Chapter-48『コトミとアリサ!初めてのコンテスト!!』 (1) ジョウトリーグ、そしてポケモンコンテスト出場のための旅を続けるマサト達。ワカバタウンから西に向かって進んでいき、ようやくヨシノシティに到着した。 マサト「ここがヨシノシティですね。」 コトミ「『咲き誇る花と海風の薫る町』って言うイメージにぴったりですね。」 ミキ「うん。このヨシノシティは、ヌオーやウパーと言ったポケモンを町を挙げて保護していることで有名なのよ。あの川を見てごらん。」 そう言うとミキは町の中央を流れる川に手をさしのべた。ウパーやヌオーが群れをなして優雅に泳ぐ姿が見受けられた。 ミキ「あの川を上っていくと、ヌオー達の住みかがあるって言われているわ。そして、町の人は川のヌオー達に丸いものを渡すことがあるの。それで、満月の夜になると、上流のヌオー達がその丸いものをみずでっぽうで夜空高くに打ち上げるって言われているわ。そして翌朝、一番最後に流れ着いたものの持ち主に一番の幸運が訪れるって言われているのよ。」 コトミ「そうですかぁ。どこかロマンチックですね。」 マサト「確かに、町のみんなもウパーやヌオーを町ぐるみで保護するって言う感じですね。きっとサトシ達も、昔この町を通ったんだと思いますね。」 そこに白バイクに乗った女性が現れる。ジュンサーだ。 ジュンサー「あなた達、もしかしてポケモンマスターのサトシ君のこと、知ってるの?」 マサト「はい。サトシがどうしたんですか?」 ジュンサー「もう3、4年前になるわね(※1)。まだサトシ君がジョウトリーグに挑戦していた頃かしら。この町を通ったとき、町のヌオーをゲットしようとしたのよ。この町ではヌオーが保護されているってことは、最初だったので知らなかったと思うんだけど、とにかくそのとき、サトシ君は当時持っていたGSボールをヌオーに取られちゃったのよ。だけど、その晩は満月だったし、翌朝になるとたくさんの丸いものが流れてきたんだけど、そのとき一番最後に流れ着いたのが、サトシ君が持っていたGSボールだったのよ。」 マサト「そうだったんですかぁ。と言うことは、サトシもジョウトリーグに参加する途中、この町を訪れていたんですね。」 ジュンサー「そうよ。あの後サトシ君はジョウトリーグでベスト8、そして今では世界的に有名なポケモンマスター。私も今でもあのときのことは覚えているわ。ところで君たちは、どういう用事でこの町を訪れたの?」 マサト「僕たち、ポケモンコンテストに出るんです。」 ジュンサー「ポケモンコンテストは、この町の中央にあるヨシノホールで行われるわ。よかったら案内してあげるけど?」 マサト「いいんですか?」 コトミ「ありがとうございます!」 ジュンサーのバイクに乗せてもらい、マサト達はポケモンコンテストの会場となるヨシノホールに到着した。 マサト「ありがとうございました!」 マサト達がジュンサーに礼を言うと、ジュンサーはバイクを走らせて去っていった。 そして振り返ると、大きなリボンとともにポケモンコンテストの看板が大きく掲げられているのが見られた。マサト、そしてコトミにとっても初めてのコンテストとなる、ポケモンコンテスト・ヨシノ大会の会場だ。 ミキ「マサト君、コトミちゃん。いよいよあなた達にとって、初めてのコンテストね。」 マサト「はい。僕、お姉ちゃんのコンテストは会場やテレビなどで見ていましたけど、こうやって体験するのは初めてなんで、ちょっと緊張しています。」 コトミ「あたしはバトルチャンピオンシップスでコンテスト大会という形で経験しましたけど、本式のコンテストはやっぱり初めてですし、本番のコンテストって言うのはどういうものなのか、まだ実感がわかないです。」 ミキ「そうだと思うわ。あたしも、元々はジムに挑戦して、ポケモンリーグに参加することを中心に考えていたわ。でも、あるときコンテストに挑戦して、『あ、ポケモンって単にバトルするだけがポケモンとの絆を深めることじゃないんだ。技を使ってポケモンをどれだけ美しく見せることができるかって言うのも、ポケモンとの絆を深くすることができるんだ』って思ったわ。それで、あたしはバトルとコンテストの両方に挑戦することにしたのよ。」 コトミ「そう言えばミキさんは、今回のコンテストは参加するんですか?確かリボンを3つ集めれば、グランドフェスティバルのエキシビジョンマッチに参加できるって言ってましたけど・・・。」 ミキ「今回は参加しないで、マサト君とコトミちゃんの初めてのコンテストを観客席から応援させてもらうわ。2人とも初めてのコンテストだから、不安がないって言ったら逆のことになるかもしれないけど、でもしっかりと演技してね!」 マサト・コトミ「はい!」 (2) マサト達はポケモンコンテスト・ヨシノ大会が行われるヨシノホールに足を踏み入れた。 ミキ「初めてコンテストに出場する人は、ここで参加手続きをすることになっているわ。そして手続きが終わると、コンテストパスが発行されるのよ。」 ミキはそう言ってコンテストパスを見せた。――コンテストパスは地方ごとに違うものになっており、その中の1つがジョウト地方のコンテストパスだった。そして、3年前にジョウト地方を回って集めた5つのリボンが、コンテストパスにしっかりと納められていた。 マサト「確かミキさんは、このリボンの1つをかけてお姉ちゃんとバトルしたんですね。」 ミキ「うん。あのときからハルカちゃんはただ者ではないって思っていたわ。今ではハルカちゃんもトップコーディネーター。そしてマサト君も、お姉ちゃんに続いてポケモンコンテストに出ることになるわね。コトミちゃんはバトルチャンピオンシップスでちょっと経験していると思うけど、マサト君のためにももう1回言っておくわね。バトルとはやり方が違うかもしれないけど、でも慌てないで、自分なりにしっかりとした演技をすることができれば、きっとリボンをゲットすることができると思うわ。」 マサト・コトミ「はい。」 ミキ「うん。じゃあコンテストパスを発行してもらいましょう!」 コンテストパスの発行手続きは、コンテストの参加手続きと同じところで行われていた。 係員「あなた達は、もしかして初めてコンテストに参加されるんですか?」 マサト・コトミ「はい。」 係員「それでは、コンテストパスを発行いたしますね。お名前と出身地をどうぞ。」 マサト「僕はマサトです。ホウエン地方のトウカシティから来ました。」 コトミ「あたし、コトミです。カントー地方のタマムシシティから来ました。」 係員「お2人ともずいぶん遠くから参加されたんですね。それでは発行いたします。ポケモン図鑑をお預かりしますので、少々お待ちください。」 係員はマサトとコトミからポケモン図鑑を受け取り、コンピューターにデータを打ち込む。しばらくして、無事にコンテストパスが発行された。 係員「トウカシティのマサト君とタマムシシティのコトミちゃんですね。これで参加登録が完了いたしました。初めてのコンテスト、しっかりとした演技を期待していますね。」 マサト・コトミ「ありがとうございます。」 ミキ「ところで、マサト君やコトミちゃんはコンテストに出場するための衣装はあるの?」 マサト「えっ、ジョウト地方のコンテストって、コーディネーターもドレスアップするんですか(※2)?」 ミキ「そうよ。コーディネーターもドレスアップするだけじゃなくて、ポケモンもモンスターボールに演出するためのシールを貼って、登場するときの華やかさを演出しているのよ(※2)。マサト君やコトミちゃんも、衣装を持っていないんだったら是非作ってみたらどうかしら?」 マサト・コトミ「はい!」 かくして、マサトとコトミはコンテストに出場するための衣装選びに入った。 コトミ「(って言われても、この衣装もいいし、あれも上品だし、どれを着ても恥ずかしくないと思うわ。とても迷っちゃうなぁ・・・。)」 コトミが衣装選びに迷っていると、後ろから女性の声がした。 女性の声「あなた、もしかしてコンテストに出場するの、初めて?」 コトミ「えっ?・・・はい、そうです。」 コトミはその声に気づいて振り返った。――その女性は明らかにコンテストに出場するポケモンコーディネーターだった。 背丈はミキよりは低いものの、それでも1メートル75、6はありそうだった。服装は膝の辺りまである短めのスカートが一体になった、青地に白い水玉模様のキャミソール。両肩のひもは首の後ろで結ばれていた。目鼻立ちがよく整った美しい顔立ちで、優しそうな感じがした。 女性コーディネーター「初めてのコンテストのときは誰だって緊張するわ。でも、そうやってたくさんの経験を積んでいくことで成長できるって、あたしは思ってるわ。」 コトミ「すごいですね。あたし、どういう衣装をまとった方がいいか、ちょっと迷ってたんですけど・・・。」 女性コーディネーター「ううん。あなたの服なら、そのままでコンテストに出ても全然恥ずかしくないわ。とてもお似合いだし、下手な衣装よりもずっと見栄えがいいわ。あたしもこの服でコンテストに出るつもりよ。」 コトミ「そんな、ありがとうございます。親切にアドバイスしてくれて・・・。」 女性コーディネーター「ううん、丁寧な言葉なんていらないわ。そうだ、自己紹介しましょう。あたしはアリサ。よろしくね!」 コトミ「初めまして。あたしはコトミ。よろしくね!」 アリサ「コトミちゃん。いい名前ね。そう言えば、確かコトミちゃん、ナナシマで行われたバトルチャンピオンシップスにも出てたわね。あたしもテレビで見てたけど、トップコーディネーターのユカリさんを相手に、とてもいい勝負だったわ。」 コトミ「ううん。あたし、ユカリさんにバトルオフにされちゃったし、まだまだって思ってるわ。ところでアリサさんは、これまでコンテストに出たことってあるの?」 アリサ「うん。あたしはもう1つリボンをゲットしてるのよ。」 そう言うとアリサはコンテストパスを取り出してコトミに見せた。 コトミ「すごいわ、アリサさん。あたしもコンテストを勝ち抜いて、リボンをゲットしたいわ。・・・そうだ、二次審査に進めたら、一緒にバトルできたらいいわね!」 アリサ「うん!そのときは負けないわよ、コトミちゃん!」 マサトは衣装選びを終えて待合室に現れた。――マサトのコンテストの衣装は、黒の蝶ネクタイにタキシード姿。コンテストにふさわしい衣装だった。 ミキ「マサト君!とてもいい服装ね。ところでマサト君は、今回のコンテストはどのポケモンで挑戦するの?」 マサト「僕は初めてのコンテストだし、サーナイトで行くことにする。サーナイトが覚えている技も、コンテストで十分通用できると思ってるんだ。」 そこにコトミとアリサが現れた。 ミキ「あら、コトミちゃんはこの衣装でいいの?」 コトミ「うん。アリサさんに言われたの。『とてもよく似合ってるし、下手な衣装を着るよりもよほど見栄えがいいよ』って。」 アリサ「初めまして。あたしはアリサ。よろしくね!」 マサト「僕、マサトです。」 ミキ「あたしはミキ。よろしくね!」 アリサ「マサト君もコンテストに出るのね。確かマサト君はハルカちゃんの弟さんにして、トウカジムのセンリさんのお子さんだったわね。バトルチャンピオンシップスではバトル大会に出てたそうだけど、コンテストはバトルとは違った面白さがあると思うわ。是非、みんなでいい演技にしましょう!」 マサト・コトミ「はい!」 司会進行「水と緑に囲まれた、花薫る美しき町。お待たせいたしました。今回はここ、ヨシノシティにてポケモンコンテスト・ヨシノ大会が行われます!司会進行は私ことココアンが務めさせていただきます。そして審査員を務めさせていただくのは、ヨシノシティのジョーイさん!」 ジョーイ「コーディネーター達とポケモン達の美しい演技。期待しています!」 ココアン「続いて、審査委員長を務めさせていただく、ポケモンコンテスト大会事務局長のコンテスタさん!」 コンテスタ「演技の中で、ポケモンとコーディネーターは1つになれると思います。皆さん、素晴らしい演技をお願いします!」 ココアン「続いて、ポケモン大好きクラブ会長のスキゾーさん!」 スキゾー「好きですねぇ。」 ココアン「コンテストで優勝した方には、優勝記念としてヨシノリボンが贈呈されます。そして、リボンを5つ集めれば、夢のグランドフェスティバル!そしてグランドフェスティバルに参加した方が、さらにリボンを3つ集めれば、強豪がひしめくエキシビジョンマッチ!千里の道も一歩からと言う言葉通り、今回も初めてコンテストに参加される方が大勢いらっしゃいます!最初のエントリーもその中の1人。はるばるホウエン地方からやってきた、マサトさんです!」 ついにポケモンコンテスト・ヨシノ大会が幕を開けた。そのトップを切って演技に臨むのはマサト。果たして、マサト、そしてコトミは、どういった演技を見せてくれるのであろうか。そして、ヨシノリボンを手中に収めるのは、どのコーディネーターになるのであろうか。 (※1)「AG・ホウエン編以前のアニメとの時差について」 本作の設定は「AG・ホウエン編でマサトがラルトス(現サーナイト)と約束を交わしてから3年」となっています。従って、無印編は事実上3年以上前と言うことになっていますが、アニメでは明確な時間軸を記す描写がほとんどなされていないことから、AG編以前の時間軸についてはややぼやけた描写となっていることをお断りしておきます。 (※2)「ジョウト地方のポケモンコンテストについて」 アニメでは、DPシリーズ・ミクリカップ編においてジョウト地方のコンテストをほのめかす発言がありましたが、具体的な内容については言及されていませんでした。また、ハートゴールド・ソウルシルバーでは(カントー地方も含めて)ポケモンコンテストの会場は存在しませんでした。ですが、ここではシンオウ地方のポケモンコンテスト同様、トレーナーのドレスアップとモンスターボールのカプセルボールによるアピールを採用するものとします。 Chapter-49に続く。 <この作品の履歴> 2010年7月29日、ポケモン小説スクエア・小説投稿システムに収録。