Chapter-13『5のしま!四天王カリンと思い出の塔!!』 (1) 4のしまでミキと別れたマサト達は、次の目的地・5のしまに向かう船に乗っていた。 マサトの新しい仲間・ユキワラシもボールから出て、外の風を浴びていた。 と、前方に高くそびえる山が見えてきた。 マサト「あれが5のしま?」 トモヤ「違うよ。あれはへそのいわと言うんだ。」 コトミ「へそのいわ?」 トモヤ「そうだよ。マサト君、ポケナビを貸してごらん。」 マサトはトモヤにポケナビを貸した。トモヤはポケナビの地図を示しながら続けた。 トモヤ「今私達がいるのはちょうどこの辺り、4のしまと5のしまの間の海域だね。・・・そして、ナナシマは7つの主な島から構成されていて、 ちょうど地図に当てはめると、ナナシマのほぼ真ん中に位置していることになるんだ。そこにこの大きな岩山がそびえていることから、この岩山は へそのいわと呼ばれているんだ。」 マサト「それで、へそのいわはどうなっているんですか?中に入れるんですか?」 トモヤ「内部は洞窟になっているそうで、一説には、奥には伝説のポケモンがいると言われているんだけど、それが本当かどうか、確かめた人は 誰もいないんだ。私もかつて、ルビーやサファイアを探していた時も、この辺りには立ち寄らなくてね。」 コトミ「そうだったんですか・・・。でももしかしたら、伝説のポケモンと一緒に、まだ誰も見たことがないような秘宝が眠っているのかも しれないですね。ダイヤモンドやパールにつながる手がかりとか・・・。」 マサト「そういう手がかりを1人で探しに行くなんて、やっぱりミキさんはすごいなぁ。」 トモヤ「そうだね。でも私は思うんだけど、へそのいわにはきっと何かがある気がするんだ。それで、いつか私も足を運んでみたいって思ってるんだ。」 マサト達が語っている間にも、船はへそのいわを通り過ぎ、やがて視界から遠ざかっていった。 航海は順調に進み、船は5のしまの港に到着した。 5のしまはいくつかの島から形成されている地域で、「緩急の流れ、時の島」と言われている。 島に着いたマサト達は、まずポケモンセンターに向かった。するとそこでは、ジョウトリーグのチャンピオン防衛戦の模様がテレビで放送されており、 まさしく試合が始まろうとしているところだった。 実況「さあ、カントーリーグの四天王にして、ジョウトリーグのチャンピオン、そしてポケモンGメンでもあるワタルのチャンピオン防衛戦が始まろうと しています。今回ワタルに挑むのは、ジョウトリーグ四天王にして全国初(※1)のくさタイプ四天王、ルリカです!」 マサト「あ、ルリカさんだ!そしてワタルさんも!」 コトミ「ワタルさんってドラゴン使いでしょ?ルリカさんはくさタイプが多いから、相性では悪いと思うわ。大丈夫?」 トモヤ「こればっかりはバトルしてみないと分からないな・・・。」 ワタル「行くぞ、ギャラドス!」 ワタルはかつてジョウトでゲットした赤いギャラドスを繰り出した。 ルリカ「行くわよ、モジャンボ!」 ルリカはモジャンボを繰り出した。 マサト達が見守る中、ワタルとルリカのジョウトリーグ・チャンピオン防衛戦が始まった。果たして、この勝負の行方は・・・。 (2) ジョウトリーグ・チャンピオン防衛戦、ワタルとルリカのバトルが繰り広げられる様子を、マサト達は5のしまのポケモンセンターでテレビ観戦していた。 しかし、ドラゴン使いのワタルの強さは圧倒的で、ルリカのポケモンは次々と戦闘不能に追いやられ、最後の1匹、メガニウムになってしまった。 対するワタルは満を持してカイリューを繰り出した。 ルリカ「メガニウム、げんしのちから!」 メガニウムがげんしのちからを放った。ひこうタイプを併せ持つカイリューに対して、あえて同タイプながら効果今ひとつのくさタイプの技を使わず、 効果抜群のいわタイプの技を使う作戦だろう。 ワタル「カイリュー、はかいこうせん!」 カイリューがはかいこうせんを放った。はかいこうせんはげんしのちからを打ち破り、そのままメガニウムにクリーンヒット。メガニウムは何と一撃で 戦闘不能になってしまった。 審判「メガニウム、戦闘不能。カイリューの勝ち!」 マサト「メガニウムがたった一撃で!?」 コトミ「やっぱりワタルさんって強いんだね。あのルリカさんがほとんど歯が立たなかったわ・・・。」 トモヤ「タイプの違いかもしれないが、まだワタルさんにかなうレベルではなかったということか・・・。」 マサト達がチャンピオン防衛戦を観戦している間に、預けていたポケモンはすべて回復していた。 ジョーイさんからポケモンを受け取り、ポケモンセンターを出ると、一人の女性がマサト達に声をかけてきた。 女性トレーナー「今のワタルさんのバトル、見た?」 マサト「はい、見させていただきました。」 コトミ「ルリカさんもよく戦ってましたけど、でもワタルさんもあれだけ強いんだなぁって思いました。上には上がいるって、改めて実感しました。」 女性トレーナー「確かにワタルさんは強いけど、でもルリカさんもまだまだ強くなれると思うわ。いつも私たちと一緒に修行しているのよ。」 マサト「と言うことは・・・?」 女性トレーナー「申し遅れたわね。私はカリン。ジョウトリーグの四天王を務めてるのよ。」 マサト「初めまして。僕、マサトです。」 コトミ「あたし、コトミです。」 トモヤ「私はトモヤと言います。」 カリン「マサト君って言ったわね。ルリカさんから聞いたわ。4のしまでカンナさんと一緒にマルチバトルに付き合ってくれたそうね。」 マサト「いえ、それほどでもなかったです。あの時は最後は引き分けでしたけど、僕が足を引っ張ってしまったみたいで・・・。」 カリン「ううん。マサト君とミキさんのコンビネーション、とてもすばらしかったって言ってたわ。ルリカさんにとって、ミキさんはかけがえのない 親友であり、またライバルでもあるのよ。お互いにまた高め合えたって、嬉しそうに言ってたわ。」 コトミ「カリンさんも、ミキさんのことをご存じなんですか?」 カリン「ええ。私も前に一度、ミキさんとバトルしたことがあるのよ。私、あくタイプを中心に使ってるんだけど、私のブラッキー、得意なはずの ミキさんのエーフィに全然かなわなかったわ。でも、それでいてポケモン達のことを本当に考えている、そんな気がしたわ。」 トモヤ「それでカリンさんは、今回どうして5のしまに足を運ばれたんですか?」 カリン「この島にはね、思い出の塔って言う、トレーナーとポケモンが過去を振り返り、未来に道を描く施設(※2)があるのよ。私、5のしまに 立ち寄った時にはいつも訪れることにしてるの。よろしかったら、マサト君達も行ってみる?」 一同「はい!」 (3) マサト達は、ジョウトリーグの四天王・カリンに案内され、5のしまから少し離れた小島にある思い出の塔を訪れていた。 カリン「ここが思い出の塔よ。」 マサト「ここですか。・・・何かしっかりした作りになっていますね。」 コトミ「これまでの道を振り返って、未来を考える、そう言ったイメージがありますね。」 トモヤ「私も、いろいろなところを回ってきたんですが、ここはまだ行ったことがなかったんです。」 カリン「ここから中に入れるわよ。行ってみる?」 一同「はい。」 カリンに案内されて中に入っていくと、中はこの塔を訪れたトレーナーとポケモン達の写真がたくさん飾られていた。 ナナシマはもちろん、カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウなどからも多くのトレーナーが訪れており、写真に足跡を残していた。 マサト「あ、ミキさんも訪れたんだね。」 マサトの言う通り、写真の1つにはミキが訪れた時の写真が飾られていた。エーフィをはじめ、その時連れていたであろうポケモンに囲まれた ミキが笑顔で写っている。 カリン「ええ、ミキさんも私と一緒にここを訪れて、その時にこうやって写真を飾ったのよ。・・・これはルリカさんが訪れた時のものよ。」 少し離れたところにはルリカが訪れた時の写真が飾られていた。これも笑顔のルリカが、メガニウムをはじめとするその時の手持ちであろうポケモンに 囲まれている。 カリン「そしてこれは以前私が訪れた時のものよ。」 やや離れたところにカリンが訪れた時の写真があった。ブラッキーをはじめ、ヤミカラス、ラフレシア、ヘルガー、ゲンガーと一緒に写っている姿があった。 カリン「繰り返しになるけど、この塔は、ポケモンとトレーナーがこれまでの道を振り返って、未来を探るという意味で建てられたのよ。トレーナーと ポケモン、それぞれの出会いがあり、またそれぞれの思い出があるのよ。」 マサト「じゃあ、僕たちもポケモンと一緒に写真を撮ってもいいですか?」 カリン「ええ。ここはそのためにあるのだから、みんなと一緒に撮るといいわ。」 マサト「よーし!じゃあ、みんな行くよ!」 コトミ「あたしも!みんな出ておいで!」 トモヤ「じゃあ私もだ!出てこい!」 マサトはガバイト、スリーパー、ユキワラシを、コトミはナックラーを、トモヤはニドキングとゴルバット、そしてドクロッグをそれぞれ繰り出した。 そしてマサトとコトミのキルリアがそれぞれ肩から下りてきた。 マサト「あれっ、トモヤさんって、ドクロッグも持ってたんですか?」 トモヤ「ああ。このドクロッグは、私がかつてシンオウでゲットしたポケモンだよ。まだゲットしたときはグレッグルだったんだけど、進化して かなり強くなったんだよ。」 コトミ「トモヤさんって、どくタイプのポケモンが多いんですね。」 トモヤ「それはよく言われることだね。私は本当はほかのタイプのポケモンも持ってるんだけど、一番多く育ててるのはどくタイプだね。初めての パートナーがニドキングだからということもあるけど、どくタイプが一番多くいるんだ。」 と、コトミが持っていたタマゴが突然光り始めた。4のしまでルリカにもらった、あのタマゴだ。 コトミ「タマゴが光り出したわ!」 マサト「もしかしてポケモンが生まれるのかな?」 トモヤ「ああ、多分そうだよ。」 カリン「コトミちゃん、そのタマゴはどこでもらったの?」 コトミ「4のしまです。マルチバトルの後でルリカさんにもらったんです。」 と言っている間にタマゴが孵り、ポケモンが生まれた。イーブイだった。 コトミ「イーブイだわ!」 マサト「お姉ちゃんも、こうやってタマゴからイーブイが生まれたんだ。今ではグレイシアになって、コンテストでも活躍しているんだ。」 カリン「マサト君のお姉さんって、確か『ホウエンの舞姫』って言われてるハルカちゃんだったわね。」 マサト「はい。」 カリン「ハルカちゃん、マサト君やサトシ君と一緒に冒険して、ポケモンコーディネーターとしての実力をつけたみたいね。ハルカちゃんって、 確かサトシ君達と別れた後、ジョウトに行かれたんでしょ?」 マサト「そうです。その時僕はホウエンに帰ったんです。」 カリン「私、1度ジョウトのコンテストを見る機会があったんだけど、ハルカちゃん、コーディネーターとしてずいぶん成長していたわ。 今ではトップコーディネーターとして活躍されているそうね。マサト君なら、きっとハルカちゃんにも負けない実力をつけられると思うわ。」 マサト「ありがとうございます。」 カリン「コトミちゃん、イーブイは育て方によって進化にもバリエーションがあるのよ。例えば、なついていて夜に進化すると、私のと同じブラッキーに、 昼間に進化すると、ミキさんが持っているエーフィになるのよ。」 コトミ「そして、ほのおのいしでブースター、かみなりのいしでサンダース、みずのいしでシャワーズ、キッサキシティの氷の岩でグレイシア、 ハクタイの森にある苔の岩でリーフィアになるんでしたね。」 カリン「そうよ。コトミちゃん、イーブイを大切に育ててね。」 コトミ「はい。」 そう言っている間に写真撮影の準備が出来た。マサト達は一人一人順番に写真を撮影してもらった。 生まれたばかりのイーブイも、コトミと一緒に写真に写って、微笑んでいた。 思い出の塔を出ると、カリンはマサト達に聞いてきた。 カリン「マサト君達は、これからどうなされるの?」 マサト「僕たちはこの5のしまを回ってみようと思うんです。」 コトミ「あたし達、1のしまのニシキ博士の夢である、ネットワークマシンを完成させるための特別なサファイアを探しているんです。」 トモヤ「6のしまに眠ると言われているサファイア。その手がかりがこの島にあるかもしれないんです。それで今、ミキさんもたんじょうのしまに 向かっているんです。」 カリン「みんなも夢に向かって進んでいるんだね。強いポケモン、弱いポケモン、そんなの人の勝手。本当に強いトレーナーなら、好きなポケモンで 勝てるようにがんばるべき。マサト君達、ちゃんと理解しているようね。それと、ルリカさんが皆さんによろしくっておっしゃってたわ。」 マサト「ありがとうございます。」 こうして、カリンはジョウトリーグに戻って行った。そして、コトミは新しい仲間・イーブイを加えたのであった。 次の目的地は、5のしまの北にあるリゾート地・ゴージャスリゾートだ。そこでは、どのような出会いが、マサト達を待っているのだろうか。 (※1)「四天王の手持ちについて」 現段階において、くさタイプを使う四天王は存在しておらず、また第5世代以降に登場する可能性も残されていますが、ここではルリカがくさタイプの 四天王として描写されていることから、ルリカをくさタイプ使いで初めての四天王とすることにします。 (※2)「思い出の塔について」 ファイアレッド・リーフグリーンでは、トレーナーがかつて使用していたイワークの「イワキチ」の墓という設定ですが、ここでは 訪れたトレーナーがポケモンと歩んだ過去の道の中から未来を探るという交流施設として存在することにします。 Chapter-14に続く。 <初出> (1):2009年5月31日、(2):2009年6月2日、(3):2009年6月9日、いずれも旧ぽけあに掲示板にて掲載。