Chapter-47『変幻自在!ゾロアの化けばけばぁ!?』 (1) チコリータとゼニガメを旅の仲間に加えたマサト達は、ポケモンコンテストが行われるヨシノシティに向かって旅を続けていた。 途中マサト達が立ち寄ったのは、ポケモンのストリートパフォーマンスで有名なラフォールタウン。ナナシマリーグのジムリーダーにも選ばれたトモヤの出身地だ。 マサト「ここがラフォールタウンですね。トモヤさんはこの町の出身なんですね。」 コトミ「さすがはストリートパフォーマンスで有名な町。たくさんのポケモンがいろんな演技をやってるんですね。」 ミキ「うん。ラフォールタウンは、毎年何回かストリートパフォーマンスのイベントを行っているのよ。ジョウトはもちろん、カントーやほかの地方からもたくさんの観光客が訪れて、開催期間中は多くの人で賑わうわ。そうだ。せっかくだし、トモヤさんに連絡を取ってみたらどうかしら?」 マサト「そうですね。トモヤさん、今ではナナシマリーグのジムリーダーにも選ばれたんですもんね。もしかしたら、ヘッドリーダーになるかもしれないですしね。」 コトミ「元気にしているかしら。連絡してみましょう!」 と、人々が行き交う通りからやや離れたところ、広場の片隅に唐突に1台のテレビ電話が置かれていた。いかにも連絡を取ってくださいと言わんばかりである。 ミキ「あそこに電話があるわ。行ってみましょう!」 マサト・コトミ「はい!」 マサト達は早速そのテレビ電話に向かっていき、受話器を取った。――だが、ボタンを押してもうんともすんとも言わない。 マサト「あれ・・・?」 コトミ「この電話機、壊れてるのかしら・・・?」 ミキ「それはないと思うわ。じゃあ、今度はあたしがやってみるわね。」 ミキは受話器を受け取り、番号のボタンを押してみた。――だが、さっきマサトがやったときと同じで、電話機は全く反応を示さない。 コトミ「やっぱり壊れてるんですか・・・?」 ミキ「変だわ。普通だったら反応するはずなのに、全く反応がないわ。これはどう言うことかしら・・・。」 と、今まで電話機だと思っていた物体が、突如姿を変えたではないか。 マサト「あっ!?」 電話機はあっという間に形状が変わり、無人の屋台に変化してしまった。 コトミ「電話機が・・・、屋台になっちゃった!?」 ミキ「これはおかしいわね。普通だったらすぐにここまで形が変わることはないわ。さては、あなたはポケモンね!?」 ミキの声に反応したのか、屋台はさらに姿が変わり、1本の街路樹に姿を変えてしまった。 マサト「今度は街路樹だよ!?」 ミキ「さっきは電話機。その次は屋台。そしてその次は街路樹。メタモンのへんしんでもここまであっという間に姿を変えることはできないわ。これはゾロアとゾロアークが持っている特性、イリュージョンだわ!」 マサト「ゾロアとゾロアーク?」 瞬間、マサトの脳裏をある出来事がよぎった。――確かバトルチャンピオンシップスのとき、レイカがゾロアークと言ってバシャーモを出した。だが、あれはガブリアスのかわらわりを受けてイリュージョンが解け、ゾロアーク本来の姿になったはずだ・・・。 コトミ「と言うことは、あなたはゾロアかゾロアークなのね!」 ミキ「コトミちゃん、ゾロアとゾロアークはいずれもあくタイプ。エルレイドはエスパータイプとかくとうタイプを併せ持っているから、かくとうタイプの技を使えば大きなダメージを与えることができるわ。やってみる?」 コトミ「うん!行くわよ、エルレイド!」 コトミのエルレイドがバトルの体制に入る。 マサト「コトミ、この街路樹がゾロアかゾロアークかは分からないけど、エスパータイプの技はあくタイプには効かないよ。注意してね!」 コトミ「うん!」 自由自在に姿を変える謎のポケモン。あるときは電話機、またあるときは屋台、そしてまたあるときは街路樹。果たして、コトミはこの正体をつかむことはできるのだろうか。 (2) トモヤの故郷でもあるラフォールタウン。そこでマサト達が見たものは、電話機、屋台、街路樹と、あらゆるものに姿を変える謎の物体だった。マサトやミキの発言からして、この物体が幻影を操るポケモン、ゾロアかゾロアークであることはほぼ間違いなかった。ゾロアが進化するとゾロアークになる。果たして、正体はどちらなのだろうか。 正体をつかむべく、コトミはエルレイドを繰り出してバトルすることになった。 ミキ「コトミちゃん、イリュージョンは一定のダメージを与えると本来の姿になるわ。でも相手も何をするか分からないから、慎重にね!」 コトミ「うん!エルレイド、リーフブレード!」 エルレイドがリーフブレードを放つ。その瞬間、街路樹は何と伝説の鳥ポケモン・ファイヤーに姿を変え、リーフブレードのダメージを抑えてしまったのである。 マサト「ああっ!?」 ミキ「今度はファイヤーだわ。ファイヤーはフリーザーやサンダーと並ぶ伝説の鳥ポケモンの1つ。でも本当の姿ではないわ。だからコトミちゃん、姿に惑わされないで!」 コトミ「うん!エルレイド、つじぎり!」 エルレイドはつじぎりを放って応戦した。するとファイヤーはルカリオに姿を変え、つじぎりのダメージをこれまたかなり抑えてしまった。 コトミ「今度はルカリオね。エルレイド、思い切って行くわよ!インファイト!」 エルレイドがインファイトを放つ。ルカリオ、ゾロア、ゾロアークいずれもが持っているタイプに対しても効果抜群の技だった。――だが、相手もさるもの、インファイトを受ける直前に今度はミカルゲに姿を変え、インファイトのダメージを防いだのである。 コトミ「次はミカルゲ!?」 マサト「あのポケモン、なかなかしぶといなぁ。エルレイドが出す技のタイプに応じて姿を変えている。コトミ、気をつけてね!」 コトミ「分かったわ。エルレイド、もう一度リーフブレード!」 エルレイドが再びリーフブレードを放つ。果たして、次はどのポケモンに化けるのだろうか。 コトミ「(リーフブレードはくさタイプの技。相手はくさタイプが効きにくいポケモンに姿を変えるはず!)エルレイド、つじぎり!」 エルレイドはミカルゲになりすましているポケモンが姿を変える瞬間を狙い、リーフブレードの体制からつじぎりを放った。――相手はくさタイプに強いムクホークに変化、それなりのダメージを与えたのである。 だがムクホーク――正確にはゾロアかゾロアークが化けているポケモンである――はいくつかの分身に分かれたかと思うと、いきなりエルレイドに攻撃したではないか。だましうちだ。 マサト「今のは、だましうち!?」 ミキ「相手も攻撃を受けてばかりではいられないと思って、反撃に出たのね。コトミちゃん、元々ゾロアとゾロアークはあくタイプ。だましうちは威力が上がることになるわ。気をつけてね!」 コトミ「うん!エルレイド、もう一度つじぎり!」 エルレイドがつじぎりの体制に入る。だがそこは相手のこと、例によってつじぎりが効きにくいタイプのポケモンに姿を変えるに違いない。あくタイプの技が効きにくいポケモンと言えば・・・。 コトミ「エルレイド、相手はあくタイプの技が効果今ひとつのポケモンに姿を変えると思うわ!インファイト!」 エルレイドはムクホーク――つじぎりを放った瞬間、相手は例によって姿を変化させていた――に化けた相手の懐に飛び込み、勢いよくインファイトを放った。 相手が次に化けていたのはマニューラだった。マニューラに対してはかくとうタイプのインファイトは効果抜群どころではない。さらに与えるダメージが大きくなったのだった。 と、マニューラに化けていた相手のイリュージョンが解け、正体を現した。さんざんマサト達を化かしていた相手の正体は、何とまだ小さなゾロアだったのだ。 マサト「ゾロアだったの!?」 マサトはポケモン図鑑を取り出してゾロアをチェックする。 コトミ「バトルチャンピオンシップスでレイカちゃんが使っていたゾロアーク。その進化前のポケモンがゾロアなんだね。」 ミキ「コトミちゃん、相手の正体が分かった以上、ゾロアも本気になってバトルすると思うわ。だからコトミちゃん、油断しないでね!」 コトミ「うん!」 ありとあらゆるポケモンや物体に姿を変え、マサト達を驚かしていたポケモンの正体は、遠くイッシュ地方で見かけられるゾロアだった。しかし正体が判明したと言うことは、ゾロアも本気になってバトルを挑むに違いない。 果たして、コトミとエルレイドはどう言った形でバトルしていくのだろうか。 (3) トモヤの故郷にしてストリートパフォーマンスで有名な町・ラフォールタウン。そこでマサト達が何の気もなしに見つけた1台のテレビ電話。それは屋台、街路樹とあらゆる姿に変化していった。そしてコトミはその正体をつかむべく、エルレイドを出してバトルを挑んだ。 バトルのさなか、街路樹は伝説の鳥ポケモンと詠われるファイヤー、ミキの手持ちポケモンの1匹であるルカリオ、さらにはミカルゲやムクホークに姿を変えた。だが次に変化するポケモンを読んでエルレイドが繰り出したインファイトがイリュージョンを解き、正体があらわになった。その正体はイッシュ地方に主に生息しているわるぎつねポケモン・ゾロアだったのである。 マサト「コトミ、このゾロアはどうするの?」 コトミ「あたし、ゾロアをゲットするわ!行くわよ、エルレイド!」 相手の正体を見破ったこともあり、エルレイドがさらにやる気を高めている。 一方、正体がむき出しになったゾロアは、不意にエルレイドに飛びかかると、強烈な爪の一撃でダメージを与えた。 マサト「ゾロア、ひっかく攻撃も使えるの!?」 ミキ「そうね。マサト君、バトルチャンピオンシップスでレイカちゃんのゾロアークとバトルしたときのことを覚えてるでしょ?」 マサト「確か、ゾロアークはシャドークローやブレイククロー、きりさく、つめとぎと言った、爪を使った技を使いこなしてました。」 コトミ「だからひっかくを覚えていても不思議ではないって言うのね。エルレイド、リーフブレード!」 エルレイドがリーフブレードを放つ。しかしゾロアは身軽にリーフブレードをかわした。 コトミ「エルレイド、もう一度インファイト!」 エルレイドが再びゾロアの懐に飛び込み、インファイトの体制に入る。だがゾロアは全身から黒い衝撃波を飛ばしてエルレイドを吹っ飛ばしてしまった。しかしその技はあくのはどうとは似ても似つかない。恐らく見たこともない技を使ったのだろう。 マサト「あれは!?」 ミキ「あたし、前にあの技を見たことがあるわ。あれはゾロアとゾロアークが使いこなす技、ナイトバーストだわ!」 コトミ「ナイトバースト?」 ミキ「衝撃波を飛ばして相手を攻撃する技よ。ナイトバーストを受けたポケモンは、相手に技が当たりにくくなることがあるって聞いたことがあるわ。まともに受けていたらダメージもかなりのものになると思うわ。コトミちゃん、気をつけてね!」 コトミ「うん!エルレイド、もう一度リーフブレード!」 エルレイドがリーフブレードを放って攻撃する。だがさっきのナイトバーストをまともに受けてしまったのか、狙いがまるで定まっておらず、あさっての方向に向けて放たれてしまったではないか。 マサト「危ない!サーナイト、サイコキネシス!」 マサトはたまらずサーナイトにサイコキネシスを指示した。リーフブレードはあわやというところで向きを変えていった。 コトミ「(エルレイドはナイトバーストを受けてしまったせいで攻撃が当たりにくい。それなら相手が近づいたところを狙って攻撃しなきゃ・・・!)」 と、ゾロアが再びナイトバーストを放つ体制に入ったではないか。 コトミ「(今だわ!)エルレイド、テレポート!」 エルレイドがテレポートでナイトバーストをかわす。次の瞬間、エルレイドはゾロアの真後ろをとった。 コトミ「エルレイド、お願い!インファイト!」 エルレイドは強烈なインファイトの一撃を繰り出した。真後ろをとられたゾロアは身をかわす間もなく効果抜群の一撃を受けてしまい、その場に倒れ込んだ。 コトミ「今よ!お願い、モンスターボール!」 コトミはゾロアにモンスターボールを投げた。 モンスターボールはゾロアに命中、赤い光を点滅させ始める。光が消えるまでの時間はトレーナーにとって緊張の時間なのは言うまでもない。マサトやミキも固唾をのんで光の点滅するボールを見守っていた。 そして、赤い点滅が静かに収まり、ボールの反応が収まった。――コトミはゾロアをゲットしたのだった。 コトミ「うん!ゾロア、ゲットでスマイル!!」 エルレイドも腕を振り回して感情を表現していた。 と、コトミの手からゾロアの入ったモンスターボールが消え、ネットワークシステムに転送されていった。 マサト「コトミも新しいポケモンを捕まえたことで、ネットワークシステムに転送されたんだね。」 コトミ「そうね。どこに転送されたのかしら。」 と、コトミのポケギアに通信が入る。相手はアユミの姉・コノハだった。 コノハ「こんにちは、コトミちゃん。」 コトミ「コノハさん!」 コノハ「今、新しいポケモンが転送されたわ。コトミちゃん、ゾロアをゲットしたんだね。」 コトミ「はい。いろんなものやポケモンに姿を変えて大変でしたけど、最後はどうにかしてゲットできたんです。」 コノハ「ゾロアはあたしのところでしっかり預かっておくわ。コトミちゃん、必要なときになったら、いつでもあたしのところに言ってきてね!」 コトミ「はい!」 そう言うとコノハは通信を切った。それを見て、ミキがマサトとコトミに話しかけてきた。 ミキ「マサト君、コトミちゃん。いろいろと大変だったけど、せっかくラフォールタウンに立ち寄ったんだから、トモヤさんに連絡を取ってみたらどう?」 マサト「そうですね。ポケギアという手段もありますけど、ポケモンセンターの電話を使って、面と向かって話がしたいですね。」 コトミ「あたしもそうしたいです。トモヤさん、元気にしていらっしゃるかしら。」 ミキ「そうね。じゃあ、ポケモンセンターに行ってみましょう!」 マサト・コトミ「はい!」 マサト達はポケモンセンターに行くと、2のしまのトモヤの実家に電話をかけた。 トモヤ「おお、マサト君、コトミちゃん。久し振りだね。」 マサト「トモヤさん!」 コトミ「あたし達、今ラフォールタウンにいるんです。確か、トモヤさんの生まれ育った町でしたよね。」 トモヤ「ああ。おや、後ろにいるのはミキさんだね。お久しぶりです。」 ミキ「お久しぶりです。トモヤさんもお元気そうで何よりですね。」 トモヤ「と言うことは、ミキさんはマサト君とコトミちゃんの旅に同行することになったと言うことでいいんですね?」 ミキ「はい。あたし、ジョウトリーグとポケモンコンテストのエキシビジョンマッチに出場することにしてるんです。マサト君とコトミちゃんは、ジョウトリーグとグランドフェスティバルに出場するために旅を続けているんです。」 マサト「トモヤさん、そちらの様子はどうですか?」 トモヤ「ああ、私はもうじきナナシマリーグのジムリーダー選考会があるから、それに向けてポケモン達とトレーニングの真っ最中だよ。」 と、後ろからニドキングが現れ、画面の向こうのマサト達に一礼した。 コトミ「ニドキングも元気そうですね。ところで、ジムリーダー選考会は、いつ行われるんですか?」 トモヤ「4か月後だね。場所はバトルチャンピオンシップスが行われた7のしまのトレーナータワーだよ。」 マサト「そうですか・・・。実は、ミキさんが今度出場することにしているジョウトリーグのエキシビジョンマッチが、ちょうど4か月後に行われることになっているんです。」 コトミ「トモヤさんも応援してあげたいですけど、ミキさんも応援したいんです。ほとんど時期が重なっているんでしたら・・・。」 トモヤ「そうか・・・。うん、マサト君やコトミちゃんはジョウトにいる。ナナシマまで急に行くこともできないだろうと思う。」 マサト「僕たちもテレビで応援してます。トモヤさん、ジムリーダー選考会、全力を出してバトルしてください!」 コトミ「あたしも応援してます!」 トモヤ「ありがとう。ではまた会おう!ああっ、こら、ニドキング!」 ニドキングがトモヤにのしかかるところで電話は切れた。 ミキ「トモヤさんも元気そうだったわね。ジムリーダー選考会とエキシビジョンマッチが重なってしまったのは残念だけど、でもトモヤさんだったら、きっと選考会を勝ち抜いて、あの5人の中でも一番の実力の持ち主、ヘッドリーダーになれると思うわ!」 マサト「うん!だからミキさんも負けないで、エキシビジョンマッチ、持てる力を全部出してバトルしてください!」 コトミ「あたしも応援しています!ミキさん、今度はルリカさんに勝って、チャンピオンのワタルさんにも勝ってくださいね!」 ミキ「ありがとう!あたしも全力を出してバトルするわ。マサト君とコトミちゃんも、これからコンテストにジムバトルがあるけど、しっかりバトルしてね!」 こうして、コトミはゾロアをゲットすることができた。そして、トモヤも元気な姿をマサト達に見せてくれたのだった。 ラフォールタウンを後にすると、最初のコンテストが行われるヨシノシティはもうすぐだ。果たして、マサトとコトミが経験する初めてのコンテストは、どう言ったものになるのだろうか。 Chapter-48に続く。 <この作品の履歴> 2010年7月27日、ポケモン小説スクエア・小説投稿システムに収録。