Chapter-28『挑戦!ダブルバトルとダブルパフォーマンス!!』 (1) ナナシマ・バトルチャンピオンシップスも開幕2日目を迎え、バトル大会予選ラウンドとコンテスト大会一次審査はますます盛り上がりを見せていた。 マサト達の今日の予定は、バトル大会予選ラウンドにマサトが出場することになっており、続いてバトル大会にミキが出場、 そしてコンテスト大会一次審査にはコトミが出場することになっていた。 ミキ「マサト君、今日はあたし達が試合に出るわね。お互いに勝ち進んで、決勝トーナメントに進出しましょう!」 マサト「はい!僕だって負けませんよ!」 コトミ「そしてあたしはコンテストね。昨日のユカリさんみたいな演技、あたしもできたらいいわ。でもここまで来たら、もう後戻りはできない。 だからあたしとあたしのポケモン達を信じて、全力でやっていくだけよ!」 ルリカ「みんな、その意気よ。そうでなければ私も解説席に座っていられないわ。やるっきゃないんだもんね!」 トモヤ「そう言えば、次の対戦相手はもう出ているんでしょうか?」 ルリカ「そうね。トモヤさんの次の対戦相手はホウエン地方・ミナモシティのヒロトキ選手ね。私も昔ホウエンリーグで対戦したんだけど、 なかなか手強い相手だったわ。そしてケイコさんは、シンオウ地方・マサゴタウン出身のエイスケ選手とバトルすることになるわ。 相手も手強いかもしれないけど、でも全力でぶつかってね!」 トモヤ・ケイコ「はい!」 ミキ「マサト君、あたし達も試合が始まるから、行きましょう!そうしないと失格になっちゃうわ!」 マサト「はい!」 ルリカ「私も実況の打ち合わせがあるから、一緒に行きましょう!」 トレーナータワーの下でルリカと別れ、マサト達はバトル大会の会場に到着した。 昨日はトモヤの試合を見学するだけだったが、今日は実際に会場の中に入ってバトルをすることになる。マサトにしては初めての本格的な大会だった。 ミキ「マサト君、どう?緊張してない?」 こういう本格的な大会に始めて出場すると言うことからか、ミキがマサトの方を向いて言った。 マサト「大丈夫です。僕もこうして大会に出場するんだと思うと、わくわくします。サトシ達と一緒に旅してたときは、まだ自分の ポケモンも持てないときだったんですけど、今こうして大会に出場するってなると、確かに不安もありますけど、でも期待しているんです。」 ミキ「そうね。誰だって、初めての経験って言うのは不安にならないって言ったら変なことになるかもしれないけど、でもそうやって、 1つ1つの経験を積んで、トレーナーとして、またコーディネーターとして成長していくのよ。あたしも新人トレーナーだった頃はいろんな不安や 緊張が入り交じってたけど、いろんな地方を回って、たくさんの経験を積んでいって、あたしなりのスタイルを築けたと思うわ。新しいこと、 それをまだやったことがないからと言って取りかからなかったら、そこまでで何も成長しないわ。でも始めてみると、いろんな経験がある。 いろんな成長を得ることができる。一人一人、トレーナーとして、またコーディネーターとして、道はそれぞれ違うかもしれないけど、 たくさんの経験と成長の積み重ねが人を大きくしていくのよ。」 マサト「はい。」 ミキ「さあマサト君、初めてこういう大会に出るんでしょ?しっかりバトルしてね!あたし達も応援してるわね!」 マサト「そして次はミキさんが試合に出るんですね。僕も応援します。お互いに決勝トーナメントに進出しましょう!」 ミキ「うん!」 イチロウ「さあ、バトル大会2日目、最初の試合に登場するのは、ホウエン地方・トウカシティ出身のマサト選手と、ジョウト地方・キキョウシティ出身の キイチ選手です!マサト選手は、トウカジムのジムリーダー、センリさんのお子さんにして、『ホウエンの舞姫』の呼び名も高いトップコーディネーター・ ハルカさんの弟さんでもあります。さらに世界的なポケモンマスター・サトシさんともお知り合いだそうです。 ルリカさん、マサトさんとは親交が深いそうですが?」 ルリカ「はい。4のしまでカントー四天王のカンナさんと私を相手に、次の試合に出るミキ選手がマサト選手と一緒にバトルしたんです。 ジムリーダーのお子さんと言うこともあり、なかなかレベルが高い試合運びを見せていましたね。」 イチロウ「かつて、まだ自分のポケモンを持てなかった頃からポケモンリーグの試合を見に行き、そこでポケモンバトルの楽しさ、面白さを学んだという マサト選手とキイチ選手。その実力が今試されるときです!」 キイチ「君がセンリさんのお子さんか。相手にとって不足はない。初めての大会、ここで終わるか上に上るか、全力でバトルしよう!」 マサト「僕だって負けない!勝ち進むのは僕だ!」 審判「それでは、試合開始!」 さあ、マサトにとって初めての大会、初めての公式試合が幕を開けた。相手はどういった戦術を使うのだろうか。そしてマサトは、この試合を 勝ち進むことはできるのだろうか。 (2) 〜挿入歌:『スパート!』が流れる〜 ナナシマ・バトルチャンピオンシップスのバトル大会、マサトにとって初めての公式大会の試合が幕を開けた。相手はキキョウシティのキイチだ。 マサト「行け、ヒトカゲ、ガブリアス!」 マサトはヒトカゲとガブリアスを繰り出した。 キイチ「ヒトカゲとガブリアスか。よく育てられているな。なら俺はこいつだ!行け、ドータクン、ドーブル!」 キイチはドータクンとドーブルを繰り出した。 コトミ「ドータクンとドーブル?」 コトミはポケモン図鑑を取り出してドータクンとドーブルをチェックする。 トモヤ「ドータクンが持っている特性はふゆうかたいねつ。ふゆう特性はじめんタイプの技が命中しないんだ。一方のたいねつ特性は、ほのおタイプの 技の威力を半分にするんだ。どの特性かはっきりしないのがドータクンの特徴でもあるんだ。」 ミキ「そしてドーブルは、スケッチするだけが取り柄と見せかけて、スケッチしたありとあらゆる技を使いこなす、変幻自在のポケモンよ。マサト君、 初戦からかなり難しい相手と当たってしまったわね。」 サヤカ「じゃあマサト君、勝てるのかしら・・・?」 ユカリ「それはマサト君自身にかかってるわ。マサト君、油断しないでね!」 キイチ「ドータクン、トリックルーム!」 ドータクンがトリックルームを使った。 イチロウ「おおっと!ドータクン、トリックルームを使いました!しばらくの間時空がゆがんで、素早さの遅いポケモンが早く行動できるという 摩訶不思議な技であります!」 ルリカ「トリックルーム。その名の通りトリッキーな技ですが、これとドーブルを合わせて、キイチ選手はどういった試合運びをするのでしょうか? ここにも注目したいですね。」 マサト「(トリックルームか・・・。確かに素早さは遅くなるけど、でも必ず先制攻撃できる技なら。)ヒトカゲ、ドーブルにでんこうせっか!」 ヒトカゲがでんこうせっかでドーブルに突っ込んでいく。 キイチ「ドーブル、まもる!」 ドーブルがまもる体制に入った。まもるに阻まれたでんこうせっかは失敗した。 キイチ「ドーブル、続いてガブリアスにキノコのほうし!」 ドーブルがキノコのほうしをばらまく。 マサト「ガブリアス、穴を掘ってかわせ!」 ガブリアスは間一髪穴を掘って地中に潜り、キノコのほうしをかわした。 ルリカ「キノコのほうしは相手を眠らせることができる技で、しかも眠らせる技にしてはかなりな頻度で命中するんです。あなをほるで ガブリアスがかわしたのはマサト選手の立場にしてみれば正解だったと思いますね。」 イチロウ「なるほど。しかしトリックルームの効果はまだ続いています。マサト選手はこの状況からどう攻めていくのでしょうか?そしてキイチ選手は どういった策を練っているのでしょうか?」 キイチ「ドータクン、地面に向かってラスターカノン!」 ドータクンが地面にラスターカノンを放つ。衝撃でフィールドに穴が開き、ガブリアスの姿があらわになってしまった。 マサト「ガブリアス、ドータクンにドラゴンクロー!ヒトカゲはドーブルにかえんほうしゃ!」 ガブリアスがドータクンにドラゴンクローを放つ。はがねタイプのドータクンに対しては効果今ひとつだが、それでもそれなりのダメージを与えたと みて良さそうだ。一方のヒトカゲもドーブルにかえんほうしゃを放つ。 キイチ「ドータクン、かえんほうしゃを受け止めろ!」 ドータクンがかえんほうしゃを受け止める。どうやらこのドータクンの特性はたいねつと考えてよい。 レイカ「あのドータクン、はがねタイプなのにかえんほうしゃを受け止めたわ!」 ケイコ「あれはドータクンの特性・たいねつね。」 コトミ「あれがたいねつ?そっか、あのドータクンはたいねつ特性だったのね。」 トモヤ「ドータクンはたいねつ特性とはいえ、元々ほのお技に対して弱い。ドータクンが持ちこたえられなければ、マサト君にもチャンスがあるかも しれない。だが持ちこたえると・・・。」 キイチ「ドーブル、みがわりからきあいパンチ!集中力を高めろ!」 ドーブルがみがわりを作り出した。 ミキ「あのドーブル、みがわりも使えるの!?これはかなりテクニック重視のチームね。」 コトミ「みがわりって?」 ミキ「みがわりは、自分の体力の一部を使って分身を作り出す技よ。攻撃は本体に代わって分身が受けることになるの。でも分身はある程度ダメージを 受けると消えてしまうわ。キイチさんって言う人はテクニックで攻めていくタイプね。マサト君はどこまで対応できるかしら。」 マサト「だが、みがわりの分身はある程度ダメージを与えると消えてしまう!ガブリアス、ドーブルにドラゴンクロー!」 ガブリアスがドーブルの分身にドラゴンクローを放つ。本体ではなく分身が代わりに攻撃を受けたが、ドラゴンクローの一撃で分身は消滅した。 キイチ「甘いな!ドーブル、ガブリアスにきあいパンチ!続いてキノコのほうし!」 みがわりがダメージを受けていた間に集中力を高めていたドーブルが至近距離からガブリアスにきあいパンチを打ち込み、続けざまに キノコのほうしを放つ。威力の大きいきあいパンチに加えて、キノコのほうしをまともに受けたガブリアスは眠ってしまった。 マサト「ああっ、ガブリアス!」 キイチ「チャンスだ!ドータクン、ガブリアスにサイコキネシス!ドーブルはヒトカゲにはかいこうせん!」 ドータクンがサイコキネシスでガブリアスを操る。勢いよく吹っ飛ばされたガブリアスはまだまだ戦えそうだが、しかしいっこうに起きる気配はない。 一方のドーブルはヒトカゲにはかいこうせんを放った。 マサト「ヒトカゲ、穴を掘ってかわせ!」 ヒトカゲは穴を掘って地中に潜り、はかいこうせんをかわした。ドーブルはしばらく行動できなくなる。 マサト「(ドーブルははかいこうせんを放った。だからしばらくこのまま行動ができないはず。・・・それなら。)ヒトカゲ、ドーブルにあなをほる攻撃!」 ドーブルの足下から飛び出したヒトカゲがあなをほる攻撃を打ち込んだ。 高くはねとばされたドーブルはそのままフィールドに打ち付けられ、戦闘不能となった。 審判「ドーブル、戦闘不能。ヒトカゲの勝ち!」 マサト「よくやったね、ヒトカゲ!」 イチロウ「マサト選手、トリッキーなドーブルを倒しましたが、続くキイチ選手はどう言ったポケモンを使うのでしょうか?」 キイチ「行け、ガーメイル!」 キイチはガーメイルを繰り出した。 コトミ「えっ、ガーメイルって確かほのおタイプに相性が悪いはずでしょ?」 トモヤ「となると、相性の善し悪しだけではなく、まさに変幻自在の技を使うと言うことになるな。それにマサト君がどう向かっていくかだが・・・。」 キイチ「ガーメイル、ヒトカゲにふきとばし!」 ガーメイルがふきとばしをした。ふきとばしをもろに受けたヒトカゲはフィールドの隅まで飛ばされてしまった。 マサト「ああっ、ヒトカゲ!」 ヒトカゲはそれでも立ち上がったがかなり息が上がっている。 キイチ「ガーメイル、続いてヒトカゲにエアスラッシュだ!」 マサト「負けるなヒトカゲ!かえんほうしゃ!」 ガーメイルはエアスラッシュの体制に入る。一方のヒトカゲは一声あげた。と、次の瞬間ヒトカゲの全身が白く光り始めた・・・。 (3) ナナシマ・バトルチャンピオンシップスのバトル大会予選ラウンド、マサトとキイチのバトルの真っ最中、マサトのヒトカゲが突然白く光り始めた。 マサト「あっ!?」 コトミ「もしかして・・・?」 ミキ「間違いないわ。進化が始まったのよ!」 レイカ「でもマサト君がゲットしたときって、野生の状態だったんでしょ?」 トモヤ「もしかしたら、野生の状態だけど、すぐにでも進化できる状態だったのかもしれないな・・・。」 ヒトカゲは白く光りながら徐々に姿を変えていき、やがてリザードに進化したのだった。 マサト「ヒトカゲ・・・、リザードに進化したんだね!」 キイチ「リザードに進化するとはなかなかやるな。だがこれならどうだ!ガーメイル、エアスラッシュ!」 マサト「リザード、かわしてかえんほうしゃ!」 リザードがエアスラッシュをかわしてかえんほうしゃを放つ。むしタイプのガーメイルには効果抜群だ。 キイチ「ああっ、ガーメイル!」 ガーメイルはかえんほうしゃをもろに受けたのか、戦闘不能になってしまった。 審判「ガーメイル、戦闘不能。リザードの勝ち!」 イチロウ「ヒトカゲから進化したリザード。相性の良さを見事にアピールしてくれました!これまでマサト選手は1体も倒されていないのに対して、 キイチ選手は残り2体。ここまではマサト選手が有利に試合を運んでいますが、果たしてどうなるでしょうか!?」 キイチ「行け、ブーバーン!」 キイチはブーバーンを繰り出した。 イチロウ「キイチ選手、最後の1体はブーバーンです。相性ではマサト選手のガブリアスに対してやや不利ですが、しかしガブリアスはまだ眠っています!」 キイチ「ブーバーン、ふんえん!」 ブーバーンがふんえんを放った。ふんえんは相手ポケモン2体に対してダメージを与えられる技である。 マサト「リザード、穴を掘ってかわして!」 リザードは穴を掘って地中に潜る。一方のガブリアスは効果今ひとつとはいえそれなりのダメージを受けたが、ふんえんを受けてようやく起きあがった。 キイチ「ドータクン、ガブリアスにサイコキネシス!ブーバーンはリザードが地面に出たところを狙ってかみなりパンチ!」 ドータクンがガブリアスにサイコキネシスを放つ。サイコキネシスで操られたガブリアスはまたしても後ろに吹っ飛ばされた。一方のブーバーンは かみなりパンチの体制に入った。 マサト「(ブーバーンに対して正面から攻撃すれば、リザードはもろにかみなりパンチを受けてしまう。それなら。)ガブリアス、ブーバーンに突っ込め!」 ガブリアスはブーバーンに向かって一直線に突っ込む。やがてガブリアスの周りを数本の渦が飛び交い始めた。 コトミ「あれは!?」 ミキ「ギガインパクトよ!反動でしばらく行動ができなくなるけど、でも与えるダメージは相当のものだわ!」 マサト「行け、ガブリアス!ギガインパクト!」 ガブリアスがギガインパクトを放つ。ギガインパクトをもろに受けたブーバーンは大ダメージを受けてしまった。 マサト「今だ!行け、リザード!あなをほる攻撃!」 かみなりパンチの体制が途切れたところを狙ってリザードがあなをほる攻撃を放つ。効果は抜群だ。 ブーバーンはその場に倒れ込み、戦闘不能となってしまった。 審判「ブーバーン、戦闘不能。リザードの勝ち!」 イチロウ「マサト選手、ガブリアスのギガインパクトにリザードのあなをほる攻撃という連続技でブーバーンを撃破しました!」 キイチ「だが勝負はまだ終わっていない!行け、ドータクン!ガブリアスにジャイロボール!」 ドータクンがジャイロボールで攻撃する。トリックルームの効果はまだ残っており、勢いよく攻撃を受けたガブリアスはフィールドにたたき付けられ、 戦闘不能となった。 審判「ガブリアス、戦闘不能。ドータクンの勝ち!」 マサト「ガブリアス、ギガインパクトを覚えるなんて、よくやったね。お疲れ様。」 マサトはガブリアスをモンスターボールに戻した。 イチロウ「これでキイチ選手も反撃体制と言ったところでしょうか。しかしキイチ選手は残すところドータクン1体のみ。対してマサト選手は まだ3体残っています。おおっと、ここでゆがんだ時空が元に戻った模様です!」 イチロウが言うとおり、トリックルームの効果が消え、時空が元に戻った。 ルリカ「トリックルームはそもそもしばらくの間だけ時空をゆがめる技ですので、効力は長続きしないのが特徴です。さて、ここからどのような 試合展開を見せてくれるのでしょうか?」 マサト「行け、サーナイト!」 マサトはサーナイトを繰り出した。 イチロウ「マサト選手、次に繰り出したのはサーナイトです!しかもこのサーナイト、ボールに入らず、直接バトルフィールドに登場しました!」 ルリカ「普段ポケモンはモンスターボールに入れるのが主流ですが、中には様々な理由からボールに入らないポケモンもいます。 あのサトシさんのピカチュウもボールに入るのが嫌いという理由で外に出ていたのですが、マサト選手のサーナイトもボールに入るよりは 外に出るのを好むポケモンなのでしょうね。」 キイチ「ドータクン、もう1度トリックルーム!」 ドータクンが再びトリックルームを放つ。 マサト「リザード、かえんほうしゃ!サーナイトはかえんほうしゃにサイコキネシス!」 リザードがかえんほうしゃを放ち、サーナイトがさらにサイコキネシスをかけて勢いを強くする。サイコキネシスで強化されたかえんほうしゃは ドータクンにクリーンヒット、あえなく戦闘不能となった。 審判「ドータクン、戦闘不能。リザードとサーナイトの勝ち。よって勝者、トウカシティのマサト!」 コトミ「マサト、2回戦進出おめでとう!」 マサト「ありがとう。でも次も気が抜けないから、気を引き締めていくよ!」 ミキ「うふふっ。次はあたしの番ね。マサト君、まだ先は長いけど、でも1つずつ勝ち進んでいくことが進歩になると思うわ。もちろん負けてしまうことも あるかもしれないけど、でも負けたからと言ってそこで立ち止まっていては何も変わらない。自分が今置かれている状況をどう判断するか、 そしてその後どうやって修正するかと言うのが鍵を握っていると思うわ。」 ユカリ「でもそう言ってミキさんが負けたらしゃれにならないでしょ!」 ミキ「そうね。じゃあみんな、あたしの試合、応援よろしくね!」 一同「はい!」 続いてミキが出場した試合、相手はシンオウ地方・キッサキシティ出身のリュウタだった。リュウタは最後の1匹、ラグラージとなっていた。 一方のミキはまだ1体も倒されておらず、最初に出したムウマージとレントラーがそのまま残っていた。 イチロウ「さあ、ミキ選手は最後の1体までリュウタ選手を追いつめました。しかしリュウタ選手のラグラージはミキ選手のレントラーに対して 相性抜群です!果たして、ミキ選手はどうやって攻めていくのでしょうか?」 リュウタ「ラグラージ、レントラーにマッドショット!」 ラグラージがマッドショットを放つ。 ミキ「レントラー、みがわり!」 レントラーはみがわりを作り、分身を出す作戦に出た。 ミキ「ムウマージ、マジカルリーフ!レントラーはかみくだく攻撃!」 ムウマージがマジカルリーフを、レントラーがかみくだく攻撃を立て続けに打ち込む。とりわけマジカルリーフはくさタイプの攻撃技であり、みずタイプと じめんタイプを併せ持つラグラージには効果抜群以上のダメージを与えることができた。 マジカルリーフとかみくだくを連続で受けたラグラージは大ダメージを受けたが、なおも踏みとどまっている。 しかし次の一撃で決着がつくのは誰が見ても明らかだ。 マサト「ミキさん、やっぱりすごい!」 ユカリ「さすがはミキさん。レベルが違うわね。」 リュウタ「ラグラージ、ムウマージにハイドロポンプ!」 ミキ「ムウマージ、サイコキネシス!」 ムウマージはサイコキネシスでハイドロポンプの向きを変えた。ハイドロポンプは勢いそのままにラグラージに命中、ラグラージは戦闘不能となった。 リュウタ「ラグラージ!」 審判「ラグラージ、戦闘不能。ムウマージの勝ち。よって勝者、ヤマブキシティのミキ!」 マサト「おめでとう、ミキさん!」 レイカ「ミキお姉ちゃん、やっぱりすごいね!」 ミキ「ありがとう。そこまで言ってくれるなんて、あたし、嬉しいわ。でもまだ1回戦を突破しただけだし、まだ先は長いのよ。 後2回勝たなきゃ決勝トーナメントには行けないわ。だから、油断しないで挑戦していくわ!」 コトミ「そうね。お昼の休憩が終わったら、今度はあたしがコンテスト大会に出るわ。あたしも初めての大会だし、いきなりダブルパフォーマンスで ちょっと緊張してるけど、でもやるっきゃないんだもん!ね!」 ユカリ「そう言えばコトミちゃん。ダブルパフォーマンスで使うポケモンはもう決定してるの?」 コトミ「うん。ミロカロスとエルレイドにするわ。いきなりユカリさんみたいな上手な演技はできないかもしれないけど、 でもそれもやって見なきゃ分からないわ。みんな、応援よろしくね!」 一同「はい!」 マサト「コトミ、いい演技を見せてね!コトミなら大丈夫だよ!」 コトミ「ありがとう、マサト!」 マサトとコトミはハイタッチを交わした。 シンイチ「ナナシマ・バトルチャンピオンシップス、コンテスト大会は百花繚乱、一次審査から鮮やかな演技でヒートアップしております! 次に登場するのは、カントー地方はタマムシシティからやってきたコトミ選手です!」 コンテストの衣装に身を包んだコトミがステージに登場した。 コトミ「ミロカロス、エルレイド、ライジング・アップ!」 ミロカロスとエルレイドがカプセルに入れられたモンスターボールから登場した。登場するとき、ミロカロスはハートをあしらったエフェクト、 エルレイドは花びらの舞うエフェクトがなされていた。 果たして、コトミはどう言った演技を披露してくれるのだろうか。 (4) 〜挿入歌:『私、負けない!』が流れる〜 ナナシマ・バトルチャンピオンシップス、コンテスト大会一次審査はいよいよコトミの演技の番を迎えた。 コトミ「行くわよ!ミロカロス、みずのはどう!」 ミロカロスがみずのはどうを放つ。コンテストにふさわしく、鮮やかな水の玉がほとばしった。 コトミ「続いてエルレイド、サイコカッター!」 エルレイドがサイコカッターを放つ。サイコカッターはみずのはどうとぶつかり合い、美しい水しぶきが舞った。 マサト「コトミ、すごい!」 ミキ「やるわね、コトミちゃん。まだコーディネーターとして駆け出しなのに、短期間でここまで美しい演技に仕上がってるわ。これからが楽しみね。」 コトミ「ミロカロス、ハイドロポンプ!」 続いてミロカロスがハイドロポンプを放つ。 コトミ「エルレイド、ねんりき!」 エルレイドはねんりきでハイドロポンプを操る。コトミもポケモンの演技についてのコツをかなりつかんでいる模様だ。 ユカリ「すごいわ。コトミちゃん、まだコーディネーターとしては新人で、しかも今回が初めてのコンテストでしょ?でもあそこまで素晴らしい演技を 見せてくれるわ。無限の才能を秘めた逸材かもしれないわね。」 ミキ「ユカリさん・・・?」 ユカリ「うん。あたしもこれまで、ポケモンコーディネーターとして数々のコンテストを見てきたけど、コトミちゃんみたいに、初めてのコンテストで あそこまで美しい演技を見せてくれるコーディネーターはあまりいなかったわ。だけどコトミちゃん、この大舞台なのに気負いしないで素晴らしい演技を 披露してくれる。将来が楽しみね。」 コトミ「さあ、フィニッシュをかけるわよ!ミロカロス、うずしお!」 ミロカロスがうずしおを放った。うずしおが華麗に宙に舞い上がる。 コトミ「エルレイド、サイコキネシス!」 エルレイドがうずしおにサイコキネシスをかけた。うずしおはサイコキネシスでコントロールされ、大きな水の球体が出来上がった。 コトミ「さあ!エルレイド、サイコカッター!」 エルレイドが水の球体にサイコカッターを放つ。水の球体はサイコカッターで美しく散り、水のシャワーとなった。 シンイチ「素晴らしい!コトミさん、コンテスト初参加とはとても思えない美しい演技を見せてくれました!」 ソウスケ「新人コーディネーターでここまで美しい演技を見せてくれるなんて、これからがとても楽しみです。今後の活躍に期待したいですね。」 コトミの演技も終わり、マサト達は控え室に足を運んだ。 マサト「コトミ、いい演技だったよ!」 コトミ「ありがとう、マサト!あれでもあたし、練習する時間がほとんどなくて、即興で作り上げたパフォーマンスだったのよ。だから一次審査を 突破できる自信なんて全然ないわ。」 ユカリ「ううん。コトミちゃん、とても素晴らしい演技を見せてもらったわ。あたしはコトミちゃんにしてみれば先輩コーディネーターだけど、 あたしが見ても本当にうっとりするくらいの演技だったわ。だからコトミちゃん、自分の演技に自信を持ってね!」 サヤカ「そうよ。私も初めてのコンテストだし、緊張してないと言ったら違うことになるわ。だけどコトミちゃんの演技を見て、私も負けてられないって 思ったの。演技は楽しんで行うものだと思うわ。」 と、場内のテレビが結果発表を知らせた。 シンイチ「たいへん長らくお待たせしました。ナナシマ・バトルチャンピオンシップス、コンテスト大会2日目の午後の部、いよいよ結果発表であります。 午後の部に出場した192名のうち、二次審査・コンテストバトルに駒を進めるのは32名。果たして、どう言った顔ぶれであるのでしょうか! 結果発表です!」 他の選手達も注視して見守る中、いよいよ顔写真が写り始めた。顔写真が写った人物が二次審査に進むことができる。 1人、2人、3人と写真が流れていき、15人目、コトミの顔写真が映し出された。一次審査突破だ。 コトミ「あたしだ・・・!あたし、一次審査を突破したのね!」 ミキ「おめでとう、コトミちゃん。でも二次審査はコンテストバトル。一筋縄ではいかないわ。だから、さっきユカリさんも言ってたけど、自分の演技に 自信を持って臨めば、きっといい成績が残せると思うわ。あたし達も応援してるからね!」 マサト「僕も応援するよ!」 コトミ「ありがとう、みんな!うん、あたし、二次審査も美しい演技を見せるからね!みんな、応援よろしくね!」 こうして、マサト、ミキは予選ラウンド2回戦に、コトミは二次審査に駒を進めることができた。 明日はレイカが予選ラウンド1回戦、そしてサヤカが一次審査に臨む。が、それで終わりではない。 予選ラウンドは2回戦に入り、トモヤが予選ラウンド2回戦に出場する。 もう後戻りはできない。負けられない戦いは、まだまだ続く。 Chapter-29に続く。 <初出> 全編書き下ろし。