Chapter-18『へんげの洞窟!トップコーディネーター・ユカリ登場!!』 (1) マサト達は、みどりのさんぽみちからポケモンに乗り、6のしまの最北部、へんげのどうくつのあるはずれの島に向かっていた。 マサト「あれがへんげのどうくつだね。」 トモヤ「ああ。今や名前の由来も知れないけど、このへんげのどうくつは、中も割と広いことから、トレーナーやコーディネーターの隠れた特訓の場と しても知られているんだよ。」 コトミ「そうなんですか。マサト、もうすぐバトルチャンピオンシップスも行われることだし、お互いにバトルしてみるのもいいかもね。」 マサト「そうだね。」 マサトがそこまで言った時、洞窟の中から強烈な水が打ち出されてきた。ハイドロポンプだ。 ハイドロポンプはマサト達に向かって一直線に突っ込んできた。 マサト「危ない!サーナイト、サイコキネシス!」 サーナイトはサイコキネシスを放った。ハイドロポンプはあわやというところで向きを変えていった。 コトミ「マサト、大丈夫?」 マサト「うん。びっくりしたなぁ。」 と、洞窟の中から一人の女性が現れ、マサト達に向かって声をかけてきた。 女性トレーナー「ごめんなさい。大丈夫でしたか?」 マサト「はい、大丈夫です。」 女性トレーナー「よかった。あたしのカメックス、ハイドロポンプの勢いが強すぎて外まで行ってしまって。でも無事でよかったわ。 あなた達はトレーナー?」 マサト「はい。僕、マサトです。」 コトミ「あたし、コトミです。」 トモヤ「私はトモヤと言います。」 女性トレーナー「あたしはユカリ。周りではトップコーディネーターって言われてるけど、まだそこまで言われるほどの実力はないって思ってるわ。 確かマサト君って、ハルカちゃんの弟さんでしょ?」 マサト「お姉ちゃんのこと、知ってるんですか?」 ユカリ「うん。あたし、3年前にジョウト地方で行われたポケモンコンテストでハルカちゃんとバトルしたのよ(※1)。まだあの時はあたし、 コンテストに参加したばっかりだったけど、よく育てられてるって感じがしたわ。」 コトミ「それでユカリさんは、ポケモンコーディネーターになろうって思ったんですか?」 ユカリ「そうよ。それであたし、自分の実力を磨きたくて、いろんなところを回ったの。そして去年、ホウエン地方のグランドフェスティバルで 優勝したのよ。」 マサト「ユカリさん、凄いですね!」 ユカリ「ううん。確かにグランドフェスティバルを優勝して、トップコーディネーターって言われたけど、でもあたし、今のままで満足している 訳じゃなくて、まだまだ前に進めるって思ってるわ。シンオウのコンテストに出場した時、ポケモンリーグとポケモンコンテストの両方に挑戦していた ミキさんにこう言われたの。『トレーナーやコーディネーターに一番大切なのは、自分のポケモンを信じること』って。」 マサト「ユカリさんって、ミキさんのこと、知ってるんですか?」 ユカリ「うん。ミキさんとはシンオウのグランドフェスティバルでも対戦したのよ。あの時はあたしが負けちゃったんだけど、今ではお互いに いいライバルよ。こうして前に進もうとしているのは、あたしだけじゃない。ミキさんやルリカさんも、あたしが見ていないところで、さらなる高みに 向かって、日々努力しているんだと思うと、あたしだって負けていられないと思うわ。」 コトミ「えっ、ユカリさんもルリカさんのこと、知ってるんですか?」 ユカリ「うん。あの時のグランドフェスティバルに応援にきてくれて、その時に仲良くなったのよ。ルリカさん、今ではジョウトリーグの四天王に 上り詰めたけど、きっとルリカさんならポケモンリーグのチャンピオンにもなれるって、あたしは思ってるわ。」 トモヤ「ライバル同士、バトルが終われば皆が友達になれる。私もその通りだと思います。こうして今、ナナシマを巡っているんですけど、 ポケモンが友情をつなぐって、本当にすばらしいことだと思います。」 ユカリ「そうね。よろしかったら、あたしのトレーニングを見ていきません?」 一同「はい!」 (2) 6のしまの北にあるへんげのどうくつを訪れたマサト達は、トップコーディネーターのユカリのトレーニングを見せてもらうことになった。 ユカリ「さっきはごめんなさいね。この子があたしのカメックスよ。」 カメックスは一声上げると、みずでっぽうで水のシャワーをやって見せた。 マサト「すごいですね。」 コトミ「みずでっぽうでこれほどまで美しく見せることが出来るって、きっと相当な努力をなされたんですね。」 ユカリ「うん。努力って言うほどではないけど、でも技をより美しく見せるためには、たくさんの経験が必要になると思うわ。でも、無理や焦ることは しないで、ポケモン達を信じてやっていれば、きっと出来るって、あたしは思ってるわ。」 トモヤ「あれはれいとうビームですね。」 トモヤが言っていたのを見ると、そこではジュゴンがれいとうビームを放っていた。れいとうビームはやがて1つの形となり、大きな氷の固まりとなった。 ユカリ「あたしのジュゴンよ。こおり技が得意なのよ。」 コトミ「あ、コータスですね。何をするのかしら。」 ユカリ「見ていて。あの氷の固まりで像を造ってみせるわ。コータス、お願いね!」 コータスはかえんほうしゃを放った。 かえんほうしゃは氷を溶かさない程度に調整されており、見る見るうちに像が次第に形作られていき、カメックスの氷像となった。 マサト「カメックスの氷像だ!」 コトミ「きれいね。見ているだけでも美しい演技だって分かるわ。あたしもこんな美しい演技、やってみたいわ。」 ユカリ「今度、7のしまで行われるナナシマ・バトルチャンピオンシップスって、マサト君達は参加するの?」 マサト「はい。でも今、僕たちは1のしまのニシキ博士に頼まれて、ネットワークマシンを完成させるための特別な宝石、サファイア、ダイヤモンド、 パール(※2)を探しているんです。」 コトミ「バトルチャンピオンシップスは2か月後ですし、それまでにネットワークマシンを完成させたくて、今こうしてあたし達もナナシマを巡って いるんです。そして、今ダイヤモンドやパールの手がかりを探しに、ミキさんもたんじょうのしまに行っているんです。」 トモヤ「私も昔、この6のしまにサファイアがあると聞いて巡っていたんですけど、その時は大した手がかりを見つけることは出来なかったんです。 それで今回、マサト君とコトミちゃんも一緒になって探してくれているんです。」 ユカリ「そうだったんだ。バトルチャンピオンシップスは、ナナシマで行われる初めてのポケモンリーグ公式大会だけど、それだけじゃないわ。 ポケモンコンテストの大会も一緒に行われるのよ。コトミちゃん、コンテストに出て、ポケモンコーディネーターを目指すんだったら、 是非出てみたらどう?」 コトミ「本当ですか?それならあたしも出てみたいわ。えっ、ユカリさんも出られるんですか?」 ユカリ「うん。あたしも出て、優勝を目指すつもりよ。コトミちゃん、いいライバルになれそうね。」 コトミ「はい。でもあたし、まだコンテストをやったことはないですけど、でもやれるだけのことはやってみたいと思います。」 ユカリ「そうね。誰だって初めてのときは緊張するわ。あたしも初めてコンテストに出た時がそうだったわ。マサト君は?ハルカちゃんの弟さんって事は、 ホウエンのトウカジムのリーダー、センリさんのお子さんでしょ?」 マサト「はい。僕も出たいです。かつて僕もお姉ちゃんやサトシ達と一緒に旅してて、『早くトレーナーになって、ポケモンリーグに出たい!』って 言ったのを覚えてます。」 ユカリ「そうだったんだ。マサト君はサトシ君やハルカちゃん達と一緒に旅してた時って、まだ自分のポケモンが持てなかったんだもんね。今では ポケモントレーナーとして十分実力をつけてると思うわ。きっとマサト君なら、いいバトルが出来ると思うわ。」 マサト「ありがとうございます。」 ユカリ「そういえば知ってる?ルリカさん、バトルチャンピオンシップスの実況の隣で、ゲスト解説としてアシスタントをするのよ。」 コトミ「ルリカさんが?」 ユカリ「うん。ルリカさんが言ってたんだけど、バトルチャンピオンシップスの広報部長さんが直々にお見えになって、その時にゲスト解説して欲しいって お願いしたそうよ。あたしはコンテストに出るつもりだけど、実況の横でゲスト解説って、なかなか出来ない事よ。バトルチャンピオンシップスで久々に 会うのが楽しみだわ。」 マサト「僕もです。前に4のしまでマルチバトルでルリカさんとカンナさんを相手にバトルしたんですけど、ルリカさん、とても手強かったです。 やっぱり四天王は違うなぁって思いました。」 ユカリ「そうだったんだ。お互いにライバルがいる。そしてお互いを高めあうことが出来る。互いに実力を認めあえることは、トレーナーとして、 またコーディネーターとしても誇りになるって、あたしは思ってるわ。」 トモヤ「さすがはトップコーディネーター。いいことを言いますね。ところで、ユカリさんはこれからどうなされるんですか?」 ユカリ「あたしはこれから7のしまに行って、バトルチャンピオンシップスに向けてトレーニングをするつもりよ。マサト君達はどうするの?」 マサト「僕たちはかつてトモヤさんが言ってた、6のしまの南の遺跡の谷に行ってみようと思うんです。きっと特別なサファイアが、あの中に あると思うんです。」 ユカリ「そうなんだ。マサト君達なら、きっとサファイアを、そしてダイヤモンドとパールを見つけて、ネットワークマシンを完成できると思うわ。 あたしも応援するわ。それじゃ、バトルチャンピオンシップスで会いましょう!」 こうして、マサト達はバトルチャンピオンシップスでの再会を約束してユカリと別れ、遺跡の谷に向かった。 果たして、トモヤがかつて求め、ネットワークマシンを完成させるために必要となったサファイアは、その地に眠っているのであろうか。 (※1)「ジョウト地方のコンテストについて」 これを書いている時点で、アニメではジョウトのコンテストについて詳しい描写はありませんが、ハルカはミクリカップの時点でリボンを3つ ゲットしていることから、トモヤ・ミキ同様、これらのコンテストのいずれかでバトルしているものとします。 (※2)「ダイヤモンドとパールについて」 ハートゴールド・ソウルシルバーではナナシマが登場しない上、最初からダイヤモンド・パール・プラチナと通信交換が可能なため、ダイヤモンドと パールも登場しませんが、ここでは引き続き特別な宝石としてダイヤモンドとパールが存在することとします。 Chapter-19に続く。 <初出> (1):2009年9月19日、(2):2009年9月27日、いずれも旧ぽけあに掲示板にて掲載。