Chapter-34『フライゴンVSチルタリス!りゅうせいぐん炸裂!!』 (1) ナナシマ・バトルチャンピオンシップスはバトル大会の決勝トーナメントとコンテスト大会の二次審査・コンテストバトルが行われており、連日トレーナーやコーディネーターとポケモンの 息詰まる激闘、そして華麗な演技が繰り広げられていた。 バトル大会・決勝トーナメントではマサトがトモヤとの激戦を制して3回戦に進出するなど、勝ち抜くにつれてトレーナーのレベルも俄然高くなっていくのが見受けられた。 そしてコンテスト大会・二次審査のコンテストバトルでは、コトミとサヤカのバトルが始まろうとしていた。 サヤカ「いよいよね、コトミちゃん。あなたがどれだけ美しい演技を見せてくれるか、私、とても楽しみにしてるわ。」 コトミ「はい。サヤカさん、あなたのチルタリスがいなかったら、あたしのフライゴンやマサトのガブリアスもりゅうせいぐんを使うことはなかったと思います。本当にありがとうございました。」 サヤカ「ううん。そんな事はないわ。私がいなくてもきっと誰かがきっかけになっていたと思うわ。だけどコトミちゃん、私も最後まで負けないからね!お互いにいい演技にしましょう!」 コトミ「はい!」 シンイチ「さあ、ナナシマ・バトルチャンピオンシップス、コンテスト大会はコーディネーターとポケモン達の美しいコラボレーションで盛り上がっております! 次の試合は、同じカントー地方出身、今後の活躍が期待される新人コーディネーター同士のバトルとなりました!」 画面にコトミとサヤカの顔写真が映し出され、ポイントが円で示された。 シンイチ「片やカントー地方・タマムシシティのコトミ選手!此方カントー地方・セキチクシティのサヤカ選手!」 コトミとサヤカは互いに視線を合わせた。 シンイチ「制限時間は5分!では参ります!バトル開始!」 かくしてコトミとサヤカのコンテストバトルが幕を開けた。サヤカのチルタリスはコトミのフライゴン、そしてマサトのガブリアスがりゅうせいぐんを覚えるきっかけとなったポケモンである。 それだけにコトミにとってはかなりの強敵となることは容易に想像できた。 果たして、コトミはサヤカのチルタリスを相手にどう言った戦法で挑むのだろうか。そして、このバトルに勝利を収め、3回戦に駒を進めるのは、コトミか、それともサヤカか。 (2) 〜挿入歌・『私、負けない!』が流れる〜 ナナシマ・バトルチャンピオンシップスはコンテスト大会二次審査、コンテストバトルの2回戦が行われており、コトミとサヤカのバトルが始まった。 コトミ「イーブイ、フライゴン!ライジング・アップ!」 コトミはイーブイとフライゴンを繰り出した。 サヤカ「レッツゴー!チルタリス、ウインディ!」 サヤカはチルタリスとウインディを繰り出した。 マサト「コトミはイーブイを使うんだね。」 トモヤ「ルリカさんにもらったタマゴから生まれたイーブイ。まだバトル経験が少ないけど、あえて使うと言うのはコトミちゃんのチャレンジ精神かもしれないな。」 ミキ「それにフライゴンとチルタリスも出るわ。りゅうせいぐんを上手く使いこなせるかが、一番の見ものね。」 コトミ「イーブイ、あなをほる攻撃!フライゴン、りゅうのいぶき!」 イーブイが穴を掘って地中に潜る。一方でフライゴンがりゅうのいぶきを放った。 マサト「すごい!コトミのイーブイ、もうあなをほるを覚えてるんだ!」 ミキ「あれは遺伝技かもしれないわね。」 レイカ「遺伝技?」 ユカリ「タマゴから生まれたポケモンは、生まれたときにその時点では覚えていない技を覚えていることがあるのよ。そう言った技を遺伝技と呼んでいるんだけど、 コトミちゃんのイーブイも技を受け継いだのかもしれないわね(※)。」 ミキ「あたしとマサト君が、4のしまでルリカさんとカンナさんを相手にバトルしたとき、ルリカさんのリーフィア、あなをほるを覚えてたでしょ? もしかするとコトミちゃんのイーブイは、ルリカさんのリーフィアからあなをほるを受け継いだのかもしれないわ。」 レイカ「すごいね、ミキお姉ちゃん。本当にポケモンのこと、たくさん知ってるんだね!」 サヤカ「やるわね、コトミちゃん。なら私だって負けてないわよ!チルタリス、地面に向かってりゅうのいぶき!ウインディはかえんほうしゃ!」 チルタリスがりゅうのいぶきを地面に向かって放つ。一方のウインディもかえんほうしゃでフライゴンのりゅうのいぶきを迎え撃った。 チルタリスのりゅうのいぶきは地面に潜っていたイーブイの姿をあらわにした。そしてフライゴンのりゅうのいぶきとウインディのかえんほうしゃがぶつかり合い、大爆発が起きた。 見る間に両者のポイントが減る。しかし減り幅はコトミの方が大きい。チルタリスのりゅうのいぶきの影響だろうか。 マサト「コトミのポイントの方が減ってる!?」 ミキ「サヤカさんのチルタリスが放ったりゅうのいぶきが、コトミちゃんのイーブイの演技を封じたってことになるわね。サヤカさん、やはりりゅうせいぐんを使いこなして いるだけのことはあるわ。かなりレベルが高いわね。」 サヤカ「続いてチルタリス、ウインディ、ダブルでりゅうのはどう!」 チルタリスとウインディが一斉にりゅうのはどうを放った。 コトミ「イーブイ、でんこうせっか!フライゴン、ソニックブーム!」 イーブイがでんこうせっかでかわす。一方のフライゴンはソニックブームでりゅうのはどうを打ち返した。しかしもう1つのりゅうのはどうが迫っていた。 と、フライゴンの尻尾が白く光ったかと思うと、強烈な一撃でりゅうのはどうを打ち返したではないか。 マサト「今のは!?」 トモヤ「間違いない。あれはアイアンテールだ!」 コトミ「すごい!フライゴン、アイアンテールを覚えたのね!」 ソニックブームとアイアンテールの連続攻撃が功を奏したのか、サヤカのポイントがじわじわと減っていた。だがまだ油断はできない。 サヤカ「やってくれるわね。コトミちゃん、あなたはきっといいコーディネーターになれると思うわ。」 コトミ「ありがとうございます。サヤカさんもトップコーディネーターにも負けない実力をお持ちですね。あたし、こうしてバトルできて本当に嬉しいです!」 サヤカ「ありがとう。でも勝負はまだこれからよ!チルタリス、かえんほうしゃ!ウインディ、しんそく!」 チルタリスがかえんほうしゃを放つ。さらにウインディがそのかえんほうしゃをまとってイーブイとフライゴンに迫った。 コトミ「イーブイ、もう一度あなをほる攻撃!フライゴンも続いて!」 イーブイがあなをほるで再び地中に潜る。さらにフライゴンも穴に飛び込んでいった。 サヤカ「チルタリス、飛び上がって!ウインディもジャンプ!」 チルタリスが空高く飛び上がる。さらにウインディもジャンプを繰り返している。サヤカは何をするつもりだろうか。 コトミ「(穴から出てもこれではポイントを減らせないわ。ここは思い切って!)イーブイ、でんこうせっか!フライゴン、ソニックブーム!」 穴から飛び出たイーブイが勢いよくでんこうせっかを繰り出した。続いてフライゴンもソニックブームを放つ。 サヤカ「ウインディ、かえんほうしゃ!チルタリス、りゅうせいぐん!」 ウインディがかえんほうしゃでソニックブームを弾き返す。そしてチルタリスがりゅうせいぐんを放った。 まともに受ければコトミのポイントが大きくマイナスされるのは言うまでもない。果たして、コトミに打つ手はあるのだろうか。 (3) ナナシマ・バトルチャンピオンシップスはコンテスト大会二次審査・コンテストバトル2回戦、コトミとサヤカの演技が繰り広げられていた。 お互いにわずかなポイントを争う演技が続いていたが、残り時間2分、コトミのイーブイがあなをほるからでんこうせっか、フライゴンが続いてソニックブームを 放ったところで、サヤカのチルタリスがりゅうせいぐんを繰り出したのだった。 りゅうせいぐんは天井近くまで高々と打ち上がり、やがてフィールドに向かって落ち始めた。 コトミ「イーブイ、でんこうせっか!フライゴン、アイアンテール!」 イーブイはでんこうせっかでりゅうせいぐんをかわす作戦に出た。一方のフライゴンもアイアンテールで弾き返す体制に入った。が、りゅうせいぐんの数があまりに多すぎたせいか、 全部は対処しきれず、無数に分かれたうちの1つがイーブイとフライゴンに命中してしまった。とりわけドラゴンタイプのフライゴンに対しては効果抜群だ。 シンイチ「りゅうせいぐんが鮮やかに炸裂!コトミ選手、ここで大幅なポイントダウンだ!」 コトミのポイントが一気に削られた。 ソウスケ「りゅうせいぐんはヴィジュアルもさることながら、ドラゴンタイプの技の中でも指折りの威力を持っていますので、一撃を与えられるとポイントの減りも激しいです。 しかしコトミ選手も1回戦ではフライゴンがりゅうせいぐんを使っていましたので、まだ勝負の行方は見えないと言ってもいいでしょう。」 コトミ「(このままだと確実にあたしのポイントが減らされるだけだわ。ポイントを稼ぐのにいい手段は・・・。)」 と、コトミの視界に高い天井が飛び込んできた。 〜挿入歌・『君のそばで(ヒカリバージョン)』が流れる〜 コトミ「(あれだわ!)イーブイ、フライゴンの背中に乗って!フライゴン、高く飛び上がって!」 フライゴンは背中にイーブイを乗せると、勢いよく飛び上がった。 サヤカ「(上空から行く作戦ね!)ウインディ、オーバーヒート!チルタリス、炎をまとってパワーをためるのよ!」 ウインディがオーバーヒートを放つ。そしてオーバーヒートをチルタリスが身にまとったのとほぼ同時に、チルタリスを激しい光が包み込んだ。 ユカリ「あれはゴッドバードよ!しかもオーバーヒート状態になってるわ。サヤカさん、バトルオフを狙うつもりかしら。」 マサト「コトミ、気を付けて!」 サヤカ「今よ!チルタリス、ゴッドバード!」 チルタリスがオーバーヒートをまとった状態でゴッドバードの体制に入った。バトルでもミキのヨルノズクが威力を証明してみせたが、ゴッドバードは相当に威力が高い。 しかもオーバーヒートをまとっている状態である。まともに受ければ大きくポイントを削られかねない。 コトミ「フライゴン、尻尾にパワーを集めて!アイアンテール!」 フライゴンがアイアンテールで迎え撃つ。尻尾にかなりのパワーを集めたとはいえ、チルタリスはほのお技のオーバーヒートをまとっている。太刀打ちできるのだろうか。 コトミ「イーブイもお願い!マックスパワーでとっしん!」 さらに後ろからイーブイもとっしん攻撃をかける。フライゴン、イーブイ、チルタリスの3体が激しくぶつかり合い、大爆発が起きた。 爆発で生じた煙がフィールドを覆い、ポケモン達の様子を伺い知ることができない。 コトミ「イーブイ!フライゴン!」 サヤカ「チルタリス!ウインディ!」 煙の向こうからポケモン達の声が聞こえた。しかし残り時間は後わずか。次の演技が勝敗を分けるだろう。 サヤカ「(最後まで諦めない!)チルタリス、りゅうせいぐん!」 コトミ「(あたし達も負けないわ!)フライゴン、りゅうせいぐん!」 フライゴンとチルタリスがほぼ同時にりゅうせいぐんを放った。 2つのりゅうせいぐんは天井高く打ち上がり、互いに激しくぶつかり合った。そしてそれを突き抜けて、りゅうせいぐんのうちの1つがフィールドのポケモンに向かって落ちていった。 それはコトミのフライゴンが放ったものだった。 チルタリスとウインディはりゅうせいぐんの直撃を受け、勢いよく吹っ飛ばされた。同時にサヤカのポイントも大きく減った。 と、残り時間が0秒となったことを告げた。 シンイチ「タイムアップ!最後の最後までわずかなポイントを争う大接戦となりました!果たして、息詰まる激戦を制したのは・・・!」 両者とも残りポイントはほとんど残っていなかった。しかし、ごくわずかだが一方のポイントが多く残っていた。コトミのポイントだった。 シンイチ「コトミ選手です!本当に僅差の大接戦でした!サヤカ選手をわずかに押さえて、コトミ選手、3回戦進出です!」 サヤカ「コトミちゃん。」 サヤカがコトミに歩み寄った。 コトミ「どうしたの、サヤカさん?」 サヤカ「あなたとあなたのポケモン達、本当にいいコンビネーションだったわ。イーブイもよく育てられてたし、それにフライゴン、とても素晴らしいりゅうせいぐんだったわ。」 コトミ「ありがとうございます。でも・・・。」 サヤカ「ううん。私、こうしてコトミちゃんとバトルができて、とても嬉しかった。次の試合、多分ユカリさんとバトルすることになると思うけど、私の分まで、悔いのないバトルにしてね!」 そう言ってサヤカは手を差し出した。 コトミ「はい!」 コトミはその手を握り、固い握手を交わした。 シンイチ「ユカリ選手、危なげない演技でバトルオフに持ち込みました!3回戦進出です!」 続く試合、ユカリは終始落ち着いた演技でポイントを守り、対戦相手をバトルオフに持ち込んだ。これでユカリも3回戦に進出、コトミと相まみえることになった。 コトミ「(さすがはユカリさん。演技も他のコーディネーターと比べて格段に違うわ。トップコーディネーターとしての実力、ただ者ではないわね。 あたしが勝つのは難しいかもしれないけど、でもやってみなければ分からないわ。ここまで勝ち残ったんだし、もう迷わない。あたしとあたしのポケモンを信じて演技するだけよ!)」 コトミが次の試合に向けて決意を新たにしている横で、マサトとレイカもまた決意を新たにしていた。 マサト「(次はレイカちゃんとのバトルだ。レイカちゃんはハッサムやルンパッパが中心だと思う。サーナイトではハッサムに対して不利かもしれない。 だけどここまで勝ち上がったんだし、もうやるっきゃない!)」 レイカ「(次はいよいよマサト君ね。トモヤお兄ちゃんを倒した実力、並大抵のものではないわ。さすがはセンリさん譲りね。だけど、私だって負けていられない。 お兄ちゃんやルリカお姉ちゃんにも恥ずかしくないバトルがしたい。マサト君、全力を出してバトルしようね!)」 ナナシマ・バトルチャンピオンシップスはいよいよベスト32を賭けたバトルに入る。 バトル大会はマサトとレイカの直接対決、それに続いてケイコ、そしてミキも出場する。 そして4回戦では、マサトとレイカの勝ち残った方がケイコと対戦相手の勝者とバトルすることになるのだった。 一方のコンテスト大会は、コトミがユカリと火花を交えることになる。まだコーディネーターとしては駆け出しのコトミにとって、トップコーディネーターのユカリは 言わば雲の上の存在だった。数段も格上のユカリに対して、コトミはどう言った演技を見せてくれるのだろうか。 次の試合はマサト達にとって負けられない大一番となるだろう。果たして、この激戦を勝ち抜き、次の試合に駒を進めるのは、誰になるのだろうか。 負けられない戦いは、まだまだ続く。 Chapter-35に続く。 (※)「イーブイの技について」 アニメでは、タマゴわざについての詳しい描写はなされていませんが、ここではコトミのイーブイはルリカのリーフィアのタマゴから生まれたポケモンであり、生まれたときに あなをほるを遺伝で覚えたものとします。 <初出> 全編書き下ろし。