Chapter-82『つながりの洞窟!ラプラスの歌!!』 (1) キクラゲタウンを後にしたマサト達は、次の目的地であるヒワダタウンに向かって旅を続けていた。 マサト「もうすぐつながりの洞窟だね。」 コトミ「たくさんのところに繋がっていることからそう言う名前で呼ばれているんでしたね。」 ミキ「うん。つながりの洞窟は32番道路と33番道路を繋いでいるだけじゃなくて、奥の抜け穴に入ると海にも繋がっているわ。それに、中にはアルフの遺跡に通じている細い抜け穴があるわ。」 マサト「アルフの遺跡にも通じているんですね。」 コトミ「と言うことは、道を間違えたら迷子になっちゃうかもしれないってことですね。」 ミキ「心配しなくてもいいわ。あたし達が普通に抜けていくんだったら、単純な一本道だわ。気を付けたいのは横穴から抜け道に入り込んでしまったら、思いもよらないところに出てしまうって言うことだわ。だけど、海に通じる道にはたまにラプラスが現れることがあるって言う話を聞いたことがあるわ。」 マサト「ラプラス。かつてサトシも使ってたポケモンですね。」 コトミ「ナナシマではカンナさんも使ってたわね。」 ミキ「うん。ラプラスはつながりの洞窟の奥、海に繋がっている通路を抜けた先の水辺に現れるって言われてるわ。ちょっと迷い込んじゃうかもしれないけど、美しい鳴き声は聴いてみる価値があると思うわ。」 マサト「僕は聴いてみたいけど・・・。コトミ、どうする?ラプラスに会うことは難しいかもしれないよ?」 コトミ「うん。だけどせっかくだし、あたし、ラプラスの鳴き声、聴いてみたいです。」 ミキ「分かったわ。それじゃ、洞窟の奥に行ってみることにしましょう!」 マサト・コトミ「はい!」 マサト達はつながりの洞窟に足を踏み入れていった。 その名の通り、色々な場所と繋がっていることからこの名前が付けられたつながりの洞窟。キキョウシティやワカクサシティとヒワダタウンを繋ぐ交通の要衝でもある。また、中にはズバットやイシツブテと言った、洞窟ならではのポケモンも多く生息している。 マサト「まっすぐ行けばヒワダタウンに出られるんですね。」 コトミ「でも、横穴といってもたくさんあるから、どれを進めばいいか、迷ってしまうかもしれないですね。」 ミキ「それはないわ。どれを進めばどの方向に出るかはちゃんと書かれてるわ。」 ミキはそう言って抜け穴にかかっている立て札を指し示した。――立て札はもう何年も前に立てられたらしく、字がかすれて読み取りにくくなっていたが、それでも「ヒワダタウン」や「アルフの遺跡」と言った文字を読み取ることができた。 コトミ「でも、海の方に続くって書いてないですけど・・・?」 ミキ「確かに海に続く抜け穴って言うのは書かれていないわ。だけど、ヒワダタウンやアルフの遺跡に通じる道はちゃんと示されてるわ。それとは別の道を行けば海に出られると言うことだわ。」 マサト「ミキさん、すごい!」 ミキ「うふふっ。海に続く道はこの奥にあるわ。さあ、進みましょう!」 つながりの洞窟をさらに奥に進んでいくマサト達。その奥にはラプラスが棲んでいると言われている。果たして、マサト達はラプラスを見つけることはできるのだろうか。 (2) ヒワダタウンに向かって旅を続けるマサト達は、道中、つながりの洞窟に差し掛かっていた。 名前の通り、多くの場所に繋がっていることからその名で呼ばれているつながりの洞窟。その奥は海に繋がっており、時おり洞窟の奥からラプラスの鳴き声が響くのだと言う。 マサト達は洞窟の抜け穴をさらに奥に向かって進んでいった。奥まっていることから海に近いのだろう、ウパーやヌオー、トサキント、ニョロモなど、海や水辺に住むポケモンの姿を見かけることが多い。それだけ海に近づいていると言うことなのだろう。 マサト「水辺のポケモンが多いですね。」 コトミ「そうね。それだけ海に近くなっているんだと思うわ。」 ミキ「ラプラスは一定の周期でこの洞窟に現れるって言われてるの(※1)。色々なデータが採られてるんだけど、それによると大体1週間に1度の割合で現れるって言われてるわ。」 マサト「1週間に1回、と言うことは大体現れるペースも周期的だと言うことですね。」 と、マサトがそこまで言ったとき、洞窟の奥から高く響く鳴き声が聞こえてきた。洞窟に生息しているほかのポケモンと比べても明らかに違う鳴き声だった。 マサト「今の鳴き声は!?」 コトミ「ほかのポケモンともはっきり違うわ!」 ミキ「間違いないわ。あの鳴き声はラプラスよ!」 マサト「と言うことは、この奥にラプラスがいるということですね?」 ミキ「そうだと思うわ。あたし達、ラプラスが現れる周期にちょうどこの洞窟に足を運んでいたことになるわね。早くしないと、もしかしたらいなくなってしまうかもしれないわ。行ってみましょう!」 マサト達は声のした方に向かって走っていった。 そこは、つながりの洞窟の最深部、すぐ目の前まで海が迫っている場所だった。洞窟の出口と海がそのままつながっており、遠く水平線の向こうまでを見渡すことができた。 海の方からやってきた1匹のポケモンが、美しい鳴き声を上げながら泳ぎ回っていた。野生のラプラスだ。 マサト「きれいな鳴き声ですね。」 コトミ「ポケモンの鳴き声はほかにもたくさん聞いてきたけど、ラプラスの鳴き声って言うのは、ほかのどのポケモンとも違うものがあると思うんです。」 ミキ「そうね。あたし達が生まれるずっと昔だったんだけど、ラプラスは一時かなり生息数が減少してしまって、絶滅の危機に瀕しているって言われたことがあるの。だけど、ポケモンの生態を研究していたたくさんの人たちが、ラプラスの保護と繁殖のために大がかりなプロジェクトを組織したわ。それで、今では昔みたいにたくさんのラプラスの群れを見ることができるのよ。」 マサト「昔サトシが連れていたラプラスも、今では群れのリーダーとしてラプラス達を率いているんでしたね。」 ミキ「うん。サトシ君はオレンジ諸島を旅していたときにラプラスを連れていたわ。群れからはぐれてしまったラプラスだったんだけど、オレンジ諸島を旅していくうちに実力をつけていって、最終的には群れのリーダーとして認められるまでになったって聞いてるわ。オレンジリーグの名誉トレーナーとなったのも、ラプラスの活躍が大きかったと思うわ。」 マサト「それからサトシはこのジョウトを旅して、ジョウトリーグとホウエンリーグでベスト8、シンオウリーグでベスト4となったんですね(※2)。今ではサトシもポケモンマスター。僕もいつかはポケモンマスターになりたいです。」 ミキ「そうね。ポケモンマスターは誰でもなれるものではないわ。だけど、マサト君やコトミちゃんだったら、きっとポケモンマスターやコンテストマスターにだってなれると思うわ。」 コトミ「ありがとうございます。きっとミキさんも、ポケモンマスターやコンテストマスターになれると思います。いいえ、ポケモントレーナーやポケモンコーディネーターは、誰もがポケモンマスターやコンテストマスターになれる要素を持ち合わせていると思うんです。」 ミキ「うん。いいことを言うわね、コトミちゃん。長くて遠い道のりになると思うけど、ポケモンマスターやコンテストマスターは、たくさんの努力と実力を積み重ねていけば、きっと叶えられることだと思うわ。」 と、ラプラスが高く響く鳴き声で歌を歌い始めた。 マサト「ラプラスのうたうですね。」 コトミ「本当だわ。聞いているとあたし達もうっとりしてきますね。」 ミキ「ラプラスに限ったことじゃなくて、ポケモン達の歌にはポケモンを眠らせる効果があるわ。だけど、この歌は眠らせると言うよりは、むしろ聞いているポケモンやあたし達を落ち着かせて、安らいだ気分にさせてくれる歌だと思うわ。」 マサト「そうですね。この歌を聴いていると、不思議と不安やそう言ったものが消えていく感じがするんです。」 コトミ「あたしもです。」 マサト達は、ラプラスの優雅で美しい鳴き声が奏でる歌にしばらく聴き入っていた。 〜挿入歌:『ラプラスにのって』が流れる〜 ラプラスを見送ってつながりの洞窟を出ると、そこは33番道路だった。33番道路は距離としては比較的短い方だが、洞窟を出るとヒワダタウンが近いということを実感させてくれるのだった。 ミキ「この道は33番道路になるわ。このまま進んでいけばヒワダタウンまで後もう少しね。」 コトミ「あたし達が次に挑戦するコンテスト。そして次のジムもあるわね。マサト、ヤギブシ大会にワカクサ大会と2回続けてマサトに負けちゃってるけど、次も勝てると思ったら大間違いだからね。今度は負けないわよ!」 マサト「僕だって負けないよ!それに、次のジム戦もどう言った相手だろうと全力でバトルして、バッジをゲットするんだ!」 コトミ「あたしだって!」 ミキ「うふふっ。マサト君とコトミちゃん、ジム戦とポケモンコンテストに向けて気合い十分ね。ヒワダジムのリーダーはツクシって言って、『歩く虫ポケ大百科』って言われてるわ。マサト君はサーナイトで挑むとなったら厳しいかもしれないわね。」 マサト「むしタイプにはほのおタイプのブーバーンが有利だね。だけどツクシさんのことだから、どう言った作戦で僕たちを迎え撃つんだろう。サーナイト、油断はできないね!」 コトミ「あたしだったらポカブがタイプ相性的に有利だわ。だけど油断は禁物ね。マサト、次のジム戦も、しっかりバッジをゲットしようね!」 マサト「うん!」 つながりの洞窟で、ラプラスの神秘的な歌声を聴いたマサト達。ポケモンの世界はまだまだ多くの神秘に包まれている。マサト達はその一部に触れることができただろう。 次の目的地、ヒワダタウンはもうすぐだ。そこでは、どう言った出会いが、そしてどう言ったバトルが、マサト達を待ち構えているのだろうか。 (※1)「ラプラスがつながりの洞窟に現れる周期について」 金・銀・クリスタル・ハートゴールド・ソウルシルバーでは、毎週金曜日になるとつながりの洞窟の最深部にラプラスが現れることになっていますが、ここでは曜日の設定が明確になされていないことから、1週間に1回の割合で現れることにします。 (※2)「サトシのポケモンリーグでの戦績について」 これを書いている時点ではイッシュリーグに出場するためのバッジを集めている段階であり、イッシュリーグの結果はまだ判明していないため、サトシのポケモンリーグにおける成績はシンオウリーグまでのものを記載しています。 Chapter-83に続く。 <このお話の履歴> 全編書き下ろし。