Chapter-64『特訓!マダツボミの塔!!』 (1) ポケモンコンテスト・キキョウ大会を終えた翌日、マサト達はキキョウシティのシンボルでもあるマダツボミの塔に足を運んでいた。 マサト「ここがマダツボミの塔だね。」 コトミ「たくさんのトレーナーがここで修行を積むのね。」 ミキ「マダツボミの塔は、30メートルの大きなマダツボミが中心の柱になったと言われているわ。もっとも本当の話かどうかは分からないけど、それでも多くのトレーナーやコーディネーターが修行のためにここを訪れるわ。自分はまだトレーナーやコーディネーターとしてはつぼみだって言うことを教えてくれると思うわ。」 アユミ「まだまだ小さなつぼみだけど、いつか大きな花が咲く。その事を意味しているんだと思うわ。ね!」 ミキ「あそこが入り口になるわ。行ってみましょう!」 一同「はい!」 マダツボミの塔は、トレーナーやコーディネーターだけでなく、ここで生活しているお坊さん――僧侶にとっても大切な修行の場である。 マサト「柱って、微妙に揺れているんだね。」 マサトの言う通り、塔を支える柱は微妙な揺れを繰り返している。 コトミ「まるでマダツボミの身のこなしをイメージしているみたいだわ。」 お坊さん「素晴らしい。よくご存じでいらっしゃいますね。」 マサト「あなたは?」 お坊さん「私はこの塔に住む坊主のセイエイと申します。」 マサト「僕、マサトです。」 コトミ「あたし、コトミです。」 ミキ「あたしはミキ。よろしくね!」 アユミ「あたしはアユミ。よろしくね!」 セイエイ「こちらこそどうぞお見知りおきを。このマダツボミの塔は、ポケモンとトレーナーの修行の場として建てられたもので、幾星霜の間、ここを訪れたトレーナーは塔を束ねるご住職様を相手に修行をされてきたのです。」 マサト「ご住職様?」 セイエイ「左様でございます。あなた方の力を試すお方として、ご住職様は塔の最上階であなた方とバトルをなされましょう。」 ミキ「あたしも昔ジョウトを回ってたとき、ここでご住職様とバトルしたわ。ハヤトさんにも負けず劣らずの腕の持ち主だわ。挑むからにはしっかり準備した方がいいかもしれないわ。」 セイエイ「ミキさんはご住職様とバトルをなされたのですね。後のお三方はここを訪れるのは初めてなのでありましょうか?」 マサト・コトミ・アユミ「はい。」 セイエイ「ではご案内します。ご住職様は先も述べました通り、この塔の最上階にいらっしゃいます。ちょうどカントーからやって来たトレーナーの方とバトルをなさっているはずです。」 マサト「カントーのトレーナー?」 コトミ「マドカさんかしら。」 セイエイ「いえ。フライゴンを連れた男性の方でした。」 アユミ「フライゴンを連れた男性?」 ミキ「まさか・・・。」 マサト「サーナイト、ミキさんのことをお願いね。」 サーナイトは大きくうなずいた。フライゴンを連れた男、と聞いてマサト達が思い付くのは、たった1人だけだった。 (2) マサト達はお坊さんのセイエイに連れられて、マダツボミの塔を登っていた。 塔の中は野生ポケモンも多く生息している。恐らく塔に住み着いているポケモンなのだろう。マサト達が見る限りでも、コラッタとゴースがいた。 アユミ「ミキさん、さっきからどうしたの?」 ミキ「大丈夫よ。心配しなくていいわ。それに、マサト君がサーナイトに事情を説明してるわ。」 アユミ「えっ、でも気になるわ。マサト君やコトミちゃんは、フライゴンを連れたカントーのトレーナーが誰か知ってるの?」 マサトとコトミは事情を説明した。 アユミ「・・・そうだったんだ。ミキさんはユウジってトレーナーに散々なことをされたのね。そうやって人の気持ちを理解しようとしない人、許すことはできないわ。」 ミキ「それでマサト君がサーナイトにテレポートを使って欲しいって言ってたのよ。」 セイエイ「人は互いを理解している気がして、実は理解できていないことがあります。本当に互いが互いを理解しあえるといいのですが・・・。」 マサト達は階段を登っていき、やがて最上階に到着した。セイエイの話によると、ここにこの塔の住職が住んでいるのだと言う。 セイエイ「こちらになります。・・・どうやらそのトレーナーさんがご住職様とバトルされているみたいですね。」 見ると、ユウジが塔の住職を相手にバトルの真っ最中だった。 ユウジ「フライゴン、かえんほうしゃ!」 フライゴンがかえんほうしゃを放つ。住職のポケモンはヨルノズクだ。 住職「ヨルノズク、かまいたち!」 ヨルノズクがかまいたちを放ち、かえんほうしゃを吹き飛ばした。 マサト「(あれ?フライゴン、あのスカーフを巻いていない・・・。)」 マサトはユウジのフライゴンを見て違和感を覚えていた。――フライゴンはマサトとのバトルのときに巻いていたこだわりスカーフを巻いていなかった。 マサト「(あ、そうか。いつも巻いているとは限らないんだね。)」 ユウジ「フライゴン、ストーンエッジ!」 フライゴンがストーンエッジを放った。 住職「ヨルノズク、サイコキネシス!」 ヨルノズクがサイコキネシスを放つ。サイコキネシスはストーンエッジの方向を変え、フライゴンに向かっていかせた。 ユウジ「フライゴン、りゅうせいぐん!」 フライゴンがりゅうせいぐんを打ち出した。無数の小さな塊となったりゅうせいぐんはストーンエッジを打ち落としただけでなく、そのままヨルノズクに命中した。 ヨルノズクは勢いよく床に叩きつけられ、戦闘不能となった。 住職「確かにユウジさん、あなたの実力は素晴らしいものがある。ですが、もう少しポケモンをいたわるべきですぞ。」 ユウジ「・・・そうか。だが俺は俺のやり方で行く。俺には俺のプライドがある。」 そう言うとユウジはフライゴンをモンスターボールに戻した。同時に立ち去ろうとして、マサト達の方に向かってきた。 マサト「サーナイト、お願い!」 ミキ「テレポート!」 サーナイトのテレポートが働き、ミキとサーナイトは姿を消した。それとほぼ同時にユウジがマサト達のところに現れた。 ユウジ「・・・ふっ、またお前たちか。お前たちみたいなしつこい奴に構っている暇はない。じゃあな。」 ユウジはそのまま階段を降りていった。 セイエイ「あのトレーナーはポケモンに対する優しさと言うのが感じられません。せめてポケモン達をいたわる心をほんの少しでも持っていれば、彼も優秀なトレーナーとして認められるでしょうに・・・。」 マサト「そろそろミキさんに連絡した方がいいかもね。」 コトミがポケギアでミキに連絡を入れる。程なくしてテレポートでミキとサーナイトが戻ってきた。 セイエイ「では皆さん、揃われたみたいですね。奥にご住職様がいらっしゃいます。ご住職様は並大抵の腕では勝ち抜くことは難しいと思います。心の準備はよろしいですかな?」 マサト「はい。」 コトミ「準備はできてます。」 アユミ「大丈夫です。」 セイエイ「ではどうぞお進みください。」 マサト達はマダツボミの塔の住職と対面することになった。 住職「よくぞまいられた。ここはポケモンとトレーナーが互いを鍛練する場所。そしてこの私ことタンネンがお主たちとお相手してしんぜよう。」 マサト「僕、マサトです。」 コトミ「あたし、コトミです。」 アユミ「あたしはアユミです。」 タンネン「後ろのお方は確かミキさんだったね。」 ミキ「お久し振りです、タンネンさん。」 タンネン「うむ。向上心を忘れないその姿勢。以前と比べて格段にりりしくなった。そしてお主たち、ミキさんにも劣らない向上心、そして何よりポケモンに対する愛情が感じ取れる。」 マサト「本当ですか?」 コトミ「ありがとうございます。」 アユミ「言ってくれると嬉しいです。」 タンネン「では諸君、この私が修行の相手をしてしんぜよう。どうだね、君たちはちょうど3人。1匹ずつ出してトリプルバトルはどうかな?」 アユミ「マサト君、コトミちゃん、どうする?」 マサト「僕なら大丈夫です。」 コトミ「準備はできてます。」 タンネン「うむ。その心構え、しかと受け取った。私にその思いを示せ!」 ミキ「しっかりバトルしてね!」 こうして、マサト達はタンネンを相手に変則トリプルバトルに挑むことになった。マダツボミの塔の住職と言うこともあり、かなりのレベルが想像できる。果たして、どう言ったバトルが繰り広げられるのだろうか。 (3) 〜挿入歌:『Together』が流れる〜 マダツボミの塔の最上階、住職のタンネンを相手にマサト、コトミ、そしてアユミの3人が変則トリプルバトルに挑むことになった。 タンネン「出でよ!ウツボット、ラフレシア、キレイハナ!」 タンネンはウツボット、ラフレシア、キレイハナの3匹を繰り出した。 マサト「行け、サーナイト!」 マサトはサーナイトを繰り出した。 コトミ「行くわよ、エルレイド!」 コトミはエルレイドを繰り出した。 アユミ「行くわよ、フシギバナ!」 アユミはフシギバナを繰り出した。3人とも一番のパートナーを繰り出したことになる。 タンネン「ほう。お主達のポケモン、強い絆を感じることができる。たくさんの修行を積んで、立派に成長を遂げたのだろうな。」 マサト「ありがとうございます。」 タンネン「ではまいるぞ!ウツボット、サーナイトにリーフブレード!ラフレシア、エルレイドにヘドロばくだん!キレイハナ、にほんばれ!」 キレイハナがにほんばれで日差しを強くする。ソーラービームの発射に時間をかけずに連発することができるほか、ラフレシアとキレイハナは特性・ようりょくその効果で行動が素早くなる。そして素早くなったラフレシアがヘドロばくだんを、一方でウツボットがリーフブレードを放ってサーナイトとエルレイドに襲いかかる。 マサト「サーナイト、ウツボットにサイコキネシス!」 コトミ「エルレイド、サイコカッターでヘドロばくだんを打ち落として!」 サーナイトがサイコキネシスを、エルレイドがサイコカッターを放って対抗する。 アユミ「あたしだって!フシギバナ、キレイハナにヘドロばくだん!」 フシギバナもヘドロばくだんでキレイハナを陥れる。 サイコキネシスはウツボットを一気に壁まで吹っ飛ばしていき、さらにサイコカッターもヘドロばくだんを叩き落としただけでなく、勢いでラフレシアをも吹っ飛ばしていった。そしてにほんばれで素早くなっていたとはいえ、フシギバナの放ったヘドロばくだんはキレイハナにクリーンヒットした。いずれも効果は抜群だ。 タンネン「なかなかやりおるのう。お主達の強い絆、私には見える。ではこれならどうだ!ウツボット、サーナイトにギガインパクト!ラフレシア、エルレイドにソーラービーム!キレイハナ、フシギバナにめざめるパワー!」 ウツボットがギガインパクトでサーナイトに向かってきた。さらにラフレシアもためなしでソーラービームを、キレイハナもめざめるパワーを放って襲いかかった。 マサト「なら僕だって!サーナイト、テレポートでウツボットの後ろに回れ!」 コトミ「エルレイド、サイコキネシスでソーラービームの向きを変えて!」 アユミ「フシギバナ、あたし達もソーラービームをお見舞いするわ!」 サーナイトがテレポートでウツボットの後ろに回り込む。さらにエルレイドはサイコキネシスでソーラービームの向きを変えてウツボット達に向かわせた。そしてフシギバナもためなしのソーラービームをお見舞いする。 マサト「サーナイト、ウツボットにサイコキネシス!」 そしてサーナイトがウツボットにサイコキネシスを放った。ウツボットはサイコキネシスでたちまち操られてしまい、ソーラービームの真っ只中に放り出されてしまった。そこにエルレイドのサイコキネシスで向きが変わったものとフシギバナが放ったもの、2つのソーラービームが勢いよく直撃した。効果は今一つだが、サイコキネシスで操られていた分のダメージが加わっているのは間違いない。 たちまちウツボットは吹っ飛ばされ、勢いでラフレシアとキレイハナも大きなダメージを受けてしまった。 タンネン「何と・・・!ですがまだ終わりではありませんぞ。ウツボット、サーナイトにリーフストーム!ラフレシア、エルレイドにヘドロばくだん!キレイハナ、フシギバナにソーラービーム!」 リーフストーム、ヘドロばくだん、そしてソーラービームの3つの技がサーナイト達に迫っていた。だがマサト達は慌てる様子などなかった。 アユミ「マサト君、コトミちゃん、準備はいい?」 マサト・コトミ「はい!」 アユミ「じゃあ行くわよ!フシギバナ、ハードプラント!」 マサト「サーナイト、サイコキネシス!」 コトミ「エルレイド、サイコキネシス!」 フシギバナがハードプラントを放った。そしてサーナイトとエルレイドがサイコキネシスを放って威力を強めた。 2つのサイコキネシスで強化されたハードプラントはソーラービームやリーフストーム、ヘドロばくだんをあっという間に吹っ飛ばしていき、ウツボット達にクリーンヒットした。 たまらずウツボット達は吹っ飛ばされ、フィールドに勢いよく叩きつけられた。戦闘不能だった。 タンネン「うむ、見事じゃった。お主達とポケモンの絆、本当に深いものがある。これからももっと強くなっていくじゃろう。」 マサト「ありがとうございます。」 タンネン「これはお主達にこそふさわしい。受け取っていきなさい。」 そう言うとタンネンはある道具を差し出した。何かしらの種にも見えるものだった。 コトミ「これは・・・?」 タンネン「きせきのタネ。くさタイプの技の威力が上がる道具じゃ。お主達なら、この道具を使いこなすことができるじゃろう。」 アユミ「ありがとうございます!」 マサト達はタンネンからきせきのタネを受け取ったのだった。 マサト「よーし!きせきのタネ、ゲットでGO!!」 マダツボミの塔を出ると、もう既に日が暮れかかっていた。 マサト達はコトミのジム戦に備えて、ポケモンセンターでポケモン達を回復させることにした。 ジョーイ「マサト君、コトミちゃん、アユミさん。お預かりしたポケモンは、みんな元気になりましたよ。」 マサト・コトミ・アユミ「ありがとうございます。」 そこに1人の男が現れた。ハヤトだった。 ハヤト「やあ!」 一同「ハヤトさん!」 ハヤト「コトミちゃん、俺のポケモンはいつでも準備万端だよ。明日は俺たちでいいバトルにしよう!」 コトミ「望むところです!」 ミキ「マサト君とのバトルで知ってると思うけど、ジム戦は見るのと挑戦するのとでは大違いだわ。コトミちゃん、しっかりバトルしてね!」 アユミ「あたしも一緒に応援するわ!」 マサト「僕も応援するよ!」 コトミ「ありがとう!」 いよいよ初めてのジム戦に臨むコトミ。果たして、コトミはハヤトを相手に、どう言ったバトルを挑むのだろうか。そして、バッジをゲットすることはできるのだろうか。 Chapter-65に続く。 <このお話の履歴> 全編書き下ろし。