Chapter-35『レイカとハッサム!幻影のライバル対決!!』 (1) ナナシマ・バトルチャンピオンシップスはバトル大会・コンテスト大会いずれも3回戦を迎え、バトル大会・コンテスト大会を通じて連日トレーナーとポケモン達の真剣勝負が繰り広げられていた。 ここまでのレベルともなると、ポケモンの技を駆使しての単純な力押しだけでは勝ち残るのは難しくなっており、いかにポケモンのチームワークが試されるかが勝利のポイントになっていた。 一方のコンテスト大会にしても、2体のポケモンがどこまで美しく演技できるかが勝負の鍵を握っており、勝ち進むごとにコーディネーターのレベルも着実に上がっているのが見てとれた。 バトル大会は早くも3回戦の試合が始まっており、第1試合にケイコが出場していた。相手はホウエン地方・ルネシティのコウダイだった。両者ともポケモンが次々戦闘不能になる 激戦だったが、それでもケイコは2対1の状況に持ち込んでいた。ケイコの最後のポケモンはボーマンダとアリアドス。コウダイの最後の1体はシャワーズだった。 ケイコ「ボーマンダ、ドラゴンクロー!」 コウダイ「シャワーズ、とける!」 シャワーズがとける体制に入った。 マサト「とける!?」 ミキ「とけるって言うのは、自分の防御力を高める技よ。ドラゴンクローはぶつり技だから、受けるダメージが減ってしまうわ。あのシャワーズ、かなりよく育てられてるわね。」 ケイコ「アリアドス、ヘドロばくだん!ボーマンダはりゅうのはどう!」 アリアドスがヘドロばくだんを、ボーマンダがりゅうのはどうをそれぞれ放った。とくしゅ技のダメージまでは軽減することはできず、シャワーズは勢いよく吹っ飛ばされ、戦闘不能になった。 審判「シャワーズ、戦闘不能。アリアドスとボーマンダの勝ち。よって勝者、ハナダシティのケイコ!」 イチロウ「ケイコ選手、危なげない試合運びで3回戦突破!4回戦進出を果たしました!」 マサト「(やはりケイコさんは強い・・・。僕が次の試合に勝てば、ケイコさんとバトルすることになる。次の試合、レイカちゃんはどう言った戦法を取るんだろう・・・。)」 レイカ「(ケイコさんの実力、生半可なものではないわ。マサト君がどうバトルするか、そしてどうすればマサト君に勝てるか、次の試合も気を引き締めて行かないとね。)」 マサトとレイカは、ケイコの試合を振り返りながら次のバトルに向けた姿勢に入っていた。 2人の心中を察してか、試合開始前、ルリカがマサトとレイカを呼んだ。 マサト「ルリカさん?」 レイカ「どうしたの、ルリカお姉ちゃん?」 ルリカ「マサト君、レイカちゃん。次の試合は2人がバトルするんだね。」 マサト・レイカ「はい。」 ルリカ「お互いにここまで勝ち進んだんだし、出来ればバトルは避けて通りたかったと思うわ。だけど、バトルは勝ち負けは関係ないと思うわ。」 マサト「そうですか?」 ルリカ「うん。私だって、四天王の1人として多くのチャレンジャーを迎えてきたわ。マサト君だって、お父様がジムリーダーだから、お父様のバトルを見て育ったかもしれない。 レイカちゃんだって、『お姉ちゃん』って呼んでくれてるし、私のことを本当に慕ってくれてると思うわ。」 レイカ「うん。ルリカお姉ちゃんが解説を担当してるから、見ているそばで恥ずかしくないバトルをやらなきゃって思ってた。でも本当は違うんだよね。 バトルは勝ち負けだけが結果ではないと思うの。そうでしょ?」 ルリカ「うん!だからレイカちゃんも、私が見ているからって気負わないで、リラックスしてバトルできればいいと思うわ!」 マサト「そうだよ、レイカちゃん!僕も最初は緊張してたけど、今ではこうしてしっかりとバトルできてるって思う。あまり自信過剰になってはいけないと思うけど、 でも僕だって、全力で相手するよ!」 レイカ「うん!お互いに最後までいいバトルにしましょう!」 レイカはそう言って、マサトの手を固く握った。 イチロウ「さあ、ナナシマ・バトルチャンピオンシップス、バトル大会は決勝トーナメント3回戦第2試合となりました!次の試合は、ホウエン地方・トウカシティのマサト選手と、 ジョウト地方・シロガネタウンのレイカ選手のバトルです!」 ルリカ「マサト選手はサーナイト、レイカ選手はハッサムがパーティの中心となっています。相性の面ではハッサムがかなり有利にバトルを進められそうですが、それだけではバトルの行方を うかがい知ることは出来ません。私のバトルスタイルと似た展開になりそうですね。」 マサトとレイカのバトルの模様は、トウカジムでセンリとミツコ、コトブキシティのポケモンセンターでミノルも見ていた。 イチロウ「さあ、相性だけでは見えないバトルを制するのは、マサト選手か、それともレイカ選手か!間もなく試合開始です!」 レイカ「マサト君、全力でバトルしよう!」 マサト「うん!僕だって負けないよ!」 審判「バトル開始!」 かくしてマサトとレイカのバトルが幕を開けた。果たして、この勝負を制して、4回戦に駒を進めるのは、マサトか、それともレイカか。 (2) 〜挿入歌・『チャレンジャー!』が流れる〜 ナナシマ・バトルチャンピオンシップスはバトル大会決勝トーナメント3回戦、マサトとレイカのバトルを迎えた。 マサト「行け!リザード、ガブリアス!」 マサトはリザードとガブリアスを繰り出した。 レイカ「出番よ!ルンパッパ、カイリキー!」 レイカはルンパッパとカイリキーを繰り出した。 トモヤ「ルンパッパとカイリキー!?」 ミキ「マサト君、レイカちゃんがハッサムを使うと読んでリザードを出したみたいだけど、出すタイミングを間違えたみたいだわ。これはレイカちゃんに有利になりそうね。」 コトミ「マサト!落ち着いて!」 レイカ「さあ、行くわよ!ルンパッパ、あまごい!カイリキーはきあいだめ!」 ルンパッパがあまごいでフィールドに雨を降らせ始めた。一方のカイリキーはきあいだめで集中力を高めている。 ミキ「まずいわ!雨状態ではみずタイプの技の威力が上がるわ。リザードにとってはかなり不利ね。」 コトミ「と言うと・・・?」 ケイコ「ルンパッパは2つの特性を持っている可能性があるけど、いずれも雨状態で真価を発揮するのよ。1つはすいすいって言って、雨が降っているときは行動が素早くなるわ。 もう1つはあめうけざらって言って、雨が降っている間は受けたダメージを回復する特性なのよ。レイカちゃん、やっぱり相当熟知してるわね。」 トモヤ「となると、レイカちゃんの戦術はお兄さん譲りと言うわけか・・・。これはマサト君にとって厳しいバトルになるかもしれないな。」 マサト「(このままではリザードに不利だ。)戻れ、リザード!」 マサトはリザードをモンスターボールに戻した。 イチロウ「おおっと、マサト選手、ここでリザードを戻しました!」 ルリカ「やはりルンパッパの特性と天気を考えてのことだろうと思いますね。雨状態ではみずタイプの技で与えるダメージがさらに大きくなりますし、ほのおタイプのリザードにしてみれば かなり危ないと判断したのでしょうね。」 マサト「行け、ユキメノコ!」 マサトはユキメノコを繰り出した。 レイカ「うふふっ。マサト君、なかなかいいバトルをやってくれるわね。」 マサト「うん!でもだからと言って、簡単に行かせないよ!ガブリアス、穴を掘って地中に潜れ!ユキメノコはあられ!」 ガブリアスが穴を掘って地中からの攻撃体制に入る。一方のユキメノコはあられを使った。それまで雨の降り続いていたフィールドが一転、あられが降り始めた。 レイカ「ルンパッパ、ふぶき!カイリキーはガブリアスにきあいパンチ!」 コトミ「ええっ!?ガブリアスは地中に潜ってるのに!?」 ケイコ「きっとレイカちゃんのカイリキー、特性はノーガードだと思うわ。」 コトミ「ノーガード?」 サヤカ「ノーガードって言うのは、お互いのポケモンの出した技が必ず当たる特性なのよ。相手の出した技も必ず当たると言う弱点もあるけど、それを補って余りあるのが、自分のポケモンの 出した命中率の低い技も確実に当てることができる効果なの。」 果たしてケイコとサヤカの言った通り、カイリキーは地面に向かってきあいパンチを放った。ガブリアスはよける間もなく強烈な一撃をもろに受けてしまった。そこにルンパッパのふぶきが炸裂、 ユキメノコとガブリアスは大ダメージを受けてしまった。ガブリアスにとっては効果抜群どころではなかった。 マサト「ユキメノコ!ガブリアス!」 ユキメノコはこの程度ではへこたれることはなかったが、ガブリアスはきあいパンチとふぶきをまともに受けており、出だしからすでに息が上がってしまっていた。それでもまだ戦えそうだ。 マサト「うん!なら反撃だ!ユキメノコ、ふぶき!ガブリアスはルンパッパにドラゴンクロー!」 ユキメノコがふぶきを放つ。一方のガブリアスもドラゴンクローをルンパッパに叩きつけた。 強力な攻撃を連続して受けたルンパッパとカイリキーだが、まだこの程度のダメージでは倒れるわけもない。 レイカ「続けて行くよ!ルンパッパ、もう一度ふぶき!カイリキーはガブリアスにばくれつパンチ!」 ルンパッパが再びふぶきを放つ。さらにカイリキーがばくれつパンチの体制でガブリアスに迫った。ばくれつパンチをまともに受ければ混乱してしまう。 かと言って穴を掘ってもカイリキーのノーガード特性に阻まれるだろう。 マサト「(まずい・・・!ユキメノコが盾になったところで、カイリキーの特性はノーガード。盾の意味がない!)ガブリアス!!」 ガブリアスはマサトの声を受けて、勢いよく一声あげた。 と、ガブリアスの口から大きな波動が放たれたではないか。りゅうせいぐんではない。別の技だった。 コトミ「あれは!?」 ミキ「間違いないわ!あれはりゅうのはどうよ!」 りゅうのはどうはふぶきを打ち消しただけでなく、ばくれつパンチの体制で突っ込んでいたカイリキーをも吹っ飛ばした。 マサト「すごい!ガブリアス、りゅうのはどうも覚えたんだね!」 レイカ「マサト君、本当にすごいわ。バトルするたびに新しい技を覚えていく。ポケモンとのコミュニケーションは抜群ね。それだけ、ポケモン達がマサト君のことを信頼しているんだと思うわ。」 マサト「うん!」 レイカ「でもバトルは別よ!ルンパッパ、ユキメノコにハイドロポンプ!カイリキー、ガブリアスにきあいパンチ!」 ルンパッパがハイドロポンプを、カイリキーがきあいパンチをそれぞれ放つ。 マサト「ユキメノコ、ルンパッパにみずのはどう!ガブリアス、りゅうせいぐん!」 ユキメノコがみずのはどうでハイドロポンプを迎え撃つ。一方でガブリアスはりゅうせいぐんを放った。 みずのはどうとハイドロポンプがぶつかり合い、辺り一面に水しぶきが飛び散る。そして水しぶきの彼方から無数のりゅうせいぐんがルンパッパとカイリキーに降り注いだ。 レイカ「ルンパッパ!カイリキー!」 りゅうせいぐんをまともに受けたルンパッパとカイリキーは勢いよく吹っ飛ばされ、戦闘不能となっていた。 審判「ルンパッパ、カイリキー、戦闘不能。ガブリアスの勝ち!」 イチロウ「マサト選手、ガブリアスのりゅうせいぐんが炸裂!レイカ選手のルンパッパとカイリキーを一度に戦闘不能に追い込みました!」 レイカ「マサト君、やるわね。私のポケモンを一気に2体も戦闘不能にできるなんて、とてもよく育てられてると思うわ。」 マサト「それはないよ、レイカちゃん。レイカちゃんだって、かなりよく育てられていると思うよ。」 レイカ「ありがとう。じゃあ、一気に私の最後のポケモンになるけど、行くわよ!出番よ!ゾロアーク(※1)、ハッサム!」 レイカはゾロアークとハッサムを繰り出した。しかしゾロアークとしての姿は登場せず、バシャーモとして現れたではないか。 コトミ「ゾロアーク!?」 コトミはポケモン図鑑を取り出してゾロアークをチェックしようとした。・・・しかし、ポケモン図鑑の反応は「データ無し」だった。 コトミ「データ無し?」 ミキ「ゾロアークっていうのは、最近になって発見された新しいポケモンの1つよ。ナナシマからは遠く離れた、イッシュ地方というところで多く見かけられるわ。 あたしもこうして見るのは初めてだわ。」 コトミ「でもゾロアークじゃなくて、バシャーモの姿になってるわ。どうして?」 ミキ「あれはゾロアークの特性、イリュージョンよ。」 ケイコ「イリュージョンっていうのは、ゾロアークと進化前のポケモン、ゾロアが持っている特性で、幻影を利用して別のポケモンに化けることができるの。最初から相手を戸惑わせる作戦ね。 やっぱりレイカちゃん、とてもよく育てられてるわね。伊達にミノルさんの妹さんではないわ。」 マサト「(ゾロアーク・・・。僕がまだ見たこともないポケモンだ。バシャーモに化けて出ているし、イリュージョンっていう特性も、まだ僕が知らないものだ。だけどポケモンに変わりはない! そしてハッサム。相手にとって不足無し!)ガブリアス、あれはバシャーモではない!ゾロアークだ!ゾロアークにかわらわり!ユキメノコはふぶき!」 ガブリアスがかわらわりを放つ。バシャーモはかわらわりを受けてイリュージョンが解け、本来のゾロアークの姿になった。一方のユキメノコもふぶきを放つ。 レイカ「ゾロアーク、つめとぎ!ハッサムはゾロアークを援護よ!まもる!」 ハッサムはまもるで攻撃を防ぎ、ゾロアークもろともダメージを防いだ。一方のゾロアークはつめとぎをする。 コトミ「つめとぎ?」 ミキ「自分の攻撃力と命中率を高める技だわ。あたしも初めて見るわ。レイカちゃん、なかなかの強敵ね。」 レイカ「行くわよ!ゾロアーク、ユキメノコにシャドークロー(※1)!ハッサムはガブリアスにバレットパンチ!」 ゾロアークがシャドークローでユキメノコに迫る。一方のハッサムも素早い行動でバレットパンチを繰り出した。 マサト「ユキメノコ、もう一度ふぶき!ガブリアスはハッサムにドラゴンクロー!」 ユキメノコはふぶきを放とうとしたが、ゾロアークのシャドークローが一瞬早く、もろにダメージを受けてしまった。効果は抜群だ。一方のガブリアスもドラゴンクローで ハッサムのバレットパンチを迎え撃ち、大爆発が起きた。 シャドークローをもろに受けたユキメノコはその場に崩れ落ち、戦闘不能となった。そしてガブリアスとハッサムも勢いよく吹っ飛ばされた。だがこの2体は両者ともまだ戦えそうだ。 審判「ユキメノコ、戦闘不能。ゾロアークの勝ち!」 イチロウ「レイカ選手、つめとぎからのシャドークローでユキメノコを戦闘不能に追い込みました!」 ルリカ「ゾロアークというポケモンは、遠く離れたイッシュ地方でよく見かけられるポケモンですが、まだカントーやジョウトなどではあまり数を見かけません。その点ではレイカ選手の作戦は 評価できると言えるでしょうね。」 マサト達がまだ見たこともなかったポケモン・ゾロアークを繰り出したレイカ。そして一番のパートナーでもあるハッサムをも繰り出した。 果たして、この勝負の軍配は、どちらに上がるのだろうか。 (3) ナナシマ・バトルチャンピオンシップスはバトル大会決勝トーナメント3回戦を迎え、マサトとレイカのバトルが繰り広げられていた。マサトはガブリアスがりゅうせいぐんを放ち、 レイカのルンパッパとカイリキーを一気に戦闘不能にした。が、レイカは新たなポケモン・ゾロアーク、そして一番のパートナーであるハッサムを繰り出したのだった。 ゾロアークの実力は予想以上のもので、シャドークローを繰り出してマサトのユキメノコを一撃で戦闘不能にしたのである。 マサト「次はこのポケモンだ!行け、リザード!」 マサトはリザードを繰り出した。 レイカ「ハッサム、ぎんいろのかぜ!ゾロアークはガブリアスにきりさく(※1)攻撃!」 ハッサムがぎんいろのかぜを放つ。2体同時にダメージを与えられる技である。一方のゾロアークは鋭い爪を生かしたきりさく攻撃を放った。 マサト「リザードはハッサムにかえんほうしゃ!ガブリアスはゾロアークにりゅうのはどう!」 リザードが強力なかえんほうしゃを放つ。かえんほうしゃとぎんいろのかぜは互いの技を打ち消しあう結果になった。一方でゾロアークのきりさくとガブリアスのりゅうのはどうがぶつかり合う。 しかしつめとぎで強化されていたのか、りゅうのはどうを打ち消してゾロアークはそのままきりさく攻撃を打ち込んだ。 マサト「ガブリアス!」 ガブリアスは強烈なきりさくを受けたが、まだ戦えそうだ。しかしダメージは相当のものだということは今の一撃から見ても明らかだった。 ケイコ「ゾロアークの強さ、並大抵のものではないわね。」 トモヤ「ああ。新しいポケモンを使ってバトルに挑む。レイカちゃんは相当な実力の持ち主ということだな。このままだとマサト君、どこまで耐えられるだろうか・・・。」 マサト「行くよ!ガブリアス、穴を掘って地中に潜れ!リザードも続け!」 ガブリアスとリザードは穴を掘って地中に潜り、相手の様子をうかがう。さっきと違い、カイリキーが倒れたことでノーガードの効力は消えている。 レイカ「(まずいわ。さっきカイリキーが倒されたから、ノーガードは効かない。でもやってみるわ!)ハッサム、ゾロアーク、穴に潜って!」 ハッサムとゾロアークが穴に潜り、ガブリアスとリザードの後を追う。 マサト「後ろだ!ガブリアス、後ろに向かってかわらわり!リザードも後ろに向かってでんこうせっか!」 地中なので状況が伝わらないが、ガブリアスのかわらわりとリザードのでんこうせっかが放たれた。同時に爆風が地表まで伝わり、フィールドに大きな穴が開いた。 爆風がようやく収まると、4匹の姿があらわとなっていた。 マサト「(さすがはレイカちゃんのポケモン。伊達にゾロアークを使いこなしていないな。よし、それなら。)ガブリアス、ゾロアークにギガインパクト!リザードはハッサムにかえんほうしゃ!」 ガブリアスの周りで空気が渦を巻き、ギガインパクトの体制となってそのままゾロアークに突っ込んでいった。一方のリザードはハッサムにかえんほうしゃを放つ。 レイカ「ゾロアーク、ガブリアスにブレイククロー(※1)!ハッサム、かわしてリザードにつばさでうつ!」 ゾロアークもブレイククローでガブリアスを迎え撃つ。一方のハッサムはかえんほうしゃをかわして、リザードを翼で撃ち落とした。ギガインパクトとブレイククローがぶつかり合い、 すさまじい爆発がとどろいた。 勢いよく吹っ飛ばされたリザードはそのままフェンスに叩きつけられ、戦闘不能となった。一方、ギガインパクトとブレイククローのすさまじい激突が収まると、 ガブリアスとゾロアークも双方が倒れていた。2体ともどうにかして立ち上がろうとするが、そのまま勢いなく崩れ去り、戦闘不能となった。 審判「ガブリアス、リザード、ゾロアーク、両者戦闘不能!」 イチロウ「さあ大激戦です!マサト選手のガブリアスとリザード、そしてレイカ選手のゾロアークまでもが3体同時に戦闘不能となりました!これで残すところ、両者ともに1体ずつ! この試合も終盤にさしかかっております!」 ルリカ「両者の技の出し合いで威力が相殺されるというケースは、ポケモンバトルでは珍しいケースではありません。両者とも上に向かうという気持ちが伝わってまいります。 これで残すところ両者1体ずつ。果たして、マサト選手はどういったポケモンを繰り出すのでしょうか。」 マサト「(レイカちゃんの実力は並大抵のものではない。最後に残った相手はハッサム。レイカちゃんに勝つためには、あのハッサムを倒さなければ!)行け、サーナイト!」 マサトはサーナイトを繰り出した。 レイカ「マサト君、最後の1体はやっぱりサーナイトだったのね。相性の面では私のハッサムの方が有利だけど、でもそれだけでは分からないと思うわ! マサト君、最後まで全力でバトルしましょう!」 マサト「うん!行くよ、サーナイト!」 レイカ「最後まで諦めないわよ、ハッサム!」 かくして両者とも残り1体。マサトはサーナイト、レイカはハッサムと、お互いの一番のパートナー同士の対決となった。果たして、この激戦を制するのは、マサトか、それともレイカか。 (4) 〜挿入歌・『アイスクリーム・シンドローム』が流れる〜 ナナシマ・バトルチャンピオンシップス、バトル大会は決勝トーナメント3回戦、マサトとレイカの激闘が続いていた。互いに残るポケモンは後1体。マサトはサーナイト、レイカはハッサムと、 両者の一番のパートナーが対決することになった。しかし、相性の面ではサーナイトが圧倒的に不利だった。 レイカ「行くよ!ハッサム、むしくい!」 ハッサムがむしくいの姿勢に入る。 マサト「サーナイト、かげぶんしん!」 サーナイトがかげぶんしんで無数の分身に分かれる。むしくいは分身したうちの1つに命中、ハッサムの攻撃は外れた。 マサト「サーナイト、シャドーボールだ!」 サーナイトがシャドーボールを放つ。ハッサムにそれなりのダメージを与えたが、元々シャドーボールはゴーストタイプの技であり、はがねタイプも併せ持つハッサムに対しては効果は今ひとつだ。 レイカ「次は私の番よ!ハッサム、メタルクロー!」 ハッサムがメタルクローを放つ。タイプが一致していたメタルクローは特性のテクニシャンと相まって威力が強化され、サーナイトは大ダメージを受けてしまった。 マサト「(サーナイトが覚えている技は、全部がハッサムに対して効果今ひとつ。このままでは不利だ。それなら。)サーナイト、サイコキネシス!」 サーナイトがサイコキネシスを放つ。最低でも通常通りの威力になる技がない以上、細かなダメージの積み重ねで翻弄する作戦だろう。 レイカ「(どうやらサーナイトは効果的な技を持ち合わせていないみたいね。)ハッサム、もう一度メタルクロー!」 ハッサムが再びメタルクローを放つ。 マサト「サーナイト、もう一度かげぶんしん!」 サーナイトがかげぶんしんを放つ。再び無数の分身が現れた。 レイカ「ハッサム、分身全部にメタルクロー!」 ハッサムが分身全部にメタルクローを放った。両方のはさみで攻撃を繰り出しており、分身を消し去るスピードもなかなかのものだった。そしてメタルクローが本物に命中した。 それも心なしか、さっきと比べて威力が高そうだった。 コトミ「今のメタルクロー、さっきと比べて威力が上がっているわ!」 サヤカ「あれはメタルクローの追加効果よ。攻撃した後で、たまに自分の攻撃力を上げることがあるわ。攻撃力を上げてダメージを増やすことができれば、もちろん自分に有利な展開になるわね。」 レイカ「続いて行くよ!ハッサム、むしくい!」 ハッサムがむしくいを放つ。 マサト「サーナイト、テレポート!」 サーナイトがテレポートでハッサムの前から姿を消す。 レイカ「テレポートね。それなら回転しながらむしくい!」 ハッサムが回転を始めた。しかも回転しながらむしくいの体制に入っている。どこから現れるか、チャンスをうかがっているのだろう。そしてサーナイトが姿を現した直後にむしくいが炸裂した。 むしタイプの技であるむしくいは効果抜群だ。 マサト「サーナイト!」 サーナイトは勢いよく吹っ飛ばされたが、かなり息が上がっている。次に大きなダメージを受ければ戦闘不能は免れないだろう。 レイカ「次で決めるわ!ハッサム、もう一度むしくい!」 ハッサムが再びむしくいの体制に入る。すでにメタルクローで攻撃力が上がっており、次にサーナイトに大ダメージを与えられれば勝敗は決するだろう。 マサト「サーナイト!最後まで諦めないっていうことを、レイカちゃんに見せてやって!」 サーナイトはその声に応えたのか、一声上げた。 と、そのときサーナイトの手の間から電気の固まりと見まがうものが現れたではないか。 マサト「サーナイト!新しい技なんだね!」 サーナイトはその電気の固まりをハッサムに向かって打ち出した。その電気をもろに浴びたハッサムは技の発動が途切れたばかりでなく、麻痺して技が出にくくなってしまった。 トモヤ「今の技は!?」 ミキ「うん!間違いないわ。あれはでんじほうよ(※2)!あたしのエーフィが覚えたときと同じだわ。サーナイトもバトルするたびに成長していくわね。」 マサト「すごい!サーナイト、でんじほうを覚えたんだね!さあ、これから反撃だよ!サーナイト、でんじほう!」 サーナイトが再びでんじほうを放った。 レイカ「しっかりして、ハッサム!もう一度むしくい!」 ハッサムはむしくいを放とうとしたが、麻痺の影響で行動をとることができなかった。 マサト「行け、サーナイト!でんじほうにサイコキネシス!マックスパワーだ!」 サーナイトがでんじほうにサイコキネシスをかけて操り、ハッサムに打ち当てた。マックスパワーまで出されていたこともあり、大ダメージを与えることになった。 当たった瞬間に大爆発が起きた。あまりにすさまじく、しばらく正視することができなかった。 爆発が収まると、サーナイトとハッサム、2体のポケモンが互いに見つめ合う姿が見られた。 2体はしばらく見つめ合っていたが、やがて1体がゆっくりと倒れ込み、戦闘不能となった。ハッサムだった。 審判「ハッサム、戦闘不能。サーナイトの勝ち。よって勝者、トウカシティのマサト!」 イチロウ「サーナイト、絶体絶命の中新しく覚えたでんじほうを使いこなして、ハッサムを撃破!レイカ選手を破り、4回戦進出を果たしました!」 マサト「やったね、サーナイト!でんじほうを覚えられたんだね!」 そこにレイカが歩み寄った。 レイカ「マサト君。私、こうしてマサト君とバトルできて、本当に楽しかった!」 マサト「僕もだよ、レイカちゃん。ゾロアークを出したときは正直言ってびっくりしたけど、でもレイカちゃんなら、これからもっと強くなれると思うよ!」 レイカ「ありがとう!マサト君、次はケイコさんとのバトルだね。ケイコさんもかなり強いトレーナーだと思うけど、私の分まで、優勝に向かってバトルしてね!」 マサト「うん!」 そう言って、マサトは手を差し出した。――レイカはマサトの手を取ると、しっかりと握りしめた。 その姿を見つめながら、コトミとユカリは次の試合のことを思っていた。 コトミ「(次はいよいよユカリさんとのバトルだわ。ユカリさんはトップコーディネーターとして、高い実力を誇っている。 あたしがどこまでかなう相手かは分からないけど、でもやってみなきゃ!)」 ユカリ「(コトミちゃんはこれからの活躍が期待される、光る原石ね。どう言ったコンビネーションになるか、どう言ったポケモンで演技してくれるか、本当に楽しみね!)」 バトル大会、マサトはレイカとの激戦に勝ち抜き、次の試合でケイコとバトルすることになった。そして次はコンテスト大会。二次審査・コンテストバトル3回戦、 コトミがミキとルリカの親友にしてトップコーディネーターでもあるユカリとバトルを繰り広げることになる。 ユカリはトップコーディネーターと言うこともあり、これまでコンテストバトルの相手となったシンサク、そしてサヤカとは段違いの実力の持ち主と言うことは容易に想像できた。 まだコトミがかなう相手ではない可能性の方が極めて高い。そう言った中で、コトミがどれだけの実力を発揮できるかも試されているのだった。 果たして、どう言ったバトルが繰り広げられるのであろうか。負けられない戦いは、まだまだ続く。 (※1)「ゾロアークの覚えている技について」 これを書いている時点では、ゾロアークがどういった技を覚えるかはまだほとんど知られていないため、覚えている技は現時点での想像とすることにします。 実際にブラック・ホワイトが発売された後でゾロアークがこれらの技を覚えられないことが判明した場合、この文章は修正されることになりそうです。 (※2)「サーナイトのでんじほうについて」 本来、サーナイトはでんじほうを覚えられませんが、金・銀・クリスタルではわざマシンででんじほうを覚えられたことや、作中でもミキのエーフィがでんじほうを覚えていることから、 もし金・銀・クリスタルのわざマシンがルビー・サファイア・エメラルド以降の世界に存在した場合、サーナイトがでんじほうを覚えられる可能性が高いことから、 サーナイトはでんじほうを覚えられるものとします。 Chapter-36に続く。 <初出> 全編書き下ろし。