Chapter-63『ポケモンコンテスト・キキョウ大会!』 (1) マサト達はキキョウシティのポケモンセンターにいた。 ミキ「マサト君、コトミちゃん、意外なライバルが現れそうね。」 コトミ「でも、あたしだってキキョウ大会は優勝して、リボンをゲットしたいです!負けないわよ、マサト!」 マサト「コトミ、僕だって負けないよ!次もリボンをゲットするんだ!」 ミキ「うふふっ。2人ともやる気満々ね。」 と、そこに別の女性の声がした。アユミの声だ。 アユミ「久し振りね!元気してた?」 一同「アユミさん!」 アユミ「こんにちは。みんなも明日のキキョウ大会、参加するんでしょ?」 マサト「はい。次のリボンも必ずゲットします!」 コトミ「こないだのコンテストはマサトに負けたんですけど、でも今度は負けてられないです!」 アユミ「ならあたしもライバルね。マサト君、コトミちゃん、あたしも負けないわよ!ね!」 マサト「ところでアユミさん、バッジは何個集めたんですか?」 コトミ「コンテストのリボンは?」 アユミ「あたし?・・・あたしはバッジは1個ゲットしたわ。次はこのキキョウシティのキキョウジムに挑戦することにしてるわ。リボンも1個ゲットしたのよ。」 コトミ「キキョウジムなら、今日マサトもバッジをゲットしたんです。」 アユミ「すごいわね、マサト君。ひこうタイプのジムって、どうだった?」 マサト「ハヤトさんのポケモンはかなり手強かったですけど、最後は僕のポケモンが実力を出してくれて、勝つことができたんです。」 アユミ「あっ、そう言えばマサト君って今回が初めてのジムバトルだったんだよね。あたしも初めてのジムバトルのときは緊張したわ。でも、無理しないで自分のペースをつかんでいけば、きっと勝利を収めることができると思うわ。」 マサト「はい。」 ミキ「さあ、明日はコンテストね。みんな、素晴らしい演技を期待しているわ!」 コトミ「じゃあ早速練習ね!」 マサト・アユミ「はい!」 翌日、晴れ渡る空のもと、キキョウシティの北西にあるふれあいメッセキキョウにおいてポケモンコンテスト・キキョウ大会が行われることになった。 参加者は先日のヤギブシ大会をやや上回るかと言った状況である。それだけにレベルの高い演技が予想されており、マサト達も油断してはいられなかった。 マサト「サーナイト、油断してはいられないね。今回はコトミだけではなくて、アユミさんも参加しているから、僕たちも負けていられないね。」 サーナイトもマサトの声に大きくうなずく。 コトミ「マサトも準備できたみたいね。マサト、今回はあたしが優勝するわ!」 マサト「僕だって負けないよ!リボンは簡単に渡さない!」 そこにアユミが現れる。衣装は変えておらず、そのまま臨むことにしているのだろう。 アユミ「だけど2人とも、あたしの演技は見たことがないでしょ?だから、まずは一次審査、飛びっきりの演技を見せてあげるわ。マサト君、コトミちゃん、あたしだって負けないわよ!」 マサト「望むところです!」 コトミ「一緒に二次審査に進みましょう!」 アユミ「ね!」 ココアン「穏やかな時間の流れ、いつもそこに人とポケモンの絆がある。お待たせいたしました。今回は懐かしい香りのする町、キキョウシティからポケモンコンテスト・キキョウ大会をお送りいたします!」 コンテストの模様はジョウト地方中に放送されており、例によってワカクサシティではユカリもテレビで見ていた。 ココアン「それでは審査員の皆さま方をご紹介いたします。まずはキキョウシティのジョーイさん!」 ジョーイ「こんにちは。毎回美しい演技が繰り広げられるコンテスト、今日はどう言った展開が見られるのでしょうか。」 ココアン「続いて、審査委員長を務めるポケモンコンテスト大会事務局長のコンテスタさん!」 コンテスタ「悠久の都と呼ばれるキキョウシティ。人とポケモンの長い歴史の中で、色々な経験を育んできました。今回はどう言った素晴らしい演技が見られるのか、大変注目しています。」 ココアン「そして、ポケモン大好きクラブ会長のスキゾーさん!」 スキゾー「好きですねぇ。」 ココアン「一次審査はパフォーマンスステージ、二次審査はコンテストバトル。この2つを勝ち抜き、見事優勝を勝ち取ったコーディネーターの方には、審査委員長のコンテスタさんからキキョウリボンが贈呈されます!リボンを5つゲットすれば、夢のグランドフェスティバル!そしてグランドフェスティバルに出たコーディネーターは、さらにリボンを3つゲットすれば、強豪が相まみえるエキシビジョンマッチに出場できます!」 観客席からミキも見守る中、いよいよ最初の演技が始まろうとしていた。 ココアン「最初のエントリーはこの方です!どうぞ!」 トップを切って一次審査に臨むのはアユミだった。 マサト「アユミさんだ!」 コトミ「どう言う演技を披露するのかしら。」 アユミ「行くわよ!ウルガモス、ビューティフル・スマイル!」 アユミはウルガモスを繰り出して一次審査に臨んだ。果たして、どう言った演技を披露するのだろうか。そして、マサトとコトミは二次審査・コンテストバトルに駒を進めることはできるのだろうか。 (2) 〜挿入歌:『君のそばで(ヒカリバージョン)』が流れる〜 キキョウシティで行われたポケモンコンテスト・キキョウ大会。一次審査・パフォーマンスステージにトップを切って臨んだのはアユミだった。 マサト「ウルガモス。イッシュ地方のポケモンだね。」 マサトはポケモン図鑑を取り出してウルガモスをチェックした。 コトミ「ほのおタイプとむしタイプ。珍しい組み合わせね。アユミさん、どう言った演技をするのかしら。」 アユミ「ウルガモス、ちょうのまい!」 ウルガモスがちょうのまいを踊る。神秘的で美しい踊りは観客の注目を一斉に浴びた。 アユミ「ウルガモス、続いてぼうふう!」 ウルガモスは勢いよくぼうふうを放った。コンテストのアピールと言うことを考慮してか、風の勢いはかなり抑えられていた。それでもちょうのまいを放ってすぐと言うことから、かなり身軽にアピールしている感がある。 ココアン「ウルガモスの華麗なるちょうのまい、そしてしなやかに繰り出されるぼうふう!見事な演技であります!」 コンテスタ「ちょうのまいとぼうふう。緩急使い分ける、実に見事なコンビネーションです。」 スキゾー「好きですねぇ。」 アユミ「ウルガモス、行くわよ!オーバーヒート!」 ウルガモスがオーバーヒートを放った。これもコンテストに対応して威力を弱めている。 アユミ「さあ、フィニッシュよ!ウルガモス、そらをとぶ!」 ウルガモスがゆっくりと空中に舞い上がる。そしてオーバーヒートで発した炎の固まりに向かって突っ込んでいった。 そらをとぶはオーバーヒートの炎を見事に振り払ったのだった。 マサト「すごい!」 コトミ「炎の見せ方って、こう言うのもあるんだ!」 ミキ「アユミさん、かなりレベルが高いわね。コンテストでも十分通用するわ。」 ジョーイ「ほのおタイプのオーバーヒートとひこうタイプのそらをとぶが合わさった、とてもレベルの高い演技でしたね。」 コンテスタ「情熱的な炎の舞を見せていただきました。」 スキゾー「ウルガモス。いやぁ、好きですねぇ。」 ココアン「風と炎、2つの異なる技が織り成す美しい演技でした!」 〜挿入歌:『私、負けない!』が流れる〜 ココアン「続いてのエントリーは、この方です!」 次に演技に臨んだのはマサトだった。 マサト「リオル、シャイニング・オン!」 マサトはリオルを繰り出した。 ミキ「リオル!?」 コトミ「リオルも初めてのコンテストだわ。マサト、大丈夫かしら・・・。」 アユミ「ううん。あの表情を見てごらん。」 アユミはそう言ってモニターに写し出されたリオルの表情を指し示した。 コトミ「?」 アユミ「リオル、マサト君の気持ちに応えたいんだと思うわ。リオルははもんポケモン。ルカリオに比べるとまだ小さいけど、それでも波導を感じる力に優れているわ。だって、この前のヤギブシ大会のときも、マサト君はチコリータを出してたんでしょ?だから、心配することはないと思うわ。ね!」 マサト「リオル、はどうだん!」 リオルがはどうだんを放つ。はどうだんは天井高く打ち上がっていった。 マサト「リオル、続いてでんこうせっか!」 リオルがでんこうせっかではどうだんに飛び込んでいく。 コトミ「(本当だ。ヤギブシ大会のときのチコリータもそうだったけど、リオル、初めてのコンテストだなんてとても見えないわ。)」 マサト「リオル、きあいパンチ!」 リオルがきあいパンチを放つ。はどうだんはきあいパンチの一撃で打ち砕かれ、無数の光となってステージにきらめいたのだった。 ジョーイ「はどうだんからつながる3つの技のコンビネーション。なかなかレベルが高いですね。」 スキゾー「好きですねぇ。」 マサト「リオル、もう一度はどうだん!」 リオルがもう一度はどうだんを放つ。はどうだんは天井に向かって飛んでいった。 マサト「リオル、でんこうせっか!」 リオルがでんこうせっかではどうだんに飛び込む。さっきと同じやり方では審査員に対するアピールの意味が薄まってしまうが、果たしてマサトは何をするつもりなのだろうか。 ココアン「マサトさんのリオル、さっきと同じでんこうせっかとはどうだんのコンビネーションですが、さて、何をするのでしょうか!」 マサト「リオル、はどうだんに乗るんだ!」 リオルがはどうだんに着地したではないか。しかもリオルは玉乗りの要領ではどうだんを操りながらステージを回っていく。 ココアン「何と言う演技!自らの打ち出したはどうだんを乗りこなしています!」 コンテスタ「同じコンビネーションでも見せ方によって違う意味合いを持つ。なかなかよく育てられていますね。」 ジョーイ「はどうだんで玉乗りというのはかなり難しい演技です。一歩間違えれば減点されかねないですが、それにしてもよく操っていますね。大変素晴らしい演技です。」 マサト「さあ、フィニッシュだ!リオル、はどうだんにきあいパンチ!」 回転宙返りの要領でステージに降り立ったリオルがはどうだんにきあいパンチを打ち込んだ。はどうだんは無数の光となって消えていき、ステージに美しい余韻を残したのだった。 コンテスタ「一寸の狂いもない、まさに計算された演技といえるでしょう。」 スキゾー「いやあ、好きですねぇ。」 ココアン「リオルのはどうだんが織りなした演技をご覧いただきました!」 〜挿入歌:『ハイタッチ!(2009バージョン)』が流れる〜 ココアン「続いてのエントリーは、この方です!」 続いて演技に臨むのはコトミだった。 コトミ「ポカブ、ライジング・アップ!」 コトミはポカブを繰り出した。 マサト「コトミはポカブだね。」 ミキ「ポカブもゲットしてまだ間もないわ。大きな舞台をまだ経験したことがないけど、大丈夫かしら。」 アユミ「イッシュ地方の3匹ね。コトミちゃんは使い慣れていないみたいだけど、でもあのポカブ、自信たっぷりといった感じね。コトミちゃんならうまくやれると思うわ。」 コトミ「ポカブ、ひのこ!」 ポカブがひのこを放つ。ほのおタイプの技の中でも基本的な技であるひのこだが、審査のポイントとはなりにくい。そこからどう組み立てていくのだろう。 コトミ「ポカブ、続いてころがる攻撃!」 ポカブがころがる攻撃を放った。勢いでさっき放ったひのこを巻き込んでいく。それはさながらかえんぐるまにも見えた。 ココアン「ひのこところがるのコンビネーション!あたかもかえんぐるまを放っているかにも見えます!」 コンテスタ「ポカブはかえんぐるまを覚えるという話はこれまで聞いたことがないです。ですが、自分が覚えない技を複数の技を組み合わせることで放っている風に見せる。これはなかなかレベルの高い演技だと思います。」 スキゾー「好きですねぇ。」 ミキ「コンテスタさんも言ってたけど、複数の技を組み合わせて、自分が覚えない技を覚えている形に見せるって言うの、なかなかできないことだと思うわ。」 マサト「そうですか?」 アユミ「できないことはないと思うけど、そのポケモンがどう言った技を覚えるか、そしてどう言った技に見せることができるかって言うのが、コンテストでも重要になると思うわ。だからコトミちゃんのやっていることはレベルが高いと思うわ。」 コトミ「ポカブ、ニトロチャージ!」 ポカブが続いてニトロチャージを放つ。ニトロチャージの効果が働き、ポカブのスピードが増した感がした。 コトミ「さあ、行くわよ!ポカブ、かえんほうしゃ!」 ポカブがかえんほうしゃを放った。ニトロチャージとかえんほうしゃが合わさり、炎の三角錐ができあがった。それは文字通り炎で造られたピラミッドと言ってもよかった。 マサト「炎のピラミッド!」 アユミ「すごいわ。コトミちゃんとポカブ、かなりよく育てられているわ。今後の活躍が楽しみね。」 コトミ「フィニッシュよ!ポカブ、ころがる攻撃!」 ポカブがころがるを放つ。勢いよく転がっていったポカブは炎のピラミッドの頂点まで上ったかと思うと一気に転がり落ちていき、最後は真正面から炎に突っ込み、その炎を消して見せたのだった。 ジョーイ「文字通り燃え上がる演技でした。ポカブ、まだ小さいですけど、無限の可能性を秘めていますね。」 コンテスタ「炎の大車輪と言ってもいいでしょうか。見事なものを見せていただきました。」 スキゾー「いやぁ、好きですねぇ。」 ココアン「小さくてもやる気と自信に満ちあふれた、ポカブの炎の演技でございました!」 ミキ「みんな、お疲れ様!」 マサト「コトミもそうだったけど、アユミさんの演技もずば抜けてたね。」 アユミ「そうかしら。あれでもあたし、まだ十分ではないって思ってるわ。バトルとコンテストは違うって言うけど、今回改めて実感させてくれたわ。」 コトミ「それはないです。あたしだって、一歩間違えたらステージが大火事になる演技でしたし、そうやって否定することはないと思いますよ。」 ミキ「後は一次審査の結果待ちね。さあ、誰がコンテストバトルに進めるのかしら。あたしはみんな二次審査に進めると思うわ。でも失敗したからと言って落ち込んではいけないと思うわ!」 一同「はい!」 と、場内にアナウンスが鳴り響いた。 ココアン「お待たせいたしました。これより一次審査の結果発表にまいりたいと思います。レベルの高い演技が繰り広げられたキキョウ大会、果たして、誰が二次審査・コンテストバトルに進めるのでしょうか!」 マサト達も固唾をのんで見守る。 ココアン「それでは発表します。二次審査・コンテストバトルに進出できるのは、この8名です!」 1人ずつ二次審査に進出したコーディネーターの顔写真が映し出される。2人、3人と映し出されていき、5人目でアユミの写真が映し出された。 アユミ「あたしだわ!」 続いて6人目が発表され、そして7人目はコトミだった。 コトミ「あたしもだわ!」 最後の8人目はマサトだった。 マサト「僕もだ!」 ミキ「とりあえずはみんな進めて一安心ね!」 ココアン「以上の8名となりました。それでは二次審査・コンテストバトルの対戦カードに移りたいと思います。組み合わせは以上の通りとなります!」 8名の顔写真がランダムにシャッフルされ、一通りに並べられた。――全員が順調に勝ち進んでいくと、準決勝でマサトとアユミが顔を合わせることになる。一方のコトミは決勝までは誰とも当たることはないが、決勝ではマサト、アユミ、または別のコーディネーターとぶつかる可能性がある。 アユミ「マサト君。このまま勝ち進んでいけたら、あたし達が準決勝でぶつかるわね。あたしも全力でお相手するわ!」 マサト「はい!望むところです!」 コトミ「マサト、アユミさん、リボンは渡さないわ!」 一次審査を勝ち抜き、二次審査・コンテストバトルに駒を進めたマサト達。だがコンテストバトルは早くも激戦の様相を呈していた。果たして、キキョウリボンをゲットするコーディネーターは、誰になるのだろうか。 (3) ポケモンコンテスト・キキョウ大会。マサト達は無事に一次審査を勝ち抜き、二次審査・コンテストバトルに駒を進めることができた。 二次審査もマサト達は順当に勝ち進んでいき、準決勝、マサトとアユミのバトルを迎えた。 ココアン「ポケモンコンテスト・キキョウ大会、セミファイナル第1試合です!方やマサトさん、此方アユミさん!制限時間は5分です!」 マサト「アユミさん、決勝に進むのは僕です!」 アユミ「あたしだって負けていられないわ!行くわよ!」 ココアン「ではまいります!バトルスタート!」 マサト「ブーバーン、シャイニング・オン!」 マサトはブーバーンを繰り出した。 アユミ「チルタリス、ビューティフル・スマイル!」 アユミはチルタリスを繰り出した。 ミキ「(マサト君はブーバーン、アユミちゃんはチルタリス。どう言った試合運びになるのかしら。)」 アユミ「チルタリス、りゅうのいぶき!」 チルタリスがりゅうのいぶきを放つ。 マサト「ブーバーン、サイコキネシス!」 ブーバーンがサイコキネシスを放つ。りゅうのいぶきはサイコキネシスで方向を変えられた。そしてアユミのポイントが減る。 アユミ「(マサト君、なかなかやるわね。)」 マサト「(さすがはアユミさんだ。りゅうのいぶきの威力も桁違いだ。それなら。)ブーバーン、かえんほうしゃ!」 ブーバーンがかえんほうしゃを放つ。しかしタイプで考えるとドラゴンタイプを併せ持っているチルタリスに対してはかえんほうしゃの効果も今ひとつ。ポイントにつながるのだろうか。 アユミ「あたし達も負けていられないわ!チルタリス、りゅうのはどう!」 チルタリスがりゅうのはどうを放ってかえんほうしゃを迎え撃つ。両者の技が拮抗、そして激しい爆風となって跳ね返った。両者のポイントもじわじわと減っていく。 コトミ「(マサトとアユミさん、実力はほとんど同じね。かなり手強いわ。)」 ココアン「両者一歩も譲らない技と技の応酬です!」 アユミ「チルタリス、うたう!」 マサト「えっ!?」 チルタリスがうたうを始めた。歌を聴いたポケモンはたちまち眠ってしまう。 マサト「ブーバーン、耳をふさいでかえんほうしゃ!」 ブーバーンはとっさに耳をふさぎ、かえんほうしゃを放つ。うたうは辛うじて免れたが、チルタリスはなかなかの強敵である。それ以外にも強力な対抗手段を持っているに違いない。 アユミ「チルタリス、コットンガード!」 チルタリスはこれまで見たこともない技を繰り出した。コットンガードだ。かえんほうしゃはコットンガードに阻まれてしまった。 ココアン「チルタリスのコットンガードがかえんほうしゃを防ぎました!」 マサトのポイントがかなり削られていく。たちまちのうちにアユミのポイントをわずかに下回ってしまった。 マサト「ブーバーン、サイコキネシスでチルタリスの行動を封じるんだ!」 ブーバーンがサイコキネシスを放つ。チルタリスは超能力で操られてしまい、思い通りの行動ができなくなってしまった。 ココアン「ブーバーンも負けていられません!チルタリスの行動をサイコキネシスで封じます!」 アユミのポイントも削られる。わずかなポイントを争うシーソーゲームになりつつある感がしていた。 アユミ「チルタリス、ハイパーボイス!」 サイコキネシスを振りほどいたチルタリスがハイパーボイスを放った。ハイパーボイスは勢いよくブーバーンに命中、頭を押さえて転がって行ってしまった。サイコキネシスの効果が切れたことも重なって、マサトのポイントは大きく削られてしまった。 マサト「ああっ、ブーバーン!」 ブーバーンはどうにかして立ち上がった。しかしハイパーボイスでかなりダメージを受けてしまったのだろう。 アユミ「チャンスよ!チルタリス、りゅうのいぶき!」 マサト「ブーバーン、かえんほうしゃ!」 チルタリスがりゅうのいぶきを、ブーバーンがかえんほうしゃをそれぞれ放つ。互いの技はステージ中央で激しくぶつかり合い、押して押されてを繰り返した。だがダメージの蓄積したブーバーンは威力が弱まっていたのか、じりじりとりゅうのいぶきが押し返し始めていた。 マサト「負けないでブーバーン!サイコキネシスだ!」 ブーバーンがサイコキネシスを放ってりゅうのいぶきを防ごうとする。だがりゅうのいぶきはさらに勢いを強めていき、ついにかえんほうしゃとサイコキネシスを打ち破ってしまった。そのままブーバーンはりゅうのいぶきをまともに受けてしまった。 マサト「ブーバーン!」 ブーバーンはりゅうのいぶきの追加効果を受けて麻痺してしまった。マサトのポイントもそれに呼応して大きく減っていく。 アユミ「さあ、とどめよ!チルタリス、力をためて!」 チルタリスを激しい光が包み始めた。ゴッドバードだ。アユミのチルタリスも使いこなすというのだろうか。 マサト「ブーバーン、諦めるな!かえんほうしゃ!」 しかしブーバーンは麻痺して技が出せない。もはや万事休すと言ったところだろうか。 アユミ「行くわよ!チルタリス、ゴッドバード!」 チルタリスが勢いよくゴッドバードを繰り出した。ブーバーンはかわす間もなくゴッドバードをまともに受けてしまい、その場に叩きつけられてしまった。 マサト「ブーバーン!」 コンテスタを始めとする審査員が告げたのはバトルオフだった。 ココアン「バトルオフ!アユミさん、マサトさんの攻撃を退けて、ファイナルバトルに駒を進めました!」 マサト「大丈夫、ブーバーン?」 マサトはブーバーンの元に駆け寄る。ブーバーンはかなり傷ついていたが、それでもどうにかしてマサトの声に応えていた。 アユミ「マサト君、コンテストでもかなりの実力の持ち主ね。さすがはハルカちゃんの弟さんだわ。」 マサト「アユミさんもコーディネーターとしての実力はただ者ではないです。今回バトルして思いました。次はファイナルですね。」 アユミ「うん!誰になるかはまだ分からないけど、コトミちゃんには負けてられないわ。ね!」 コトミはセミファイナルを勝ち進み、ファイナルに進出した。そしてファイナルはコトミとアユミのバトルになったのである。 ココアン「さあ、ポケモンコンテスト・キキョウ大会もいよいよファイナルバトルを残すのみとなりました!方やコトミさん、此方アユミさん!制限時間は5分です!」 画面中央のスクリーンにコトミとアユミの顔写真と残りポイントが映し出される。 ココアン「ではまいります。バトルスタート!」 コトミ「エルレイド、ライジング・アップ!」 コトミはエルレイドを繰り出した。 アユミ「チルタリス、ビューティフル・スマイル!」 アユミはチルタリスを繰り出した。相性の面ではかくとうタイプを併せ持っている分、コトミが不利だ。しかし相性が悪いからと言って勝てないわけではない。 アユミ「チルタリス、しんぴのまもり!」 チルタリスがしんぴのまもりに入る。できるだけダメージを抑える作戦だろう。 コトミ「(アユミさんは守りに入る作戦ね。)エルレイド、サイコカッター!」 エルレイドがサイコカッターを放つ。しかしサイコカッターはしんぴのまもりが予想以上に強かったのか、跳ね返されてしまった。そしてコトミのポイントも減ってしまった。 ミキ「あのしんぴのまもり、かなり堅いわね!」 アユミ「チルタリス、つばめがえし!」 チルタリスがつばめがえしを放つ。さっきのマサトとのバトルと違い、守りを固めた後は積極的に攻撃に出て行く戦法をとっている。 コトミ「(やるわね。相手に応じて技を使い分けるのね。)エルレイド、つじぎり!」 エルレイドのつじぎりとチルタリスのつばめがえしが勢いよくぶつかり合う。両者ともパワーは互角と言ったところだろう。ポイントもじりじりと減っていくが、まだコトミがアユミに追いつくまでには至っていなかった。 ココアン「エルレイドとチルタリス、両者ともパワーは互角と言ったところでしょう!技の撃ち合いになっています!」 コトミ「エルレイド、もう一度サイコカッター!」 エルレイドがサイコカッターを放つ。 アユミ「チルタリス、コットンガード!」 チルタリスがコットンガードで守りを固める。サイコカッターはコットンガードに阻まれた格好となった。そしてコトミのポイントはさらに減っていき、アユミとの差はさらに広がっていく。 コトミ「(あの守りを打ち砕かなければ勝てないわ。でもどうしたら・・・。)」 アユミ「(コトミちゃん、チルタリスの守りに苦戦してるみたいね。でも守りだけではないってことを教えてあげるわ!)チルタリス、飛び上がって!」 チルタリスが空高く飛び上がる。そらをとぶの体制に入るのだろう。 コトミ「(そらをとぶだわ!)エルレイド、気をつけて!チルタリスは空中から攻撃するわ!攻撃に備えて!」 アユミ「行くわよ!チルタリス、そらをとぶ攻撃!」 チルタリスがそらをとぶ攻撃を放った。ひこうタイプのそらをとぶはかくとうタイプのエルレイドに対して効果抜群。まともに受けたら大ダメージだけでなくさらにポイントが広がりかねなかった。 コトミ「エルレイド!」 と、次の瞬間エルレイドの周りから光が浮き出たかと思うと、鋭くとがった岩が現れたではないか。 アユミ「あれは!?」 ミキ「間違いないわ。エルレイドは新しい技を覚えたんだわ!ストーンエッジよ!」 コトミ「(ストーンエッジ!確かいわタイプの攻撃技だわ。もしかしたら・・・!)エルレイド、一か八か行くわよ!ストーンエッジ!」 エルレイドがストーンエッジを放った。無数の岩はたちまちチルタリスに襲いかかり、大きなダメージを与えた。効果は抜群だ。 ココアン「エルレイドのストーンエッジが炸裂しました!これはかなり有効な技運びとなりました!」 一気にアユミのポイントが減った。コトミとほとんど同じところまで減っていく。 アユミ「やるわね、コトミちゃん!でも次はそうはいかないわ。チルタリス、りゅうのはどう!」 チルタリスがりゅうのはどうを放つ。残り時間は後1分30秒、そろそろフィニッシュの準備に入らないといけないだろう。 コトミ「エルレイド、サイコキネシスでりゅうのはどうを封じて!」 エルレイドもサイコキネシスでりゅうのはどうを封じる。 アユミ「チルタリス、つばめがえし!」 コトミ「エルレイド、もう一度ストーンエッジ!」 チルタリスがつばめがえしで突っ込む。さらにエルレイドもストーンエッジを放って応戦した。 アユミ「チルタリス、かわして!」 しかしチルタリスはストーンエッジをかわす。 コトミ「今よ、エルレイド!サイコキネシスをぶつけて!」 サイコキネシスで操っていたりゅうのはどうをエルレイドは後ろからチルタリスにぶつけたのだった。勢いでチルタリスは高く吹っ飛ばされていく。同時にアユミのポイントも減っていった。 アユミ「まだまだよ!チルタリス、そらをとぶ攻撃!」 チルタリスは空中に飛ばされた勢いを利用してそのままそらをとぶ攻撃に入っていく。 コトミ「エルレイド、サイコカッター!」 エルレイドがサイコカッターを放つ。しかしチルタリスはサイコカッターを突き破ってエルレイドに襲いかかる。 コトミ「エルレイド、チルタリスをぎりぎりまで引きつけて!」 サイコカッターの効果がないと見ると、エルレイドはぎりぎりまでチルタリスを引きつける作戦に打って出た。そう言っている間にもチルタリスはぐんぐん迫っていく。 コトミ「今よ!エルレイド、ストーンエッジ!」 もう少しでそらをとぶの直撃を受けるというそのとき、エルレイドがストーンエッジを放った。至近距離からストーンエッジを受けたチルタリスはそのまま容赦なく吹っ飛ばされていった。 と、そのときだった。 ココアン「タイム・アップ!」 制限時間の5分が経過したのだった。息詰まる攻防が繰り広げられた決勝戦、果たして勝者はどちらになるのだろうか。」 ココアン「手に汗握る展開となったファイナルバトル、結果はこうなりました!」 一方のポイントはもう一方のそれに倍近い差をつけていた。一方は残すところ半分、そしてもう一方は後4分の1と言ったところだった。 勝者はコトミだった。 ココアン「優勝はコトミさんです!」 コトミ「あたし、優勝したのね!ありがとう、エルレイド!」 エルレイドもコトミに抱きつき、優勝を喜び合う。そこにアユミも歩を進めた。 アユミ「コトミちゃん。あなたはコーディネーターとしての実力、かなりのものね。バトルチャンピオンシップスでユカリさんと渡り合っただけのことはあるわ。」 コトミ「ありがとうございます。アユミさんもマサトを破るなんて、すごい実力ですね。アユミさんの活躍はバトルだけでは終わらないと思います。コンテストでもコーディネーターとして、あたしとマサトのライバルとして、いい演技を見せてください!」 アユミ「うん!」 コトミとアユミはしっかりと握手を交わしたのだった。 ココアン「今、大会実行委員長のコンテスタさんから、キキョウ大会を優勝したコトミさんにキキョウリボンが授与されます!」 コンテスタ「コトミさんは今回が初めてのリボンだそうですね。コーディネーターとしてリボンをゲットするのは大変な栄誉です。今回のリボンの重みを忘れないで、次のコンテストも精進してくださいね。」 コトミ「はい!・・・キキョウリボン、ゲットでスマイル!!」 そう言ってコトミはキキョウリボンを高く掲げた。エルレイドとポカブも飛び跳ねて喜びを分かち合っていた。 アユミ「マサト君達はこれからどうするの?」 マサト「僕たちは、キキョウシティのシンボルと言われているマダツボミの塔に登ってみたいと思うんです。 コトミ「ポケモンとトレーナーの修業の場と言われているんだそうです。昨日のマサトとのバトルでハヤトさんのポケモンも回復が必要だと思いますし、回復するまでの間、マダツボミの塔を見に行ってみたいと思うんです。」 ミキ「アユミちゃん、よかったらあたし達と一緒に見に行かない?」 アユミ「いいんですか?」 一同「はい!」 アユミ「うふふっ。それじゃ、よろしくお願いします!」 こうして、コトミは初めてのリボンとなるキキョウリボンをゲットすることができたのだった。 グランドフェスティバルに出場するためのリボンは後4つ。果たして、グランドフェスティバルにたどり着くまでに、マサト達はどう言ったライバルとバトルを繰り広げることになるのだろうか。 ジョウトリーグとグランドフェスティバル出場を目指すマサト達の旅は、まだまだ続く。 Chapter-64に続く。 <このお話の履歴> 全編書き下ろし。