Chapter-25『アスカナ遺跡!アンノーンでドッキリ!?』 (1) マサト達がたどり着いたアスカナ遺跡。それは7のしまの最南端に位置しており、7つの石室で構成されている。 ミキやルリカの話によると、この遺跡は今から1500年ほど前、ジョウト地方にあるアルフの遺跡とほぼ同じ頃に作られたらしいが、誰が何のために 作ったのかは今を持って分かっていないという。 マサト「ところで、7つの石室ってどういう意味があるの?」 トモヤ「アスカナ遺跡は、西から順にオリフ、アヌザ、コトー、アレボカ、ユゴ、ナザン、イレスと呼ばれる石室があるんだ。7つの石室があることから、 ナナシマのそれぞれの島と対応しているのではないかって言われてるんだけど、詳しいことはまだ何も分かっていないんだ。」 ミキ「でも、調べた人によると石室の中に不思議な模様が刻まれていることから、その模様も何か関係しているんじゃないかって言われているわ。」 コトミ「不思議な模様・・・?」 ミキ「うん。あたしがシンオウを回っていたとき、ズイタウンにあるズイの遺跡でも不思議な模様が刻まれているのを見たことがあるわ。もしかしたら アスカナ遺跡の模様も、それと関係しているんじゃないかって思ってるわ。」 レイカ「何か、全く別の場所にある遺跡が遠い地方の遺跡と関係しているんじゃないかって、古代人の知識って今の私たちを遥かに上回って いたのかなぁって思いますね。」 トモヤ「そうだね。じゃあ、行ってみることにしようか?」 一同「はい!」 マサト「行け、ギャラドス!」 コトミ「行くわよ、ミロカロス!」 トモヤ「出番だ、ニドキング!」 ミキ「行ってらっしゃい、ラティオス!」 マサト達はそれぞれ海を渡るポケモンを繰り出した。 マサト「ん?レイカちゃんは?」 レイカ「私も持ってるんだよ!お願い、ルンパッパ!」 レイカはルンパッパを繰り出した。 コトミ「この子がルンパッパなんだ!よろしくね!」 コトミはポケモン図鑑を取り出してチェックした。 レイカ「うん!じゃ、行きましょう!」 マサト達はポケモンに乗り、まず一番西にあるオリフの石室に向かった。 オリフの石室は、アスカナ遺跡を形作る石室の一番西にある。中は点の穴で見た点字の仕掛けもなく、そのまま入っていくことが出来た。 マサト「何もないみたいだね・・・。」 コトミ「あっ、でも壁に何か模様が刻まれているわ。」 コトミは壁を指さした。そこには何か、アルファベット(※)にも似た模様の文字が刻まれている。 ミキ「やっぱりだわ。ズイの遺跡でも見たのと似ているわね。南の果てのナナシマ、北のシンオウ地方。同じ流れの文明がこの地にも刻まれていたのね。」 トモヤ「ん?・・・よく見てごらん。この文字はアルファベットのZに似ているね。そしてこれはびっくりマーク(エクスクラメーションマーク、「!」)と 似ている。そしてこれを形作るのは・・・。」 ミキ「間違いないわ。これはアンノーンよ!」 マサト「アンノーン?」 マサトもポケモン図鑑を取り出してアンノーンをチェックする。 ミキ「アンノーンは、その形自体に何か意味があるのではないかって言われているポケモンよ。あたしが見たズイの遺跡では、入り口にディアルガと パルキアの像が置かれていたわ。シンオウ時空伝説に象徴されるポケモンがある遺跡にアンノーンと似た模様が描かれていたことから、伝説のポケモンと アンノーンも関係があるんじゃないかって考えられてるわ。」 コトミ「アンノーンと伝説のポケモン・・・。全く関係なさそうですけど、言われてみるとそうじゃないかって思いますね。」 と、そのときマサト達のすぐ後ろのアンノーン文字が鈍く光った気がした。誰も気づかなかったが、それは果たして、気のせいだったのだろうか。 (2) アスカナ遺跡の西端にあるオリフの石室に入ったマサト達。壁にはアンノーン文字が刻まれており、この遺跡とアンノーンに関係があることを伺わせていた。 マサト達が知らない間に後ろのアンノーン文字が鈍く光った気がしたのだが、当のマサト達は全く気がつかない。 コトミ「古代の遺跡とアンノーンって、もしかしたら深いつながりがあるのかもしれないですね。」 マサト「もしかしたら、ジョウト地方のアルフの遺跡も、アンノーンと何かしらの関係があるのかもしれませんね。」 ミキ「多分そうだと思うわ。アルフの遺跡にも、壁にアンノーンが描かれているって聞いたことがあるの。あたしは行ったことがないんだけど、 いかりのみずうみの奥にあるシント遺跡も、アンノーンと関係があると言われているわ。」 マサト「シント遺跡のお話なら、以前ルリカさんに聞いたことがあるんです。シンオウ地方の人たちがジョウトに移り住んだとき、自分たちの故郷のことを 遺跡に残したと言われているって聞きました。」 ミキ「まあ。マサト君も知ってたのね。シント遺跡はジョウトでも有数の豪雪地帯にあるんだけど、ちょうどシンオウで言うとテンガン山と似た気候に なっているわ。アンノーンと関係があるって言われている遺跡は全国各地にあるみたいだけど、このアスカナ遺跡もその1つだと言われているわ。 でもどこの遺跡が大元なのかは未だに分かっていないから、ポケモン考古学者の間でも議論になっているわ。」 と、そのときレイカが妙な声を上げた。 レイカ「何、今の!?」 マサト「どうしたの?」 レイカ「今、あのアンノーンが光った気がしたの!」 レイカは後ろの壁を指さした。・・・が、とりたてて何も変わった様子は見受けられない。 トモヤ「アンノーンって・・・?レイカちゃん、何も変わった様子は見られないけど?」 レイカ「でもさっき、アンノーンが光った気がしたの!」 レイカがそこまで言ったとき、今度は壁一面のアンノーンが光り始めたではないか。 マサト「光った!?」 トモヤ「やっぱり、このアンノーンは生きていたのか!?」 コトミ「何が始まるの!?」 と、壁中のアンノーンが突如として妙な光を放ち始めた。めざめるパワーだ。 マサト「めざめるパワーにはめざめるパワーで勝負だ!」 と言いながらマサトはヒトカゲを繰り出そうとする。しかしアンノーンの大群の方が早かった。壁中のアンノーンが一斉にめざめるパワーを放ったのだった。 マサト「サーナイト、テレポート!」 サーナイトがテレポートを放った。間一髪テレポートの方が早く、マサト達は難を逃れたのだった・・・。 マサト「うっ・・・。」 気がつくとマサトは倒れていた。横にはサーナイトもいた。 マサト「あれ?コトミは?レイカちゃんは?・・・トモヤさんとミキさんは?」 辺りを見回してみてもコトミ達の姿は見受けられない。代わりに壁のアンノーン文字が少し変わっていた。アルファベットのB、M、V、W、Xの字と似た アンノーン文字が刻まれていた。 果たして、マサトはどこに飛ばされてしまったのだろうか。そして、コトミ達とは合流できるのだろうか。 (3) アンノーンの大群に囲まれ、サーナイトのテレポートで難を逃れたマサト達。しかしどういう訳か、マサトはほかの仲間達とはぐれてしまった。 と、そこにポケギアに通信が入った。コトミだった。 コトミ「マサト!大丈夫!?」 マサト「うん。周りに誰もいないんだけど、コトミは今どこにいるの?」 コトミ「分からないわ。でもアンノーンの文字がさっきと違うの。F、G、Y、T、Kの字と似ているわ。」 マサト「トモヤさん達は?」 コトミ「ううん。この場所にいるのはあたしだけだわ。どこに行っちゃったのかしら・・・。そうだ、ポケギアで連絡を取ってみるわ。マサトもそうして!」 マサト「うん、やってみる!」 マサトはそう言うと通信を切った。が、間髪を入れずに別の連絡が入った。ミキだった。 ミキ「マサト君、大丈夫?」 マサト「うん。ミキさんは今どこ?」 ミキ「さっきとはアンノーンの文字が違うところにいるわ。そうね、アルファベットで言うとL、P、R、Q、Jの文字に似ているわ。 レイカちゃんも一緒よ。」 レイカ「マサト君!いきなりアンノーンがめざめるパワーを放ったからびっくりしたわ。みんなバラバラになっちゃったみたいだけど、 でも合流できるよね?」 マサト「うん!」 ミキ「こういうときは、まず一度外に出てみるといいかもしれないわ。マサト君のいるところは、出口みたいなのはある?」 マサト「はい。」 ミキ「じゃあ外に出てみて。何か分かるかもしれないわ。あたし達も外に出てみるわね。」 ミキの指示に従ってマサトは石室の外に出てみた。そこは、さっき入ったはずのオリフの石室とは明らかに違っていた。 そこにポケギアに通信が入る。トモヤだった。 トモヤ「マサト君!今どこにいるんだ?」 マサト「さっき入ったのとは別の石室に出たみたいです。アンノーン文字も入ったときと全く違うものになっていました。」 トモヤ「そうか。アルファベットで言うとどういう字に似ていた?」 マサト「B、M、V、W、・・・それからXの字と似ていました。」 トモヤ「そうか。そこはアヌザの石室だね。」 マサト「アヌザの石室?」 トモヤ「さっき私たちが入ったオリフの石室からちょっと東に行ったところにある石室だよ。みんなの話を総合すると、コトミちゃんが飛ばされたのは コトーの石室、ミキさんとレイカちゃんが飛ばされたのはアレボカの石室だね。」 マサト「トモヤさんは?」 トモヤ「私が飛ばされたのはユゴの石室だよ。アルファベットで言うとI、N、E、Sの文字と似ている。 そうか、みんなバラバラに飛ばされたんだな・・・。」 マサト「えっ、じゃあどうすればいいですか?」 トモヤ「まずは一度この石室に集まろう。私はコトミちゃんに連絡を入れる。マサト君はミキさんとレイカちゃんに連絡してもらえないか?」 マサト「はい!」 しばらくして、5人が飛ばされた中では一番東にあるユゴの石室にマサト達が到着した。 マサト「アンノーンの大群はどうして僕たちを攻撃したんだろう・・・。」 コトミ「きっとあたし達、この遺跡を荒らす人に間違われたんじゃないかって思うわ。」 トモヤ「確かに、永い眠りを妨げたとすれば私たちを攻撃しても不思議ではない。でもあのアンノーン達、それだけではなかったと思う。」 レイカ「あのアンノーン達、もしかしたら何かを伝えたかったんじゃないかって思うの。」 ミキ「あたし達がこの遺跡を訪れたのと、あのアンノーン達が反応しているのは何か関係があるのかもしれないわ。あたし達は一番西のオリフの石室から 入って、アヌザ、コトー、アレボカ、ユゴの石室に飛ばされたわ。そしてまだ残っているのは、ナザンの石室とイレスの石室よ。残る2つの石室に 謎が隠されているんだと思うわ。行ってみましょう!」 一同「はい!」 こうしてマサト達は、遺跡のアンノーンの謎を探るべく、アスカナ遺跡最後の2つの石室、ナザンとイレスの石室に向かうことになった。 果たして、この遺跡にはどう言った謎が隠されているのだろうか。 (4) アスカナ遺跡を形作る7つの石室。マサト達はその中の1つ、ナザンの石室に足を踏み入れた。 ナザンの石室にもやはりアンノーンをかたどった文字が刻まれている。アルファベットでいうと、C、D、H、O、Uの字と似ている。 マサト「ここもアンノーンの文字が刻まれているんだね。」 コトミ「アンノーンって、アルファベットに形が似ているんでしょ?それなら26種類いるはずだわ。」 トモヤ「そうだね。これまでの情報を総合すると、私たちはエクスクラメーションマーク(「!」)を含めて26種類のアンノーンを見ていることになる。 残るイレスの石室にはアルファベットのA、そしてクエスチョンマーク(「?」)の2種類がいることになるね。」 レイカ「となると、アンノーンって全部で28種類いることになるんでしょ?でも1つ1つがアルファベットや記号と似ているから、別のポケモンと 言うことにはならないの?」 ミキ「そうはならないと思うわ。例えば、同じポケモンでも外見によって形が変わることがあるわ。ミノムッチはくさき、すなち、ゴミの3つのミノを まとっていて、♀が進化してミノマダムになると、そのときまとっていたミノをまとうことになるの。そして、幻のポケモンと言われているシェイミは、 グラシデアの花の花粉を浴びることで、ランドフォルムからスカイフォルムにフォルムチェンジするわ。ポケモンの生態は、あたし達にまだ 知られていないことも多くあるし、まだその解明に至っていないところも多いけど、だからこそポケモンの研究が続けられているんだと思うわ。」 レイカ「ミキお姉ちゃん、本当にいろんなことを知ってるのね。さすがはルリカお姉ちゃんのお友達だね。」 ミキ「うふふっ。でもあたし達が知らないことも、まだたくさんあるのよ。世界にはまだ知られていないポケモンがいるかもしれないし、 まだ知らない進化をするポケモンもいるかもしれないわ。ポケモンっていうのは、一括りでまとめることができないところもまだあるし、 あたし達が知っているのはほんの一部分にすぎないかもしれないわ。ポケモンと一緒の冒険、それは終わることのない、あたし達の、そして かけがえのない仲間達との物語なのよ。」 レイカ「うん!」 トモヤ「次はいよいよ最後の石室だね。残るはイレスの石室。行ってみよう!」 一同「はい!」 マサト達が石室を出るとき、壁に刻まれていたアンノーンが1体、不思議な光を放った気がしたが、マサト達が気づくことはなかった。 そしてマサト達は、アスカナ遺跡最後の石室であるイレスの石室に足を踏み入れた。 イレスの石室は、他の6つの石室とは違い、一段高いところに作られている。この石室がアスカナ遺跡の最も重要な遺跡なのだろうか。 マサト達が予想したとおり、壁にはアンノーンのAとクエスチョンマークが刻まれていた。 と、マサト達が入るのを待っていたかのごとく部屋中のアンノーンが一斉に光り始めた。 マサト「何!?」 コトミ「何が始まるの?」 トモヤ「待って。アンノーンは何かを伝えたいみたいだ!」 トモヤの言うとおり、アンノーンが何かを伝えたいのか、光を交互に放っている。しかもすべてのアンノーンが集まりはじめ、意味のある文章に しようとしているではないか。 ミキ「あたし達が遺跡で見たアンノーンがすべて集まっているわ。きっとアンノーンは自分たちの光をローマ字に変換して伝えようとしているのよ!」 マサト「ローマ字で?」 ミキ「うん。読んでみるわ。・・・『friend subeteno inochi ha betsuno inochi to deai nanika wo umidasu』」 (「『フレンド』・・・すべての命は、別の命と出会い、何かを生み出す」) ミキ「間違いないわ。あたしがかつて訪れたズイ遺跡と同じことを言っているわ!」 トモヤ「ズイ遺跡!?・・・そうか、シンオウ地方にある遺跡か!」 コトミ「すべての命は別の命と出会い、何かを生み出す・・・。遠く離れた2つの地方に、同じ文化が根付いていたのね。」 マサト「ホウエンの点字文明とシンオウのアンノーン文明、この2つがナナシマでつながっていたんだね・・・。」 レイカ「私たち人間、そしてポケモン達、考えてみれば別の命と出会って、新しい仲間が生まれ、そしてポケモンバトルやポケモンコンテスト、 ブリーダーと、人間とポケモンとの間、そして私たち人間同士、またポケモン同士の間にたくさんの絆が生まれていく。終わることのない、 たくさんの絆が、ね・・・。」 マサト「アンノーン、僕たちが君たちの眠りを妨げていたんだったら申し訳なかった。このことは僕たちの胸にしまっておくことにするよ。」 アンノーン達はマサトの言葉が通じたのか、石室の中を飛び回りながらやがて消えていった。 マサト達はイレスの石室を出た。すでに日は傾き始めており、西の空は赤く染まっている。 トモヤ「アンノーン達、最後に私たちに対して、『ありがとう』って言っていた気がしたな・・・。」 レイカ「古代の文明も、きっとアンノーンが守っていたのかもしれないわね。うん、バトルチャンピオンシップスが終わったら、私も本格的に 旅に出てみたいわ!」 マサト「そうしたら僕もライバルになるんだね!」 ミキ「さあ、もうすぐバトルチャンピオンシップスが始まるわ!これまでの冒険で得た実力、それを試す場としてふさわしいと思うわ。みんな、 気を引き締めていきましょう!」 一同「はい!」 〜挿入歌・『OK!』が流れる〜 7のしまの南端・アスカナ遺跡で、アンノーンの不思議に触れたマサト達。古代文明と関係のあるとされるポケモンは、マサト達にも命の大切さを 教えてくれたことだろう。 さあ、次はいよいよナナシマ・バトルチャンピオンシップスだ。負けられない戦いが、いよいよ始まる。 (※)「アルファベットについて」 アニメでは、無印のごく初期を除いて現実の世界に登場する文字はほとんど使われていませんが、ここでは点字同様、 アルファベットも使われていることにします。 Chapter-26に続く。 <初出> (1):2009年12月8日、(2):2009年12月19日、(3):2009年12月20日、 (4):2009年12月26日、いずれも旧ぽけあに掲示板にて掲載。本項までが旧ぽけあに公開枠。