Chapter-26『バトルチャンピオンシップス開幕!チルタリスのりゅうせいぐん!!』 (1) マサト達は、再びしっぽうけいこくを抜けて7のしまの港に到着した。 バトルチャンピオンシップスの開幕が間近に迫っているせいか、たくさんのトレーナーやコーディネーターの姿が見受けられた。 コトミ「そう言えば、バトルチャンピオンシップスの会場ってどこになるの?」 トモヤ「ここをまっすぐ行ったところになるんだ。バトルチャンピオンシップスは、あそこに見えるトレーナータワーを中心に会場が整備されていて、 西側がバトル大会、東側がコンテスト大会の会場になるんだ。そして、互いの会場を行き来できる手段も整っていて、バトル大会に出た人がコンテスト大会に 出る友人を応援しにいく、またはその逆も出来るんだよ。」 レイカ「トレーナータワー?」 ミキ「うん。もともとトレーナータワーは、中にいるトレーナーとバトルしながら1階から屋上までのタイムを測る、タイムアタックバトルで有名な ところなの。さすがに期間中はタイムアタックバトルは行われないけど、バトルの設備が整っていたから、バトルチャンピオンシップスの会場としても 使われるんだと思うわ。」 マサト「たくさんの設備を揃えたと言うことは、もしかしたらナナシマでもポケモンリーグやグランドフェスティバルが行われるかもしれないですね。」 ミキ「そうよ。今回のバトルチャンピオンシップスを皮切りとして、ナナシマにもポケモンリーグが作られるのよ。ポケモンリーグが行われたら、 次はグランドフェスティバルも行われると思うわ。そのときはあたしも挑戦してみたいって思ってるわ。」 マサト「ナナシマにもポケモンリーグが出来るんですね。そうしたら僕も挑戦したいなぁ。」 トモヤ「でも、まだジムリーダーやバッジの数も定まっていないし、出来るとしたらしばらくかかると思うよ。だけど、これまでナナシマはポケモンリーグや コンテストも行われていなかったから、これでナナシマのレベルの向上にもつながると思うよ。」 マサト「大会のルールはどうなってるの?」 ミキ「バトル大会はダブルバトル形式で、お互いのトレーナーが4匹をエントリーしてバトルするのよ。そしてコンテスト大会は、一次審査は ダブルパフォーマンスで、二次審査はコンテストバトル形式で行われるのよ。バトル大会がダブルバトル中心になっているということを考えると、 戦略的な要素も重要になると思うわ。コンテスト大会はダブルパフォーマンスで行うから、使用するポケモンのコンビネーションにも気を配った 方がいいかもしれないわね。」 コトミ「ダブルパフォーマンス?」 ミキ「ポケモン2匹で演技する形式のことよ。あたしが出場するコンテストでも、たまにダブルパフォーマンスで行うことがあるわ。2匹同時に演技を 進めるから、上手く行けばかなりな演技が望めるけど、反対に2匹とも指示が上手くかみ合わないとかなり難しい展開になるのがダブルパフォーマンスの 特徴よ。コトミちゃんはコンテストに出るのは初めてでしょ?難しいかもしれないけど、でもやってみる価値はあると思うわ。」 コトミ「うん!」 と、そのとき花火とおぼしき火の玉が打ち上がり、地面に向かって落ちていくのが見られた。りゅうせいぐんだ。 マサト「あれは!?」 トモヤ「りゅうせいぐんだ!ドラゴンタイプ最強の技だよ。あれを使いこなすと言うことは、あのポケモン、相当鍛えられてるぞ!」 コトミ「見てみたいわ!もしかしたらコンテストの技の参考になるかもしれないし。行ってみましょう!」 一同「はい!」 (2) マサト達が見たりゅうせいぐん。それを打ち上げたのは、バトルチャンピオンシップスの会場に続く道からやや横にそれたところにある海辺だった。 そこでは一人の女性がポケモン――チルタリスにりゅうせいぐんの特訓を行っていた。 コトミ「さっきのりゅうせいぐんって、もしかしてあなたのポケモンがやってたの?」 女性トレーナー「ええ。バトルチャンピオンシップスのコンテスト大会に出るつもりで、こうして特訓してたのよ。もしかしてあなた達も出るの?」 マサト「はい。僕、マサトです。」 コトミ「あたし、コトミです。」 トモヤ「私はトモヤと言います。」 ミキ「あたしはミキ。よろしくね!」 レイカ「私はレイカです。よろしくお願いします!」 女性トレーナー「私はサヤカ。カントーのセキチクシティから来たの。実は私、まだコンテストは出たことがなくて、今回が初めてなのよ。」 コトミ「あたしも初めてなんです。あたしも、今回コンテスト大会に出ようと思っているんですけど、ポケモンリーグにも出たいって思っているんです。」 サヤカ「まあ。お互いに初めての挑戦なのね。コンテストはバトルとは全然違うし、単にポケモンをどれだけ美しく見せることができるかや、 上手な演技ができるかだけでは勝ち抜くことはできない。だけど、そこにはバトルとはまた違ったポケモンの見せ方があるのよ。」 ミキ「サヤカさん、初めてにしてはコンテストバトルの心得をわきまえているのね。あたしもポケモンリーグとコンテスト、両方の道を極めようと思って、 いろんな地方を回ってるのよ。あたしはバトル大会に出ようと思ってるけど、あなたとはいいライバルになれそうね。」 サヤカ「ありがとう。ところでマサト君にトモヤさん、レイカちゃんっておっしゃってたわね。あなた達はバトル大会?それともコンテスト大会に出るの?」 マサト「僕たちはバトル大会に出るんです。僕もこういう大会に参加するのは今回が初めてですけど、いつかはポケモンリーグに出たいって 思っているんです。」 レイカ「バトル大会もコンテスト大会と一緒で、みんながライバルになるんです。でも一つ一つの経験が、トレーナーとして、またコーディネーターと しての成長につながると思うんです。」 サヤカ「まあ。レイカちゃん、いいことを言ってくれるのね。誰に教わったの?」 レイカ「ルリカお姉ちゃんに教わったんです。今回のバトル大会では、お姉ちゃん、ゲスト解説として実況の横でアシスタントをするんです。」 サヤカ「あのジョウトリーグのルリカさん?みんな、すごい方とお知り合いなのね!私、羨ましいわ。」 ミキ「それほどでもないわ。これでもあたし、以前ホウエンリーグでルリカさんとバトルしたのよ。結果はあたしが負けちゃったんだけど、でもお互いに いいライバルよ。そう言えば、サヤカさんはりゅうせいぐんを特訓してたんでしょ?なかなか良くできてたわ。」 サヤカ「ううん。まだこれでも上手くいってないのよ。確かにりゅうせいぐんはドラゴンタイプでも指折りの技だけど、 それだけ上手く使いこなすのが難しい技でもあるの。」 コトミ「じゃあ、あたし達も一緒に協力していいですか?」 サヤカ「はい!よろしくお願いします!」 (3) マサト達は、ドラゴンタイプ最強の技・りゅうせいぐんを使いこなそうとするサヤカのチルタリスと一緒に特訓することになった。 マサト「行け、ガブリアス!」 マサトはガブリアスを繰り出した。 コトミ「行くわよ、フライゴン!」 コトミはフライゴンを繰り出した。 サヤカ「まあ。あなた達もドラゴンタイプのポケモンを持ってたのね。よろしくね!」 ガブリアスとフライゴンは一声挙げた。 サヤカ「じゃあ行くわよ!チルタリス、りゅうせいぐん!」 チルタリスはりゅうせいぐんを放った。 高く打ち上がったりゅうせいぐんは上空で無数の方向に分かれていき、やがて下に落ち始めた。 マサト「ガブリアス、ドラゴンクロー!」 コトミ「フライゴン、りゅうのいぶき!」 ガブリアスはドラゴンクローでりゅうせいぐんを打ち返した。一方のフライゴンもりゅうのいぶきを放つ。 サヤカ「うん、なかなか良くできてるわ!」 マサト「そうですか?」 サヤカ「うん!それじゃあもう1回行くわよ!チルタリス、りゅうせいぐん!」 チルタリスが再びりゅうせいぐんを放った。 と、それを見よう見まねでガブリアスとフライゴンもりゅうせいぐんを放ったではないか。 マサト「ガブリアス!?」 コトミ「フライゴンもりゅうせいぐんが使えるの!?」 が、勢いよく打ち上がったチルタリスとは違い、ガブリアスとフライゴンの放ったりゅうせいぐんは小振りな上、コントロールもままならないせいか、 マサト達の方に向かって落ち始めたではないか。 マサト「危ない!」 と言いながらマサトはサーナイトに指示を出そうとする。が、そのときだった。 女性の声A「メガニウム、エナジーボール!」 女性の声B「カメックス、ハイドロポンプ!」 どこからともなくエナジーボールとハイドロポンプが放たれたかと思うと、コントロールがままならなかった2つのりゅうせいぐんに命中、大爆発が起きた。 レイカ「エナジーボールとハイドロポンプ!?」 サヤカ「誰がやったの?」 マサト達は技が放たれた方向を見た。 そこではルリカとユカリがマサト達に向かって手を振っていた。 レイカ「ルリカお姉ちゃん!」 トモヤ「ユカリさん!」 ルリカ「うふふっ!」 ユカリ「大会に備えて特訓してたのね!」 サヤカ「あなたがルリカさん?そちらの方は・・・?」 ミキ「ユカリさんって言うの。あたしとルリカさんはポケモンリーグのライバルで、ユカリさんとはコンテストのライバルなのよ。」 サヤカ「すごいわ、皆さん、そういう方とお知り合いだなんて。初めまして。私、サヤカです。」 ルリカ「こちらこそ初めまして。私はルリカ。よろしくね!」 ユカリ「初めまして。あたしはユカリ。仲良くしてね!」 ルリカ「今のりゅうせいぐん、見せてもらったわ。サヤカさんっておっしゃってたわね。なかなかいいパフォーマンスになると思うわ。」 ユカリ「マサト君にコトミちゃんも、見よう見まねかもしれないけど、結構コツをつかんでると思うわ。」 マサト「まだまだです。コントロールもままならないですし、エナジーボールやハイドロポンプがなかったら僕たちが大変なことに なってたかもしれないです。」 ユカリ「ううん。誰だっていきなり上手に出来るって言うことはないわ。最初は失敗を繰り返すかもしれないけど、そうやって上手になっていくのよ。」 コトミ「そうですね。・・・フライゴン、大会までにはりゅうせいぐんを使いこなせたらいいね!」 フライゴンはうなずいた。 マサト「ガブリアス、僕たちも特訓して、大会までにマスターしよう!」 ガブリアスも一声あげた。 トモヤ「みんなも大会に向けて意気込んでるね。さあ、一緒に優勝に向かって進んで行こう!」 ルリカ「私も実況席から応援するわね。張り切っていきましょう!」 〜挿入歌・『Together』が流れる〜 ルリカはそう言うと手を出した。マサト達は手の上に手を載せて円陣を組み、健闘を約束した。 実行委員長「ではこれより、ナナシマ・バトルチャンピオンシップスを開始致します。選手諸君、正々堂々、悔いのないバトルと演技を期待します!」 こうして、ナナシマ初のポケモンバトルとポケモンコンテストの祭典、ナナシマ・バトルチャンピオンシップスが幕を開けた。 バトル大会に参加するのは、マサト、トモヤ、ミキ、レイカを含めて2048人。コンテスト大会に参加するのは、コトミ、ユカリ、サヤカを含めて 1536人と発表された。この中からバトル大会は予選ラウンドを、コンテスト大会は一次審査を戦い、 256人が決勝トーナメントと二次審査に駒を進める。 果たして、激戦の果てに勝ち残るのは、誰になるのだろうか。 Chapter-27に続く。 <初出> 全編書き下ろし。