Chapter-56『ポケモンセンターヤマブキ!コスモスシステムのタカノリ!!』 (1) ヤマブキシティのミキの家に滞在しているマサト達。今日は全国のポケモンセンターの中でも基幹施設として位置付けられているポケモンセンターヤマブキに足を運ぶことになった。 ミキの母「ポケモンセンターに行くのね。マサト君、コトミちゃん、ミキのお友達の皆さんにあまり迷惑をかけないでね。」 ミキ「それはないと思うわ。マサト君とコトミちゃんは礼儀もしっかりしてるし、初めての方にも迷惑をかけることはないと思うわ。」 マサト「ではミキさん、よろしくお願いしますね!」 コトミ「ポケモンセンターヤマブキって言う場所がどう言うところなのか、そしていろんなところにある他のポケモンセンターとどこが違うのか、あたし、一度行ってみたかったんです。」 ミキ「うん!それじゃ、行きましょう!」 ポケモンセンターヤマブキは、かつてはヤマブキシティのシルフカンパニー本社のすぐそばに設けられていた。そしてちょうどマサトがサトシ達と一緒にカントーを冒険していた頃、ポケモンセンターは移転することになり、現在の場所に構えられたのである。 マサト「確か、地下鉄に乗っていくとすぐに行けるんでしたね。」 ミキ「うん。リニアの駅の横に地下鉄の駅があるの。ヤマブキメトロレールって言って、ヤマブキシティを中心にハナダやタマムシ、クチバに路線網を広げているわ。このブライトンハイツからはチリーンチューブが出ていて、それに乗っていけばポケモンセンターの最寄り駅まで行けるのよ。」 コトミ「あ、地図にも載ってますね!」 コトミが柱に貼られたヤマブキメトロレールの路線図を指差した。――ヤマブキシティを中心に周辺の都市にまでたくさんの路線網が広がっており、チリーンチューブはブライトンハイツを起点にほぼ6の字の経路をたどって運転するルートをとっていた。その名の通りチリーンが車体にあしらわれている路線で、ポケモンセンターヤマブキの最寄り駅は6の字の南端に近いヤマブキワールドトレードセンター(※)駅だった。 マサト「ヤマブキワールドトレードセンターがポケモンセンターの最寄り駅になるんですね。」 ミキ「そうよ。ほら、もうすぐ列車が到着するわ。急ぎましょう!」 コトミ「あまりホームでは急がない方がいいですよ!」 ミキ「うふふっ。そうだったわね!」 間もなくホームにチリーンをペイントしたチリーンチューブの列車が到着した。チリーンチューブはブライトンハイツが始発駅のため、乗客が全員降りたあとで乗ることになっていた。 マサト達が乗り込むと、列車はドアが閉まり、静かに走り始めた。 車掌の声「本日もヤマブキメトロレール・チリーンチューブをご利用くださいまして、ありがとうございます。メトロレールからのお願いです。駅構内、並びに車内でのポケモンバトルは、周りのお客様のご迷惑となります。また運転に危険をもたらす恐れもありますので、ご遠慮いただきますよう、ご協力をお願い致します。」 マサト「そうだよね。確かに車内でバトルしたら周りの人に迷惑では済まされないよね。」 コトミ「たいあたりやひっかくと言った技でも吹っ飛ばされるときは大変だし、ましてやかえんほうしゃやハイドロポンプ、10まんボルトを使ったら列車が壊れてしまうもんね。」 ミキ「よく知ってるわね。それに、ホームでバトルしたら列車が入ったときに技が列車にぶつかって大事故の原因にもなるわ。だから、列車内ではポケモンの使用が厳しく制限されているのよ。」 マサト「じゃあサーナイトもボールに戻した方がいいですか?」 コトミ「あたしのエルレイドは?」 ミキ「それは大丈夫よ。あたしのエーフィもそうだけど、いつも連れ歩いているポケモンと言う区分になるわ。連れ歩いているポケモンだったら一緒に乗っても大丈夫って言う形になっているわ。」 マサト「そうだったんですね。でもサーナイト、列車の中では勝手に技を出さないでね!」 コトミ「エルレイド、列車で技を出したら危ないわ。お願いね!」 サーナイトとエルレイドは大きくうなずいた。 ミキ「うん。サーナイトとエルレイドも理解してくれたみたいね。途中の駅では乗り降りも多いから、気を付けた方がいいわ。」 マサト・コトミ「はい!」 車掌の声「ご乗車ありがとうございました。間もなくヤマブキワールドトレードセンターに到着いたします。お忘れ物、落とし物なさいませんようご注意の上、お足元にお気を付けてお降りくださいませ。」 ミキ「着いたわ。降りる準備に入りましょう!」 マサト「はい。サーナイト、行くよ!」 コトミ「行きましょう、エルレイド!」 マサト達の乗った列車はヤマブキワールドトレードセンター駅に到着した。ドアが開くとマサト達を含めてかなり大勢の客が降りた。そして入れ替わりにまたたくさんの乗客が乗っていく。利用客の多い駅だった。 マサト「乗り降りの多い駅ですね。」 ミキ「うん。駅名にもあるヤマブキワールドトレードセンターが駅と直結しているわ。周辺はオフィス街になっていて、たくさんの会社で働く人がこの駅を利用しているわ。ポケモンセンターがこの地域に移ったときはオフィス街になることから不便になるって言われていたんだけど、でも相変わらずたくさんの人で賑わっているわ。」 コトミ「そうだったんですかぁ。ところでタカノリさんは?」 と、そこにマサトのポケギアに通信が入る。ちょうどタカノリから連絡が入ったのだった。 タカノリ「マサト君、今どこにいるんだい?」 マサト「ちょうどワールドトレードセンターの駅です。そう言えばポケモンセンターはどこにあるんですか?」 タカノリ「そうだね、地上出口から出ていけばすぐに見えると思うよ。後はミキさんに聞けば案内してもらえると思うけどね。」 ミキ「うふふっ。じゃあマサト君、コトミちゃん、あたしが案内してあげるわね!」 (2) ヤマブキワールドトレードセンターは、ヤマブキシティでも比較的古くからある40階建ての超高層ビルを中心に、3つの高層ビルから構成されていた。 マサト「大きな建物ですね。パパのジムがすっぽり入りますね。」 ミキ「そうね。カントーは大きな町が多いから、オフィス街に行くとこう言う大きなビルはたくさん見られるわ。」 コトミ「そうですね。タマムシシティにもこう言う大きな建物がたくさんあるのよ。マサトは以前サトシ君達と旅していたときは、タマムシは行かなかったの?」 マサト「うん。ヤマブキはお姉ちゃんのコンテストとサトシのバトルアリーナで通ったんだけど、タマムシは行ってないんだ。それにヤマブキもこう言うオフィス街は通ったことがなかったんだけど、こう言う高いビルが建ち並ぶ町はいくつか見たことがあるよ。」 コトミ「そうだったんだ。あ、ところでミキさん、ポケモンセンターはどこにあるんですか?」 ミキ「あの大きなビルの中にあるわ。」 ミキはそう言って、手でそのビルを指し示した。――たくさんの車が行き交うハイウェイを挟んで向こう側に大きなビルが建っていた。ポケモンセンターヤマブキの入っているビルだ。さらに横にももう1つ、大きなビルが建ち並んでおり、このビルは待ち合わせなどでよく使われるのだと言う。 コトミ「あのビルの中ですね。マサト、行きましょう!」 マサト「うん!」 ポケモンセンターヤマブキは、ビルの2階、1階、地下1階の3フロアを丸々使っている、かなり規模の大きなポケモンセンターだった。もちろん、マサト達がこれまで足を運んだ全国各地のポケモンセンターと比べても格段に大きいのは明らかだった。 1階の入り口から入ると、そこは通常の回復施設にフレンドリィショップが併設されており、立ち寄ったポケモントレーナーやコーディネーターの情報交換の場としても使われていた。ポケモンセンターの中にフレンドリィショップを併設すると言うスタイルはイッシュ地方ではよく見かけられるスタイルだが、カントー地方ではここだけのスタイルだった。 2階に上がると、そこはポケモンセンターヤマブキ限定の商品を多数取り揃えたショッピングモールとなっており、ポケモンのぬいぐるみや食器、文房具など、ポケモンに関するグッズが所狭しと並べられていた。遠方からもこのグッズを求めて数多くの客が訪れており、連日の賑わいを見せていた。 そして地下1階は休憩所となっており、ポケモン交換や電話のスペースが設けられていた。 マサト「広いですね。僕がこれまで見てきたポケモンセンターとは明らかに違います。やっぱり都会って言う感じがしますね。」 コトミ「あ、テレビでカントーのジム戦とコンテストの情報をやってるわ!」 コトミが待合室のテレビに手を差しのべて言った。――ちょうどカントーリーグとカントー地方のポケモンコンテストに挑戦しているトレーナーやコーディネーターを取り上げる番組だった。 アナウンサー「ジョウト地方からカントーリーグに挑戦しているレイカさん、スオウジムのリーダー・テンマに勝利して、2つめのバッジとなるブラウンバッジをゲットしました!」 マサト「レイカちゃんだ!」 コトミ「もうバッジを2つゲットしたのね!」 アナウンサー「続いてはコンテストです。セキチクシティ出身のサヤカさんがニビシティで行われたコンテストで優勝、1つめのリボンとなるニビリボンをゲットしました!」 コトミ「サヤカさんだわ!」 マサト「レイカちゃんとサヤカさん、カントーのジムとコンテストを回ってるんだね。僕たちも負けてられないね!」 ミキ「そうね!あたし達も負けていられないわ。いつかまたバトルするかもしれないもんね。」 と、そこに別の男性の声がした。マサト達にしてみれば聞き覚えのある声だ。 男性の声「君がマサト君とコトミちゃんだね。」 マサト達は声に気づいて振り返った。 マサト「タカノリさん!」 コトミ「あ、初めまして。いつもお世話になっています。」 タカノリ「初めまして。ジョウトでもたくさんのポケモンをゲットしているみたいだね。」 マサト「はい。コノハさんの育て屋さんもそうですけど、いつも使わせていただいて、とても便利だって思います。」 タカノリ「ありがとう。私としてもそう言ってくれると嬉しいよ。では改めまして、私がタカノリ。ポケモン預かりシステム『コスモス』を開発したんだ。」 マサト「面と向かってお会いするのは初めてですので一応。僕、マサトです。」 コトミ「あたし、コトミです。これからもよろしくお願いします。」 タカノリ「私とミキさんは以前からの知り合いで、ヤマブキに帰ったときはいつもこうして足を運んでくれるんだ。私も各地を旅してみたいって言う気持ちはあるんだけど、でも管理や運営で忙しいからなかなかそう言う機会がなくてね。だけどこうしてこのシステムを使ってくれる人がいると言うことは、私の誇りでもあるんだ。」 ミキ「あたしやタカノリさん以外にも、コスモスのシステムはたくさんの人が使っているわ。このポケモンセンターに集まっている人の多くはあたしやタカノリさんの知り合いなのよ。」 マサト「すごいですね、ミキさんって。カントーにいるたくさんのトレーナーやコーディネーターと知り合いなんですね。」 ミキ「うん。もちろんカントーだけじゃなくて、コスモスのシステムを使っている人は全国各地にいるわ。そしてここを拠点にたくさんのトレーナーやコーディネーターが活動しているわ。ここはカントーのトレーナーやコーディネーターにとって大切な情報交換の場なのよ。」 タカノリ「そう言うことだね。マサト君、コトミちゃん、よろしかったら私たちがよく使っている隣のビルでも見に行かないかい?」 マサト「えっ、いいんですか?」 タカノリ「ああ!」 コトミ「よろしくお願いします!」 マサト達はタカノリに連れられて、ポケモンセンターの隣のビルを訪れた。 ミキ「あそこのテーブルのところが、あたし達がよく使っているスペースになるわ。・・・あっ!」 そう言うとミキは視線を背ける格好になった。 マサト「ミキさん、どうしたんですか?」 タカノリ「あいつだよ!」 ミキ「マサト君、ちょっとサーナイトを貸してくれる?」 マサト「はい。サーナイト、ミキさんと一緒にテレポート!」 マサトはミキの心情が理解できたのだろう、サーナイトにテレポートを指示した。――サーナイトはテレポートでミキと一緒に姿を消した。 サーナイトと一緒にテレポートしたミキはヤマブキワールドトレードセンターの入り口に現れた。 ミキ「うん。サーナイト、マサト君のところに戻っていいわ。あたしはコトミちゃんに連絡を入れるわね。」 サーナイトはすぐにテレポートで姿を消した。 タカノリ「うん。あいつは以前ミキさんと親しくしていたユウジって言うんだ。」 コトミ「あの人ですね。」 コトミがユウジと言う人物に手を差しのべた。――やや小太りと言った感じの男。年齢はマサトやコトミより明らかに年上、ミキと同い年か前後と言った感じだった。 マサト「親しくしていたって言うと?」 そこまで言ったとき、コトミのポケギアに通信が入った。ミキだった。 ミキ「コトミちゃん、そっちの様子はどう?」 コトミ「どうしたんですか?」 コトミはそう言いながらビルの出口に向かって足を進める。 ミキ「あたしはワールドトレードセンターの前にいるわ。まだいるの?」 コトミ「はい。あたしもすぐ行きますね。」 コトミは通信を切ると、ミキのいるヤマブキワールドトレードセンターに向かっていった。それとほぼ同時にサーナイトがテレポートで姿を現した。 タカノリ「うん。ユウジはかつてミキさんと親しくしていたんだけど、いろいろとトラブルが起きてね。ミキさんの方から手を引いた形になってるんだ。ミキさん、ユウジが訪れないか確認した上で足を運んでるんだけど、今回はユウジが予定を変えたんだろうね。」 と、ユウジがマサトの方を向いて言った。 ユウジ「誰だ、あんたは?」 マサト「僕はマサト。ポケモントレーナーだよ。」 ユウジ「それは見りゃ分かるさ。マサトって言ったな。確かナナシマで行われたバトルチャンピオンシップスにも出てたんだっけ。」 マサト「知ってるの?」 ユウジ「俺は出てなかったけど、テレビでずっと観戦してたさ。そうだ、バトルしないか?」 マサト「バトル?」 ユウジ「ああ、フルバトルだ。だが俺は今手持ちがあれだが、いいか?」 マサト「あれって言うと?」 ユウジ「俺は今、手持ちがフルメンバーではないんだ。でもバトルはバトルだ。正々堂々とやろう!」 タカノリ「マサト君、ユウジの正々堂々と言う言葉は気をつけた方がいい!」 マサト「どうして・・・?」 タカノリ「それはバトルしてみた方がいいだろう!」 ミキのかつての知り合いだというユウジ。彼に6VS6のフルバトルを挑まれたマサト。果たして、マサトはユウジのポケモンにどう立ち向かっていくのだろうか。そして、バトルの行方は・・・。 (※)「ヤマブキワールドトレードセンターとその周辺一帯について」 ヤマブキワールドトレードセンターは東京都港区浜松町にある世界貿易センタービルがモデルになっています。Chapter-45においてポケモンセンターヤマブキがポケモンセンタートウキョーをモデルにしている旨を表記したため、周辺地区についても浜松町一帯をモデルにして執筆いたしました。 Chapter-57に続く。 <このお話の履歴> 全編書き下ろし。