Chapter-5『ともしび山!ルビーとめざめいし!!』 (1) マサトとコトミ、そしてトモヤは、1のしまの北にあるともしび山にたどり着いた。 噴火活動も収まったとはいえ、あちこちに冷えて固まった溶岩が残っており、噴火のすさまじさを物語っていた。 トモヤ「私がかつてルビーを探しに行った時は、この洞窟の奥に入っていったんだよ。」 トモヤが案内したのは、登山道を上ってすぐのところに口を開けていた洞窟だった。 この洞窟からは溶岩は噴出しなかったのか、固まった溶岩は見受けられない。 マサト「トモヤさんは、昔ここからルビーを探しに行ったんですね?」 トモヤ「ああ。ここからは私もポケモンを出してお手伝いするよ。行け、ニドキング!」 トモヤがモンスターボールを投げると、中からニドキングが飛び出してきた。それも色違いのニドキングだ。 コトミ「トモヤさんって、色違いのニドキングを持ってるんですね!あたしもいつか色違いのポケモンをゲットしたい!」 マサト「そういえば、サトシも色違いのヨルノズクを持ってたんだっけ。僕も欲しい!」 トモヤ「ははっ、色違いは珍しいからね、簡単に見つけられるものではないと思うよ。このニドキングは、私が最初に捕まえたポケモンなんだ。」 マサト「最初のポケモンが色違い?凄いね、トモヤさん!」 トモヤ「そんな事はないよ。じゃあ、行こうか!」 マサト・コトミ「はい!」 洞窟の中は、地熱で暖められているせいか、外と比べて温度が高い。 マサト達はしばらく奥に進んでいくが、途中、大きな岩が道をふさいでいるのを見つけた。 マサト「トモヤさん、岩で道をふさがれて、先に進めないよ!どうしよう?」 トモヤ「私に任せなさい。ニドキング、いわくだきだ!」 ニドキングがいわくだきで道をふさいでいた岩を砕いた。 コトミ「トモヤさんのニドキングって、いわくだきが使えるんですね!」 トモヤ「ああ。これで先に進めるよ。行こう!」 しばらく先に進んでいくと、至る所に赤い石がきらめいているのを見つけた。 マサト「これって、ルビーですか?」 トモヤ「うん、そうだよ。でも、これくらいのルビーはニシキ博士がおっしゃっていたような、特別なルビーではないんだ。 昔私も、ここまで足を踏み入れた事はあったんだけど、結局見つけられなかったんだ。だから、この先に特別なルビーがあるって、私は思ってるんだ。」 コトミ「それが本当なら、たぶんこの先に、トモヤさんがおっしゃってるような特別なルビーがあるって思うの。ね、マサト!」 マサト「そうだね!」 やがて3人は、通路がいくつかに分かれているのを見つけた。 マサト「このどれかの道の先に、ルビーがあるんですね?」 トモヤ「ああ。昔、私はここで引き返したんだ。その時に思った。『いつか必ず、この奥に眠る、特別なルビーを見つけてみせる』って。」 コトミ「そうだったんですか・・・。マサト、トモヤさんやニシキ博士のためにも、この先に進んで、ルビーを見つけよう。ね!」 マサト「そうだね。でもどうする?この先は道が分かれているけど・・・。」 トモヤ「3人でそれぞれ3つの道に分かれて進もう。私はまっすぐの道を行く。何か分かったら、ここに戻って知らせるという事でどうかな?」 マサト「はい。コトミ、どっちに進む?」 コトミ「あたしは右に進むわ。」 マサト「じゃあ僕は左だね。何か見つけたら、ここに戻って知らせるね。」 トモヤ「そうか。じゃあ、行ってらっしゃい。何か出るかもしれないから、十分に気をつけるんだよ。」 マサト・コトミ「はい。」 こうして、マサト達は3人で3か所に分かれて調べに行く事になった。 果たして、特別なルビーは、どこに眠っているのだろうか。 (2) ともしび山の洞窟の分かれ道を3人で3か所に分かれて探すことになったマサト達。マサトは左、コトミは右、トモヤは真ん中の道を進んでいった。 トモヤ「(この先には、何があるんだろう・・・。)」 真ん中の道に進んだトモヤは、ニドキングと一緒に洞窟を奥深くに向かって進んでいった。 しばらくすると、急に視界が明るく開けてきた。どうやら出口のようだ。 トモヤ「(ここは出口か・・・。何があるんだろう。)」 トモヤは出口に向かって走っていった。すると、島の反対側の横穴のようで、下は大きな崖になっていた。 穴の向こうは、大きな海が広がっていた。 トモヤ「(この先は崖か・・・。仕方ない、引き返そう。)」 トモヤが今来た道を引き返そうとした時、野生のゴルバットが現れた。 トモヤ「(ゴルバットか・・・。よし。)ニドキング、つのでつくだ!」 ニドキングのつのでつくが炸裂。ゴルバットはダメージを受けたが、まだ大丈夫そうだ。そして両目からあやしいひかりを放った。 トモヤ「ニドキング、目を閉じてかわせ!」 ニドキングは目を閉じてあやしいひかりをかわした。 トモヤ「ニドキング、どくづきだ!」 ニドキングがどくづきをした。効果は今ひとつのようだが、それでもゴルバットに対しては相当なダメージを与えたようだ。 トモヤ「行け、モンスターボール!」 トモヤはモンスターボールを投げた。しばらくボールの中央が赤く点滅していた。やはりトモヤでもポケモンを捕まえる時は緊張するのだろう。 ・・・そして、ボールの光が消えた。 トモヤ「よし、ゴルバット、ゲットだ!」 一方、右の道に進んだコトミも、奥に向かって進んでいた。 コトミ「ラルトス、この先は何があるかわからないから、気をつけていこうね。」 コトミのラルトス「うん!」 コトミのラルトスは、離れないようにコトミの肩に乗っかっていた。 しばらく進むと、向こうに何か光っているのが見えた。 コトミ「あれは何かしら。ラルトス、行ってみよう!」 コトミは光っている何かに向かって走っていった。 やがて、前方が大きく開けてきた。 そこには、水色とエメラルドグリーンに光る、きれいな石があった。 コトミ「きれいね・・・。これ、何の石かしら?」 コトミはその石を手にとってみた。まばゆいばかりの光を放っている。 その石を2つほど取ると、コトミはもと来た道を戻っていった。 コトミが分かれ道に戻ると、既にトモヤが戻っていた。 コトミ「あ、トモヤさん!」 トモヤ「おう、コトミちゃん。どうだった?私の方は、向こうの道は大きな崖になって、行き止まりになっていたんだけど、 帰りがけに新しくポケモンをゲットしたんだ。それっ!」 トモヤがモンスターボールを投げると、中からゴルバットが出てきた。 コトミ「トモヤさん、ゴルバットをゲットしたんですね!あたし、向こうの道に行って、こういうのを拾ったんです。見てください。」 コトミは例の石をトモヤに見せた。 トモヤ「これは、めざめいしだね。」 コトミ「めざめいし?」 トモヤ「ああ。この石を使うと、♀のユキワラシをユキメノコに、♂のキルリアをエルレイドに進化させることができるんだ。 コトミちゃんやマサト君のラルトスも、キルリアに進化して、この石を使えば、♂の場合はエルレイドに進化させることができるんだ。」 コトミ「そうだったんですか。でも、♀の場合は?」 トモヤ「♀の場合は、残念ながら使っても何も起こらないよ。」 コトミ「そうですか・・・。でも、あたしはこの道を進んでめざめいしを見つけて、トモヤさんは向こうに進んで崖に出たんでしょ? とすると、マサトが進んだ先には・・・。」 トモヤはマサトが進んでいった道を見ながら言った。 トモヤ「ああ。もしかしたら、マサト君が行った先に、特別なルビーがあるのかもしれない。行こう!」 コトミ「はい!」 そして、左の道を進んでいったマサト。 マサト「この道の先には、何があるんだろう・・・。ラルトス、この先は気をつけていこうね。もしかしたら、ルビーがあるかもしれないから。」 マサトのラルトス「そうだね。ルビーが見つかるといいね。」 しばらく進むと、行く手がかなり広くなっているのが見えた。 マサト「あれは何だろう。行こう!」 マサトは、その広くなっている場所に向かって走っていった。そこにあったものは・・・。 (3) ともしび山の洞窟の分かれ道を左に進んでいったマサトとラルトスは、広くなっている場所に出た。 そこには、いくつかの石の台座に、不思議な点の模様が刻み込まれていた。 マサト「これは何だろう・・・。」 マサトは石の台座に近づいて調べてみた。と、そこにコトミとトモヤがやってきた。 コトミ「マサト!」 トモヤ「マサト君!」 マサト「あ、コトミ!トモヤさんも!これを見て!」 コトミとトモヤはマサトが調べていた台座に近づいた。 トモヤ「これは、点字(※1)だね。」 マサト「点字って、目の見えない人が使っている、指で触って読むものですよね?それがどうしてここに?」 トモヤ「マサト君とコトミちゃんは、点字が目の見えない人のために使われているって言うことは、知ってるよね?」 マサト・コトミ「はい。」 トモヤ「それと大変よく似ているものが、ホウエンの伝説のポケモン、レジロック・レジアイス・レジスチルにまつわる伝説だ。」 コトミ「あたしも、かつてそれを聞いたことがあります。どこにあるのかも知られていない(※2)、おふれのせきしつのことですね?」 トモヤ「ああ。でも、まさかナナシマでも、ホウエンと似た遺跡が残っていたとは、私も知らなかったな。」 マサト「それで、トモヤさんは点字を読めるんですか?」 トモヤ「ああ、昔私も、目の見えない人に点字がどのようにして役に立っているのかを調べたことがあって、 それで点字を勉強したんだ。それと同じ読み方なら・・・。」 トモヤはマサトが調べていた台座を見てみた。 トモヤ「・・・これは、『あいうえお』だ。おそらくこのあたりの台座は、すべて50音順になっているのだろう。」 トモヤは周囲の台座も見てみた。 トモヤ「『かきくけこ』。『さしすせそ』。・・・間違いない。この台座は50音順で点字の読み方を示しているんだ。」 マサト「トモヤさん、すごい!」 トモヤ「それほどでもないよ。・・・もしかしたら、この奥に特別なルビーがあるのかもしれない。」 と、向こうで光が赤くきらめくのが見えた。 コトミ「あれって、もしかしてルビーでは?」 トモヤ「あれは・・・、間違いない。きっとネットワークマシンの完成に必要な、特別なルビーだ。行こう!」 マサト・コトミ「はい!」 3人がその赤い光に向かっていくと、そこにはまばゆいばかりの赤い宝石があった。これはニシキ博士が言っていた、 ネットワークマシンを完成させるのに必要なルビーと見て間違いない。 マサト「これですね?」 トモヤ「ああ。間違いない。ニシキ博士がおっしゃっていた、特別なルビーだ。」 トモヤはルビーを手に取ってみた。ずしりと重いが、運べない重さではない。 コトミ「きれいね・・・。」 マサト「あ、あそこにも何か書いてるよ!」 マサトが指さした先には、これも点字で何か書かれているのが見えた。 トモヤ「読んでみよう。・・・『ものごとにわ いみがある』『そんざいには いみがある』『いきることにわ いみがある』 『ゆめを もて』『ちからを つかえ』」 (「物事には意味がある」「存在には意味がある」「生きることには意味がある」「夢を持て」「力を使え」) トモヤ「・・・それにしても、いったい誰がこのようなものを残したのだろう・・・。」 コトミ「不思議ね・・・。」 マサト「トモヤさん、早くこのルビーをニシキ博士に届けてあげようよ!」 トモヤ「ああ、そうだな。」 3人はともしび山を後にすると、1のしまのニシキ博士のもとに向かった。 ニシキ博士「おお、これだ。ネットワークマシンの完成に必要な、特別なルビーだよ。」 マサト・コトミ「本当ですか!?」 ニシキ博士「ああ。これをまずは、ネットワークマシンに取り付けよう。」 ニシキ博士はルビーをネットワークマシンに取り付けた。そしてニシキ博士はルビーが取り付けられたのと反対側のくぼみを手で指した。 ニシキ博士「以前も言ったと思うが、このナナシマにはルビーと対になっている特別なサファイアがあるといわれている。そこで、 マサト君とコトミちゃんに、この特別なサファイアを探し出して欲しいんだ。」 マサト「次はサファイアですね?」 ニシキ博士「ルビーとサファイア、ダイヤモンドとパール、いずれもこのネットワークマシンの完成に欠かせないものなんだ。だから是非、探し出して欲しい。」 コトミ「はい。・・・マサト、一緒にニシキ博士の夢を叶えてあげようね!」 マサト「はい!」 ニシキ博士「よく言ってくれた。確か君たちは、ともしび山で点字とよく似た遺跡を見つけたと言ってたよね。あれと同じような遺跡が、 このナナシマのどこかにあるといわれている。それを見つけることができれば、特別なサファイアも見つかるかもしれないよ。」 マサト・コトミ「わかりました。」 マサトとコトミがニシキ博士の研究所を出ると、トモヤがいた。 トモヤ「マサト君、コトミちゃん。よかったら、私も一緒に、ニシキ博士の夢を叶えるお手伝いをさせてもらえないだろうか?」 マサト「喜んで!」 コトミ「こちらこそ、よろしくお願いします!」 こうして、マサト達は、次なる特別な宝石、サファイアを探す旅に出発するのであった。 (※1)「点字の描写について」 アニメでは、点字については言及されていませんが、便宜上アニメの世界にも点字が存在しているものとします。 (※2)「おふれのせきしつについて」 アニメではホウエン編においておふれのせきしつが出現しなかったため、おふれのせきしつを所在不明としましたが、 ルビー・サファイア・エメラルド同様キナギタウンの沖合にあるものとします。 Chapter-6に続く。 <初出> (1):2008年8月14日、(2):2008年8月24日、(3):2008年9月7日、いずれも旧ぽけあに掲示板にて掲載。 2009年12月20日、本サイト投稿・登録掲示板に掲載。