4th「忍び寄る魔手」
前回までのあらすじ:
クチバシティのポケモンセンターにナースエイドとして手伝いに行っていたナツキだが、大怪我を負ったオオタチの治療に全く自分が手伝えず、落ち込んでしまう。しかし責任感の強い彼女は一旦ナースエイドを休み、少し勉強をしてみようと決意するのだった。だが、オオタチが怪我を負った理由は未だ不明……。
「や、やっぱり……難しいですわ……。」
ポケモンセンターでナツキがいつもお世話になっている、正規の看護婦さんからポケモンについての分かり易い医学の本を借りたナツキ。
医学の本というよりは、ポケモンの怪我に関しての簡単な治療法は応急処置法が、読み物的に易しく書かれている一般向けの本なのだが。ナツキは数日間、その内容を必死に覚えようとしていたようだ。
「ハァ……でも、ここで諦める訳にも行きませんわね。それこそ、無責任すぎますし。」
ナツキは何度も数日前のオオタチの件での自分の無力さを思い出し、何度も何度も本を読み返しているのだった。その努力は、確かに凄い。しかし、いきなり全ての内容を覚えようとしている所は、少々要領が悪いとも言わざるを得ないが……。
そんなナツキの知らない所で、次の事件は起ころうとしていた。
「ふぅ……。やっと町に着いたわね、ポポちゃん♪」
その少女は、旅のトレーナーである女の子だった。どうやらシオンタウン方面から、このクチバシティにやって来たらしい。
彼女の傍らには、1匹のポポッコの姿がある。少しだけ傷ついている所からして、恐らく途中で幾つかのバトルをこなして、この町に辿り着いたのであろう。少女が言った『ポポちゃん』とは、このポポッコのニックネームなのだろう。
「さて、私はちょっと買い物に言ってくるわ。傷薬とか、色々買わなくちゃいけないから。ポポちゃんは、適当にその辺りで遊んでてもいいわよ。ポポちゃん、お外で遊ぶのが大好きだもんね。」
そう言って、少女はフレンドリーショップへと入って行った。そして、そのすぐ後だった。残されたポポッコに近寄りながら、何かを喋る数人の子供のトレーナー達が姿を現したのは!
「全く無用心だね。こんな所に、ポケモン1匹置き去りにしていくなんてさ。本当にバカだよね。」
聞こえてきた声、そして殺気に反応し、それまで遊んでいたポポッコの表情が一気に強張る。
「まぁまぁ、ルウ。いいじゃないの。そのおかげで、私達は楽しめるのだから。そうでしょ、テンガ。」
「そういう事だな、キズナ。じゃ、早速……お楽しみタイムを始めようか!」
ナツキはクチバシティの街中を、気分転換で散歩していた。勉強は、相変わらずはかどらない……。
「ハァ……やっぱり、すぐに全部を覚えようなんて無理ですわよね……。」
「……あ、ナツキちゃん!!」
と、そこへ聞こえてきたのはポケモンセンターの看護婦の声だった。
「あら? どうしたのですか?」
きょとんとしてナツキは尋ねるが、看護婦の汗だくで慌てたその様子からして、ただ事ではない何かが起こったようである事がすぐ分かった。
「大変なのよ、ポケモンセンターにまた急患が運ばれてきたって連絡があったの。ポポッコっていう種類のポケモンなんだけど、この前のオオタチ以上に酷い怪我らしいのよ!!」
「えぇ!!? そんな事って……ほ、本当にですか!?」
さすがにナツキも、それを聞いて慌てだす。看護婦は息切れを少しだけ抑えてから、再び口を開いた。
「とにかく、私は治療の手伝いをしにポケモンセンターに行くの。今日は休暇だったんだけど、そうは言ってられないもの。ナツキちゃんも、一緒に行きましょ?」
「で、でも……私が行っても、何も役に立てませんわ……。」
「いいのよ、ナツキちゃん。とにかく今は、何か動いてみる事も大事なの。ナツキちゃんは責任感も強くて良い子だけど、もうちょっと勇気を持ってみなくっちゃ!!」
「……そ、そうですわね。分かりました、私も行ってみます!!」
かくしてナツキは、看護婦と共にポケモンセンターへ向かって駆けて行くのだった。
続く
今回は少々短めでしたね……。あまり時間が無いもので、ごめんなさい。次回もお楽しみに!!