Chapter-20『へそのいわ!ロケット団幹部・ケイ登場!!』 (1) マサト達は、6のしまの点の穴で手に入れたサファイアを携えて、1のしまのニシキ博士の元を訪れた。 マサト「ニシキ博士、お久しぶりです。」 ニシキ博士「おお、マサト君達。うん、ネットワークマシンを完成させるためのサファイアだね。では、ルビーのときみたいにネットワークマシンに 取り付けることにしよう。」 ニシキ博士はネットワークマシンのくぼみ、ちょうどルビーの反対側にサファイアを取り付けた。 するとネットワークマシンが作動を始めた。どうやら各地のネットワークと接続を開始したようだ。・・・間もなくして、画面に「ネットワークマシン・ 通信レベル1。カントー地方・ジョウト地方・ホウエン地方との通信準備完了(※)」という表示が出た。 ニシキ博士「・・・マサト君達、ありがとう。これでネットワークマシンもカントーやジョウト、ホウエンと通信ができることになった。でもまだ これで終わりではない。次はいよいよ、ダイヤモンドとパールだね。ところで、ナナシマを回ってダイヤモンドとパールの手がかりはつかめたかな?」 ミキ「はい。たんじょうのしまの遺跡に、ダイヤモンドとパールのありかが記されていました。点字で書かれていたのですが、それによると4のしまと 5のしまの間、へそのいわに眠っているそうです。」 コトミ「それであたし達、これからへそのいわに行くことにしているのですが、6のしまの遺跡でロケット団と名乗る一味に遭遇して、危うくサファイアを 奪われそうになってしまったんです。」 トモヤ「あのとき、連中はナナシマに眠る超古代文明がどうとか言っていました。おそらく、ネットワークマシンを完成させるほどの力を秘めている 宝石ですので、連中にしてみれば超古代文明を甦らせるのにダイヤモンドとパールが必要なのかもしれません。」 ニシキ博士「ロケット団か・・・。ホウエン地方ではかつてマグマ団とアクア団が超古代ポケモン・グラードンとカイオーガを甦らせようとして 失敗したことがある。そしてシンオウ地方では、ギンガ団がシンオウ時空伝説に語り継がれるディアルガとパルキアを操ろうとした。ロケット団も ナナシマに眠ると言われている古代文明を現実のものにしようとしているのか・・・。」 と、そこに1人の女性が現れた。 女性の声「すみません。ネットワークマシンを完成させるのに努力なされているというニシキ博士とは、あなた様のことでしょうか?」 ニシキ博士「はい、そうです。もしかしてあなたも、私たちのプロジェクトに協力していただけると?」 女性の声に一同は振り返った。その姿にマサト達は言った。 マサト・コトミ・トモヤ・ミキ「ルリカさん!」 ルリカ「まあ、みんな!もしかしてみんなもネットワークマシン完成のために協力してくれてるの?」 ニシキ博士「えっ、マサト君達って、ルリカさんのこと、知ってらっしゃるんですか?」 マサト「知ってるも何も、4のしまでルリカさんとカンナさんを相手に、僕とミキさんがマルチバトルをやったんです。そしてミキさんは、かつて ホウエンリーグでルリカさんとバトルされた経験があり、ミキさんとルリカさんは親友にしてライバルなのだそうです。それで、今度行われる ナナシマ・バトルチャンピオンシップスには、ルリカさんもゲスト解説として実況の横でアシスタントをなされるそうなんです。」 ニシキ博士「そうか。それなら私が言うまでもない。ルリカさんに説明してもらった方が早そうだね。」 ルリカ「うふふっ。それじゃあ私からも説明するわね。私もニシキ博士に頼まれて、ネットワークマシンを完成させるために必要な宝石を見つけるのに 協力して欲しいって頼まれてたの。マサト君達も知ってるとおり、ミキさんはダイヤモンドとパールの手がかりを探すためにたんじょうのしま。 そして私はへそのいわに行くことになってたのよ。そうしたら、もうルビーとサファイアがネットワークマシンに収まってたのね。いよいよ 最後の段階ねって思ったわ。」 マサト「えっ、でもへそのいわに行って、バトルチャンピオンシップスに間に合うんですか?」 ルリカ「うん。だってマサト君やミキさん達がここまで協力してくれたおかげで、後はへそのいわに行くだけってなったんでしょ?だから十分間に合うと 思うわ。気になるのは、マサト君達が6のしまで見かけたって言うロケット団のことだけど・・・。」 トモヤ「連中は、ナナシマの超古代文明を甦らせるためにダイヤモンドとパールが必要みたいなことを言っていました。おそらくへそのいわには、 ロケット団の精鋭が向かっているかもしれません。ルリカさんやミキさんみたいな腕の立つトレーナーが一緒なのは心強いですが、でも 気を引き締めて向かわないと。」 ニシキ博士「分かった。なら、これを持って行くといいだろう。」 ニシキ博士はそう言うと腕時計のようなものを取り出した。ポケギアだ。 ニシキ博士「これはポケギア。この中には通信機能が搭載されていて、相手と話もできる。一人ずつ持っていれば、もしものときにお互いに連絡を 取り合うことができるだろう。」 一同「ありがとうございます!」 こうして、マサト達はニシキ博士からポケギアを譲り受けてもらい、へそのいわに向かった。 しかし、早くしないとロケット団がダイヤモンドとパールを狙って向かうのは間違いない。果たして、マサト達は無事にダイヤモンドとパールを 手に入れることはできるのだろうか。 (2) マサト達一行は、ニシキ博士が用意してくれた船に乗り、ナナシマのほぼ中央に位置するへそのいわに向かっていた。 ミキがたんじょうのしまの遺跡で見た点字によると、へそのいわに眠るダイヤモンドとパールを、ホウオウとルギアが守っているのだという。そして、 ロケット団もそれを狙って向かっているのだろう。 ニシキ博士「へそのいわは、ナナシマに眠る超古代文明の鍵を握る場所かもしれない。もしダイヤモンドとパールがロケット団の手に渡れば、この世界は 大変なことになってしまうかもしれないだろう。現にかつて、ギンガ団がディアルガとパルキアを甦らせたときは、シンオウ地方が消滅の危機に瀕した ほどだったんだ。ネットワークマシンを完全なものにするために必要な、特別な宝石といわれているものだから、何としてでもダイヤモンドとパールを ロケット団の手に渡さずに、私に渡して欲しい。頼みますよ!」 一同「はい!」 その船を海中から1隻の潜水艦が捉えていた。しかしその潜水艦はムサシやコジロウが使うコイキング型の潜水艦ではない。いかにもロケット団の 潜水艦といった造りだった。 そして潜水艦を1人の男が指揮していた。ケイだ。 ロケット団員A「1隻の船が南に向かっています。おそらくへそのいわに向かっているのは間違いないかと。」 ロケット団員B「今ここであの船を攻撃しますか?」 ケイ「その必要はない。たっぷりと泳がせておいて、へそのいわに誘い出すのだ。そして超古代文明の復活を、指をくわえて見ているがいい。 はっはっは・・・。」 そう言うと潜水艦はスピードを上げ、海中からマサト達の乗る船を追い越していった。 やがてマサト達の乗った船は、へそのいわに到着した。 へそのいわは、中央に大きな岩山がそびえており、その高さは見上げるほどである。そして内部は大きな空洞になっており、内部の奥深くにダイヤモンドと パールが眠っているといわれている。そして、この宝石を守るポケモンが、ジョウト地方でも伝説のポケモンとして知られている、ホウオウとルギア なのだろう。点字の記述によれば、さらにこの下にも洞窟が続いているという。 ミキ「あたしがたんじょうのしまで見た点字では、空に続く山と海に続く洞窟の向こうに、それぞれ虹のポケモンと海のポケモンがいて、ダイヤモンドと パールを護っていると書いてありました。・・・もしかしたら二手に分かれて行動した方がいいかもしれないわね。」 ニシキ博士「そうかもしれない。あれを見てくれ。」 ニシキ博士はそう言うと船の反対側を指さした。それはロケット団の潜水艦らしく、船体に「R」の表記がされている。 ニシキ博士「もうこの島にロケット団が上陸しているということは、あれを見ても明らかなとおりだ。私は船に残って連絡を待つことにしよう。」 トモヤ「私もニシキ博士と一緒に、ここで連絡をまとめることにします。よろしいですか?」 ニシキ博士「私のサポートをしてくれるのか?ありがとう。それじゃあ、よろしく頼むよ。」 ルリカ「ミキさんの言う通りね。じゃあマサト君、私と一緒に来てくれる?」 マサト「はい。」 ミキ「じゃあ、コトミちゃんはあたしと一緒に来てくれるかな?」 コトミ「よろしくお願いします。」 トモヤ「何かを見つけたら、私のポケギアに連絡すれば、対応ができると思うよ。・・・それじゃあ気をつけて!」 マサト・コトミ・ミキ・ルリカ「はい。行ってきます!」 マサト達はへそのいわの洞窟に足を踏み入れていった。 へそのいわは、かつてナナシマに存在していたという超古代文明の名残を色濃くとどめているのか、それまでマサト達がナナシマの各地で見た洞窟とは 明らかに内部の様子が違っていた。 ミキ「ここは洞窟っていうより、古代の遺跡といった感じね。あたしがたんじょうのしまで見た遺跡も、これと似た造りだったわ。 この大きな山全体が、ホウオウとルギアをまつる巨大な祭壇といっても言い過ぎではないと思うわ。」 マサト「たんじょうのしまって、そう言う遺跡が広がっていたんですね。ともしび山に眠っていたルビーは、火山活動で出来た洞窟の中でしたし、 サファイアは古代の遺跡の中でした。」 コトミ「そしてダイヤモンドとパールは古代文明の中心みたいな場所ですね。大昔の人たちは、きっとこの場所がナナシマの中央に位置している ことから、神聖な場所として捉えていたんでしょうね。」 ルリカ「きっと、全国各地にある数々の遺跡も、そう言った神聖な場所として捉えられていたんだと思うわ。時空伝説の舞台となったテンガン山はちょうど シンオウ地方の中央部に位置しているし、今私たちがいるこのへそのいわも、ナナシマの中央に位置しているわ。位置している場所も きっと関係しているのかもしれないわね。」 なおも進むと、大きな広間みたいな場所に出た。見ると、一方は上に続く階段が延びており、もう一方は下に続く階段がある。すなわち、 片方は虹のポケモンと言われるホウオウ、もう片方は海のポケモンと言われるルギアに続く道だろう。 マサト「道が2つに分かれてるね。」 コトミ「きっと一方に行くと、ダイヤモンドかパールの片方が眠っていて、もう片方はもう一方が眠っているんだと思うわ。」 ミキ「あたしとコトミちゃんは下の方に行ってみるわ。」 ルリカ「じゃあ、私とマサト君は上に行くわね。何か起きたら、お互いにポケギアで連絡を取り合うことにしましょう!」 マサト・コトミ「はい!」 こうして、マサト達は二手に分かれてダイヤモンドとパールを探すことになった。 遺跡に見え隠れするロケット団の影をかいくぐり、マサト達はダイヤモンドとパールを手に入れることが出来るのだろうか。 (3) へそのいわの内部は大きな遺跡になっており、途中で道は二手に分かれていた。1つは空に届く岩山、もう1つは海の底につながる洞窟に つながっていると考えられた。一行はダイヤモンドとパールのありかを手分けして探すことになり、マサトとルリカは上の岩山、コトミとミキは下の洞窟に 向かうことになった。 岩山から頂上に続く道は、長い階段が続いていたが、それでも空が丸く見えており、青空が広がっていた。 マサト「ここはやっぱり、この島全体が1つの大きな遺跡になっていたんですね。」 ルリカ「そうね。私はこう思うんだけど、かつて栄えていた超古代文明っていうのはこのナナシマを中心に、カントー地方からジョウト地方、 そして恐らくシンオウ地方まで広がっていたんだと思うわ。ジョウト地方にも、シンオウ地方とのつながりを示す遺跡があるのよ。」 マサト「えっ、ジョウトにもシンオウとつながる遺跡があるんですか?」 ルリカ「うん。チョウジタウンとフスベシティをつなぐ44番道路からちょっと山あいに入ると、ジョウトでも有数の豪雪地帯が広がっているわ。 その雪の中に、シント遺跡って言う古代の遺跡があるの。そこには、シンオウ地方の伝説のポケモン、ディアルガ、パルキア、そしてギラティナの 絵が描かれていて、かつてシンオウの人がジョウトに移り住み、故郷の言い伝えを刻んだって言われているのよ。」 マサト「そうだったんですか・・・。確かディアルガは時間、パルキアは空間を、そしてギラティナはこの世界の反対側、反転世界を司るというのを 聞いたことがありました。ジョウトにもそういう遺跡があるんですね。」 ルリカ「きっと古代の人にとって、ルギアやホウオウ、そしてディアルガとパルキアって言うのは、とても重要なポケモンだったって思うわ。さあ、 もう少しで頂上に着くわよ。もしかしたらロケット団がダイヤモンドやパールを狙ってやってきているかもしれないし、慎重に行きましょう!」 マサト「はい!」 一方、こちらは下の方向、海につながる洞窟に足を踏み入れていったコトミとミキ。 コトミ「薄暗いわね。やっぱりこの奥って、海の底につながっているのかしら。」 ミキ「そうかもしれないわ。ここはあたしに任せて。行ってらっしゃい、レントラー!」 ミキはレントラーを繰り出した。 コトミ「レントラー?」 コトミはポケモン図鑑を取り出してチェックした。 ミキ「うん。シンオウ地方に多く生息しているポケモンよ。でもゲットしたのは、あたしがホウエンに行ったとき、ミシロタウンの港でだったわ。 ゲットしたときはまだコリンクだったんだけど、きっとシンオウからの船の中に紛れていて、心細かったんだと思うわ。すぐにあたしになついてきたのよ。」 コトミ「そうだったんですか・・・。こうして見てみると、何もポケモンの生息範囲って、1つの地方に限った話ではないんですね。」 ミキ「そうね。レントラー、フラッシュで明るくして!」 レントラーはフラッシュを放った。明るい光が辺りを照らし出した。 ミキ「コトミちゃん、この辺りから下に続く階段になっているわ。気をつけてね!」 階段は果てしないほど下に向かって続いていた。そして下に降りていくたび、海のにおいが近くなっているのが感じ取れた。それでも下に降りていくと、 眼前に海が広がっているのが見えた。おそらくはこの洞窟の最深部だろう。 コトミ「ここがへそのいわの最深部・・・?」 ミキ「そうかもしれないわね。あ、コトミちゃん、あれを見て!」 ミキがある1点を指さした。そこには何か、まばゆい光を放つ宝石が置かれていた。ネットワークマシンを完成させるために必要な宝石の1つ、 特別なパールだろう。 コトミ「あっ・・・!」 ミキ「きっとそうに違いないわ。特別なパールよ!」 コトミとミキはそのパールに近づいた。 と、そのときパールが海に向かって一筋の光を放ったではないか。 ミキ「何!?」 コトミ「どうしたの!?」 さらにポケギアに通信が入る。声の主はマサトだった。 ミキ「マサト君!」 コトミ「マサト、大丈夫!?」 マサト「今、岩山の頂上から、一筋の光が放たれたんです!・・・」 そのころ、ようやくへそのいわの頂上にたどり着いたマサトとルリカは、1人の男が何やら宝石のようなものを手に取り、海に向かって 光を放っているのを見た。 マサト「そこで何しているんだ!」 ルリカ「その宝石は、ネットワークマシンを完成させるのにとても重要な役割を持っているのよ!今すぐ渡しなさい!」 男「誰かと思ったら、報告に載っていた小僧!それにジョウトリーグの四天王まで!そう言って、はいそうですかと渡してたら、 俺たちロケット団の名が廃るぜ!」 マサト「ロケット団だと!?」 男「そうとも。俺はロケット団の幹部にして、ナナシマ支部長のケイだ!この島に眠る特別なダイヤモンド、それは今この俺のものになったのだ!」 ルリカ「許せない!マサト君、行くわよ!」 マサト「はい!」 ケイ「それはどうかな?岩山の頂に眠るダイヤモンド、そして海の底に眠るパール。2つが共鳴して、今、ナナシマの超古代文明が甦るのだ! お前たちは2人そろって、超古代文明の復活に立ち会うがいい!はっはっは・・・!」 見ている間に、へそのいわからやや離れた沖合から大きな光の柱が立ち、いかにもこれから何かが起こりそうな予兆を告げた。 果たして、何が起ころうとしているのか。そしてマサト達は、ケイの手に落ちたダイヤモンドを取り返すことはできるのだろうか。 (※)「ネットワークマシンの通信レベルについて」 ファイアレッド・リーフグリーンでは、カントー地方との通信準備が完了したのが通信レベル1、ネットワークマシンが完成してホウエン地方とも 通信可能になるのが通信レベル2でしたが、ここではカントー・ジョウト・ホウエンと通信完了になるのがレベル1、シンオウ・オレンジ諸島と 通信完了になるのがレベル2とすることにします。 Chapter-21に続く。 <初出> (1):2009年10月20日、(2):2009年10月24日、(3):2009年10月25日、いずれも旧ぽけあに掲示板にて掲載。