Chapter-66『アルフの遺跡!ロケット団の影!!』 (1) コトミのジム戦の翌日、マサト達はキキョウシティの郊外にあるアルフの遺跡に向かっていた。 アルフの遺跡は、古代ポケモンの生態を再現した温室が設けられた古代ポケモンパークとしても知られており、かつてサトシ達も足を運んだと言う。そして、古代ポケモンパークを取り囲む形で古くから伝わる遺跡が形成されている。 マサト「ずいぶん古くからある遺跡だそうですね。」 ミキ「うん。この遺跡はおよそ1500年前に造られたと言われているわ。ナナシマで見たアスカナ遺跡とほぼ同じ時代の遺跡だけど、でも誰が何の目的で造ったのかはいまだにはっきりしていないわ。」 コトミ「アスカナ遺跡で見たアンノーンの群れを思い出します。きっとシンオウの遺跡と関係があるのかもしれないですね。」 アユミ「あたしもアンノーンの群れを見たことがあるわ。コトミちゃんも言ってるズイの遺跡だったわね。」 と、そこに1人の女性が現れ、マサト達に声を掛けてきた。 女性「あなた達も遺跡に興味があるの?」 マサト「はい。この遺跡は古代ポケモンの生態を再現しているだけでなくて、他にもいろんなポケモンがいるかもしれないって思ってるんです。」 女性「感心するわね。私はフミカ。この遺跡を調べているポケモン考古学者よ。」 マサト「僕、マサトです。」 コトミ「あたし、コトミです。」 ミキ「あたしはミキ。よろしくね!」 アユミ「あたしはアユミ。よろしくね!」 フミカ「この遺跡には、いくつかの石板が埋め込まれているの。そして石板とセットでアンノーン文字で書かれたメッセージが伝わっているのよ。」 マサト「アンノーン文字で書かれたメッセージ?」 マサトはアスカナ遺跡群で見たアンノーンの群れを思い出した。確かあのときも、アンノーンはローマ字で意味を伝えていたのだった。 フミカ「私が調べたところによると、この遺跡の4か所に石板とアンノーン文字の組み合わせがあるの。アンノーン文字は何かしらの意味を持っていると言われているわ。」 コトミ「フミカさん、その石板のところに案内してくれますか?」 フミカ「分かったわ。最初の石板はこの向こうよ。」 一同「お願いします!」 フミカの瞳が一瞬不気味に光ったのを、このときのマサト達は知る由もなかった。 マサト達はフミカに連れられて、最初の石板のある場所に着いた。そこは遺跡の内部に入る入り口とは少し離れた小部屋だった。 フミカ「最初の石板はこの中にあるわ。」 マサト「失礼します。」 中に入ってみると、そこはアスカナ遺跡群で見かけたアンノーン文字が壁一面に刻まれている。 コトミ「ナナシマの遺跡とそっくりだわ!」 ミキ「アンノーンをかたどった文字がたくさん書かれているわ。」 アユミ「古代の人は今のあたし達に何かしらのメッセージを伝えたいんだと思うわ。」 フミカ「石板はこの奥。そしてアンノーン文字の列はさらに奥に刻まれているわ。」 見ると、手前に手で自由自在に取り外せそうなパズルじみたものが壁に刻まれていた。その向こうは一見無秩序にアンノーン文字が並んでいるだけだが、よく見ると一部が黒く浮き上がっている。 コトミ「何かしらのパズルになってるわね。」 アユミ「奥はアンノーンの文字が一部分だけど黒くなってるわ。」 フミカ「ちょうどこの部分だけが意味のある文章になってるの。見てもらえるかしら。」 フミカはそう言うと黒く浮き上がったアンノーン文字のところを指し示した。――そこにはアンノーン文字でこう書かれていた。 『ANANUKE』 コトミ「あなぬけ・・・?」 アユミ「もしかして、これのことかしら。」 アユミはそう言うとバッグからある道具を取り出した。 マサト「これは?」 ミキ「あなぬけのヒモよ。洞窟の中で使うと外に出ることができるわ。」 コトミ「そうかもしれないわね。アユミさん、使ってみて!」 アユミ「分かったわ。」 アユミはそう言うとあなぬけのヒモをアンノーン文字のところにかざしてみた。すると、文字のところを覆っていた壁がたちまちのうちに消え、奥に続く通路が現れたではないか。 マサト「通路ができたよ!」 コトミ「奥には何があるのかしら。行ってみましょう!」 ミキ・アユミ「うん!」 マサト達が奥に進もうとすると、フミカが石板をいじくっているのが見受けられた。 アユミ「フミカさんは行かないんですか?」 フミカ「私はこの石板を調べてみるわ。先に行ってくれないかしら。」 マサト「はい。」 マサト達が通路の奥に消えていった後、フミカは不気味に微笑みながら石板に手を伸ばしたのだった・・・。 (2) あなぬけのヒモをかざしたことで現れた通路。それを進んでいくと、広間になっていた。 マサト「何のための部屋だろう・・・。」 コトミ「古代の人たちが遺したメッセージがあるかもしれないわ。」 アユミ「そうね。でもそうだとしたら、どこにあるのかしら・・・。」 ミキ「みんな、下にあるわ!」 ミキが気づいてマサト達に下を指し示す。 マサト「下!?」 見ると、床一面にアンノーン文字で書かれたメッセージとおぼしきものが残っているではないか。遺跡と同じ年代だとすればおよそ1500年前に書かれた文字が、今もなお残っているのだ。 アユミ「本当だわ!」 コトミ「わっ。そうだとしたら文字を傷つけたら大変なことになるかもしれないわね。慎重に見ていきましょう!」 マサト「ミキさん、何て書いてあるか分かりますか?」 ミキ「ちょっと待っててね。読んでみるわ。・・・『WATASHITACHI ICHIZOKU KOTOBA KOKONI KIZAMU』」 (「私たち一族、言葉、ここに刻む」) コトミ「一族・・・?」 マサト「言葉・・・?」 アユミ「ここで暮らしていた人たちが書き残したのかしら。ほかにもあるかもしれないわ。どう言った内容かしら?」 ミキ「あたし達が見たことのあるポケモンかもしれないし、もっと別の何かかもしれないわ。調べてみる価値はありそうね。」 マサト「フミカさんはこれを見たらどう思うかなぁ?」 と、そのときだった。 上の方で妙な、地響きにも似た音が響き渡ったのだ。 コトミ「何、今の音!?」 ミキ「ちょっと、上に行ってみましょう!」 マサト達は慌ててさっきの通路を戻っていった。 先程の石板の部屋に戻ったときだった。 マサト「あっ!?」 何と、石板がすでに組み合わさっており、しかも人が1人立つほどのスペースに穴が開いていたのである。 コトミ「石板が!」 ミキ「これはカブトの絵を表していたんだわ!」 アユミ「カブトって、化石から蘇ったポケモンでしょ?」 マサトとコトミはポケモン図鑑を取り出してカブトをチェックした。 マサト「それにしてもこの穴、フミカさんは大丈夫かなぁ?」 ミキ「一か八かだけど降りてみましょう!」 マサト達は勢いよく穴から下に降りていった。 そこは、遺跡の大広間だった。壁は一面のアンノーン文字で埋められており、石板の部屋と関連性があるのは明白だった。 コトミ「マサト、何かの気配を感じない?」 マサトにも何かしらの気配がするのが見てとれた。確か、アスカナの遺跡のときもこう言った感覚がしたはずだ。だとすると、ここでも・・・。 アユミ「マサト君、コトミちゃん、あれを見て!」 アユミは空間の1点を指差した。そこには何とアンノーンが空中に浮かんでいたではないか。 マサト「アンノーンだ!」 しかもアンノーンはマサト達に気づくなりめざめるパワーを放ったではないか。 ミキ「行ってらっしゃい、ミジュマル!」 ミキはミジュマルを繰り出した。 ミキ「ミジュマル、みずでっぽうよ!」 ミジュマルは勢いよくみずでっぽうを繰り出してめざめるパワーにぶつけた。だがそうこうしている間にも別のアンノーンが現れてマサト達を狙っていた。 マサト「まただ!」 コトミ「きりがないわ!」 アユミ「行くわよ、ケンホロウ!」 アユミはケンホロウを繰り出した。♂に見られる赤い触覚がないことから、♀と見て良さそうだ。 マサト「僕たちも行くよ!行け、ツタージャ!」 マサトはツタージャを繰り出した。 コトミ「行くわよ、ポカブ!」 コトミはポカブを繰り出した。 マサト「ツタージャ、つるのムチ!」 コトミ「ポカブ、ニトロチャージ!」 アユミ「ケンホロウ、エアスラッシュ!」 ツタージャはつるのムチ、ポカブはニトロチャージ、ケンホロウはエアスラッシュを放ってアンノーンを攻撃する。しかしアンノーンの数は意外に多く、治まる気配が見られなかった。 マサト「アスカナの遺跡のときと全然違う!」 コトミ「明らかにあたし達を敵だと思ってるわ!」 と、そのときだった。 男性の声「キャプチャ・オン!」 突如として男の声が響き渡ったかと思うと、キャプチャ・スタイラーが次々とアンノーンをキャプチャし始めたではないか。 マサト「ポケモンレンジャー!?」 コトミ「でもアスカさんやチヒロさんではないわ。誰かしら。」 キャプチャ・ディスクはアンノーンの群れを取り囲んでいき、やがて光の輪がアンノーンに取り込まれていった。 男性レンジャー「怪我はなかった?」 マサト「はい。もしかして、ポケモンレンジャーの方ですか?」 男性レンジャー「そうだよ。俺はセツナ。カントーから派遣されてるんだ。」 マサト「初めまして。僕、マサトです。」 コトミ「あたし、コトミです。」 ミキ「あたしはミキ。よろしくね!」 アユミ「あたしはアユミ。よろしくね!」 セツナ「こちらこそよろしく。君たちのことはアスカさんやチヒロさんからも聞いてるよ。マナフィのタマゴとシェイミは元気にしているそうだよ。」 マサト「ありがとうございます。」 アユミ「アスカさんとチヒロさんって、セツナさんと同じポケモンレンジャーなんですか?」 マサト達はアユミにそのときのいきさつを説明した。 アユミ「そうだったんだ。でもそのとき既にロケット団がジョウトでも活動を始めていたのかしら。」 セツナ「俺は今回、このアルフの遺跡をロケット団が狙っていると言う情報を入手したんだ。それで、遺跡をロケット団の手から守って欲しいと言うミッションを受けたんだ。」 ミキ「その事と関連しているかどうかは分からないんですけど、あたし達、さっき遺跡の石板を色々といじくっている人を見かけたんです。」 セツナ「怪しいな。その人は何て言っていた?」 アユミ「確か、ポケモン考古学者のフミカさんって言っていました。」 セツナ「フミカさん!?」 マサト「知ってるんですか?」 セツナ「この前、アスカさんやチヒロさんと一緒にデオキシスをキャプチャするミッションを受けたとき、神殿を調べていたのがポケモン考古学者のフミカさんって言っていたんだ。フミカさんはデオキシスのキャプチャにも立ち会っていたんだけど、キャプチャが終わったときにはどこにもいなかったんだ。」 コトミ「そう言えばフミカさん、やっていることが変じゃなかった?」 ミキ「言われてみればそうだわ。あたし達が通路を開いたときも、一緒に行こうとしないで、石板のパズルの方に集中してたわ。」 アユミ「確か、マサト君達がアスカさんやチヒロさんのミッションに協力してたときも、ロケット団の乱入に巻き込まれたんでしょ?これは何か関係がありそうだわ。」 セツナ「そうだな。デオキシスのときと言い、フミカさんの行動はどこか怪しいものがある。君たち、よかったら俺のミッションに協力してくれないか?」 一同「はい!」 セツナ「まずはこの遺跡にある全部で4つの石版を順番に調べていくことにしよう。ここを除けば残る石版は3つ。2組に分かれて手分けして調べることにしよう。」 ミキ「あたしはコトミちゃんと組むわね。」 アユミ「じゃああたしはマサト君と組むことにするわ。」 マサト・コトミ「はい。」 セツナ「俺は最後の石版を調べることにするよ。何かあったら連絡したいと思うんだけど、ポケギアは持ってるかい?」 マサト「はい。」 セツナ「じゃあ話は早いね。マサト君、コトミちゃん、ポケギアを貸してくれないかい?」 マサトとコトミはセツナにポケギアを貸した。 セツナ「これでよし、と。これで俺のボイスメールが君たちのポケギアに入る形になったよ。」 ミキ「それじゃ、行きましょう!」 アユミ「しっかり調べましょうね。ね!」 (3) アルフの遺跡を訪れたマサト達は、ポケモン考古学者のフミカと出会った。だがフミカは普通の考古学者がやるにしてはおかしな行動をとっていたのである。そうこうしているうちに遺跡にアンノーンの大群が出現。マサト達もポケモンを出して応戦していたが、そこにポケモンレンジャーのセツナが現れ、アンノーンの群れをキャプチャしていった。そして、セツナの提案のもと、マサト達は二手に分かれて遺跡の石版を調べることになったのである。 ミキ「コトミちゃん、怖くない?」 コトミ「うん。でもフミカさんの行動って、おかしなところが多いでしょ?」 ミキ「コトミちゃんもそう思うのね。勝手に石版をいじってアンノーンの活動を活発化させるって、普通の考古学者だったらまずやらないと思うわ。やるにしてもちゃんと話を通すと思うわ。何かしら、妙な予感がするわ。」 コトミ「気をつけましょう、ミキさん。あ、次の石版はここになるわね。」 コトミが手を指し示した先、2つめの石版が隠されている小部屋が見えてきた。 ミキ「次の石版はあの中にあるわ。行ってみましょう!」 コトミ「はい!」 小部屋に入っていくと、さっきの部屋とほぼ同じ構造となっており、中に石版、そして奥にはアンノーン文字が書かれている。 コトミ「さっきと同じだわ!」 ミキ「石版が1つ、そして奥にアンノーン文字。さっきの部屋と仕組みは同じね。」 コトミ「この石版に描いている絵・・・、これはオムナイトかしら。」 ミキ「完成させたら下に落ちてしまうかもしれないわ。慎重にね!」 コトミ「はい!そう言えばアンノーン文字は、何て書いてました?」 ミキ「これは『HIKARI』って書いてるわ。」 コトミ「『HIKARI』?・・・何かの光に関係する技を使えば開くって言うことかしら。」 ミキ「そうかもしれないわ。光に関係する技を使えるポケモンを出してみましょう!」 コトミ「行くわよ、ヤドン!」 コトミはヤドンを繰り出した。 コトミ「ヤドン、フラッシュ!」 ヤドンはフラッシュを使った。コトミやミキもフラッシュを使うことで扉が開くという確証はなかった。が、フラッシュを使った瞬間音を立てて通路が開いたではないか。 ミキ「この扉の鍵はフラッシュだったのね。コトミちゃん、行ってみましょう!」 コトミとミキは新しくできた通路を進んでいく。すると、さっきの部屋と同じく床一面にアンノーン文字が書かれた部屋にたどり着いた。 コトミ「アンノーン文字だわ!」 ミキ「読んでみるわね。『WATASHITACHI SOTONO POKEMON ZOU TSUKURU』」 (私たち、外のポケモン、像、造る) コトミ「外のポケモン・・・?」 ミキ「何かしらの像を造ったということかしら。アンノーン文字の文明と関係があるかもしれないわ。ディアルガとパルキアにまつわる像が建っていたのかもしれないわね。」 コトミ「シンオウの時空神話にまつわるポケモンですね。考えられない話ではないですよね。ミキさん、さっきの石版、どうします?」 ミキ「確か、オムナイトをイメージしていたって言ってたわね。やってみましょう!」 その頃、マサトとアユミも石版の部屋に到着していた。 マサト「この石版は、プテラをイメージしているんだね。」 アユミ「そうみたいね。奥にもアンノーン文字が書かれているわ。この謎を解けば奥の部屋につながる道が開けると思うわ。あたしはアンノーン文字を見てみることにするわ。マサト君は石版を調べてみて!」 マサト「はい!」 マサトは石版に近寄る。いくつかのパーツに分かれており、上手く組み合わせることができればプテラの絵が復元できるのだろう。だが復元したらしたでさっきのフミカと同じく遺跡に落ちると言うことも考えられる。慎重を期すべきだろう。 アユミ「ここの扉の鍵は『MIZU』って書いてたわ。水にまつわる何かしらのものを持って行けばいいことになるのかしら。」 マサト「水・・・?」 マサトの今の手持ちポケモンはサーナイト、ツタージャ、チコリータ、リオル、そしてブーバーンの5匹。みずタイプのポケモンはいない。しかも都合の悪いことにコトミとミキが一緒に行動してしまっていた。 マサト「アユミさん、水にまつわる道具って持ってますか?」 アユミ「水にまつわる・・・?待って。もしかしたら持ってたかもしれないわ。ちょっと探してみるわね。」 アユミは持っていたバッグの中身を調べてみた。しばらくすると、1つの道具を取り出した。みずのいしだ。使うと進化するポケモンがいることでも知られている。例えばコトミのイーブイもみずのいしを使えばシャワーズに進化することができる。 アユミ「みずのいしよ。これって言う確実な証拠はないと思うんだけど、ちょっと使ってみるわね。」 そう言うとアユミはアンノーン文字にみずのいしをかざした。と、これも運良く扉を開く鍵となり、やがて音とともに通路が開けたのである。 マサト「みずのいしだったんですね。」 アユミ「マサト君、行ってみましょう!何かメッセージが書いてるかもしれないわ!」 マサトとアユミは通路を進んでいった。そこは同様のアンノーン文字が書かれた小部屋になっており、何かしらのメッセージを伝えていた。 マサト「ここにもアンノーン文字が書いてありますね。」 アユミ「うん。読んでみるわ。・・・『KARERA ISHIKI SACCHISURU CHIKARA ARI SOTO KOBAMU』」 (彼ら、意識、察知する力あり、外、拒む) マサト「意識を察知する力・・・?」 アユミ「外を拒む・・・?アンノーンは確かにあたし達の意識を察知しているのかもしれないわ。それに、遺跡の外ではあまり見かけないことを考えると、このアンノーン文字はアンノーンの生態を記しているのかもしれないわ。」 マサト「アンノーンの生態?」 アユミ「うん。アンノーンはこう言う遺跡の外ではあまり見かけないわ。だからアンノーンについて書き残していたのかもしれないわ。さあ、さっきの石版を調べてみましょう!」 マサトとアユミは石版のところに戻る。既にマサトはほぼ形を並べており、後はほんの少しずらせばプテラの絵が完成するところだった。 アユミ「後もう少しね。もしかしたら罠が潜んであるかもしれないわ。慎重にね!」 マサト「はい。」 そう言いながらマサトは石版をずらしていく。やがて所定の位置に収まり、プテラの絵が完成した。 アユミ「できたわね!」 マサト「はい!あっ!?」 突然部屋が揺れたかと思うと、マサトとアユミの立っていた足場が無くなり、2人はそのまま下に落ちていってしまったのである。 アユミ「いたっ!」 マサト「ここは・・・?」 見回してみると、そこはさっきの遺跡の大広間だった。と、向こうから何かしらのものが落ちた音が響き渡った。 マサト「誰だ!」 コトミ「マサト!?」 ミキ「マサト君?」 アユミ「コトミちゃん!ミキさん!」 マサト「2人ともどうして上から落ちてきたの?」 コトミとミキは事情を説明した。 アユミ「・・・と言うことは、石版が完成したとき、足場が無くなるって言う形になっていたのね。」 コトミ「じゃあ、最初にカブトの石版を完成させたとき、フミカさんは既にアンノーンを蘇らせていたって言うことになるのかしら。」 と、そこにポケギアに通信が入る。マサトのポケギアだった。 マサト「ポケギアだ!」 発信元はセツナだった。まさか・・・。 セツナ「みんな、大変だ!最後の石版の部屋、奥の通路が勝手に開けられてしまっている!」 コトミ「奥の通路が!?」 アユミ「勝手に開けられたって、どう言うこと!?」 セツナ「詳しい話は後で・・・、フミカさん、何をするんだ!」 そこで不自然に通信は途切れた。 ミキ「セツナさんが危ないわ。最後の石版のある部屋に行ってみましょう!」 一同「はい!」 (4) アルフの遺跡の部屋にある石版。それを調べていたポケモンレンジャー・セツナの裏で、ポケモン考古学者のフミカが怪しい行動をとっていたのである。マサト達はセツナと合流するべく、最後に残った石版のある部屋に向かっていった。 そこは、遺跡のもっとも奥まったところにある部屋だった。 マサト達が駆けつけたとき、既にセツナとフミカは一触即発の状態に置かれていた。 セツナ「フミカさん、あなたはポケモン考古学者のはずでは!?」 フミカ「私は確かにポケモン考古学者。だけどその裏の姿をあなたは知らないのね。」 そこにマサト達も現れる。 フミカ「あら、坊や。レンジャーのお兄さんの仲間なのかしら?」 マサト「フミカさん!?」 フミカ「ほほほ。ポケモン考古学者のフミカと言うのは仮の姿。そして真の姿は・・・!」 言うなりフミカはモンスターボールを投げた。ボールからはマタドガスが勢いよく出てきてえんまくを放った。 えんまくが晴れると、ロケット団のユニフォームをまとった1人の女性がいた。顔立ちはどこからどう見てもフミカなのだが・・・。 アユミ「あなたは!?」 ミキ「ロケット団!?」 フミカと似た女性「そうよ。私はロケット団幹部のパレア。ジョウト地区の作戦参謀よ。」 セツナ「と言うことは、この前の謎の神殿のときも俺たちの後をつけて、しっかりと神殿を調べ上げていたんだな!」 パレア「頭いいわね、レンジャーのお兄さん。私たちの狙いはジョウト地方にまつわる伝説のポケモン。アルフの遺跡はその伝説のポケモンにつながる手がかりが眠っていると言われているのよ。」 ミキ「ジョウトに眠る伝説のポケモン!?」 パレア「そうよ。ルギアとホウオウの伝説が残るジョウト地方。シンオウ地方の時空伝説と関係した遺跡も多く見つかっているわ。ま、あなた達には関係ないことだけどね。」 マサト「ふざけるな!お前達はナナシマだけでも懲りないで、まだやろうというのか!」 パレア「ぐずぐずうるさい坊や達ね。しょうがないわ。マタドガス、ヘルガー、あの坊や達を片付けておしまい!」 マタドガスとヘルガーが勢いよくマサト達に飛びかかる。 マサト「行け、サーナイト!」 マサトはサーナイトを繰り出した。 アユミ「行くわよ、ピカチュウ!」 アユミはピカチュウを繰り出した。 パレア「マタドガス、ダストシュート!ヘルガー、オーバーヒート!」 マタドガスはダストシュート、ヘルガーはオーバーヒートを放ってサーナイトとピカチュウに襲いかかった。 マサト「サーナイト、かわしてマタドガスにサイコキネシス!」 アユミ「ピカチュウ、空を飛んで!」 サーナイトはダストシュートを巧みにかわすと、サイコキネシスを放った。同時にピカチュウも風船で空に舞い上がり、オーバーヒートをかわす。 パレア「くっ!マタドガス、ヘドロばくだん!ヘルガーはかみくだく攻撃!」 マタドガスもヘドロばくだんを、ヘルガーもかみくだく攻撃で応戦する。だがサイコキネシスはヘドロばくだんを打ち破り、マタドガスに強烈なダメージを与えた。効果は抜群だ。そしてヘルガーのかみくだくをかわしたピカチュウがそらをとぶ攻撃でヘルガーを吹っ飛ばす。 アユミ「マサト君、準備はできてる?」 マサト「はい!」 アユミ「ピカチュウ、10まんボルト!」 マサト「サーナイト、サイコキネシス!」 ピカチュウが10まんボルトを放ち、それにサーナイトがサイコキネシスをかけて威力を強めた。マタドガスとヘルガーはたちまち大きなダメージを受けてしまい、さらに吹っ飛ばされていく。 セツナ「今だ!キャプチャ・オン!」 セツナはキャプチャ・スタイラーからキャプチャ・ディスクを取り出してマタドガスとヘルガーをキャプチャし始めた。だがディスクがマタドガスとヘルガーを取り囲み始める直前、マタドガスがえんまくを放って視界を遮ってしまった。そしてえんまくが晴れると、パレアとポケモン達の姿はどこにもなかった。 マサト「取り逃したか・・・。」 コトミ「でも、ジョウト地方でもロケット団の活動が明らかになったと言うことは揺るぎのない事実ね。」 ミキ「マサト君、コトミちゃん。ひょっとしたらナナシマのときと同じことがジョウト地方でも起こるかもしれないわ。気をつけましょう!」 アユミ「ロケット団。名前には聞いていたけど、こうしてその手口を見たのは初めてだわ。カントーでは人のポケモンを奪うって言うのはよく耳にしてたけど、こうしてみると怖いわ。」 セツナ「あの考古学者の正体がロケット団の幹部だったと言うことは、レンジャーユニオンにも報告しなければならないな。俺たちもこれからかなり忙しくなりそうだよ。」 マサト「ところで、この遺跡の石版は?」 ミキ「みんな、あれを見て!」 ミキが手で指し示したところを見ると、既に石版は組み合わさっていた。おそらくは煙幕に紛れてフミカ、もといパレアが並べ替えてしまったのだろう。 マサト「ホウオウだ!」 コトミ「化石のポケモンとホウオウ。ジョウト地方では何かしらの関係があるのかしら。」 アユミ「ポケモンの謎はまだ知られていない部分がたくさん残っているのね・・・。」 ミキ「奥のアンノーン文字も『HOUOU』って書かれていたわ。この部屋は最も重要なことを伝えるための部屋なのかもしれないわね。」 セツナ「パレアがご丁寧にアンノーン文字の横に穴を開けて隣の部屋に通じる通路を開けてしまったんだ。隣の部屋も見てみよう!」 そこは、これまで見てきた部屋を一回りも二回りも大きくした空間が広がっていた。 マサト「大きな部屋だね。」 コトミ「ここにアンノーン文字があるとしたら、一番重要なことをあたし達に伝えてるんだと思うわ。」 ミキ「そうね。あ、ちゃんと床に書いてあるわ。」 アユミ「読んでみるわね。・・・『WATASHITACHI NINGEN KARERATO TOMONI AYUMU KOTO HITSUYOU KARERANO TAMENI WATASHITACHI TABIDATSU』」 (「私たち人間、彼らと共に歩むこと、必要。彼らのために、私たち、旅立つ」) マサト「彼らと共に歩む・・・。」 コトミ「彼らのために旅立つ・・・。」 ミキ「きっと、古代の人達にとって、アンノーンは特別な存在だったんだと思うわ。そして、アンノーンだけでなくて、この星に生きるあらゆるポケモンを大切にしたいって思っていたんだと思うわ。」 アユミ「でも、ロケット団はここで何をしようとしていたのかしら。気になるわ。」 セツナ「奴らが狙っているのはアンノーン文明の遺産、シント遺跡に繋がる鍵だろう。」 マサト「確か、いかりの湖の奥にある、雪に閉ざされた遺跡でしたね。」 セツナ「よく知ってるね。ロケット団はシント遺跡に眠る古代の秘密に繋がる鍵を求めてジョウトでの活動を始めたんだと思う。これは俺たちとしてもみすみす放っておくことはできない。君たちも是非俺たちに力を貸してほしい!」 一同「はい!」 セツナ「ありがとう!」 マサト達はアルフの遺跡にある調査隊本部のパソコンからジョウトリーグに連絡を取った。 事務局のオペレーター「ジョウトリーグ本部です。どう言ったご用件でしょうか?」 マサト「トウカシティのマサトです。四天王のルリカさんをお願いします。」 事務局のオペレーター「かしこまりました。少々お待ちください。」 そう言うと画面が切り替わり、「しばらくお待ちください。」の表示が写し出された。 セツナ「君たちは四天王のルリカさんとも知り合いなんだね。」 コトミ「はい。ミキさんはホウエンリーグでルリカさんとバトルしたんだそうです。」 ミキ「ナナシマであたし達がロケット団に立ち向かったとき、ルリカさんも一緒に協力してくれたんです。」 やがて画面が切り替わり、ディスプレイの向こうにルリカの姿が映し出された。 ルリカ「みんな、久し振り!」 一同「ルリカさん!」 ルリカ「うふふっ。みんなも元気そうね。あら?横の方は知り合いかしら?」 アユミ「初めまして。あたし、アユミです。」 ルリカ「初めまして。私はルリカ。仲良くしてね!」 セツナ「お初にお目にかかります、ルリカさん。ポケモンレンジャーのセツナです。」 ルリカ「レンジャーさんね。どうしたのかしら。」 マサト「実は・・・。」 マサト達はこれまでのいきさつをルリカに説明した。 ルリカ「ロケット団ね。ナナシマの次はジョウト地方が狙われてるって言うことになるのかしら。そのパレアって言う幹部はアルフの遺跡で何をたくらんでいたのかも気になるわ。」 セツナ「雪に閉ざされたシント遺跡に繋がる鍵を求めているのだと考えられます。早いうちの対応を俺からもお願いします。」 ルリカ「分かったわ。ジョウトでもナナシマと同じことになってしまったら大変なことになると思うわ。ワタルさんにも報告しておくわね。」 一同「お願いします。」 セツナ「四天王が協力してくれると心強いよ。君たち、本当にありがとう。」 マサト「どういたしまして。」 コトミ「セツナさんは、またこれから新しいミッションに入るんですか?」 セツナ「ああ。俺たちはロケット団の行動を追わなければならないんだ。次にロケット団が狙っているのはヒワダタウンのヤドンの井戸だろう。」 マサト「ヒワダタウン?」 ミキ「ワカクサシティからつながりの洞窟を抜けたところにあるわ。サトシ君が昔挑戦したヒワダジムもあるのよ。ヤドンの井戸は町外れにあるわ。」 アユミ「セツナさん、どうかお気をつけて。」 マサト「アスカさんとチヒロさんによろしくって伝えておいてください。」 セツナ「おう。それじゃあみんな、また会おう!」 そう言うとセツナは上空を通りかかったムクホークをキャプチャして、空高く飛んでいった。 マサト「そう言えば、アユミさんは?」 アユミ「あたしはキキョウジムに挑戦するわ。ハヤトさんはひこうタイプを使うし、手強い相手だと思うけど、でも怯まずに立ち向かっていくわ。マサト君達は?」 コトミ「あたし達はヒワダタウンに向かいます。ロケット団を放っておくことはできないです。」 ミキ「アユミさんも大変かもしれないけど、是非またお会いしましょう!」 アユミ「うん!いつでもスマイル!ね!」 そしてアユミはマサト達に手を振って別れた。――アユミの姿が見えなくなると、ミキはマサト達の方を向いた。 ミキ「次の目的地はヒワダタウン。途中にはでんきタイプのジムがあるマイタケシティ、そしてユカリさんがいるワカクサシティがあるわ。」 マサト「久し振りにユカリさんにお会いできますね。」 コトミ「ジョウトを回ってあたし達のレベルも上がったかと思うんです。今の姿、是非ユカリさんに見せてあげたいです。」 ミキ「うふふっ。あたしも早く会いたいわ。それじゃ、あたし達も出発しましょう!」 マサト・コトミ「はい!」 こうして、マサト達の活躍のもと、アルフの遺跡からロケット団を撤退させることができた。しかし、ロケット団の魔の手はジョウトのあちこちに伸び始めている。 マサト達は、これからロケット団にどう立ち向かっていくのだろうか。 その頃・・・。 薄暗い部屋の一室に声が響き渡る。 女「アルフの遺跡、いくらかの邪魔は受けましたが、当初の目的は一応果たしました。」 男「よくやった。だが報告に上がっていたポケモントレーナーとポケモンレンジャー、しっかりマークしておけ。」 そして男はもう1人の男に向かってこう切り出した。 男「お前はヤドンの井戸に向かえ。そこに生息しているヤドンの尻尾を切って高く売りさばくのだ。」 もう1人の男「はっ。」 男の後ろに写るジョウト地方の地図。そこには、ヤドンの井戸を表す赤い×印がくっきりと描かれていた・・・。 Chapter-67に続く。 <このお話の履歴> 全編書き下ろし。