Chapter-61『キキョウシティ到着!キイチとドーブルのアトリエ!!』 (1) ジョウトリーグ、そしてグランドフェスティバル出場に向かって旅を続けるマサト達。一行はヤギブシタウンを出発、次の目的地であるキキョウシティに向かっていた。 ミキ「次はいよいよマサト君とコトミちゃんのジム戦ね。」 マサト「はい。確か、ひこうタイプを使うハヤトさんがジムリーダーを務めてるんでしたね。」 コトミ「ミキさんは、かつてジョウトリーグに出場するためにジムを回っていたとき、キキョウジムにも挑戦したんですか?」 ミキ「うん。ハヤトさんはあのとき、ピジョット、エアームド、ヨルノズクの3匹を出してたわ。あたしもひこうタイプ同士でって言うことで、最初にオニドリルを出したんだけど、ピジョットが手強くてあっという間に倒されてしまったわ。でも、後の2匹のランターンとエーフィが活躍してくれて、無事にバッジをゲットすることができたわ。」 コトミ「そうだったんですかぁ。マサト、ハヤトさんとのバトルはひこうタイプを用意した方がいいかもね。」 マサト「そうだね。・・・あれは?」 マサトが向こうに見える塔とおぼしき建物を指差して言った。――町を見下ろす形でそびえる塔。キキョウシティのシンボルでもあるマダツボミの塔だった。 ミキ「マダツボミの塔だわ。いよいよキキョウシティに着いたのよ!」 マサト「そうですかぁ。いよいよジム戦だね、コトミ!」 コトミ「うん!」 ミキ「それじゃあ、行きましょう!」 マサト達は勢いよく走り出していった。 「懐かしい香りのする町」と言われるキキョウシティ。町の郊外にはアルフの遺跡があり、古代ポケモンの生態を再現した温室が解放されているほか、遺跡の奥には謎の石板がいくつか置かれていた。また、町の中央にあるマダツボミの塔はキキョウシティのシンボルとも言うべき存在だった。そして町の一角にあるのが、かつてサトシもジョウトリーグに挑戦するための初めてのジムバトルを経験したキキョウジムだった。 マサト「静かで落ち着いた町ですね。」 コトミ「昔ながらの町並みがそのまま残されているって言う感じがしますね。」 ミキ「そうね。このジョウト地方は昔のままの町並みが広がっているところが多いわ。このキキョウシティもそうだし、36番道路から37番道路を抜けたところにあるエンジュシティも古くからの町並みが残っているのよ。」 マサト「確か、エンジュシティも昔サトシが立ち寄ったんですよね。僕たちもいつかは訪れるんだろうと思いますね。」 ミキ「そうね。まずはサトシ君も経験したジム戦ね。キキョウジムはポケモンセンターのすぐそばにあるわ。せっかくだし、ポケモンもしっかり回復させてあげましょう!」 マサト・コトミ「はい!」 と、そこに別の人物――1人の男性が声をかけてきた。マサトにとっては聞き覚えのある声だった。 男性トレーナー「もしかして君、マサト君?」 マサトは声に驚いて振り返った。声の主は、以前バトルチャンピオンシップスで共にバトルしたキイチだった。 マサト「キイチさん!」 キイチ「久し振りだね。マサト君もジョウトリーグに挑戦してるのかい?」 マサト「はい。僕、キキョウジムにジム戦しに来たんです。」 キイチ「そうか。ところでマサト君、そちらのお二方は?」 コトミ「初めまして。あたし、コトミです。」 ミキ「あたしはミキ。よろしくね!」 キイチ「コトミさんとミキさん。マサト君と一緒に旅してるんだね。」 コトミ「はい。あたしとマサトはジョウトリーグとグランドフェスティバル。ミキさんはその上のエキジビジョンマッチを目指しているんです。」 キイチ「確かミキさんって、バトルチャンピオンシップスでバトル大会を勝ち抜いた方だったね。そう言うすごい方とお会いできて、光栄です。」 ミキ「ううん。あたしも確かにバトル大会優勝って言われてるけど、でもそれで満足してるって言われたら、違うことになるわ。ポケモントレーナーって言うのは、1つの目標が終わったらそれで終わりって言う訳じゃなくて、また新しい目標に向かって進んでいくものだと思うわ。夢や目標に向かって進んでいく限り、旅は終わらないと思ってるわ。」 キイチ「でもさすがはバトル大会を制覇した実力。言ってることが違いますね。あ、そうだ。よろしかったら、僕のアトリエを見ていかれますか?」 マサト「アトリエ?」 キイチ「はい。マサト君はバトルチャンピオンシップスで僕のドーブルとバトルしたかと思いますけど、僕のドーブル、一緒に絵を描いているんです。是非見にいらしてください!」 一同「はい!」 (2) マサトとコトミにとってジョウト地方で初めてのジム、キキョウジムがあるキキョウシティ。そこでマサト達は、以前ナナシマ・バトルチャンピオンシップスでマサトとバトルしたキイチと再会した。 キイチはマサトも苦しめられたドーブルと一緒にたくさんの絵画を描いているのだと言う。マサト達はキイチの描いた絵を見に行くことになった。 キイチ「ここが僕の家です。アトリエはこの中にあるんです。」 マサト「お邪魔します。」 マサト達はキイチの家に足を踏み入れた。――そこはキイチとドーブルが手掛けた数々の絵が飾られていた。 キイチとドーブルの画風は独特のものだった。キイチが鉛筆で描いた下絵をもとに、ドーブルが色とりどりにペイントしていくと言うもので、そうした画法で描かれた下絵や色付けされた絵が、部屋のあちこちに飾られていた。 マサト「素晴らしい絵ですね。」 コトミ「とても美しい絵です。このお家だけじゃなくて、いろんなところに広めていって欲しいです。」 ミキ「キイチさん、あなたはきっと多くの人を引き付ける人になれると思うわ。」 キイチ「みんなありがとう。そうだ、よろしかったらみんなのことも絵に描いてもらっていいかな?」 コトミ「えっ、あたし達が?」 ミキ「いいの、描いてもらって?」 キイチ「もちろんだよ!」 マサト「よろしくお願いします!」 マサト達はミキ、コトミ、マサトの順で順番にモデルになってもらい、絵を描いてもらうことになった。 キイチは鉛筆をほぼ垂直に立てると、目にも止まらぬ早さで下絵を描き始めた。 マサト「早い・・・。」 コトミ「キイチさん、それでいて色の濃さも寸分の狂いもないわ。どう言う具合に仕上がるのかしら。」 大きな範囲は鉛筆を立てて、細かい範囲は寝かせる形で鉛筆を運んでいく。やがて下絵が出来上がったらしく、キイチは指笛を吹いた。するとドーブルが下絵をもとにして色つきの絵を描き始めた。ドーブルも尻尾を自由自在に操って色を入れていく。そしてしばらくすると、下絵と色つきの絵、2種類の絵画が完成した。ポーズを決めて微笑むミキとエーフィの姿が描かれていた。 ミキ「これって、あたし?・・・すごいわ!キイチさんとドーブル、絵の才能はバッチリね!」 まるで白黒写真やカラーフィルムに納めたかと言ってもいいほどの仕上がりだった。キイチとドーブルは絵の才能は群を抜くものがある。天才的と言ってもいいだろう。 コトミ「すごい!絵の中からミキさんが今にも飛び出してきそうだわ!」 マサト「キイチさん、これほどまでに立派な絵を描くまでには、相当苦労されたんですね。」 キイチ「絵と言うものは、一瞬のインスピレーションが大事なんだよ。僕もたくさんの絵を描いてきたけど、何事も閃きが最後の扉を開けるって思うんだ。」 マサト「閃きが最後の扉を開ける・・・。バトルやコンテストにも通じるものがありますね。」 コトミ「キイチさん、早速あたしの絵もお願いします!」 マサト「僕も!」 キイチ「分かった、分かった。じゃあ早速描くから、コトミちゃん、じっとしててね!」 キイチとドーブルはコトミとエルレイド、続いてマサトとサーナイトの絵も描き終えた。いずれの絵もまるでマサト達が絵の中に入り込んだのを彷彿とさせるほどの精巧さだった。 マサト「キイチさん、やっぱりすごいですね!絵の天才って言ってもいいと思います!」 コトミ「こんな素晴らしい絵を描いていただいて嬉しいです!」 キイチ「ありがとう。僕、ポケモンと一緒にたくさんの絵を描いて回る、ポケモンアーティストになりたくてね。こうしてたくさんの絵を描いているんだ。」 マサト「ポケモンアーティスト?」 キイチ「うん。ポケモンとトレーナーの絆を絵に描きたくてね。いろんな地方を旅しながら絵の修行に出ているんだ。この前のバトルチャンピオンシップスもそうだったんだよ。」 コトミ「そうだったんですかぁ。キイチさんは、ポケモンリーグに出たことはあるんですか?」 キイチ「うん。僕は以前カントーのポケモンリーグにも出たことがあるんだ。今度はジョウトリーグにも出たいって思ってるんだ。そうしたら、マサト君やコトミちゃんともライバルになれるしね。」 ミキ「そうね。たくさんのトレーナーやコーディネーターと一緒に技を磨き合う中で、絵の才能もたくさんの人に認められると思うわ。キイチさんなら、きっと有名なポケモンアーティストになれると思うわ!」 キイチ「ありがとう!そうだ、マサト君とコトミちゃんは、これからキキョウジムに挑戦するんだったね?」 マサト・コトミ「はい。」 キイチ「だったら、いいものをおご馳走してあげます!僕、ケーキの美味しい店、知ってるんです。ケーキバイキングが楽しめるんです。」 マサト「本当ですか!?」 コトミ「食べてみたいです!」 ミキ「是非お願いします!」 キイチ「じゃあ、行きましょう!」 マサト達はキイチに連れられて、マダツボミの塔のすぐ近くにあるケーキショップを訪れた。 店内は落ち着いた雰囲気となっており、バイキング形式で様々な種類のケーキが楽しめるスタイルだった。もちろん、ポケモン達が喜ぶポケモンフーズやポロック、ポフィンも色々な種類が用意されていた。 キイチ「どれでも好きなものでいいですので、是非いただいてください!」 一同「いただきます!」 マサト達はケーキを口に運んだ。 マサト「美味しい!」 コトミ「ほっぺたが落ちそう!」 ミキ「甘くて口当たりもいいし、文句のつけようがないわ!」 キイチ「ありがとう。僕、よくここのケーキを食べに訪れるんです。皆さんが喜んでくれると、僕も嬉しいです。」 マサト「キイチさん、こんな美味しいケーキをご馳走してくれたお礼と言ってはあれですけど、いつかジョウトリーグで、僕とバトルしてください!」 キイチ「うん!分かった、マサト君!」 マサト「ありがとうございます!」 コトミ「マサト、新しいライバルの誕生ね!」 ミキ「あっ、テレビでコンテストの情報をやってるわ!」 店内のテレビが、ちょうどコンテストの情報を伝えていた。 ココアン「先日行われたポケモンコンテスト・サンバ大会は、アリサさんが優勝いたしました!」 マサト「アリサさん、優勝したんだね!」 ココアン「さあ、次のコンテストは、懐かしい香りの町、キキョウシティで行われます!我こそはと思うコーディネーターの皆さん、レッツ・トライ!」 コトミ「キキョウシティだって!」 ミキ「これはしばらくこの町にいることになりそうね。ところで、マサト君とコトミちゃん、どちらが最初にジムに挑戦するの?」 マサト「どうする、コトミ?」 マサトはコトミの顔を見つめた。 コトミ「うん、あたしも早く挑戦したいって言う気持ちはあるけど、でもマサトはセンリさんのお子さんでしょ?ジムリーダーの子供と現役ジムリーダーのバトルを見てみたいって言う気持ちもあるわ。だから、マサトが最初に挑戦するべきだと思うわ。」 マサト「・・・うん。コトミがそう言うんだったら、明日は僕が挑戦する!」 ミキ「マサト君、ハヤトさんは手強いわ。しっかり準備してね!」 コトミ「しっかりバトルしてね、マサト!」 キイチ「マサト君、僕も応援するよ!」 こうして、マサトはキキョウジムのジムリーダー・ハヤトに挑戦することになった。 ハヤトはひこうタイプのポケモンの使い手。空からの戦法を得意としているのは言うまでもないだろう。 果たして、マサトはどう立ち向かっていくのだろうか。 Chapter-62に続く。 <このお話の履歴> 全編書き下ろし。