Chapter-70『ムクバード!捨て身の根性!!』 (1) マサト達は、次のジムがあるヒワダタウンに向かう途中、まずはユカリの待つワカクサシティに向かっていた。 マサト「次はワカクサシティですね。」 コトミ「ユカリさん、元気にしてるかしら。」 ミキ「きっとユカリさんは、あたし達に会うのを楽しみにしてると思うわ。後、次のコンテストもワカクサシティで行われるのよ。」 マサト「そうですか?」 ミキ「うん。マサト君とコトミちゃんは出場するの?」 コトミ「はい!」 マサト「僕も出ます!」 ミキ「うふふっ。2人ともやる気満々ね。・・・あら?」 ミキはふと立ち止まって向こうの木々に視線を移した。 マサト「どうしたんですか?」 ミキ「ポケモンがいるわ。」 コトミ「ポケモン?」 確かに、ミキが手を差し伸べている1本の木が、風もないのにがさごそと木々が揺れているのである。 マサト「どう言うポケモンだろう?」 と、木から1羽のとりポケモンが飛び出してきた。ムックルだ。 コトミ「ムックルだわ!」 ミキ「シンオウ地方に多く生息しているポケモンだわ。でもどうして、ジョウトまでやってきたのかしら。」 マサト「あのポケモンがムックルだね。」 マサトはポケモン図鑑を取り出してムックルをチェックした。 コトミ「ムックル、バトルする記みたいね。」 マサト「どうする?」 ミキ「あたしがゲットするわ!行ってらっしゃい、ミジュマル!」 ミキはミジュマルを繰り出した。 ミキ「ミジュマル、みずでっぽう!」 ミジュマルがみずでっぽうを放つ。しかしムックルは素早い身のこなしでみずでっぽうをかわした。 マサト「早い!」 コトミ「ミキさん、気をつけて!」 続いてムックルは勢いよくミジュマルに突っ込んできた。でんこうせっかだ。 マサト「でんこうせっかだ!」 ミキ「ミジュマル、かわしてたいあたり!」 ミジュマルは素早くでんこうせっかをかわすと、たいあたりで突っ込んだ。たいあたりはムックルにそれなりのダメージを与えた。だがムックルはこの程度でへこたれるはずもなく、さらにミジュマルに向かっていく。 ミキ「ミジュマル、シェルブレード!」 続いてミジュマルがシェルブレードを放ってムックルに襲いかかる。ホタチを使ったシェルブレードの一撃がムックルに強烈な一撃を与えた。 コトミ「やったの!?」 だがムックルは不屈の闘争心を秘めているのか、なおも立ち上がってミジュマルに攻撃をかけた。たいあたりだ。 ミキ「やるわね。あのムックル、野生にしてはかなりレベルが高いわ。ミジュマル、あたし達もたいあたりよ!」 負けじとミジュマルもたいあたりで応戦する。互いのたいあたりが激しくぶつかり合う。 マサト「ミキさんのミジュマル、技の威力も申し分ないね。」 コトミ「でもあのムックルもかなりレベルが高そうだわ。ミジュマルと互角と言ってもいいかしら。」 ミキ「ミジュマル、もう一度みずでっぽう!」 ミジュマルがみずでっぽうの体制に入る。そしてムックルは低空飛行でミジュマルに突っ込んできた。つばめがえしだ。 マサト「つばめがえしだ!」 コトミ「あのムックル、つばめがえしも使えるの!?」 ミジュマルのみずでっぽうをムックルはつばめがえしで逆に弾き返し、そのままミジュマルに突っ込んだ。だがミジュマルはまだ戦える。 ミキ「まだまだよ!ミジュマル、もう一度お願い!みずでっぽう!」 ミジュマルがさらにみずでっぽうを放つ。みずでっぽうは勢いよくムックルに命中、そのままムックルを打ち落としていった。 ミキ「行くわよ、モンスターボール!」 ミキは勢いよくモンスターボールを投げた。ミキほどのトレーナーでもやはりボールを投げるときは緊張するのだろう。 ボールはムックルに命中、そのまま音を立てて揺れながら赤い光を点滅させ始めた。緊張の一瞬だ。――だがボールから白い光が放たれたかと思うと、ムックルがボールから出てしまった。 マサト「ゲットできなかった!」 コトミ「あのムックル、まだ余力を残していたのね!」 ミキ「ムックル、まだやる気なのね。それならあたしだって負けないわ!ミジュマル、たいあたり!」 ミジュマルが勢いよくムックルにたいあたりを仕掛ける。だがそのとき、そのムックルが突然白く光り始めたのだった。 マサト「えっ!?」 コトミ「これって・・・!?」 ミキ「まさか、進化するの!?」 バトル中、突如として進化を始めた野生のムックル。果たして、ミキはこのポケモンをゲットすることができるのだろうか。 (2) 次の目的地であるワカクサシティに向かう途中、森の中で出会った野生のムックル。ミキはこのムックルをゲットしようとしてミジュマルをバトルに出した。だが最初に投げたモンスターボールからムックルが出てしまい、なおも弱らせる必要があると判断。ミジュマルにたいあたりを出したのだった。だが、ムックルが突然進化を始めたのである。 白い光に包まれたムックルは、次第にその姿形を変えていき、ムクバードに進化したのだった。 マサト「ムクバードだ!」 コトミ「進化しちゃったわ!ミキさん、大丈夫かしら・・・。」 コトミはポケモン図鑑を取り出してムクバードをチェックする。 ミキ「(ムクバード・・・。バトル中に進化するなんて、かなり手強いわね。でもそれだけゲットのしがいがあると言うことだわ。)ミジュマル、落ち着いて!」 ムクバードはミジュマルを鋭い視線でにらみつける。いかくの特性が働き、ミジュマルの打撃攻撃の威力がやや鈍くなるはずだった。ところが・・・。 マサト「ミジュマル、ムクバードを相手に全く物怖じしてないよ!」 コトミ「本当だわ!」 いかくの特性を受けたならその兆候が表情に浮かぶはずだった。本来、ムクバードの特性はいかく。相手の打撃攻撃の威力を下げる特性なのである。だが、当のミジュマルはいとも涼しげな表情を見せているのだ。 ミキ「間違いないわ。あのムクバードの特性はすてみね!」 マサト「すてみ?」 ミキ「うん。すてみって言うのは、自分にもダメージが跳ね返る技の威力が上がる特性だわ。反動でダメージを受ける技って言うのは、すてみタックルやブレイブバード、もろはのずつきなどたくさんあるわ。そう言った技を使うと威力が大きくなるわ。」 証拠にムクバードがミジュマルめがけてタックルをかましているではないか。すてみタックルだ。 コトミ「すてみタックルだわ!」 マサト「危ない、ミキさん!」 ミキ「分かったわ!ミジュマル、かわしてシェルブレード!」 ミジュマルはすてみタックルを辛うじてかわすと、シェルブレードを振り返りざまに振り下ろした。横からの攻撃を受けたムクバードはたちまち勢いよく吹っ飛ばされていく。だが進化してパワーとスピードが増したのか、まだまだこの程度ではへこたれる様子が見えない。 ミキ「(確かにムクバードに進化してパワーとスピードが格段に上がってるわ。注意してバトルしないとあたしの方がやられてしまうかもしれないわ。)」 体勢を立て直したムクバードはでんこうせっかの体制に入る。そして勢いよく突っ込んでいくのが見受けられた。 ミキ「ミジュマル、かわしてみずでっぽう!」 ミジュマルがでんこうせっかをかわそうとする。だがミキの言葉通り、ムクバードは格段に素早くなっていた。そしてそのでんこうせっかをミジュマルはもろに食らってしまった。 ミキ「ミジュマル!」 ミジュマルはどうにかして立ち上がる。だがでんこうせっかのダメージが予想以上だったのだろう、立ち上がるまでに時間がかかってしまった。そこにムクバードの強力なすてみタックルが迫ろうとしていた。 ミキ「ミジュマル、危ない!かわして!」 だがミジュマルはかわす間もなくすてみタックルの直撃を受けてしまった。しかも珍しいすてみ特性から放たれたすてみタックル、その威力は半端なものではなかった。強力なすてみタックルをまともに受けたミジュマルは勢いよく吹っ飛ばされていく。 マサト「ミジュマル!」 コトミ「ミジュマル、大丈夫なの!?」 勢いよく叩き付けられたミジュマルだが、それでもまだ戦える状態だった。しかしかなりダメージを受けているのだろう。そしてすてみタックルの反動を受けたムクバードもかなりのダメージを受けた模様だ。 マサト「ミジュマル、かなりきつそうだね・・・。」 コトミ「でも見て。あれは!?」 見ると、ミジュマルの全身から青い光が放たれている。ミジュマルの特性・げきりゅうだ。 マサト「間違いない。あれはげきりゅうだ!」 げきりゅう。自分の体力が残り少ない状態になるとみずタイプの技の威力が上がる、これも文字通りの乾坤一擲の特性である。だがこの特性が発動すると言うことは次にダメージを受けたらまともにバトルできる保証はないと言うことである。 ミキ「(ミジュマル、最後まで全力でバトルするつもりなのね。そしてムクバードも最後までバトルするつもりだわ。うん。)」 ミキはミジュマルに勢いよく指示を出した。 〜挿入歌:『バトルフロンティア』が流れる〜 ミキ「ミジュマル、あたし達の力を見せてあげるわ!みずでっぽう!」 ミジュマルが勢いよくみずでっぽうを放った。げきりゅうの効果で威力が上がっており、ムクバードはたまらず吹っ飛ばされた。 マサト「効いているね!」 コトミ「後はミジュマルがどこまでバトルできるかだわ!」 ムクバードも体勢を立て直す。技と技が全力でぶつかり合う。そしてポケモンはトレーナーの力をどこまで見極めるかと言うのがゲットの醍醐味と言うべきところだろう。言い換えれば、ゲットされると言うことはすなわちポケモンがトレーナーの実力を認めたと言っても過言ではないのかもしれない。 やがてムクバードはすてみタックルの体制に入った。ノーマルタイプでも指折りの破壊力を持つ技。自分も反動でダメージを受ける代わりに相手に大きなダメージを与える。しかもムクバードの特性はいかくではなく、珍しい特性・すてみ。その名の通りすてみタックルの威力は飛躍的に高まるのだった。 ミキ「ミジュマル、あたし達も全力でぶつかるわ!シェルブレード!」 ミジュマルもシェルブレードを放つ。すてみ特性で強化されたすてみタックルとげきりゅう特性で強化されたシェルブレードの正面衝突だった。 命中した瞬間、両者は勢いよく吹っ飛ばされていく。そしてミジュマルとムクバードが地面に転がった。 ミキ「今度こそ行くわよ!モンスターボール!」 ミキは再びモンスターボールを投げた。モンスターボールはムクバードに命中、ムクバードはボールに納められていく。そして、ボールが赤い光を点滅させながら揺れ始めた。緊張の一瞬だ。 しばらくボールは揺れながら赤い光を点滅させていた。・・・そして、光の点滅が静かに消え、ボールの揺れも収まった。ムクバードをゲットしたのだった。 ミキ「うん!ムクバード、ゲットだわ!!」 ミキはムクバードが入ったモンスターボールを手に取り、ポーズを決めて見せた。そして、ゲットに尽力したミジュマルもポーズをとっていた。 マサト「良かったですね、ミキさん!」 コトミ「また新しい仲間が増えましたね!」 ミキ「うん!これからもよろしくね、ムクバード!」 こうして、ミキはすてみと言う珍しい特性を持ったムクバードをゲットすることができたのだった。 新たなる仲間とともに、マサト達の冒険は、まだまだ続くのである。 Chapter-71に続く。 <このお話の履歴> 全編書き下ろし。