いします!」
「何度やった所で、同じ飛行使いでも力の差は歴然だ!」
実際、ハヤトのピジョットが巻き起こす竜巻に、ナツキのマンタインは呑まれてしまう。
ところがその時、マンタインのヒレからもう1匹のポケモンが突っ込む。
そのテッポウオがマンタインと分離し、一気にピジョットに接近して攻撃を叩き込んだのだ。
「しまっ……」
「波乗り!!」
「今や、10万ボルト!」
シホの追撃もあり、ようやくピジョットの撃墜に成功。
だがハヤトは、2人に次の言葉を残す。
「だけど、君達がジョウト地方に来た時には、この程度じゃ済まさない。次は必ず、透明の羽を奪ってみせる!」
……ともあれ、まずはハヤトを撃退したナツキ達。
続いてムキルとユウを助けるべく、彼女らはトキワの森へと向かうのだった。
案の定、森ではムキルとユウの双子兄妹も敵襲に遭っていた。
姿を現さないトレーナーが森の中で、ピッピ、クヌギダマ、モココ、チョンチーを繰り出し2人に襲い掛かる。
しばらくは手こずるムキル達だが、やがてナツキが駆けつけた。
「あ、ナツキ。それに、シホさんも!」
「シホさん、ナツキちゃん。何だかよく分からないのですけど、ポケモン達が……!」
「分かってます。きっと、ジョウトの支配人・三幹部の1人ですわ。」
ムキルとユウに、ナツキは先程も別の三幹部であるハヤトと戦っていた事を告げる。
そして彼女はすぐさま、もう1人の見えざる相手に対し反撃を行った。
「ポリゴン、トライアタックです!」
ナツキのポリゴンは、トライアタックの3色光線をバラバラに撃ち分ける能力を有する。
1色ずつが、それぞれピクシー、クヌギダマ、モココへとダメージを与えた。
「今だ、残りのチョンチーへ毒針!」
「ムウマ、同じ標的にシャドーボールよ!」
これを皮切りにムキルとユウも攻撃を放ち、撃破。
結局姿を見せないままでいた最後の三幹部は、遠くからポケモンをボールに戻し退散したようだった。
「くっ……。次は、必ず!」
・GR魔水団再び
行方が分からなくなっていたランが急きょノリで仲間に加わり(ぇ)、5人でジョウトに向かう事に。
更に船に乗ると、元ジョウトジムリーダーでありジョウトの支配人に対抗するチームの1人である、彼女が待っていた。
「……お久しぶりね、ムキル君。」
「!! イブキさん!?」
第二章でムキル達がジョウト地方に行った際、助けてもらった存在であるイブキであった。
彼女はツクシやアカネ等、元ジョウトジムリーダーで4人のチームを作り、ジョウトの支配人に対抗している。
そして残り4人中、3人がジョウトの支配人・三幹部となっている現状……。
イブキの言うには、元ジョウトジムリーダー最後の1人を仲間にしようと考えているのだと言う。
ところでムキルやランは、第二章でもマサラ発の船に乗っていたが……。
その時、GR魔水団が海賊として襲撃した事もあった。
今回は無事に船旅を終えられるかと思っていた、そんな矢先……。
「海賊だー!!」
「え゙???」
……連中は、またもやって来た。
船の先に立つのは、色黒の女性であるGR魔水団団長カノコ。
再びムキル達の前に立ちはだかる彼女は、もちろん今日もセンタら主要団員達を率いている。
「さぁ〜、全速力よ!!」
「『全速力よ!!』って……カノコさん、あの船襲うんですか? ルイ様から、さっさとジョウト地方へ行けって言われてたんじゃ?」
「馬鹿ねぇ。ジョウト地方は、危険地帯。いつ、食料や水が尽きるか、分かったもんじゃないでしょ。だから行く前に、たっぷりと補給しておかなくちゃ。」
「あ、なるほど……。」
思わずセンタも納得(?)。
そして他の主要団員であるアイラとミヤジマが、先陣を切って船に向かうのだった。
乗客達は当然混乱する中。
過去にも、同じ相手に同じ経験をしたムキルは……。
「……船が迫って来た……。」
どこか、やる気の無い声だった(ぇ)。
とりあえずイブキに乗客達の事は任せ、こちらが先陣を切るのはムキルの双子の妹ユウ。
そして、彼女のタッグバトルのパートナーであるシホだった。
「き、君達。こんな所にいては、危……」
船員は当然、2人を制止する。
が、もちろんそこはユウとシホ。
「はいはい! お約束の言葉は無視無視!!」
「時間が無いんや、省略省略。あははは♪」
「え……あ……お〜い……。」
やはり、こんな事で止まる娘達ではなかった(ぁ)。
2人はそのまま、GR魔水団の先陣を切って現れたアイラとミヤジマを迎え撃つ事に。
一方で渡り板を橋にし、船から船へとやって来ていたのがGR魔水団の下っ端一同。
彼等はムキルが次々蹴散らし、海へと落としまくっていた(爆)。
「どうする? あのガキ、こっちの船に来ちまうぞ?」
「なぁに、心配はいらん。奴は渡し板を歩いてこっちに来ている。つまり……」
下っ端達は、ガコっと渡し板を外してしまった。
結果ムキルは、板と共に海へと落っこちてしまう。
「どわ!?」
そして、海へとダイブしたムキルを待つのは……。
先に海に落とされた事で、当然の如くお怒り気味の下っ端達。
「あ、このガキも落ちて来やがった。」
「この野郎。よくも俺を落としやがったな!」
「げ。」
かくして、海の中で壮絶な戦いが繰り広げられるのだった(何)。
ムキル、ユウ、シホが、それぞれこんなペースで戦っている頃。
ナツキとランは、ピジョンに乗ってGR魔水団の船に乗り込んでいた。
「さて、到着した事だし……まずは1発!! ウインディ♀、スパイラルショット!!」
ランは容赦なく攻撃を開始し、船に火の手が上がる。
船に残っていた下っ端達も、ほとんど彼女が蹴散らしてしまった。
そして2人の前に、カノコが姿を現す。
「随分と過激な子が来たと思ったら、またあなただったのね?」
「そう言うあなたは……確か、GR魔水団団長カノコ!!」
「ど〜やら、だいぶ腕を上げたみたいね。面白そうじゃない、相手してあげるわ。あ、そうだわ、センタ。落ちた団員達を、救助しに行って。」
センタを船の下に向かわせ、残ったカノコが戦闘体勢に入る。
「さて……始めようかしら?」
戦いは、アイラとミヤジマをユウ&シホが撃破し、海に落ちていたムキルもセンタを倒していた。
残る団長カノコは、ナツキとランに襲いかかってくる。
「アズマオウ……渦潮+滝登り+波乗りで、水の渦を多種方向への水の流れを融合させた技、ウォーターストリーム!!」
「!! 前に私やムキルを海に流した技だわ!?」
「……うっ!」
ランとナツキは水攻撃に呑まれ、身動きが取れ無くなってしまう。
「私のウォーターストリームからは、逃れられないわよ! さっさと、降参しちゃいなさいな!」
「……テッポウオ♀!!」
しかしナツキは、冷静に対処していた。
テッポウオを繰り出すと、水の乱撃の中から飛び出させてアズマオウを攻撃する。
不意を突いた攻撃で、ナツキはウォーターストリームの打破に成功した。
「!!」
「……はぁ……はぁ……!」
「まさか、ウォーターストリームが破られるなんて……。」
驚きを隠せない様子のカノコ。
だが、彼女の後ろから更なる敵が、ナツキの前にやって来る。
「へぇ……腕を上げたのね。明らかに前より、筋がよくなってるわ。」
「その声は……ルイ!!」
現れたのは、GR団大幹部ルイだった。
「これで会うのは、4回目ぐらいかしら? 段々と、実力をつけてきたみたいね。カノコも負かすなんて、凄いじゃない。」
「え゙〜!! ルイ様、そりゃ無いですよ〜!」
「……あら、間違ってる?」
「私まだ、本気じゃないですから!! 次こそ、正真証明のウォーターストリームで攻撃しますから。……そう言う訳で行くわよ、ナツキちゃん!!」
だが、これがまずかった。
ランが反撃にとスパイラスショットを放った所、誤って船の機関部に直撃させてしまう。
ボカーン!!
更にカノコが放った本気のウォーターストリームをも、ナツキは破ってみせた。
「え……えええ!!? まさか、全力のウォーターストリームまでが……。」
「ふぅ。今度こそ、破りましたわよ。」
「(……! やっぱり、成長しているわ。今のナツキちゃんは、明らかにGR団団長クラスの実力がある。いえ、もしかすればそれ以上……!)」
ズドーン!!
その上、船の爆発も収まらない。
「今ですわ、マンタイン!」
「ああ!! ま、負け……!?」
海賊船を壊され、ナツキにも敗れたGR魔水団団長カノコ。
なんだか、踏んだり蹴ったりです。
「やりましたわ!」
ドカーン!!
「やってねぇ!!」
「こ、壊しちゃった……。」
やって来たムキルがすかさずナツキにツッコミを入れ、ランは自分のした事に呆然。
手下達も敗れ、海賊船までこの有様で沈んで行ってしまう事で、GR魔水団はもう完敗状態だった。
「あ〜も〜!! 何で、こうなるのよ!?」
「こうなっては、仕方ないわね。カノコ、もう帰って良いわよ。ジョウト地方には。私1人で行くから。」
「は〜い……。(泣)」
だが、ルイはまだ諦めてはいなかった。
ジョウトの支配人が狙う究極の超ポケモンを、ルイもまた横取りしようと狙っているのだという。
それだけ言い残し、ルイは姿を消すのだった。
でもってGR魔水団はというと……。
団長カノコと主要団員センタの2人だけが、救命ボートで船に漂っていた。
「あ〜……。船も沈んじゃって、こんな救命ボートしか残ってないし、下っ端団員達全員、どっか行っちゃったし……。」
「カノコさんが、仮にも負けちゃいましたからね。みんな、恐れおののいて逃げちゃったんですよ。ミヤジマさんとアイラさんも、どっか行っちゃって残るは僕達だけ……。GR魔水団、ほぼ壊滅ですね。」
「……冗談じゃないわ! 例えボート1つしか無くても、例え団員が私も含めて2人だけでも、絶対このままじゃ終わらないんだから〜!!」
「も、無理だと思いますけど……。」
「あ〜ん!!」
・襲いかかる支配人達
「『隠蔽のカーミル』と『魔剣のビズ』。この2人は、要注意人物よ。」
それは、これから戦う相手であるジョウトの支配人の情報をナツキ達に話す、イブキの言葉だった。
ビズは以前、ムキルがジョウト地方に行った際に遭遇した少女。
そしてカーミルは、先日ナツキが敗れた相手であった。
「……そんなに、強いのですか?」
「えぇ。ジョウトの支配人の三幹部は知ってるわよね。『千里のマツバ』や『竜巻のハヤト』と言った、元ジョウトジムリーダーの3人。でもね、実際は三幹部以上の実力者がいるの。」
「あ、カーミルから少し聞きましたわ。幹部クラスは戦闘能力はもちろん、部下を率いる指揮能力が大切だと……。カーミルは幹部より強くても指揮能力が無かったらしいので、幹部では無いそうです。」
「……ジョウトの支配人は、『全21人』いるの。この中で最も強いと思われるのは、カーミルとビズなのよ。……あくまで、私が知っている中での話だけどね。」
「そうなのですか。……ジョウトの支配人の1番……。1番と言えば、ジョウトの支配人のトップ、つまり首領みたいなのは誰だか知らないのですか?」
「いいえ。知ってはいるわ。彼女は元、ポケモンリーグ四天王最強だったトレーナー。」
「!!?」
「ジョウトの支配人の首領の名は『カリン』。」
一方、トキワに待機していたキララとクロロの元に、訪問者が!
警戒しながら扉を開ける2人の前に、姿を現したのは……。
「俺はGR団グレース! ムキルを出せ!」
かつて、2度に渡りムキルの前に出現しつつも敗れた、グレースだった。
「ジ、GR団……。(汗)」
「……教えないなら、奴の居場所を力ずくで聞き出す! 行け、ストライク♂、オニドリル♂!」
ところが、その時グレースを攻撃し、ポケモンごと吹っ飛ばす者が。
今度こそ、本当の敵がやって来たのである。
「久しぶりに会ったな、裏切り者クロロ。元気そうで何よりだ。」
「……カ、カーミル!?」
カーミルは、いつの間にかジムの中にいた。
当然キララは、読めない状況に戸惑いを隠せない。
「なんでジムの中にいるのよ。どこから入ってきたの!?」
「もちろん、入口から入って来たさ。もっとも、姿を消して……だがな。」
「何かを隠したり、一時的に消す能力、それが奴の力なんだ。奴はジョウトの支配人『隠蔽のカーミル』。そして僕が知る限りでは……ジョウトの支配人最強!!」
元ジョウトの支配人であるクロロには、カーミルの恐るべき強さがよく分かっていた。
それでもここで敗れては、透明な羽を奪われてしまうのだ。
キララとクロロは、カーミルに立ち向かう。
しかしその圧倒的な力を前に、あっけなく敗れてしまう事に……。
そして、ジョウトの支配人の隠れ家。
透明な羽入手の情報は、すぐにこちらに届けられていた。
「……カーミルから、連絡が入りました。透明な羽を手に入れたそうです。」
「それと、捕虜を2人ほど連れて帰るそうですよ。いかが致しましょっか?」
ジョウトの支配人の少女……偽オーキドの孫『変装のリク』と、かつてのドルの幼なじみ『魔剣のビズ』。
この2人が、目の前に座っているジョウトの支配人首領カリンに報告する。
「透明な羽が、手に入ったのね。やっぱり、アレスの占い通りだったわね。」
「大した事ではありまセンヨ。私がジョウトの支配人になれたのは、かろうじてこの能力があっただけの事デスし……。」
カリンの言葉に、ジョウトの支配人『占術のアレス』は謙虚に答えた。
こうして、全ては順調かに思えたジョウトの支配人達だったが……。
アレスは今後の事に不吉な占い結果を表し、一同に注意を呼びかけるのだった。
危険地域ジョウト地方の中で、今も普通に人々が暮らしている町が1つだけある。
その町に、ナツキ、ムキル、ユウ、ラン、シホの5人は上陸した。
イブキは、最後の元ジョウトジムリーダーを仲間に加えるべく動いていたアカネとツクシの元に一時向かう。
そしてナツキとムキルは、ミカンと名乗る10代後半のお姉さんと知り合う。
ひょんな事から翌日、2人は再びミカンに会うべく、彼女が待つという建物に向かっていた。
「ミカンさーん! ミカンさーん! ナツキですけれど……。」
「いねぇな……。鍵、かかってるのか?」
否、扉の鍵は開いていた。
2人は中に入ってみるが、そこで意外なものを発見する。
机の上に、『究極の超ポケモン復活計画書』と書かれた書類が置かれていたのだ。
「ようこそ、いらっしゃいました……。」
その瞬間、背後からミカンの声が聞こえた。
「!!」
「お待ちしておりました。ムキル君、ナツキさん……。」
……確かこの時、ポケスペ第2巻にあったタマムシジムのシーンをモチーフにして作った記憶があります。
だからその場面に、似てるような似てないような(謎)。
一方、捕らわれの身となっていた博士達。
ウツギ博士は、自分の息子であるドルと同じ部屋に閉じ込められていた。
しかしドルは、自分のコラッタに扉をかじらせ、脱出口を開いていたのだ。
「コラッタだけは、あの時に放しておいたから、奴等に取られなかったんだよ。(まぁ取られたとしても、俺のコラッタなら自力脱出も可能だけどな。)」
「!! じゃあ、早く。ドルだけでも、脱出するんだ!!」
ウツギ博士は、息子を気遣うようにそう言った。
しかしドルは、さも当然と言わんばかりにこう述べる。
「うん。そうする。」
「え゙〜!! ほんとに1人で逃げるの!!?」
「ゾロゾロと逃げ出したら、敵に見つかる確率増えるでしょ。」
「…………。」
「まぁ、その内助けが来るさ。じゃ!!」
「……薄情者〜……。(泣)」
こうして、ドルはジョウトの支配人の隠れ家より脱走を決行していた。
しかし出口を目前にして、突然鉄格子が降りてきて閉じ込められる。
「!! これは……?」
「どうやら、トラップにかかったようだな。」
「!! 誰だ?」
「僕はジョウトの支配人、『罠張のラッド』。罠を張る技術においては、ピカイチだ。」
ラッドは、脱走防止の為に配置された見張り役だった。
だがドルも負けじと、鉄格子をコラッタの歯で砕いてみせる。
「罠だか何だか知らねぇが、このマサラジムリーダー:ドル様をナメてると、痛い目に遭うぜ……!」
「……ふん、上等だな。ならば僕の罠張り戦術で、強制的に取り押さえるまでだ。」
かくして、ドルとラッドの戦いが始まる。
ラッドはダグトリオを繰り出し、地面にトラップをしかけてドルを追い詰める。
空中へ逃げてもオニドリルが待ち受けていて、ドルは苦しめられた。
「確かに、この仕掛けを作る技術と、その仕掛けやポケモンを完璧に隠す技術は、かなり驚いた。(認めたくもね〜けど)」
「これが僕の、罠で相手を追い詰める戦法だ。相手が動けば動く程、僕の思い通りに罠にかかってくれる訳さ。この罠地獄を、くぐり抜ける事など不可能。」
しかし、ドルは諦めていなかった。
彼はあえて罠にかかってから炎で地面を焼き、ダグトリオをあぶりだす作戦に出たのである。
それはドル自身も深手を負う諸刃の作戦だったが、彼は平然とそれをやってのけた。
「!! アヂヂヂヂヂヂヂヂ!!」
結果、ラッドをも巻き込む炎はドル自身を焼きつつも、彼に勝利をもたらしたのだった。
「お前……正気かよ……?」
「お前の敗因は、敵に罠がかかった時点で自分の勝利を確信した事だ。回避出来ない罠なら、あえてかかって多少の捨て身は覚悟し、相手にこちら以上の痛手を負わせれば、それで勝てる。『肉を切らせて骨を断つ』という言葉でも、覚えておくんだな。」
・ジョウトの支配人三幹部
ドルが脱走を成功させていた頃、ナツキはまたも現れたジョウトの支配人『変装のリク』の策略に陥りかけていた。
しかしムキルの助力で、それも破られる。
彼等が今いるのは、タンバシティ。
本土より海で隔てられていた為に、ジョウト大噴火の影響を唯一受けなかった町である。
そしてこの町にいるジムリーダー:シジマは、支配人の三幹部などではない。
即ち、最後に残ったミカンこそが……。
「そろそろ正体を明かしたらどうだ? ミカンさん……いや、ジョウトの支配人三幹部、『鏡壁のミカン』!!」
「……!」
ムキルの言葉を皮切りに、敵側もマツバとハヤトが登場。
ついにジョウトの支配人・三幹部が集合し、戦いは始まった。
しかし、彼らの強力な攻撃を前に、ムキルは苦戦。
『千里のマツバ』のポケモンが持つ、あらゆる物体をゴーストの力で操るという能力『ポルターガイスト』。
『鏡壁のミカン』のポケモンが持つ、全ての攻撃を遮断するという能力『ダークヴェール』。
それらに翻弄され、とうとうムキルは倒れてしまう。
一方ナツキは、再び『変装のリク』の策略を受けていた。
だが彼女も、今度は自力でそれを見破ってみせる。
「何度も同じ手にはかかりませんわよ。」
「あっそ。けど、ハヤト様の邪魔をさせないように時間稼ぎはさせてもらうわよ。」
「そうはさせません!」
両者、ポケモンを繰り出し戦闘に入る。
リクはわざとナツキを焦らすようにしむけ戦うが、ナツキはそんな手には乗らなかった。
「…………。」
「……な、何よ! そんなすました顔しちゃって!」
「私も……手を抜くつもりはありませんわ。オーキド博士達は、私の力が及ばなくてさらわれてしましました。でも、同じ過ちはもう犯しません!」
元々が戦闘要員ではないリクでは、もはや真っ向勝負でナツキに敵うはずもなかった。
ナツキはリクの卑怯な手など物ともせず、彼女のポケモンを全滅させる。
そしてナツキは、宿で待機していたユウ、ラン、シホと合流。
三幹部ハヤトとの戦闘を開始した。
「いくら人数が増えた所で、ツイスターを破る手段が無い限り、俺には勝てないぞ。」
『竜巻のハヤト』のピジョットが放つ、強力な竜巻『ツイスター』。
あらゆる攻撃を飲み込み、逆に竜巻の暴風で敵を蹴散らすという攻防一体なこの技を破る事は、決して容易くはない。
「ど、どうしよ……。」
「ツイスターを破る手なら……無い事もありませんわ。」
困惑するユウに対し、険しい顔をしつつもナツキが言った。
なおもツイスターを放つハヤトだが、ナツキはマンタインの平たい体を使って竜巻を抑えこませる。
「マンタイン……お願い!!」
「……!? ふ、吹き飛ばせない!?」
マンタインは苦しそうだが、確かにツイスターを一時的にくいとめる事には成功した。
しかし、それでもなお押し切ろうとするハヤト。
「まさか、これ程までの力とは……!! ぐっ……だが、こっちだって……!!」
「風さえこなければ……! ウインディ!」
「ムウマ、呪い!」
「ピカ君、10万ボルトや!」
ランのウインディ、ユウのムウマ、シホのピカチュウがそれぞれナツキに加勢する。
次々と追撃を受けた敵ピジョットは、とうとう墜落した。
「…………。今日の所は身を退く。4人がかりとは言え、俺のピジョットを倒すとはお見事。特にナツキ、君の育てたポケモンの力は大したものだ。だが、俺1人をやっと倒せる程度の実力では、ジョウトの支配人全部を相手するには、とても力不足だ。今の内に帰った方が良いとだけ、忠告しておこう。さらばだ!」
ハヤトの撤退を見届けたナツキは、続いて倒れたムキルの元へと向かう。
さすがのミカンとマツバも、人数差を前に撤退が懸命と判断し、そのまま去って行くのだった。
・ナツキ包囲網
ジョウトの支配人・三幹部でもなく、ジョウトの支配人に対抗するチームに組みする訳でもなく……。
唯一ジョウト崩壊から免れたタンバシティに住む、最後の元ジョウトジムリーダー:シジマは、イブキ達への協力を断り続けていた。
彼はジョウトの支配人からタンバを守るために、ここから動く気はないのだと言う。
「私がシジマさんの分まで、戦います。」
そう言ったのは、ナツキだった。
彼女はシジマの意志を理解し、彼を無理にジョウトの支配人との戦いに駆り立てるのではなく、自らが彼の分まで戦い抜く決心をしたのだ。
ナツキ、ムキル、ユウ、ラン、シホに加え、脱走してきたドルも仲間に加わる。
しかしドルが捕らえられていたジョウトの支配人の隠れ家は、すでにもぬけのから。
イブキ、ツクシ、アカネ、ヤナギのジョウトの支配人対抗チームと共に、ナツキ達はジョウトの支配人の本拠地を求め、いよいよジョウト地方本土に向かう事になった。
そして、船を使って訪れた町はエンジュシティ。
今では無法地帯になったのをいい事に、ならず者達が住まう荒れた土地となっていた。
ナツキ達はここで一泊する事になるが、ジョウトの支配人の動きは予想以上に早かった。
彼等はナツキ達に懸賞金をかけ、エンジュの住人に襲わせる策略を企てていたのだ。
「皆、早く来て! 急いで、宿を出るわよ!」
イブキの声で、一同は泊まっていた宿の外に出る。
だがエンジュの住人達すべてに取り囲まれ、ナツキ達は多勢に無勢だった。
「さて……問題はこの包囲網を、どうやって攻略するかね。」
「1人ずつバラバラに逃げたら、危険ですわ。」
「えぇ。でも、かと言って全員が一塊で突っ込むのも問題があるわ。相手の狙いが1点に絞られて、周囲から集中狙いを受けかねないもの。ここは……2人1組になって、5組でそれぞれ、別方向に逃げる事にしましょう。」
かくして、それぞれがエンジュシティ脱出を賭けた戦いを開始する事になる。
まずは、アカネ&ツクシ組。
住人達を適当に退けながら、2人はエンジュシティを脱出していた。
だが、そんな所を襲う事こそが、奴等の本当の目的だった。
この2人も、ジョウトの支配人『隠蔽のカーミル』の襲撃に遭う。
「まさか……罠やったんか!? 町の人をつこうて、うち等をちりぢりにさせたところで、ジョウトの支配人達が潰しにかかるっちゅう作戦やったんかいな!?」
「当たり前だ。あんな町の連中如きだけでは、役不足だからな。」
そして、その場にはもう1人のジョウトの支配人の姿が。
「さて……オミクロ! 出力50%アップぐらい、行けるか?」
「……80%は余裕。」
「上等だ!」
オミクロの能力『エナジートランス』によって、カーミルの攻撃能力はより強化されていた。
アカネとツクシは、そのまま倒されてしまう。
そしてイブキ&ヤナギ組の方でも、ジョウトの支配人が……!
「このあたし『イプシ』様に勝負を挑むのは、50年くらい遅すぎたんじゃないの、爺さん?」
「お、おのれ……!」
「俺は、『分身のデリン』。ジョウトの支配人になってから、まだ日は浅いけど……この通り、十分な実力を持っているつもりだよ。さて、これで僕達の仕事もひとまず終わり。例のナツキって言う子達が捕まるのも、時間の問題だね。」
「……クッ……。ナツキ……ちゃん……っ!」
かくして、4人があっけなく敵に捕縛された。
更に状況が悪かったのはユウ&シホ組で、現れた首領カリンがついにその力を発揮。
「ヘルガー、『悪い波動』!」
「……うぅ……。」
「シ、シホさん!?」
カリンの力を前に、ユウとシホは成すすべが無かった。
大きなダメージを負ったシホは気を失い、ユウも1人ではどうする事もできなくなってしまう。
「さて……私は一旦、アジトに戻るわ。アレス、後は任せたわよ。」
「了解デス。」
ユウとシホを『占術のアレス』に任せ、カリンは先に去って行った。
ナツキ&ムキル組の前に現れたジョウトの支配人は、なんと4人だった。
人数としても不利な状況で、2人は追い詰められる。
「お前等2人は特別扱いって事で、わざわざ4人も人を当てたんだぜ。感謝して欲しいくらいだな。」
「……嫌な特別扱いだな、オイ。」
ジョウトの支配人ロー、グザイ、タウ、カイの4人による、集中攻撃が襲いかかった。
まずはムキルが狙われ、その場に倒れてしまう。
「ぐはっ……!!」
「きゃあ!! よくも、ムキル君を……! 許しませんよ! ムキル君の死は、無駄にはしません!!」
「だから、またしても勝手に殺すなっつーの!!(ガバッ!)」
「ムキル君の仇は、私が取ります!」
「って、聞け!!(怒)」
ポリゴンでローを攻撃し始めるナツキ。
だが、この時……徐々にナツキは暴走しつつあった。
それは、ポケモンリーグで見せた時のように……。
「ちっ、往生際が悪いぜ!」
ローは巧みなポケモン捌きで、暴走状態のナツキの攻撃をしのぐ。
だがナツキの勢いは、異常なまでに増してゆく。
「マンタイン、限界までの力を放出!! ……早く!!」
「何ィ!? ぐあああ!!」
ナツキの迫力に圧されて、マンタインの無理な攻撃が炸裂。
確かにローは撃破したが……マンタインの体には、明らかに負担が蓄積されていた。
「!! あいつ……相当、無理してるぞ!」
当然ムキルは、ナツキの異常に気づいていた。
だがそれを制止する間も無く、戦いは続く。
「ひゅ〜。すげぇ攻撃しやがるな。だが、この『反射のグザイ』様にとっては、かえって好都合!」
「!!」
「ソーナンスが攻撃を跳ね返すのは当たり前。だが、俺のソーナンスには物理攻撃と特殊攻撃、更には一撃必殺から状態異常まで、ありとあらゆる攻撃を100%確実に跳ね返す特殊能力が備わっている。俺はこのポケモンを育て上げた事によって、ジョウトの支配人の称号を得たんだ!!」
「マンタイン……マンタイン!!」
バシャアアッ!!
もはやナツキの暴走は留まるところを知らず、ひたすらポケモンを攻撃させるのみだった。
しかし実際、その勢いは凄まじく、グザイの能力すら上回る。
「ぐ……あ……。なんで、そんな攻撃を……反射の隙すら与えずに二連射……!? ありえ……ねぇ……。」
「……ば、ばかな……!?」
「グザイが反射できないなんて、前代未聞だ……。」
残されたタウとカイも、さすがにこのような戦況で焦りを覚え始める。
しかしそれ以上に焦っていたのが、ナツキのあまりの変わり様を見ていたムキルだった。
「くっ……この小娘!!」
「……はぁ……。きぃ!!」
「お、おい……ナツキ……?」
「マンタイン……攻撃……」
「おい、やめろ! それ以上無理させたら、マンタインの身がもたねぇ! それに、もう勝負はついた。もう攻撃する必要は……」
「関係……無い……。ポケモンの1匹や2匹……くたばったところで……」
「!! なっ……お前……!! ナツキ……とりあえず、一旦寝てろ!」
やむなく、ムキルはナツキの腹部に拳を入れ、一度気絶させる事にした。
明らかに様子のおかしい暴走状態のナツキには、こうするしか無かったのだ。
「ナツキ……一体、どうしたって言うんだ……?」
気を失ったナツキを見ながら、ムキルは呟いた。
タウとカイの方は、それでもなおムキルに攻撃を仕掛けてきたが……そこへ火炎放射が放たれ、敵を一蹴。
攻撃したのは、その場に現れた自称・正義の旅人兄弟フェイとジン。
彼等もまたジョウトの支配人と戦うため、ジョウト地方にやって来ていたのだった。
「ふぅ……一体、ナツキはどうしちまったんだ?」
「この子は前にも一度、似たような状態になった事がある。セキエイで、GR団の大幹部ルイとかいう敵が現われた時だ。」
「……え゙、そうなんですか!?」
フェイの言葉に、ムキルは驚く。
更にフェイは、シルバーがこの症状の事について知っていた事を教える。
ムキルは気になったものの、今はもたついている場合ではない。
フェイとジンに仲間達の事を頼むと、ムキルは気絶したナツキを連れてエンジュシティを離れるのだった。
そして次にフェイがやって来たのは、先ほどカリンに敗れたユウ&シホ組の場所。
ユウは1人で『占術のアレス』に挑んでいたが、勝機をつかめずにいた。
「いくら挑んで来ても、無駄デスヨ。あなたのいかなる攻撃をも予知できる私には、いかなる攻撃も通用しまセン。」
「ど、どうしよう……。早くシホさんの手当てをしてあげたいけど、このままじゃとても……」
「そいつの相手は、俺がする!」
フェイはそう言って現れ、アレスとの戦いに臨む。
攻撃を予知し、的確に対処してくるアレスは強敵だったが、フェイもアレスの動きを見て弱点を探る。
「全ての未来を見る事が出来る……と言う訳では、無いみたいだな。」
「……?」
「『次にどんな攻撃が来る?』と言う、ある程度でも状況が絞りこまれている場合の未来は予知出来ても、『この先、何が起こる?』みたいな、あまりに漠然とし過ぎた事を予知する事は出来ないんじゃないか?」
「……確かに、あなたの考えは間違っていまセンヨ。あなたの言う通り、不確定要素が多い物を占術で予知する場合は、その精度が落ちてしまいマス。」
フェイは、バトルの最中で偶発的に発生した事象も利用し、アレスの占術に対抗。
とうとうアレスのネイティオは敗れ、フェイは戦いを制した。
「グッ……。運も実力の内とは、よく言ったものデスネ。私の負けデス……。」
……そして、残るはフェイの弟ジンが向かった先。
ラン&ドル組は、『変装のリク』がムキルの姿をしてランを苦しめ、ドルは幼なじみだった『魔剣のビズ』との戦いを繰り広げていた。
「なんじゃ、大した事無いのう。リクが騙した所へわしが奇襲をかけるという作戦じゃったが……わしが乱入するまでも無いようじゃな。」
「なら俺が、相手してやるぜ。」
「!?」
離れた所で様子をうかがっていたリクの祖父、『探求の偽オーキド』の前にジンはやって来る。
第一章の頃から暗躍していた偽オーキドだが、とうとうジンによって倒されたのだった。
更にジンはランを助けるべく、ムキルの姿になっていたリクに攻撃をしかけようとするが、ボロボロにされたランがジンの足を引っ張る。
「…………。」
「なっ、てめぇ!! 何すんだよ!? 怪我人は、大人しく寝てろ!」
「……ダメ。ムキルに……攻撃しないで……。」
「はぁ!? 何、言ってるんだよ!? どう考えても、あいつは偽者だろが!」
無論ランも、理屈では分かっている。
しかし彼女は、どうしても体が拒絶しているようなのだ。
「ムキルは、1人ぼっちの私を助けてくれた恩人だもの……。それに……私がムキルの敵になった時にも助けられちゃったし……。ムキルが酷い事されてるのを見るの……どうしても嫌なの……。」
「よく分からねぇけど……要するに、お前にとってムキルは大切な人なんだろ? けど、目の前にいるのは偽者だ! 偽者を本物と思いこんじまうなんて、その行為が本物のムキルに対して酷い事だって、思わねぇのかよ!?」
「……私が……ムキルに酷い事を……!?」
「あれは所詮まやかしだ。お前は、ムキルの『幻』を見ているに過ぎねぇ。ムキルが大切な人なら、本物と偽者くらい区別できるようになれっての!!」
その言葉を聞いた途端、ランの目の色が変わった。
根が単純だったランは(オイ)、あっという間にリクを倒してしまったのである。
「つ、強えぇ……(大汗)。」
これには、助けにきたはずのジンもたじたじだった。
……その、少し離れた所でドルとビズの幼なじみ同士のバトルは行われていた。
だがドルは、戦いの中でビズが幻である事に気づく。
幻を作り出している者が、近くの木の上にいたのだ。
「けっ、お前が幻を作り出してたのか。」
「えぇ。私はジョウトの支配人『幻影のシータ』。幻を作りだし、更にその幻に、能力を植え付けさせる事が出来る。……今の、ビズみたいにね。」
かくして、シータの能力を破ったドル。
本物のビズも現れはしたが、ひとまず退けて彼もどうにかエンジュシティを脱出したのであった。
Next Final Battle !!