Chapter-40『クチバシティ!四天王ルリカの原点!!』 (1) ナナシマ・バトルチャンピオンシップスでコンテスト大会に出場、数々のコーディネーターを相手に堂々とした演技で渡り合ったコトミ。そしてバトル大会のゲスト解説と言う大役を勤めあげた ジョウトリーグ四天王・ルリカ。2人が乗った船は、カントーの海の玄関にしてルリカの出身地でもあるクチバシティに到着した。 クチバシティは、「夕焼けに染まる港町」と言うフレーズからオレンジ色を中心とした配色が多い。また、カントーリーグのジムの1つでもあるクチバジムもこの町にある。 コトミ「たくさんの船が行き交っているんですね。」 ルリカ「そうよ。ここクチバシティはカントー地方でも指折りの港町だから、たくさんの船が入っているわ。コトミちゃんは、サント・アンヌ号って豪華客船は聞いたことある?」 コトミ「ええ、聞いたことはあります。確か、1年かけて世界を一周している豪華客船のことですよね(※)。」 ルリカ「うん。コトミちゃんもよく知ってるわね。そのサント・アンヌ号が、毎年1回、クチバの港に入るの。その度ごとに招待されたトレーナーやコーディネーターと交流パーティを行うのよ。」 コトミ「そうですかぁ。あたしもそう言った交流パーティって憧れますね。ところでルリカさんは、パーティに招かれたことってあるんですか?」 ルリカ「ううん。私はまだ1度も招かれたことがないの。だから、いつかは参加してみたいなぁって思ってるわ。」 コトミ「ルリカさんみたいな有名なトレーナーでしたら、きっといつかは招待されると思います。あたしはまだ駆け出しですし・・・。」 ルリカ「そんなことはないわ。バトルチャンピオンシップスのときだって、コトミちゃん、ユカリさんを相手にいいバトルを見せてたわ。だからコトミちゃんも、トレーナーとして、 コーディネーターとしてレベルを上げていけば、きっと招待されると思うわ。」 コトミ「ありがとうございます。」 やがて2人は港の外れにある倉庫が立ち並んでいる場所に足を踏み入れた。 この一帯は工場が多く並んでおり、たくさんのコンテナが山積みにされていた。恐らくはこれら無数のコンテナを船に積み込み、全国各地、そして遠く離れた土地に向かって運んでいくのだろう。 コトミ「ここって、たくさんの工場が並んでいるんですね。」 ルリカ「うん。そして私とメガニウムは、まだチコリータだったときにこの場所で初めて出会ったのよ。」 コトミ「えっ、ルリカさんがあのメガニウムと初めて出会った場所って、ここだったんですか?」 ルリカ「そうよ。私とチコリータはここで初めて出会ったわ。そして、ベイリーフからメガニウムに進化して、私もポケモントレーナーとして成長していった。そして今ではジョウトリーグの 四天王。この場所に立つと、私もまた初心に帰って新しく挑戦しようって気分になれるわ。おいで、メガニウム!」 ルリカはそう言うとメガニウムを繰り出した。 ルリカ「あれは、私がまだ10歳になるかならないかの頃だったわ。」 ルリカはそう言って、メガニウムとの出会いを語り始めた。 (2) この世界では10歳になると、ポケモントレーナーとして認められ、自分のポケモンを持つことになる。かつてサトシもマサラタウンを旅立つとき、本当ならゼニガメをもらおうと思って いたのだが、寝坊したためにゼニガメはかのオーキド博士の孫にして今やポケモン研究者として有名なシゲルにもらわれてしまい、ピカチュウを連れて旅立ったと言うのは隠れたエピソードである。 当時のルリカもまた、ポケモントレーナーとして旅に出るのを待ち焦がれていたのだった。が、肝心の最初のポケモンをどうするか、まだ迷っていたのだった。 ルリカの母「ルリカ、もうすぐポケモントレーナーとして認められるわね。最初のポケモンはどうするか、ルリカはもう決めたの?」 ルリカ「ううん。まだどれにしようか迷ってるの。オーキド博士の3匹、ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネはどれも可愛くて強そうだし、正直言ってまだ決められないの。」 ルリカの父「うん。一番最初に選ぶポケモンは、これからポケモントレーナーとして長い道のりを一緒に歩んでいく大切なパートナーだからね。じっくり考えるといいよ。」 ルリカ「そうだ。港まで散歩に行ってもいい?」 ルリカの母「うん。だけど、暗くならないうちに帰るのよ。」 ルリカ「分かってるわ。じゃ、行ってきまーす!」 ルリカにとって、クチバの港はたくさんの船が行き交う場所であり、それは果てしない冒険の世界を感じさせてくれる場所だった。ましてやもうすぐポケモントレーナーとなる身ともなれば、 その思いはなおさらのことだっただろう。 ルリカ「(きれいね・・・。この広い海は遠い地方まで続いている。そこには私の見たことのないポケモンがたくさんいるんだろうなぁ・・・。私もポケモントレーナーになったら、 たくさんのポケモンと一緒に、いろんなところを回ってみたいわ。)」 と、ポケモンの鳴き声が聞こえた気がした。 ルリカ「(ん?何かしら?)」 ルリカは鳴き声のした方に向かっていった。 そこでは、1匹の黄緑色のポケモンが寂しげにコンテナの片隅で震えていた。チコリータだ。ヒノアラシやワニノコと並んでジョウト地方の初心者用ポケモンとして推奨されているポケモンの 1つだが、カントーではあまり姿を見かけない。恐らくジョウトからの船に紛れ込んでいたのだろう。 ルリカ「大丈夫?」 ルリカはチコリータに声をかけてみた。チコリータは寂しそうな声をあげた。 ルリカ「きっと、本当は別のところで仲間と一緒にいたんだと思うわ。私がしっかり面倒を見てあげるわね。」 と、そこに港で生活しているのだろう、野生のポケモンが姿を現した。コラッタ、ポッポ、オニスズメ、サンドなどが、一斉にルリカとチコリータを睨み付けている。 ルリカ「あなた達、この子をどうするつもりなの?」 野生ポケモン達は大勢でチコリータを狙っているのだろう。果たしてコラッタのうちの1匹がたいあたりでチコリータを攻撃したではないか。 ルリカ「この子は私が守るわ!チコリータ、はっぱカッター!」 チコリータがはっぱカッターを繰り出す。はっぱカッターをもろに受けたコラッタは勢いよく吹っ飛ばされてしまった。 それを見て、ポッポがかぜおこしを、オニスズメがつつく攻撃を放った。 ルリカ「チコリータ、たいあたり!」 チコリータはかぜおこしとつつく攻撃を巧みにかわして、ポッポとオニスズメに連続でたいあたりをかました。ポッポとオニスズメはたまらず叩き落とされてしまった。 さらにそれを見てサンドが突っ込んだ。鋭い爪を活かしてきりさく攻撃を放つ。チコリータでもまともに受ければダメージが大きくなるだろう。 ルリカ「チコリータ、はっぱカッター!」 チコリータが再びはっぱカッターでサンドを攻撃する。くさタイプのはっぱカッターはじめんタイプのサンドに効果抜群だ。サンドもたまらずはね飛ばされる。 ルリカ「チコリータ、大丈夫?」 チコリータはにっこりと微笑む。が、さっきの野生ポケモンが再び立ち上がり、またしてもチコリータに攻撃したではないか。 ルリカ「チコリータ、危ない!」 ルリカはポケモン達の間に入ってチコリータをかばう。しかしチコリータはルリカの肩に飛び移り、何やら白銀色の球体を打ち出した。げんしのちからだ。 げんしのちからをもろに食らった野生ポケモン達はたまらずに一目散に立ち去っていった。 ルリカ「チコリータ、あなたはとてもすごいポケモンだわ!げんしのちからを使えるのね!」 チコリータはルリカの肩に飛び移って、顔を頬にすり寄せた。 ルリカ「チコリータ、私はこれからポケモントレーナーになるの。よかったら、私と一緒に旅しない?私とあなた、とてもいいコンビになれるって、そう言う気がするわ!」 チコリータはにっこりとうなずいた。 ルリカ「うん!ありがとう、チコリータ!あなたは私の初めてのポケモンよ!これから仲良くしようね!」 コトミ「そう言うことだったんですね。お父さんやお母さんは、チコリータを最初のポケモンにするって言ったとき、どう言ってました?」 ルリカ「お父さんもお母さんも、『ルリカが選んだポケモンだから、大切に育てなさい』って言ってくれたわ。そしてここから、私の旅が始まったの。ポケモンリーグに挑戦して、 四天王になって、ミキさんやユカリさん、そしてマサト君やコトミちゃん、トモヤさん、その他にもたくさんのトレーナーやコーディネーターと知り合ったわ。でも、ポケモンリーグを 制覇して四天王になったからと言って、私の旅が終わるわけではないわ。夢を見失わない限り、旅は終わらないと思うわ。」 コトミ「そうですね。あたしも、ナナシマを旅してマサトやトモヤさん、ミキさん、そしてユカリさん、ルリカさん、他にも多くの出会いを経験しました。数々の出会いの中に、 きっと光るものがあると思います。」 ルリカ「そうね。コトミちゃん、よかったら私の家、見に行かない?」 コトミ「いいんですか?」 ルリカ「うん!」 コトミ「ありがとうございます!」 (3) コトミはルリカに連れられて、クチバシティにあるルリカの実家に足を運んだ。 ルリカ「ただいま!」 ルリカの母「お帰り!バトルチャンピオンシップス、お母さんもテレビで見てたよ。ルリカ、あなたは解説も上手ね。あら、後ろの子は・・・?」 ルリカ「あ、紹介するわね。ポケモンコーディネーターのコトミちゃん。今度、ジョウトリーグにも挑戦するそうよ。」 コトミ「初めまして。あたし、コトミです。」 ルリカの父「初めまして。ルリカの父です。」 ルリカの母「ルリカの母です。コトミちゃんはポケモントレーナーとしても修行されるそうね。いつかジョウトリーグでバトルする姿を見たいわ。」 コトミ「ありがとうございます。でもあたし、バトルチャンピオンシップスではコンテスト大会でしたし、ましてユカリさんに負けていますので・・・。」 ルリカの母「そんなことはないわ。コトミちゃん、あなたはこれからもっと強くなれるわ。私達も応援してるわね。」 コトミ「ありがとうございます!」 ルリカの父「それはそうと、コトミちゃんはお家に連絡はしたんですか?」 コトミ「あ、そうでした!パパやママも心配してると思うわ。」 コトミの母「まあ!ルリカさんのご実家に?」 コトミ「うん。ルリカさんとは船が同じだったから、クチバまで一緒だったの。これから帰るけど、ジョウトのリュウグウジムを公認ジムにするって言ってたから、それまでは ルリカさんが同行してくれるわ。」 コトミの母「と言うことはルリカさんがお見えになるって言うことよね?コトミ、あなたは本当にいい人と知り合えたわね。」 コトミ「うふふ・・・。」 コトミの母「詳しいことは帰ってから聞くわ。そうだ。ルリカさん、コトミのことをよろしくお願いしますね。」 ルリカ「はい。こちらこそよろしくお願いします。」 ルリカの母「ルリカの母です。コトミさんのお母様でいらっしゃいますね。これからもよろしくお願いしますね。」 ルリカの父「ルリカの父です。コトミちゃんは本当にしっかりしたいい子ですね。今後ともよろしくお願いします。」 電話を切ると、コトミとルリカはタマムシシティに向かって出発することになった。 ルリカの父「もうちょっとゆっくりしていけばいいのに。でも四天王たるもの、油断は禁物、か。ルリカ、これからも鍛練あるのみだぞ!コトミちゃんもバトルにコンテスト、 色々大変だと思うけど、きっとできる!」 ルリカの母「ルリカ、リーグに戻ったらワタルさんや他の皆さんにもよろしくと伝えといてね。コトミちゃん、お母様によろしくね。」 コトミ「はい。お世話になりました!」 ルリカ「行ってきます!」 クチバシティを後にしたコトミとルリカは、程なくして大きな町にたどり着いた。ヤマブキシティだ。 コトミ「ここがヤマブキシティですね。ミキさんの生まれ育った町ですね。」 ルリカ「そうよ。ミキさんはヤマブキの北西にあるブライトンハイツに実家があるわ。私も行ったことがあるんだけど、高層マンションが建ち並んでいるけど、自然も豊かな地区よ。」 コトミ「確かブライトンハイツって、リニアの駅も近いんですよね。ミキさん、本当に便利なところに住んでるんですね。」 ルリカ「そうね。さあ、もうすぐタマムシシティね。コトミちゃん、ナナシマを旅して成長した姿を、お父さんとお母さんに見せてあげて!」 コトミ「はい!」 ヤマブキシティを越えれば、コトミの故郷・タマムシシティはもうすぐだ。そこでは、どう言った出会いが待っているのだろうか。 (※)「サント・アンヌ号について」 アニメでは、無印・カントー編にてサント・アンヌ号が沈没する描写がなされていましたが、ここでは沈没はしておらず、赤・緑・青・ピカチュウ・ファイアレッド・リーフグリーンの 描写通り1年に1回世界を一周していることとします。 Chapter-41に続く。 <初出> 全編書き下ろし。