Chapter-57『ライバルバトル!マサトVSユウジ!!(後編)』 (4) ポケモンセンターヤマブキを訪れたマサト達は、かつてミキと親しくしていたと言うトレーナー・ユウジと出会い、ポケモンバトルをすることになった。 ルールは前半がシングルバトル、後半がダブルバトルと言う、マサトがこれまで経験したことのなかったものだった。 マサトが最初に繰り出したのはユキメノコ、ユウジが最初に繰り出したのはフライゴンだった。だが、ユウジが繰り出したルカリオにマサトは苦戦、リザードン、ガブリアス、スリーパーの3体を倒されてしまった。残りポケモンの数ではユウジがリードした状態でバトルは後半戦、ダブルバトルに入っていった。マサトが出したのはユキメノコとサーナイト。そしてユウジはルカリオに加えてゼブライカを繰り出した。 マサト「サーナイト、ゼブライカにサイコキネシス!ユキメノコはふぶき!」 サーナイトがサイコキネシスを放ってゼブライカの行動を封じる。一方のユキメノコはふぶきを繰り出した。 ユウジ「ちっ。ゼブライカ、ユキメノコにニトロチャージ!ルカリオはサーナイトにあくのはどう!」 ゼブライカが全身に炎をまとって突っ込んだ。ニトロチャージ。マサトはもちろん見たことのない技だった。さらにルカリオもあくのはどうでサーナイトを脅かす。 マサト「サーナイト、テレポート!ユキメノコ、まもる!」 サーナイトはテレポートで、ユキメノコは守りの体制に入って攻撃をかわした。 ユウジ「ルカリオは波動でサーナイトの行動を読み取れ!ゼブライカはルカリオに続け!」 マサト「(まずい。ルカリオに行動を読み取られたらあくのはどうを打たれる。そうなったらサーナイトのダメージが大きくなるだけだ。)ユキメノコ、あられ!」 ユキメノコがあられを降らせた。ゆきがくれの特性を持つユキメノコはこれで回避率が上がる。 ユウジ「お前はその作戦で満足できるのか?」 マサト「何っ!?」 ユウジ「言っただろう。これは本気のメンバーではないとな。それにあられはこおりタイプ以外のポケモンが受けるダメージが大きくなる。まだ分からないのか。」 マサト「(それなら僕だって!)サーナイト、今だ!ルカリオにサイコキネシス!ユキメノコ、もう一度ふぶき!」 テレポートでルカリオのすぐ真後ろに現れたサーナイトが強烈なサイコキネシスを放った。ルカリオは突然のサイコキネシスに行動を封じられてしまった。そこにユキメノコのふぶきが炸裂、ゼブライカもろとも吹っ飛ばされてしまった。 ユウジ「だがルカリオにこおり技は効果が今一つ!ルカリオ、ユキメノコにアイアンテール!ゼブライカはサーナイトにワイルドボルト!」 コトミ「ワイルドボルト!?」 ミキ「ボルテッカーと似た技だわ。自分もダメージを受ける代わりに相手に大きなダメージを与えることができるわ。」 体制を立て直したルカリオがアイアンテールを放つ。はがねタイプのアイアンテールはユキメノコが受けたら効果抜群。大ダメージでは済まされないだろう。一方のワイルドボルトをまとったゼブライカもサーナイトに迫っていた。 マサト「サーナイト、サイコキネシスでゼブライカをルカリオにぶつけるんだ!ユキメノコはめざましビンタで迎え撃て!」 サーナイトがサイコキネシスを放ち、今まさに強力な一撃をぶつけようとしていたゼブライカをルカリオめがけて吹っ飛ばした。一方のユキメノコもアイアンテールを放とうとしていた矢先のめざましビンタを受けてしまい、両者が激しくぶつかってしまった。 ユウジ「ルカリオ!ゼブライカ!」 ルカリオとゼブライカはフィールドに叩きつけられ、そのまま戦闘不能となっていた。 タカノリ「ルカリオ、ゼブライカ、戦闘不能。サーナイトとユキメノコの勝ち!」 マサト「やったね!サーナイト、ユキメノコ!」 コトミ「これで残りポケモンの数で逆転したね!・・・どうしたの、ミキさん?」 ミキ「あの人の最後の2匹、1匹はさっきのフライゴンだったでしょ?」 コトミ「えっ、でもあのルカリオを倒したから、マサトにとって強敵と言えるポケモンはいないはずじゃ・・・。」 ミキ「あの人が考えていることだわ。マサト君は最後に一番の強敵を相手にしなければならなくなると思うわ。」 ユウジ「お前はまだ気づいていないな。『本気のメンバーではない』と言う言葉の本当の意味をな。さあ、俺たちの究極のコンボを食らうがいい!」 マサト「気を付けて!まだ最後に隠し球を用意している!」 ユウジ「出番だ!フライゴン、シャンデラ!」 ユウジは再びフライゴンを繰り出した。そして続いて繰り出したのは、シャンデラだった。 マサト「シャンデラ!?」 マサトはポケモン図鑑を取り出してシャンデラをチェックした。 ユウジ「フライゴン、サーナイトにだいちのちから!シャンデラはユキメノコにはじけるほのお!」 フライゴンがこだわりスカーフで素早くなったのを活かしてだいちのちからを放つ。続いてシャンデラが見たこともない技・はじけるほのおを繰り出した。 マサト「はじけるほのお!?」 コトミ「えっ、はじけるほのおってどう言う技なの!?」 ミキ「ダブルバトルのときに使うと、すぐ横にいるポケモンに対してもダメージを与えることができる技よ。ユキメノコにとっては厳しい技になるわね。」 コトミ「じゃあ、マサトはどうしたらあのユウジってトレーナーに勝てるの?」 ミキ「あの人はフライゴンにだいちのちからを指示したわ。逆に言えば、マサト君の手持ちで今戦えるのはサーナイトとユキメノコ、そしてギャラドスだわ。どうにかしてあのシャンデラを倒すことができれば、あの人はもう何もできなくなるわ。」 マサト「サーナイト、テレポート!ユキメノコ、まもる!」 サーナイトがテレポートで姿を消す。同時にユキメノコも守りの体制に入ってはじけるほのおから身を守った。果たして、マサトはユウジに勝つことはできるのだろうか。 (5) ポケモンセンターヤマブキで行われているマサトとユウジのバトル。後半のダブルバトルに入り、マサトはユウジのポケモンをあと2匹と言うところまで追い詰めていた。そして最後にユウジが繰り出したのは、こだわりスカーフの効果で素早くなったフライゴン。そしてマサト達がまだ見たことのなかったポケモン・シャンデラだった。 フライゴンはだいちのちからを放ち、シャンデラははじけるほのおでサーナイトとユキメノコを脅かした。だがサーナイトはテレポート、ユキメノコはまもるで攻撃を必死にしのぐ。 ユウジ「フライゴン、なら次はユキメノコにだいちのちから!シャンデラはサーナイトにシャドーボール!」 フライゴンがだいちのちからを放つ。さらにシャンデラがシャドーボールを打ち出した。 マサト「サーナイト、シャンデラにシャドーボール!ユキメノコはフライゴンにれいとうビーム!」 サーナイトがシャドーボールを放ち、シャンデラの放ったシャドーボールと激しくぶつかった。さらにユキメノコもれいとうビームを放ち、フライゴンを狙う。 だがシャドーボールは激しくぶつかって大爆発を引き起こしてしまった。一方のれいとうビームもだいちのちからに阻まれた上、ユキメノコに向かってだいちのちからが吹き上がったではないか。 マサト「負けるな!サーナイト、シャンデラにサイコキネシス!ユキメノコはふぶき!」 爆風の中からサーナイトのサイコキネシスが働き、シャンデラを勢いよく吹っ飛ばして行った。さらに吹き上がるだいちのちからをかわしたユキメノコが強烈なふぶきを繰り出す。 ユウジ「シャンデラ、ふぶきを受け止めろ!」 シャンデラがフライゴンとユキメノコの間に入ってふぶきを受け止める。効果を今一つに抑えることのできるコンビネーションだった。 コトミ「何て的確なコンビネーションなの!?」 ミキ「マサト君、必死で食いついてるみたいだけど、かなり厳しい状況ね。」 ユウジ「そうだ。シャンデラはほのおタイプ。フライゴンはこおりタイプの技に弱いからと言って、有利に戦えると思っているのか?」 マサト「だがコンビネーションなら僕だって負けていない!」 ユウジ「ほう。だがお前はまだ何も分かっていないんだ。フライゴン、もう一度だいちのちから!」 フライゴンのだいちのちからがサーナイトとユキメノコに襲いかかる。 ユウジ「シャンデラ、はじけるほのお!」 さらにシャンデラがはじけるほのおを繰り出す。サーナイトはテレポートで、ユキメノコも右に左にと素早く行動してだいちのちからとはじけるほのおをかわしているが、フライゴンが巻いているこだわりスカーフの影響で連続で繰り出されるだいちのちからを完全に読み切ることができない。 ユウジ「まだ俺は本気を出していないんだぞ!」 マサト「サーナイト、フライゴンの後ろに回れ!」 サーナイトがテレポートでフライゴンの真後ろに姿を現した。 ユウジ「シャンデラ、フライゴンの後ろにシャドーボール!」 マサト「サーナイト、もう一度テレポート!ユキメノコ、ふぶき!」 ユキメノコがふぶきを繰り出す。それと同時にサーナイトが再びテレポートで姿を消した。 ユウジ「シャンデラ、はじけるほのおでふぶきをかき消せ!」 シャンデラもはじけるほのおでふぶきをかき消す。互いに技と技でぶつかり合い、決定的なチャンスを繰り出せずにいた。 ユウジ「(あいつの最後の1体はギャラドス。シャンデラが倒されれば打つ手がなくなる。)」 マサト「(フライゴンはこだわりスカーフの影響でだいちのちから以外の技を出すことができない。だからシャンデラを倒すことができれば・・・。)サーナイト、ユキメノコ、シャンデラにシャドーボール!」 サーナイトとユキメノコが一斉にシャドーボールを放った。狙うはシャンデラだ。 ユウジ「シャンデラ、だいもんじだ!」 マサト「えっ!?」 シャンデラがだいもんじを放った。炎が作り出した大の文字はシャドーボールをいとも簡単に焼き払ってしまった。 マサト「(だいもんじ・・・。ほのおタイプでも指折りの破壊力を持つ技だ。シャドーボールがいとも簡単に消されてしまった。何て言うパワーだ・・・。)」 コトミ「あのだいもんじ、強すぎるわ!」 ミキ「シャンデラはゴーストタイプだけど、ほのおタイプも併せ持っているわ。だいもんじはほのおタイプの中でも指折りの威力を持っているわ。あのシャンデラを倒せないことにはマサト君も勝ち目はなさそうね。」 ユウジ「フライゴン、サーナイトにだいちのちから!シャンデラはユキメノコにおにび!」 マサト「サーナイト、テレポート!ユキメノコはまもる!」 サーナイトがテレポートでだいちのちからをかわした。一方のユキメノコも守りの体制に入っておにびのダメージを防ぐ。 ユウジ「ふっ。シャンデラ、まもるが消えたところを狙え!もう一度おにび!」 マサト「何っ!?」 シャンデラはユキメノコのまもるが消えたところを狙っておにびを打ち込んだ。おにびはユキメノコにクリーンヒット。効果は抜群だ。さらにユキメノコはやけどのダメージを負ってしまった。 ユウジ「とどめだ!シャンデラ、たたりめ!」 マサト「危ない!サーナイト、シャンデラにシャドーボール!」 ユキメノコをサポートするべくサーナイトがシャンデラにシャドーボールを放つ。だがシャンデラの方が一足早かった。シャンデラのたたりめが強力な一撃となってユキメノコにヒットした。これも効果は抜群だった。 マサト「ユキメノコ!」 ユキメノコは勢いよくフィールドにたたきつけられ、戦闘不能となっていた。 タカノリ「ユキメノコ、戦闘不能。シャンデラの勝ち!」 ユウジ「見たか。たたりめはどく、まひ、やけどなどの状態になっている相手に使うと威力が上がる技だ。お前は油断しているな?」 マサト「戻れ、ユキメノコ!・・・だがまだ僕も最後まで諦めない!行け、ギャラドス!」 マサトはギャラドスを繰り出した。 コトミ「マサトもいよいよ最後のポケモンね。」 ミキ「ギャラドスが倒されなければ、もしかするとマサト君にも勝つチャンスがあるかもしれないわ。だけどギャラドスが倒されたら、後は厳しいわね。」 ユウジ「フライゴン、サーナイトにだいちのちから!シャンデラはギャラドスにシャドーボール!」 マサト「サーナイト、テレポート!ギャラドス、シャンデラにたきのぼり!」 サーナイトがテレポートでだいちのちからを必死にかわす。一方のギャラドスもたきのぼりを繰り出してシャンデラに襲いかかる。 ユウジ「フライゴン、受け止めろ!」 フライゴンがたきのぼりを受け止める。じめんタイプだがドラゴンタイプも併せ持っているフライゴンはみずタイプのダメージが減る。ましてやシャンデラを失うとユウジは勝ち目がなくなってしまう。それならフライゴンを盾にした方が勝つチャンスを残せると判断したのだろう。 マサト「サーナイト、シャンデラにシャドーボール!」 ユウジ「フライゴン、シャドーボールを弾き返せ!だいちのちから!」 コトミ「えっ!?」 ミキ「そんな!」 サーナイトの放ったシャドーボールはフライゴンが盾になり、さらにだいちのちからで発した衝撃でサーナイトに向かって跳ね返ったではないか。 マサト「サーナイト、もう一度テレポート!」 ユウジ「させるか!フライゴン、サーナイトはすぐ後ろに現れる!後ろにだいちのちから!」 ユウジの読みは的中してしまった。だいちのちからをかわすべくしてフライゴンの後ろに回ったサーナイトだったが、運悪くだいちのちからをもろに受けてしまい、勢いよく吹っ飛ばされてしまった。 マサト「サーナイト!」 サーナイトは高く吹っ飛ばされていく。果たして、サーナイトは再び立ち上がることはできるのだろうか。そして、この勝負の行方は・・・。 (6) ヤマブキシティのポケモンセンターヤマブキで行われていた、マサトとユウジのバトル。前半はシングルバトル、後半はダブルバトルという、マサトがこれまで体験したことのない形式でのバトルとなった。バトルは一進一退の展開となり、ダブルバトルの最後の2体、マサトはサーナイトとギャラドス、ユウジはフライゴンとシャンデラという組み合わせとなった。だがフライゴンの放っただいちのちからがサーナイトを勢いよく吹っ飛ばしてしまった。 マサト「サーナイト!!」 勢いよく吹っ飛ばされたサーナイトだが、それでもどうにかして立ち上がろうとする。 コトミ「サーナイト、大丈夫なの!?」 ミキ「分からないわ。だけどここで戦闘不能になってしまったら、マサト君はギャラドスだけで2匹を相手にしなければならなくなるわ。大丈夫かしら・・・。」 サーナイトは必死になって立ち上がろうとする。・・・だがマサトの呼びかけもむなしく、サーナイトはフィールドに崩れ落ち、そのまま戦闘不能となってしまった。 タカノリ「サーナイト、戦闘不能。フライゴンの勝ち!」 マサト「サーナイト、大丈夫?」 サーナイトはマサトの声にゆっくりとうなずく。しかし相当のダメージを負っているのは誰が見ても一目瞭然だった。 マサト「サーナイト、ゆっくり休んでね。・・・ギャラドス、後はお前だけだ。だがフライゴンは道具の効果でだいちのちから以外の技が出せない。シャンデラを倒せば僕たちの勝ちだ!」 ユウジ「だがそれはどうかな?シャンデラ、シャドーボール!」 マサト「ギャラドス、尻尾で弾き返せ!」 ギャラドスが尻尾を生かしてシャドーボールを弾き返す。 ユウジ「ふっ。面白いやつだな。シャンデラ、もう一度シャドーボールだ!」 シャンデラが再びシャドーボールを放つ。それもかなり素早い。 マサト「ギャラドス、連続で弾き返すんだ!」 ギャラドスもそれに応えてシャドーボールを弾き返していく。 マサト「(あのシャドーボールはなかなかの威力。だが必ず隙が生まれる。そこを狙っていけば・・・!)」 ユウジ「どうした?反撃しないのか?」 シャンデラはなおもシャドーボールを放ち続ける。マサトの読みに反してなかなか反撃の糸口がつかめそうにない。 ユウジ「それなら俺から行くぜ!シャンデラ、れんごくだ!」 シャンデラがマサト達の見たこともない技を放った。れんごく。かなり強力な技と言うことは容易に想像がついた。 マサト「危ない!ギャラドス、とびはねる!」 ギャラドスが間一髪とびはねる攻撃で空中に舞い上がる。れんごくはぎりぎりで真下を通過していき、シャンデラの攻撃は外れた。 コトミ「れんごくって?」 ミキ「あたしも初めて見る技だわ。でんじほうと似たタイプの技で、かなり当たりにくいことがあるんだけど、でも命中すると相手を確実にやけど状態にすることができるわ。やけど状態になるとぶつり攻撃の威力も下がるから、気をつけた方がいいわね。」 マサト「ギャラドス、今だ!シャンデラにとびはねる攻撃!」 ギャラドスがその体重と空中からの勢いを生かしたとびはねる攻撃をシャンデラに叩き付けた。とびはねるの一撃を受けたシャンデラはまひしてしまい、思い通りの攻撃ができなくなってしまった。 ユウジ「シャンデラ!」 マサト「今だ!ギャラドス、とどめのアクアテール!」 ギャラドスが尻尾を生かしてアクアテールを食らわせた。みずタイプのぶつり技の中でも飛び抜けて威力の高いアクアテール。それをもろに食らったシャンデラは見事なまでの放物線を表して吹っ飛んでいった。効果は抜群だ。 ユウジ「しっかりしろ!シャンデラ!」 シャンデラは道を挟んで反対側まで吹っ飛ばされてしまい、あえなく戦闘不能となっていた。 タカノリ「シャンデラ、戦闘不能。ギャラドスの勝ち!」 マサト「やったね、ギャラドス!」 ユウジ「戻れ、シャンデラ!」 ユウジはシャンデラをモンスターボールに戻す。フライゴンは道具の影響でだいちのちから以外の技を使うことができない。事実上ユウジの負けが確定したことになる。 コトミ「これでマサトの勝ちね!」 ミキ「そうね。でも最後まで油断はできないわ。あの人のことだから、何をするか分からないわ。」 マサト「さあ、後はフライゴンだけだ!ギャラドス、こおりのキバ!」 ユウジ「フライゴン、だいちのちから!」 ギャラドスがこおりのキバでフライゴンに挑みかかる。フライゴンもだいちのちからを放つが、ひこうタイプを併せ持つギャラドスにだいちのちからは命中しない。そしてフライゴンにこおりのキバが命中した。 ユウジ「フライゴン!」 じめんタイプとドラゴンタイプを併せ持つフライゴンはこおりタイプのダメージがかなり大きくなる。だが一撃をどうにかして踏みとどまった。 ユウジ「ふっ。お前の戦略というのが読めた。勝負はここまでだ!」 マサト「えっ!?」 ユウジ「じゃあな!」 そう言うとユウジはフライゴンにまたがり、空高く飛び去って行ってしまった。 マサト「そんな・・・。」 コトミ「後一歩まで追い詰めたのに!」 ミキ「あの人は打つ手がなくなった。だけど普通のトレーナーなら最後まで諦めないでバトルするわ。だけどああやって試合を放棄・・・、いや、「切断」って言った方がいいのかしら。そうして途中で試合を切ってしまうようでは、トレーナーとしては認められないって思うわ。」 タカノリ「・・・フライゴン、試合放棄。トレーナーも試合を放棄したため、この勝負は無効!」 マサト「(ユウジのやつ・・・。でもミキさんが距離を置いたって言う理由が何となく分かった気がする。途中で試合を放棄しては、トレーナーとして失格だって思う。僕がユウジだったら・・・。)」 日は西に傾き始めており、オフィス街であるポケモンセンターヤマブキ周辺は会社員の姿であふれ始めていた。 タカノリ「ユウジはトレーナー日記をネットにアップしているんだ。私たちもよく見ているんだよ。」 ミキ「あたしもあの人の日記はかなり見ているんだけど、あたしが距離を置いてからますますおかしな振る舞いが多くなったわ。」 マサト「ユウジの日記、僕たちも見せてもらっていいですか?」 ミキ「うん、いいわ。」 マサトとコトミはポケモンセンターのパソコンからインターネットにアクセスして、ユウジがネットにアップしている日記――ブログ(ウェブログ)を見てみた。 タイトルは「ユウジののんびりポケモンライフ」と言うもので、ポケモントレーナーとしてのユウジの日常や雑記が記されていた。 コトミ「この時点ではもうミキさんは距離を置いていたのね。」 そのページはその時点においてしばらく更新していなかったのが久々に更新したらしく、文面を見るとミキとは距離を置かれているのが見て取れた。  ・・・とりあえず独り身になってしばらくがたった。  「自分の身の振り方は自分で考えろ」と言ったあの一言が今も頭によぎっている。  もうあのトレーナーはいなくなった。そうだと信じたい・・・。 マサト「それまではユウジとミキさんは親しくしていたんだね。」 さらにページをさかのぼっていくと、ミキがユウジと親しくしていた頃の内容が綴られていた。  ・・・ヤマブキは久々の雪となった。  自分はポケセン(ポケモンセンター)に行く前に、亡くなった親父の墓や親父ゆかりの施設をいろいろと見て回った。  そしてポケセンに立ち寄り、今はメトロレールのブリリアントシティ・ステーションにいる。  寒いのです。早く来て欲しいのです・・・。 マサト「ユウジのお父さんって、有名なポケモントレーナーだったの?」 タカノリ「ああ。聞くところによると、かつてポケモンリーグのチャンピオンにも挑戦したほどの実力だったそうだ。ユウジが産まれてすぐに亡くなったんだ。ユウジはお母さんから、お父さんのいろいろなお話を聞かされて育ったんだ。それを聞いているうちに、『いつかは親父を上回る立派なトレーナーになる』って思ったんだろうね。だが、立派なトレーナーと言うものはトレーナー同士の関係、そしてポケモンに対してもしっかりと接していかなければいけない。少なくとも今のユウジはお父さんの右には出られないだろう・・・。」 コトミ「あ、今日の分が更新されてるわ!」 マサト「あっ!」 コトミがディスプレイに写し出されたタイトルを指さした。――今日の日付、すなわち最新の日記になる。だがタイトルは衝撃的なものだった。 マサト「何々?『ポケセンヤマブキ、しつこい奴、そしてその他もろもろ』・・・?」 コトミ「しつこい奴・・・?ちょっと気になるわ。見てみましょう!」 だが本文もまたマサト達に衝撃を与えるものだったのである。  ・・・今日はポケセンヤマブキに行ってきた。  ポケセンでバトルすることになったのだが、あまりにしつこい奴だったのでここに書いておく。  名前は出さないが、タカノリが言っていたところによると、サーナイトを連れた眼鏡のトレーナーで、ホウエンのジムリーダーの子供がどうとか言っていたな。  もっとも俺は関係のないことだけど。でも回りを見ろと言いたい・・・。 マサト「そんな・・・!」 コトミ「これってどう見てもマサトでしょ!?ユウジ、マサトのことをここまでひどく書いていたなんて・・・。」 ユウジが日記に書いていた内容。それは明らかにマサトに対する挑戦状だった。果たして、マサトはこれからユウジに対して、どう接していくのだろうか。 Chapter-58に続く。 <このお話の履歴> 全編書き下ろし。