Chapter-55『ツタージャ・ポカブ・ミジュマル!みんな仲良くゲットでGO!!』 (1) 次のコンテストが行われるヤギブシタウンに行く途中、シュウホウ大学の学生・キョウスケとマナミから学園祭の誘いを受けたマサト達。そこで、マサト達はジョウト地方を一時離れ、シュウホウ大学のあるカントー地方のヤマブキシティに向かうことになった。 マサト「この少し先にあるんだね。」 マサトがポケナビを取り出して周辺の地図をチェックした。――少し行ったところに、ジョウト地方とカントー地方を結ぶリニア鉄道の線路があり、今マサト達がいる30番道路からやや入ったところに、ルートJ30・リニアステーションが建てられていた。そしてリニアの駅からさらにしばらく行ったところがヤギブシタウンだった。 コトミ「リニアってすごく速いんですよね。あたし、一度乗ってみたかったんです。」 ミキ「うん。リニア鉄道は2年前に開業した、世界でも指折りの高速鉄道よ。ヤマブキシティとコガネシティを時速550キロで結んでいるの。リニアができて、カントーとジョウトがすごく近くなったわ。」 マサト「僕も一度乗ってみたかったんです。もしかしたら、キョウスケさんやマナミさんも追い抜いてしまうかもしれないですね。」 ミキ「うふふっ。マサト君らしい発想ね。あ、ちょうどヤマブキのリニアステーションを降りたところがブライトンハイツ。あたしの地元になるわ。よかったら、あたしの家に行ってみない?あたしが招待するわ!」 マサト「いいんですか?」 ミキ「うん!」 マサト・コトミ「よろしくお願いします!」 ルートJ30・リニアステーションは、30番道路の上を走る高架のところに造られた駅だった。 マサト達が駅に到着すると、ちょうど間もなく列車が到着する旨のアナウンスが聞こえていた。 マサト「もう列車が到着しちゃうよ?」 ミキ「大丈夫よ。リニアはヤマブキとコガネをノンストップで結ぶものと各駅に停まるものがあるわ。多くの列車はここでノンストップ便の通過待ちをするのよ。だから、そんなに慌てることはないわ。」 ミキの言う通りだった。マサト達がホームに上がると、駅に到着したリニアの横を、ノンストップでヤマブキに向かうリニアが猛スピードで通過していく姿が見受けられた。その模様を写真に納めようと、ホームの端では何人かの利用者がカメラを携えて思い思いに写真を撮っていた。 コトミ「たくさんの人が写真を撮ってますね。やっぱりこう言うのって、鉄道が好きな人の心を惹き付けて離さないんですね。」 ミキ「うん。あ、そろそろ出発するわ!乗りましょう!」 マサト・コトミ「はい!」 マサト達が乗り込むと、リニアは間もなくドアが閉まり、一路ヤマブキシティを目指して走り出した。 車内は高速運転を意識してか、黄色を基調としたライトが灯され、またデッキではハーブの香りが漂い、リラックスした雰囲気を醸し出していた。 マサト「路線図もちゃんと載ってるんだね。」 ヤマブキとコガネを結ぶリニア鉄道の路線図も貼り出されており、カントー地方とジョウト地方のタウンマップも一緒に掲載されていた。――コガネシティを出たリニアは、所々地下をトンネルでくぐりつつ、グリーンフィールド、30番道路、シロガネタウン、2番道路の各駅を設けながら、終点であるヤマブキシティに向かって延びていた。さらにリニア鉄道はヤマブキシティからハナダシティを抜けて北のシンオウ方面、そしてコガネシティから渦巻列島、タンバシティを抜けてホウエン方面に向かう計画がなされており、点線でルートが記されていた。 ミキ「うん。リニアは多少のカーブはあるけど、ほぼ直線距離で結んでいるわ。これほどまで高速で走るんだから、まっすぐに造った方がいいって言うことになったって言うお話を聞いたことがあるわ。工事はほとんど全部の区間で同時に行われてたんだけど、カントーは都市部が多くて、地下をトンネルで通してるところが多かったから、工事が遅れたって聞いたわ。」 コトミ「その話、あたしも聞いたことがあります。それで、リニアはジョウト側から順に出来上がったんでしたね。」 ミキ「うん。さあ、マサト君、コトミちゃん。550キロの超高速運転に入るわ。しっかり見ててね!」 マサト・コトミ「はい!」 リニアモーターカーはある程度までの加速は車輪で行うが、それ以上の速度になると自動で車輪を収納、電気と磁石の力で一気に超高速運転になる。磁石は超伝導状態になることから、方式は「超伝導マグレブ」とも呼ばれていた。 リニアはぐんぐん速度を上げていく。300キロ、400キロ、500キロを越え、営業速度である550キロにまで達した。 マサト「速い!」 コトミ「町や森があっという間に後ろに飛んでいきますね。」 ミキ「うん。リニアは営業速度としては550キロって言われているけど、640キロで走る性能を持っているわ。将来、シンオウからホウエンまで直通するときは720キロまで上がるって言うのを聞いたわ。」 マサト「720キロ?」 コトミ「それならあっという間にいろんなところまで行けますね!」 ミキ「そうね。あたしも楽しみだわ。マサト君やコトミちゃんがポケモンマスターやコンテストマスターって言われるのと、リニアが全国を結ぶのはどれが早いかしら。長い道のりかもしれないけど、でもきっと2人ならサトシ君みたいなポケモンマスターになれるわ!」 マサト・コトミ「ありがとうございます!」 (2) ルートJ32・リニアステーションからリニアに乗ったマサト達は、ミキの出身地であるヤマブキシティに到着した。 ヤマブキのリニアステーションは地下10階の深さにある。深さとしてはおよそ40メートルになった。 マサト達は長いエスカレーターを上って地上に出ることになった。 マサト「きれいな駅ですね。」 コトミ「すぐ折り返していくんですね。ダイヤも緻密に組まれているんですね。」 ミキ「そうよ。リニアだけでなくて、全国をたくさんの鉄道が走っているけど、時間通りにしっかり走らせるためにはたくさんの人が働いているのよ。安全性と高速性、両立させるのは難しいことかもしれないわ。だけど、リニアを走らせるためにはとっても重要なことよ。」 マサト「そうですね。安全に運転する裏ではたくさんの人が働いているんですよね。」 コトミ「それにしても大きな駅ですね。リニアだけでもこれだけたくさんのお客さんがいるんですね。」 ミキ「うん。カントーとジョウトはたくさんの方法で結ばれているけど、リニアはその中でも速くて快適と言うことから、たくさんの人が利用しているわ。そして駅から外に出たらブライトンハイツ。あたしのお家があるところよ。」 3人がそう言っている間に、エスカレーターは地上コンコースに到着した。コンコースも駅を行き交う多くの客で溢れており、カントーの中心都市と言うことを実感できた。 出口から外に出ると、向こうにヤマブキの中心街を構成する超高層ビル群が見えていた。そしてマサト達の回りには空に突き出した高層団地が広がっており、道を隔てて反対側は豊かな緑に囲まれた大きな公園が広がっていた。ブライトンハイツに住む住民の憩いの場、ブライトンパークだ。 マサト「ブライトンパークですね!」 コトミ「緑が豊かで美しいところですね。」 ミキ「そうよ。あの公園がブライトンパーク。そしてこの一帯がブライトンハイツになるのよ。」 マサト「僕、以前サトシやお姉ちゃん達と一緒にヤマブキを通ったんですけど(AG・バトルフロンティア編参照)、ここまでは足を運んでなかったです。きれいでいい町ですね。」 コトミ「ルリカさんもおっしゃってました。『高層マンションが建ち並んでいて、それでいて自然も豊かな町』って。ミキさん、いいところに住んでいるんですね。」 ミキ「ありがとう!では改めて、金色にきらめく町、ヤマブキシティにようこそ!」 ミキの家は、ヤマブキのリニアステーションから歩いて5、6分ほどのところにある高層マンションの15階だった。 マサトとコトミはミキに招待される形で、ミキの実家を訪れたのだった。――そのマサト達の後ろを、ポケモンとおぼしき影が2、3匹かついていっていたのだが、マサト達は何も気づいていなかった。 ミキ「ただいま!」 ミキの母「お帰り、ミキ!あら、後ろの子達は?」 ミキ「マサト君とコトミちゃん。あたしと一緒に旅しているわ。今はジョウト地方でジョウトリーグとポケモンコンテストに挑戦しているのよ。」 マサト「初めまして。僕、マサトです。」 コトミ「あたし、コトミです。」 ミキの母「初めまして。ミキの母でございます。娘がいつもお世話になっております。」 マサト「いいえ、お世話になっているのは僕たちの方です。」 コトミ「あたし達、ミキさんの実力にはとても叶わないんです。だからお世話になりっぱなしなもので・・・。」 ミキ「ううん。マサト君、コトミちゃん。あたしだって、いつもあなた達にお世話になってるのよ。これからどう言ったことが待っているか、それは誰にも分からないわ。だけど、あたし達が力を合わせて取り組んでいけば、きっといろんなことができると思うわ。ね!」 ミキの母「マサト君とコトミちゃんでしたね。これからもミキのことをよろしくお願いしますね。」 マサト・コトミ「はい!」 ミキの母「ところでミキ、今回はしばらくいるの?」 ミキ「そうね、3、4日はいると思うわ。あたし達がジョウトで知り合いになったキョウスケさんとマナミさんって言う方の学園祭に招かれたのよ。それに、マサト君とコトミちゃんにもヤマブキを案内してあげたいなぁって思ってるの。」 ミキの母「そうだったんだ。ならせっかくだし、お家に連絡してみたら?」 センリ「へぇ。シュウホウ大学の学園祭に?」 マサト「パパ、知ってるの?」 ミツコ「私の知り合いがシュウホウ大学の出身なのよ。ホウエンでもシュウホウ大学の名前は結構知られてるわ。」 マサト「そうだったんだ。」 センリ「それで今マサトがいるのは、ヤマブキシティのミキさんのお家になるんだね?」 マサト「はい。」 そこに別の通信が入る。タマムシシティのコトミの自宅からだった。 コトミの母「コトミ、元気にしてる?」 コトミ「ママ!」 コトミの母「あらっ。通信に入り込んじゃったみたいね。初めまして。コトミの母です。」 センリ「マサトの父です。コトミちゃんのお母様でいらっしゃいますね。マサトがいつもお世話になっております。」 コトミの母「いいえ、こちらこそコトミがいつもお世話になっております。確かマサト君のお父様って、ジムリーダーを務めていらっしゃるんでしたね。」 センリ「はい。ホウエンのトウカジムのリーダーです。」 コトミの母「そうですってね。うちのコトミもホウエンを回るときはきっと挑戦するのでしょうね。」 コトミ「センリさん。いつかあたしがホウエンを回るときは、是非センリさんに挑戦させてください!」 センリ「分かった。コトミちゃん、ホウエンのジムリーダーはカントーやジョウトとは一味違うリーダーがたくさん揃っていて手強いぞ。でもそれでもいいと言うなら、私は喜んで挑戦を受けよう!」 コトミ「ありがとうございます!」 センリ「マサト、くれぐれも体調管理に気を付けるんだ。ポケモンを守れないのではポケモントレーナーとして失格だからな。それとミキさんのご両親にもよろしくと・・・。」 そこにミキの母が割り込んできた。 ミキの母「初めまして。ミキの母でございます。皆さま方のお話を聞いていましたら是非お話を伺いたくて、私も飛び入りで参加してしまいました。」 センリ「初めまして。マサトの父です。」 コトミの母「初めまして。コトミの母でございます。」 センリ「・・・この調子だと話はしばらく続きそうだな。マサト、また何かあるんだったら連絡してくれ!」 コトミの母「コトミ、マサトやミキさんにあまり心配をかけないでね!」 ミキの母「そうだ。せっかくだし、まずはブライトンパークを案内してあげたら?」 ミキ「はい!」 (3) カントー地方一の大都市にして、世界有数の都市でもあるヤマブキシティ。そのヤマブキシティの北西部にある、豊かな緑に囲まれた美しい公園がブライトンパークだった。 ミキ「あたしは小さい頃からよくここで遊んでいたのよ。例えばこの木。こう言うところから上に昇って、そこから空を眺めていると、たくさんの鳥ポケモンが飛んでいるわ。小さい頃はそう言う光景を見ながら、『いつかはあたしもポケモン達と一緒に旅をするんだ!』って思ってたわ。」 マサト「僕もです。僕がサトシやお姉ちゃん達と旅していたのは、まだ自分のポケモンを持てなかった頃だったんで、『いつかは僕もポケモントレーナーになるんだ!』って思っていました。」 コトミ「あたしもです。マサトもそうでしたけど、あたしがラルトスと初めて出会ったとき、まだ自分のポケモンは持てなかったけど、でもラルトスと別れるとき、『ポケモントレーナーになったときにまた会える!』って、自分に言い聞かせていました。」 ミキ「そうね。あたしがこのエーフィと初めて出会ったのも、ここだったのよ。」 マサト「そうだったんですか?」 ミキ「うん。あそこに水飲み場があるでしょ?まだイーブイだったとき、ちょうどイーブイがあそこで水を飲んでいたの。それがあたしとエーフィとの出会いだったのよ。」 コトミ「それでミキさんはイーブイを連れて旅に出たんですね?」 ミキ「うん。ちょうど10歳になるかならないかの頃だったわ。イーブイもあたしにとてもなついてたし、お父さんやお母さんも『このイーブイを連れて旅に出たら?』って言ってくれたわ。そうして、あたし達の旅が始まったのよ。」 マサト「そして旅立った日に、ここでスイクンを見たんでしたね。」 ミキ「さっきの公園の入り口があるでしょ?あそこにスイクンがいたのよ。神々しくてきれいな姿を見たとき、『あのスイクン、いつかゲットして見せるわ!』って思ったわ。この前は色違いのスイクンを見れて、本当によかったわ。」 コトミ「そうだったんですね。ところでミキさん、イーブイはいつエーフィに進化したんですか?」 ミキ「あたしが以前ジョウトを訪れたときよ。あのときはワカバタウンで行われたコンテストに挑戦して、ファイナルでエーフィに進化したわ。あのときはポイントもぎりぎりまで追い詰められていたんだけど、進化して覚えたサイコキネシスで逆転勝ちしたわ。」 マサト「そうだったんですね。・・・おや、あれは?」 マサトはそう言って、向こうにある木の影を指差した。――そこには見覚えのあるポケモンに混ざって、もう2匹、マサト達の見たこともないポケモンがいた。 マサト「あれはツタージャだ!」 コトミ「他の2匹は何かしら。」 ミキ「あれはポカブとミジュマルね。すごいわ!イッシュ地方の初心者用ポケモンが3匹とも揃ってるわ!」 コトミ「ポカブ?」 マサト「ミジュマル?」 マサトとコトミはポケモン図鑑を取り出してポカブとミジュマルをチェックした。――ツタージャ、ポカブ、ミジュマルはイッシュ地方のアララギ博士が薦める初心者用ポケモン。そして、あのマドカが使っていたのは、このうちの1匹・ツタージャだった。 ミキ「ツタージャ、ポカブ、ミジュマル。いずれもイッシュ地方では初心者用ポケモンとして推奨されているポケモンなのよ。でもどうして遠く離れたカントーにいるのかしら。とても珍しいことだわ。」 マサト「それにしてもこの3匹、どこか様子がおかしいですよ?僕たちのこと、さっきから知っているみたいな感じがしますし・・・。」 マサトの言う通りだ。ツタージャ達はさっきからマサト達のことをまるで知っている感じがしているのだ。もちろんマサト達はその姿を見たことはない。 コトミ「そうね。それに、この子達はちょうど3匹、あたし達はちょうど3人。1人で1匹ずつゲットするって言うのはどうかしら。」 ミキ「そうね!誰がどれをゲットすることになるのかしら。せっかくだし、みんなでゲットすることにしましょう!」 マサト・コトミ「はい!」 マサト「行け、サーナイト!」 コトミ「行くわよ、エルレイド!」 ミキ「行ってらっしゃい、エーフィ!」 マサトはサーナイトを、コトミはエルレイドを、ミキはエーフィをそれぞれ繰り出した。――ポケモンは3体ずつ。誰がどれをゲットするのかが気になるところだった。形式としては変則的なローテーションバトルになるだろう。マサト達はローテーションバトルの経験は全くなく、もちろんミキにとっても今回が初めての経験となるのだった。 ミキ「マサト君、コトミちゃん。あなた達はどれをゲットしようと思ってるの?」 マサト「僕はツタージャ!くさタイプはチコリータがいますけど、マドカさんのあのツタージャの動作を見て、『これだ!』って思ったんです。」 コトミ「あたしはポカブにします。ほのおタイプはまだゲットしてないですし、マサトのリザードンにも負けていられないって思うんです。」 ミキ「じゃああたしはミジュマルね。ミジュマルはみずタイプ。育て方次第ではかなり活躍できるって思うわ。」 マサト「サーナイト、ツタージャにサイコキネシス!」 サーナイトがツタージャにサイコキネシスを放つ。強力なサイコキネシスに操られたツタージャは勢いよく吹っ飛ばされた。 コトミ「エルレイド、ポカブにサイコカッター!」 続いてエルレイドがサイコカッターを放つ。精神波動が実体化された刃となってポカブに襲いかかった。 ミキ「エーフィ、ミジュマルにでんじほう!」 エーフィはミジュマルに対して効果抜群なでんきタイプの技・でんじほうを放った。強力なでんじほうをまともに受けたミジュマルはたちまちしびれてしまい、思い通りの行動ができなくなった。 マサト「サーナイト、続いてシャドーボール!」 サーナイトはシャドーボールを放った。だがツタージャは素早いのか、シャドーボールをすんでの所でかわしたかと思うと、勢いよくつるのムチを繰り出した。 マサト「サーナイト、テレポート!」 サーナイトはつるのムチをテレポートでかわして、ツタージャの後ろをとる。 マサト「今だ、サーナイト!でんじほう!」 サーナイトがでんじほうを放つ。ツタージャが振り返った瞬間にでんじほうが命中、ツタージャもミジュマルと同じく麻痺してしまった。 コトミ「エルレイド、インファイト!」 一方、エルレイドはポカブの懐に入り、強烈なインファイトを繰り出す。だがポカブも負けていられず、インファイトを受ける直前にひのこを放ち、両者とも互いに吹っ飛ばされてしまった。 コトミ「負けないでエルレイド!サイコキネシス!」 エルレイドも負けじとサイコキネシスを放つ。超能力で行動を封じられたポカブはそのまま勢いよく投げ飛ばされてしまった。 ミキ「エーフィ、シャドーボール!」 エーフィがシャドーボールを放つ。麻痺して行動がままならないミジュマルだったが、ぎりぎりのところでシャドーボールをかわす。そしてたいあたりともまた違った技をエーフィにぶつけたのだった。 ミキ「(今のはたいあたりではないわ。もしかしたら・・・。)」 たいあたりではないと判断した技。それはまひやどく、やけどの状態になると威力が上がる、からげんきと言う技だった。 ミキ「(あれはからげんきだわ!)エーフィ、気をつけて!ミジュマルはまひ状態だけど、からげんきの威力が比べものにならないほど上がってるわ!」 ミジュマルは再びからげんきの一撃をエーフィに繰り出す。 ミキ「エーフィ、リフレクター!」 エーフィがすんでの所でリフレクターを張り、からげんきをはじき返した。 ミキ「行くわよ、エーフィ!サイコキネシス!」 エーフィがサイコキネシスを放つ。ミジュマルはたちまち操られたかと思うと、そのまま吹っ飛ばされてしまった。後はゲットするだけだ。 ミキ「3人一緒に行きましょう!準備はいい?」 マサト・コトミ「はい!」 一同「行け、モンスターボール!」 マサトはツタージャに、コトミはポカブに、ミキはミジュマルに向かってモンスターボールを投げた(※)。 3人が投げたモンスターボールはそれぞれのポケモンに命中、ポケモンを収めたボールは真ん中のスイッチが赤い光を点滅させ始めた。誰でもこのときは緊張するのだろう。それはマサトやコトミだけでなく、各地を旅してきたミキにとっても当てはまるものだった。――やがて点滅は静かに消え、ツタージャ、ポカブ、ミジュマルの3匹をゲットすることができたのだった。 マサト「よーし!ツタージャ、ゲットでGO!!」 コトミ「やったわ!ポカブ、ゲットでスマイル!!」 ミキ「うん!ミジュマル、ゲットだわ!!」 ゲットしたツタージャ達は転送されていき、程なくして連絡が入った。タカノリだった。 タカノリ「マサト君達だね。イッシュ地方の新人トレーナー用ポケモンとして推奨されている3匹が一気に転送されたからびっくりしたよ。」 マサト「はい。ツタージャは僕、ポカブはコトミ。そしてミジュマルはミキさんがゲットしたんです。」 タカノリ「そうか。そう言えばマサト君達が今いるのって、どこだろう?」 コトミ「ヤマブキシティのブライトンパークです。ブライトンハイツのすぐそばです。」 タカノリ「おっ、ブライトンハイツだね。ミキさん、マサト君とコトミちゃんに地元を案内してあげてるんだね。」 ミキ「それもありますけど、あたし達がジョウトで知り合いになった方の学園祭に行くことになって、それで今ヤマブキにいるんです。」 タカノリ「そうか。ならマサト君、コトミちゃん、今度私とお会いしてみないか?」 マサト「えっ、タカノリさんと・・・?」 タカノリ「ああ。私はいつもヤマブキのポケモンセンターをよく利用しているんだ。どうだい、せっかくヤマブキにいるんだったら、ポケモンセンターに行ってみないか?」 コトミ「いいんですか?」 タカノリ「ああ。いつでも大歓迎だ!」 マサト「ありがとうございます!」 コトミ「あたしも是非お会いしたいです。よろしくお願いします!」 マサト「ミキさんのお薦めって、どう言うものなんだろう・・・?」 タカノリとの通話が終わった後、マサトとコトミは公園のベンチに座っていた。ミキは移動販売車で何かを買っている。 コトミ「そこの移動販売のものみたいだけど、何かしら。でもミキさんが薦めるものだから、きっと美味しいものだろうなぁって思うわ。」 と、ミキがものを買い終えたのか、マサト達に向かってやってきた。 ミキ「マサト君、コトミちゃん!あたしのお薦めはこれよ!」 そう言うとミキはマサトとコトミに細長い菓子を差し出した。見てくれはドーナッツの生地を使っている感じにも見える。砂糖のコーティングがなされており、甘くて美味しそうだった。 マサト「これって、チュロスですね!」 ミキ「うん!ブライトンパークの売り上げナンバーワンなの。とっても甘くて美味しいわ。あたしもここを訪れたときはいつも買っているのよ。味はあたしが保証するわ。是非食べてみて!」 マサト・コトミ「いただきます!」 マサトとコトミはチュロスをほおばった。外はさっくりしていて、中はしっとり、もちっとした食感だった。そしてコーティングされた砂糖が甘みをきかせていて、文字通りほっぺたが落ちそうなほど美味しい。 マサト「美味しい!」 コトミ「うん!あたし、こう言うの大好き!」 ミキ「よかった、喜んでくれて!あたしも小さい頃からよく食べてたんだけど、これを食べると、何て言うのかしら。心が落ち着くって言うのかしら、そう言う気がするわ。」 マサト「ほら、サーナイトも食べる?」 コトミ「エルレイドもどう?」 マサトとコトミはチュロスを少しちぎってサーナイトとエルレイドに差し出した。――サーナイトとエルレイドは気に入ったのか、嬉しそうに声を上げていた。 ミキ「よかった、サーナイトとエルレイドも喜んでくれて。そうだ。マサト君とコトミちゃんは、タカノリさんにお会いしたことはこれまでなかったわね。」 マサト「そうですね。いつもシステムを使っていることのお礼が言いたいです。」 コトミ「どう言う方なのか、一度是非お会いしてみたいです。」 ミキ「分かったわ。タカノリさんはよくここのポケモンセンターを訪れているわ。あたしとも親しくしているのよ。」 マサト「確か、全国のポケモンセンターの中でも基幹施設として指定されている、ポケモンセンターヤマブキでしたね。」 ミキ「うん。ポケモンセンターヤマブキはここから地下鉄ですぐ行けるわ。でももう日が暮れるし、明日にでも行ってみる?」 マサト・コトミ「はい!」 こうしてマサト達は、ツタージャ・ポカブ・ミジュマルというイッシュ地方のポケモン達を新たな仲間に加えることができた。 明日はコスモスシステムを管理するタカノリに会いに行くことになる。果たして、マサトやコトミにとって、タカノリはどう言った人物になるのだろうか。 (※)「2匹以上のポケモンを相手にするときのポケモンゲットについて」 ダイヤモンド・パール・プラチナで同行キャラクターと一緒にいるとき、並びにブラック・ホワイトの色の濃い草むらにおいて、野生ポケモンが2匹いる状態でゲットするときは狙いが上手く定まらない旨のメッセージが出てゲットができませんが、ここではコロシアム・XDでダークポケモンをスナッチするときの状況に倣い、2匹以上いてもゲットが可能であるものとします。 Chapter-56に続く。 <このお話の履歴> 全編書き下ろし。